区役所通りを歩きながら②
「お客さんとして見れないから、もうお店には来ないで」
彼女にそう言われてから、歌舞伎町に行かなくなった。
彼氏として彼女と過ごせることに、心の安らぎとささやかな幸せを感じることができた。
休みの日ドライブしたり、2人で飲みに行ったりと、2人だけの時間を
過ごす日々が続いた。彼女も昼の仕事も決まり、いよいよそっちに切り替えていこうと話をしていた。私も彼女とのこれからを少しずつ考え始めていた。
そんな時、彼女との連絡が取れなくなった。携帯電話にかけても繋がらないし、ショートメッセージにも返事がなかった。最初は忙しいんだなって思っていたけど、日が経つにつれて心配になった。
ただ、彼女は自宅に来ることを以前から望んでいなかった(私の部屋に呼べば良いと思ったんであえて詮索しなかった)ので、探しようにもなく、ただただ彼女からの連絡を待っていた。
そして、連絡が取れなくなってから二週間が経った夜、やっと彼女から
電話があり折り返ししたら、彼女が電話に出てくれた。
「どうしたの?連絡取れなくて、とても心配していたんだよ」
「ごめんなさい」
「あーでも声が聞けたんでホッとしたよ。良かった良かった。
少し時間あったら今週末でも会わない?」
「ごめんなさい」
「スケジュール合わなかったから来週でも良いよ」
「・・・・・・・・・・」
「ん?どした??」
「あ、きみカイマン君?彼女から君のこと聞いたよ。良い男なんだってね、写真も見たよ」
携帯電話から、男の声が聞こえてきた。
「あの、どなたでしょうか?」
「あ、ごめんね。俺、彼女の彼氏なんだ。たぶんカイマン君と同じ頃に
出会って付き合ってんだ。」
「えっ??」
「そういうことなんだよね、ごめんね。でさ、彼女に聞いたらさ、俺とカイマン君の他にあともう2人付き合っていたらしいだよね。だから少しお仕置きしていたんだ」
「????」
「俺が色々お仕置きしたんで、もう俺以外の男とはつき合わないみたいなんで、今後はもう電話しないでくれるかな?」
「ちょっといきなりすぎて答えようがないんですけど」
「だよね、でも、もう電話しないでね。俺も新宿で色々、あ簡単にいうとヤクザなんだけど、あんまり面倒にしたくないんで。いいかな?」
「彼女の電話変わってくれますか」
「カイマン、ごめんなさい。もう私はこの人なしでは生きられないの。本当にごめんさない」
「説明もなく、別れるなんて納得できないよ。。」
泣きながら、携帯電話を切られた。それが彼女と話した最後だった。
その後、働いてたキャバクラに行ったら彼女の姿はなかった。
噂では働いていた時から、ヤクザの女になってて、シャブ漬けになっていたんじゃないかと、他のキャストさんから聞いた(言動がおかしい時があった)
それ以来、私は歌舞伎町に足を運ぶことは、ほとんどなくなった。
彼女と別れたことが突然の出来事で、自分自身としても受け入れることができなかったので、歌舞伎町を拒絶していたんだと思う。
それから10数年。歌舞伎町もすごいタワーが出来たりして、以前の街の表情も変わった。けど、変わらず夜の蝶たちが、ウコンを飲み華やかな姿で出勤する姿を見て、少しだけ彼女の姿を思い出しました。
という、フィクションでした。
あ、酔いながらEGOWRAPPINを聴いて、靖国通りを歩いて途中で道路で寝てたのを思い出しました
(これもフィクションです)
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