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出動! 中高年戦隊「ジェントルマン」

「ということで、よろしいでしょうか?」
 その男は、ホワイトボードマーカーのキャップを閉めつつ、問いかけた。男の前には、パイプ椅子に腰掛けたまま唖然としている三人がいる。
「よろしいもなにも、もう決まっちゃったんですよね」
「いえいえ、みなさんの同意がなければ決まりません」
「私らに、反対する権利はあるんですか?」
「んー」
 男は顎に手を当てて、二秒だけ考えた。
「ないですね」
「ですよね」
「ではこれで決まりってことで、よろしいでしょうか?」
「はあ」
「ありとうございます。全員の同意が得られましたので、今日からみなさんは『中高年戦隊ジェントルマン』として、治安維持の任務についていただきます」
 男は赤色のマーカーを手に取り、ホワイトボードにそれを大書した。白衣の裾が、腕の動きに合わせて揺れている。
「では、コードネームなんですけど、なにか希望はありますか?」
「あの、希望を聞いていただけるんですか?」
 男は、やはり顎に手を当てた。
「ダメですね」
「ですよね」
「ではこちらで決めさせていただきます。事前アンケートに記入してくださった好きな居酒屋メニューから。松永さんは『アゲダシドウフ』、横島さんは『アサリサカムシ』、城之内さんは『ナンコツ』でいきたいと思います。では只今をもって新生ジェントルマン誕生です!」
 拍手したのは男だけだった。
「あの」
「なんでしょう。アゲダシドウフ」
「新生ってことは、前にも誰かが?」
「その質問は却下」
「あ、すいません」
「あの」
「なんでしょう。ナンコツ」
「なにかと戦うんですか?」
 男が片頬だけで笑うと同時に、モニターを凝視していた助手が叫ぶ。
「博士! エナジー濃度が上昇中。中心は南区富士見町!」
 男の視線は、足元に向いた。
「具現化までは? 推測でいい」
「このペースだと、七分以内かと」
「そうか」
 男の犬歯は、異常に白かった。
「では、これから皆さんを転送します。衝撃に備えて」


 続く


本当に続きます! 全七話の長編に仕上げました!


電子書籍の表紙制作費などに充てさせていただきます(・∀・)