現在働き方に関する本を書いています。

このブログでは、その内容の一部をご紹介して行きます。

●働き方改革関連法案が施行されるまで

現在、働き方改革のことが盛んに言われています。私が就職した1986年と比べると随分変わったものだと感慨深いものがあります。当時は働き方のことが議論されることなどなく、平日の残業や休日出勤を問わず、長時間働くのが美徳だとされ、誰もそのことに疑問を持っていませんでした。

新人の私も、特に上司から残業命令を受けた訳ではなく、残業するのは当たり前で、定時で帰るのは特殊な事情があるときだけと考えていました。仕事量や人員配置も、残業が前提で組まれていたように思います。私自身、いつの間にか、土曜日や祝日は出勤するものという考えになっていました。

政府は、このような日本独特の働き方を変えようと考えて、安倍内閣の2015年4月、時間外労働割増賃金の削減、年次有給休暇の確実な取得、フレックスタイム制見直し、高度プロフェッショナル制度創設などからなる労働基準法等改正案が、第189回国会に提出されました。

その後、2016年8月には、加藤勝信氏が初代の働き方改革担当大臣に任命され、同9月には働き方改革実現会議が設置されました。しかし、これまで、個人の生活を犠牲にし、残業代が払われなくても黙々と働く多くの社員に支えられて来た日本の産業界は、政府のこのような動きに警戒し、そして反発する動きが目立って来ました。安倍首相もこのような動きに配慮せざるを得ず、一連の動きが止まってしまったのです。

ところが、思わぬところで、世の中の動きが変わったのです。2015年12月に電通での長時間労働などを苦にして自殺した高橋まつりさんの労災が、2016年9月、三田労働基準監督署によって認定されました。これを受けて、2017年1月に石井直社長は引責辞任し、電通は労働基準法違反の罪で起訴され、同年10月に罰金50万円の有罪判決が言い渡されました。

このことで世の中の流れが一気に変わりました。無理な残業をさせて社員を死に追いやったということで、大企業の社長が辞任するという事態にまで発展し、他の企業も見て見ぬ振りをすることができなくなったのです。

2017年1月には、株式会社ワーク・ライフバランスの呼び掛けに応じ、多くの企業が「労働時間革命宣言企業」に名を連ね、長時間労働に頼る会社運営は不適切であるという考えを公にしました。(小室淑恵『働き方改革』/毎日新聞出版)

このような流れの中で、2017年3月には働き方改革実行計画が作成され、「罰則付きの時間外労働の限度を具体的に定める法改正が不可欠」ということが明確に述べられました。2019年4月から働き方改革関連法が順次施行され、日本の働き方も少しずつ変わろうとしています。

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