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恵文社一乗寺店 9月の本の話 2023

こんにちは、恵文社一乗寺店の岡本です。
9月の書籍売上ランキングをご紹介いたします。

よろしければ最後までお付き合いください。

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1位:『東京ホテル図鑑 実測水彩スケッチ集』遠藤慧(学芸出版社)

建築士でありカラーコーディネーターでもある遠藤慧さんが「泊まって、測って、描いた」ホテルの水彩スケッチ集が堂々の一位。間取りからインテリア、アメニティ、フードに至るまで、実際に空間に身を置いたからこそ描けるリアリティ。ミニマルからラグジュアリーまで多彩なホテルの魅力に迫った一冊です。

先月はコテージに遠藤慧さんと藤巻佐有梨さんをお迎えし、学生時代からの知己の中だというお二人に絵の着想や描き方や働き方などお仕事にまつわるあれこれを語っていただきました。


2位:『これが生活なのかしらん』小原晩(大和書房)

エッセイ集『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』がロングセラーの作家、歌人・小原晩さん初の商業出版。

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その自分の生活というものを、つまりは現実を、
べつだん、大げさにも卑屈にもとらえず、そのまま受けいれたとき、
みえてくるのは「ほのおかしさ」ではなかろうかと思います。
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ひとりで、近しい他人と、ときには場所を変えて。映画でもドラマでもないけれど、どこか劇的で淡々としている、すこし不格好でへんてこな毎日。これまでに重ねた暮らしの中で汲み上げたわずかな光を真摯に、ときにユーモラスに描きあげた一冊が二位となりました。


3位:『桃を煮るひと』くどうれいん(ミシマ社)

『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)の刊行以降、小説、エッセイ、絵本、児童書、歌集と多岐に渡り活躍する歌人・くどうれいんさんによる食エッセイ本。

6月にもランクインした本書は数ヶ月経った今もなお、店頭・オンラインともに沢山の方に手にとっていただいています。食にまつわる鮮やかなエピソードの数々、スピード感のある文章も心地よい。京都の出版社・ミシマ社より。書店では「がんばるわたしが嫌いじゃない」フェアが引き続き開催中です。


4位:『庭のかたちが生まれるとき 庭園の詩学と庭師の知恵』山内朋樹(フィルムアート社)

『動いている庭』ジル・クレマン(みすず書房)の訳者としても知られる山内朋樹さん初の単著は、庭師であり美学者でもあるユニークなバックグラウンドから生まれた新感覚の庭園論。フィールドワークを通して徹底的に観察し、分析し、思考する。庭だけでなくあらゆるものに通じる興味深い内容です。刊行記念フェアの選書も好評です。


5位:『花の絵』qp(DOOKS)

京都を拠点に活動する画家・図案家のqpによる三作目の作品集。筆を用いることなくスポイトや紙の切れ端から生み出される手法は、偶然性による温もりとリズムを纏い色鮮やかに描かれています。前二作と同じく500部限定、いずれも原寸大で収載されています。『明るさ』『紙の上の音楽』と合わせて、お手元でぜひじっくりとご堪能いただきたい作品です。


番外編:『TRANSIT 61号 いつだってイタリアが好き!』(講談社)

地球上に散らばる美しいモノ・コト・ヒトを求めて旅をするトラベルカルチャー誌「TRANSIT」から、最新号のイタリア特集号が番外編にランクイン。

美食にファッション、歴史、地中海やアルプスの絶景…。その名を聞けば、たちまち豊かなイメージが浮かぶ国・イタリア。私たちの暮らしにあまりに身近で、訪れたことはなくても親しみを覚える人は多いことと思います。今なお地域ごとに多彩な歴史や文化が色濃く残る一方で、新たなカルチャーの発信地としての側面も見せる国。大都市から小さな村まで、余すところなくイタリアを駆け抜けた一冊です。

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日が落ちるのが随分と早くなりましたね。

お客さんとして通っていたころ、この景色がとても好きでした。辺りが暗くなると、店内のランプとともに外燈の灯りがふわりと浮かびあがる。お店に向かう道中、このやさしい灯りが見えてくるといつもほっと温かな気持ちになったものです。

日中より落ち着いた雰囲気もまた居心地がよく、何時間でもいられるので、学校や仕事の帰りに、休みの日にといつも夕方にばかり訪れていました。縁あってお店に立つようになった今も毎日見飽きることのない、大切にしたい景色です。

イギリスの街中にぽつんとある書店、そんなイメージで作られたという当店。異国情緒あふれる佇まいながら、暮らしの色濃い商店街の一角にあるというのもまた、大きな魅力のひとつかもしれません。観光で来られる方はもちろん、お仕事帰りや学校帰り、休日の大切なひとときに、そしてご近所の方もふらりと入れる。この場所だからこそ生まれる親しみやすさがあるような気がします。

街中から少し離れた一乗寺。決してアクセスがいいとは言いがたい場所ですが、ご来店の際は夕方の恵文社、とてもおすすめです。

それでは、来月の本の話もどうぞお楽しみに。

(担当:岡本)

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