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「JAMPの視線」No.210(2024年1月7日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2024年1月7日

 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 今年の年始は例年通り妻の実家の滋賀県長浜市に帰省し、妻の家族や親戚とのんびり過ごすことを楽しみにしていたのですが、昨年末の仕事納めの日に妻のインフルエンザ罹患が判明し、結局は今回の年末年始は東京の自宅でゆっくりと過ごしていました。帰省できなかったのは残念ですが、逆に移動に労力をつかわず、ゆっくりと過ごすことができたので良かったのかもしれません。
 年末年始に金融業界の関係者の方々とお会いすると、皆さん一様に「今年は証券・資産運用業界でかなりの再編が起きることは間違いない」等の見通しをお話しになります。弊社の「年頭所感」でも少し書かせて頂きましたが、今年は証券・資産運用業界での再編、特に証券会社と銀行グループの距離がより接近するような再編や事業提携等が進むように予想をしております。

(以下、弊社「年頭所感」を掲載させて頂きます)
 2024年の新春を迎えるに当たり、我が国の金融業界が経験している大きな業界構造転換について、私の所感を申し述べ、年頭のご挨拶に代えさせていただきます。

 弊社・日本資産運用基盤グループは、「金融ビジネスの最適化」をミッションに掲げ、資産運用事業モデルの改革を通じ、金融業界の効率性・生産性の向上に資する「基盤」ソリューションの提供を行っていますが、昨年2023年は金融業界のみならず国全体としても資産運用事業モデル改革の必要性への問題意識が大きく高まった1年だったように感じます。

 まず、何よりも政府や日本銀行等の政策当局が踏み込んだ形で金融機関に対して事業モデルの改革を具体的に迫るような動きを取ったことは、2023年を振り返るにあたっては特筆すべきことであると考えます。2022年末に岸田政権が打ち出した「資産所得倍増計画」のもと、NISA制度の拡充と恒久化が決定されたことを受け、金融機関は新NISA制度への移行とその口座獲得競争に追われていたように思われます。また、昨年5月末に発表された「資産運用業高度化プログレスレポート」は、従来よりも踏み込んだ形で我が国の資産運用業の課題を網羅し、金融業界を驚かせましたが、そこでつけられた道すじはその直後に打ち出された「資産運用立国」構想に引き継がれ、年末に「資産運用立国実現プラン」として取りまとめられることとなりました。資産運用業改革に係る政策の具体化はまだまだこれからではありますが、このような議論の過程で、資産運用会社等がプロダクトガバナンスの強化や業務効率化等の課題に先行して取り組んだり、アセットオーナーの代表であるGPIFがあたかも新興運用会社支援の意味合いがあるように委託先運用会社の残高要件を撤廃したり等、業界側が先行して従来の事業モデル改革に着手し始めたのは印象的でした。そして、政策当局の動きとしては、日本銀行によるマイナス金利政策の解除に向けた段階的取組みも当然ながら無視することはできません。長らく金利が存在しなかった日本の金融業界に金利が復活することについては歓迎する意見が多い一方、昨年春に発生した米国シリコンバレーバンクの破綻は、金利上昇による金融機関経営への悪影響をまざまざと見せつけ、今後の金融業界の先行き不透明性を改めて問題提起することになりました。

 このような政策当局の動きを背景としつつ、証券・資産運用業界においては、ついに従来型事業モデルの行き詰まりが極点まで到達してしまったように感じます。以前より株式売買委託等手数料の無料化を宣言していたSBI証券が同無料化を実現し、そこに楽天証券も追随したことを受け、オンライン証券事業領域では手数料無料化がほぼデフォルトとなった感があります。他のオンライン証券会社は現時点では手数料無料化に踏み切らない姿勢を取っていますが、トップ2社の決定がオンライン証券事業領域、ひいては証券事業領域全体の事業モデルを変容させることは間違いありません。直接的な因果関係はともかく、この決定の後に間を置くことなく、マネックス証券と楽天証券という大手オンライン証券のオーナーシップが売却されたというのは、証券業界における再編ドミノの始まりを予感させます。また、新NISA移行を前に投資信託商品の手数料無料化も歯止めがかからず、従来型証券事業モデルのみならず、従来型資産運用事業モデルにも利潤を見出すことがもはやできなくなってしまっています。生活者の間でインフレに対する懸念が強まっているなか、今年からの新NISAへの移行は家計金融資産を岩盤預貯金から大きく移動させる可能性が高まっているにも関わらず、本来はその恩恵を享受する主体であるはずの証券・資産運用会社等の盛り上がりがほぼ見られないというのは、従来型事業モデルの終焉の表れなのだろうと感じます。

 地域銀行業界においては、金利が復活することに先んじての備えへの問題意識が高まっているように見受けられます。実際に日本銀行によるマイナス金利政策の解除までにまだ時間があると思われるものの、既に昨年夏のイールドカーブ・コントロールの柔軟化によって保有債券の評価損が膨らむなど、これから金融政策が正常化されるなか、短期的には有価証券運用事業での収益悪化が懸念されており、その難局をどのように乗り越えるのか、投資運用戦略及びリスク管理の高度化が急務となっています。また、金利復活によって銀行経営環境の改善が期待される一方、新NISA制度への移行では資産形成世代の囲い込みでオンライン証券等に大きく劣後する状況が明確になり、低下する手数料水準ではもはやシステム運営コスト等もまかないきれないという悲観論が広がっており、預かり資産事業の存続を危ぶむ声も聞かれ始めています。2023年は多くの地域銀行が企業価値向上のための施策を真剣に考え始めたように思われますが、地域銀行がどの事業領域に注力し、どのような収益拡大を期待するのか等について、地域における自らのパーパスと照らし合わせながら、再検討をする動きが強まっているように感じます。

 今年2024年は、政策当局の「資産運用立国実現プラン」や金融政策の変更等のアクションを受け、より流動的になる予測困難な事業環境のもと、従来型事業モデルや慣行からの脱却を進める動きが様々な場面でさらに具体化し、金融業界全体を飲み込んでいくことを予想しています。ここ数年は毎年同じことを申し上げており恐縮ですが、既存の金融機関の事業提携や統廃合等を通じた再編も進み、今後10‐20年の金融業界の勢力図を決定づける重要な1年となることは間違いないように思われます。そこでの鍵は「ビジョン」と「スピード」となります。丁寧な検討・議論で安定性を担保してきた金融機関の多くにとって、これら競争要素を前面に出した経営のかじ取りは容易ではないかもしれませんが、それができなければ生き残りすら叶わない環境です。いまほど金融機関の経営陣の手腕が試される厳しい局面はこれまでなかったように思います。

 弊社は、引き続き金融業界の資産運用事業支援プラットフォームとして、事業モデルの改革と成長に取り組む金融機関に対して、「基盤」ソリューションを提供してまいります。本年も何卒一層のご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2024年1月5日
【山崎元さんが死去 経済評論家】
大原のコメント→
 私が2015年春に日本に帰国し、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問を創業するに際してご相談に乗って頂いて以来、ご厚誼を賜っていました。
 それ以前にも『僕はこうやって11回転職に成功した』等は資産運用業界への転職を決断する時に繰り返し読み、本当に色々なことを学ばせて頂きました。
 ご冥福をお祈り申し上げます。

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2024年1月5日
【新NISA、約4割が利用に前向き 投資額月1万〜3万円】
長澤のコメント→
 兼務しているQUICK資産運用研究所で毎年行っている「個人の資産形成に関する意識調査」に関する記事です。今回は、今月から始まった新しいNISAを採り上げました。
 調査結果の一部を紹介させていただきますと、約4割の人が新NISAの利用に前向きと回答、うち、従来のNISA利用者では8割が継続利用の意向を示す一方、未利用者に限ると利用意向は2割弱にまで減るとのことです。しかしながら、未利用者は回答者全体の6割を超え、その2割でも全体の1割に相当するので、個人的には制度開始前としてはまずまず比率なのかと思いました。
 また、新NISAを利用しない理由として、「NISAの仕組みが複雑でよくわからない」が4割弱でトップとなり、・・・(続きを読む)

2024年1月6日
【1位は「新NISA」、23年の投信10大ニュース - 日本経済新聞】
長澤のコメント→
 こちらも兼務しているQUICK資産運用研究所で毎年年末に公表している「投信10大ニュース」の記事です。大きく分けると新NISA関連と資産運用立国関連のニュースが上位を占める一方、第8位にセゾン投信の中野会長の解任と新会社設立のニュースが入っています。経営者個人の去就のニュースが上位に入るというのは珍しいと思われ、同氏の業界における影響力の大きさを感じます。
 また、第10位の「ESG投信に逆風、金融庁が監督指針を改正」については、過去3年のESG投信関連ニュースを見ると、2020年の1位「ESG関連ファンドがブームに、過去最多の設定本数」、同2位「「未来の世界(ESG)」歴代2位の大型新規設定」、21年の1位「ESG関連ファンドがさらに増加「名ばかり」の指摘も」、同4位「未来の世界(ESG)、残高1兆円超」と、2年連続首位を占めたのち、・・・(続きを読む)

2024年1月6日
【【号砲 新NISA】シン・預かり資産営業①「貯蓄から投資」へ 問われる事業モデル】
長澤のコメント→
 ニッキン本紙元旦号及びニッキンオンラインの『「貯蓄から投資」へ 問われる事業モデル』の中で、商品売りからの脱却に関連して、「顧客のことを一番知っているのは銀行や信金など、いわゆる預金取扱金融機関。今がビジネスモデルを変えていくチャンス」とのコメントを掲載頂きました。
 今月より新NISAがスタートし、NISA口座のネット証券への移管が進んでいるというニュースも聞かれますが、これらの顧客の多くは今まで投資をしていた人であり、それ以外にも投資に踏み込めていない多くの投資未経験者が存在します。こうした潜在的な顧客層を把握していて、背中を押すことができるのは、・・・(続きを読む)

メディア掲載情報

■メディア掲載:日経新聞でのインタビュー記事掲載
「日本経済新聞」の元日特集記事で弊社代表大原のインタビュー記事が掲載されました。

「飛躍2024 『動かす 福来る日本へ 投資を水平分業 めざすはアーム』」

■コラム公開:コンプライアンスチームの連載noteの公開
新興・海外資産運用会社の立上げ等の支援を提供している弊社コンプライアンスチームがnoteに第39回目の記事を公開しました。

「金融審議会「資産運用に関するタスクフォース報告書」について」

インフォメーション

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