サンデーサイレンスのクロス(インブリード)の効果を調べてみた。TARGET frontier用のクロスデータもあるよ

この記事ではクロスの基礎知識と、サンデーサイレンスのクロス効果の検証を行い、有料記事部分ではTARGET frontier用のクロスデータのインポート方法を解説します。この記事を最後までお読みいただき、競走馬のクロスに興味がある方は、記事の購入も宜しくお願いします。

そもそもクロスとは?

2021年の皐月賞馬エフフォーリアの5代血統表をご覧ください。

アセット 9

父方の4代前と母方の3代前に「サンデーサイレンス」(以下SS)の名前があります。また父方、母方共に5代前に「Hail to Reason」の名前もあります。このように父方と母方の5代内に同じ馬名がある状態をクロス(インブリード)が発生していると言います。

エフフォーリアの場合だと、SSの4×3のクロスと、Hail to Reasonの5×5のクロスが発生している、となります。(JBISでは「サンデーサイレンスのM3×S4」という表記になっています。Mは牝馬を示すMare、Sは父馬を示すSireなので、父方で4代前、母方で3代前にSSがいる、ということです)

クロスがあると何が良いの?美味しいの?

クロスの効果なのですが、クロスがあると競争能力が底上げされるとかされないとか、体質が弱くなるとかならないとか、諸説が飛び交う状況です。

ちなみに、エフフォーリアにおけるSSのように、名馬のクロスが4×3、3×4で発生していることを奇跡の血量と呼び、確変起こってるんじゃね?くらいに(一部の人たちには)捉えられています。実際、SSの4×3を持つエフフォーリアが皐月賞勝ってますしね。クロス至上主義者にしてみたら、だろ?とドヤ顔しそうです。

しかし実際にクロスが競争能力に影響するかどうかは、学術的に不明だそうですよ。というわけで、拙作のクロスデータで、SSのクロスの効果を調べてみました。調査方法としては、同種牡馬産駒をSSのクロスの有無で分けて、全体的な勝率・連対率・複勝率を比較しました。

●オルフェーヴル産駒
SSクロス無(510頭)
勝率:8.6% 連対率17.1% 複勝率25.2%
SSクロス有(74頭)
勝率:10.7% 連対率19.8% 複勝率26.9%

※SSクロス有が、勝率・連対率・複勝率全てにおいてSSクロス無、を上回り、SSクロス有のオルフェーヴル産駒の単勝回収率は104%となりました。なお、芝ダート共に競争成績はアップしたのですが、ダートはアップ率が顕著で、SSクロス有のオルフェーヴル産駒のダート戦を機械的に買っていっても、単勝回収率154%です。

●ディープブリランテ産駒
SSクロス無(351頭)
勝率:6.1% 連対率12.2% 複勝率19.4%
SSクロス有(53頭)
勝率:5.0% 連対率12.4% 複勝率19.2%
※オルフェーヴル産駒とは異なる傾向となりました。SSクロスの有無であまり競争成績に差は見られず、強いて言えば、SSクロス有の方が若干勝率が悪いくらい。

●キンシャサノキセキ産駒
SSクロス無(560頭)
勝率:7.1% 連対率16.1% 複勝率24.4%
SSクロス有(44頭)
勝率:5.0% 連対率10.0% 複勝率18.1%
※オルフェーヴル産駒・ディープブリランテ産駒と異なる傾向となりました。SSクロス有の方が、クロス無よりも確実に成績が悪く、芝は特に成績悪化が著しく、勝率は2.5%・単勝回収率19%と散々な結果です。

3頭のサンデー系種牡馬におけるSSクロスの影響を調べてみましたが、それぞれ異なる結果となりました。SSクロスがプラスに働くオルフェーヴル産駒、SSクロスの有無はあまり影響しないディープブリランテ産駒、SSクロスがマイナスに働くキンシャサノキセキ産駒。SSクロス以外の要因が複雑に絡んでの結果だとは思いますが、SSクロスの有無でさくっと分析するとこのような結果になりました。最後に非サンデー系種牡馬でのSSクロスの影響を分析してみます。

●エピファネイア産駒
SSクロス無(131頭)
勝率:7.0% 連対率14.0% 複勝率20.8%
SSクロス有(235頭)
勝率:9.7% 連対率19.2% 複勝率28.6%
※エピファネイア産駒は、オルフェーヴル産駒と同じく、SSクロス有り、の方が全体的な成績が向上しています。しかしダートの成績がよりアップしたオルフェーヴル産駒と比べ、SSクロス有のエピファネイア産駒はダートの成績が悪化しています。SSクロスが、エピファネイア産駒に芝向きのキレを付与してくれるのでしょうか。

それよりも驚愕なのが、SSクロス有のエピファネイア産駒の代表格が、デアリングタクト(牝馬3冠)、エフフォーリア(皐月賞、ダービー2着)、アリストテレス(菊花賞2着)などがいる一方、SSクロス無のエピファネイア産駒は、2勝馬がちらほらいるくらい。ほとんど活躍馬がいません。

ちなみに、SSクロス有の勝ち上がり率40%、SSクロス無の勝ち上がり率は27.2%、とこちらの圧倒的です。エピファネイア産駒はSSクロスが無いとそもそもダメ、と言えるかもしれませんね。(SSクロス以外の条件は考慮していませんので悪しからず)

SSクロスの効果まとめ

SSクロスと一口に言っても、種牡馬ごとにSSクロスの影響は異なってきます。プラスに作用する種牡馬もいれば、逆にマイナスに作用する種牡馬もいますので、種牡馬ごとにクロスの効果は判断した方が良さそうです。前出の4種牡馬におけるSSクロスの効果を一言でまとめると、

オルフェーヴル:競争成績向上(特にダート)
ディープブリランテ:影響なし
キンシャサノキセキ:競争成績低下(特に芝)
エピファネイア:競争成績向上(特に芝)

となります。色んな条件を加味することで、クロスの効果は顕著になってくるでしょう。クロスに関して言えば、まだまだ研究・分析の余地が残されています。いわば血統界のブルーオーシャンです。競馬予想に血統を取り入れている人は、クロス分析をしてみてはいかがでしょうか。

というわけで、おおお!クロス分析してみたいぜ!まだ見ぬ金脈の匂いがしたぜ!という方に、TARGET frontier用のクロス(インブリード)データを480円で販売します。このデータには、1986年以降の中央競馬全レース、中央競馬全登録馬のそれぞれのクロス情報が入っています。

このクロスデータを活用することで、「サンデーサイレンスの3×4」を持つ競走馬が出走した全レースを一覧表示させる、「ノーザンダンサー3×4か4×3」を持つ競走馬を一覧表示させる、といった分析が可能となります。

この記事の有料部分に、データのダウンロード先やTARGET frontierへの組み込み方、基本的な使い方を記していますので、よしなにお願いします。

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