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X JAPANの無観客ライブが感動的すぎた

X JAPANというバンドがあります。私は高校時代(90年代中盤)から好きで、気が付いたら20年以上が経過していました。

途中メンバーが亡くなったり、バンドが解散したり、再結成したり、洗脳されたり、本当にいろいろなことがありました。アルバムは出る出るといって全然(もう20年近く?)でていないし、もう諦念というか、次アルバムが出たらそれは人生において最後のアルバムかもしれないし、まぁそれでもいいかというぐらいのひねくれた愛しっぷりなわけです。

そのXが9月28日~30日で幕張メッセライブ3daysを実施するという話が流れてきたのが8月下旬。あと1か月しかないやん。仕事の予定、家庭の予定をいろいろまとめて9/30のチケットをゲットして見に行くことにしました。

新譜のボーカルがhydeでメンバー不仲説が流れたりする中、いよいよライブ期間がスタート。Twitterを見る限り、ライブすげーよ!やっぱり生で見るべきだよ!という声しか聞こえてこない。
そうそう。彼らの良さはライブなんだよ。生で見たら世間のいろいろな噂なんてふっとぶよ。会場で生の音を聞くべきだ…。

なんて思っていたんです。29日の昼ぐらいまでは。

雲行きが怪しくなってきたのは29日の深夜ぐらいだったかしら?

ものすごい勢力の台風が関東を通過するとのニュース。そして、それに伴いいろいろなライブ・イベントが中止になっているというはなしがTLに流れてきました。

自分が参加者として訪れるライブが台風のおかげで中止になるなんて、全く想定していなかったのですが、どうやら自分がその対象になる可能性が出てきました。

ライブ当日はウド―音楽事務所のHPにくぎ付け。29日時点では「ライブは決行」という案内しかなかったのだけれども、時間がたつにつれ、「正午までに決定」「13:00までに発表」「14:00までに発表…」と告知の内容が変わります。運営の方々の混乱が伝わってくるかのよう。

東京はその時点でそれほど雨風は強くなく、これはなんとかライブも実施できるのでは?と思ったのですが、14:00の発表直前にニュースで「JR全線18:00以降運休」という発表があった瞬間「これは無理だな」とわたくし察したわけです。その通り、14:00の発表で「ライブは中止」との告知。

うわー、残念すぎる!この気持ちはどこで晴らせば…。と一時はかなり落ち込んだのですが、小さい子供もいるし、長々と落ち込んでもいられないので一旦家に帰って家事にいそしむことにしました。

そんな中での「無観客生放送実施」の案内。

wowwowとニコニコ動画のyoshiki cannelで、会場に誰もいない状態のライブを生放送するのだという。
うひゃー。と驚きました。

いろいろ、いろいろ、それはそれは考えたうえでの結論だったのではないかと思うのですが、その、関わる人のいろいろな思いを感じると、もう言葉がない。

イベントの仕事に関わっていたという職業病で、会場費はいくらなのか、人件費はいくらなのか、もろもろどうすれば採算が合うのか、合わないのか、思わず電卓をたたいてしまったり。

そんなわけでビール片手にお待ちしていた無観客ライブの生中継。
や、一言でいってすごかった。感動しました。
そもそも1時間以上押したんですけど、それもある意味リアリティがあって。

映し出される会場の映像。客席は空席。誰もいない。スタッフの人が動き回る姿がやたら目立つ。ライブがはじまるまでの静寂。照明のリハーサル。何もかもが、これまでに見たことがない絵なんです。

ライブの本編が始まると音がやたらクリアで、当然観客の声は聞こえない。アーティストの演奏、歌がとてもよく聞こえます。座席はもちろん空席。だけれども全力で演奏するアーティストさん。

なんというか、圧巻、でした。

思えば、私とX JAPANとのかかわりは、もう20年以上昔からのこと。23年前、1995年、ダリアツアーの仙台公演が直前にキャンセルになったときのことが思い浮かびます。
いろいろな困難を乗り越えて、彼らはそのたびに立ち上がってきました。

バンドが解散したり、メンバーが洗脳されてしまったり、メンバーが亡くなってしまったり、バンドが復活した後も、ウェンブリーのコンサートをメンバーの体調不良で中止せざるをえなかったり、Yoshikiの手術のためにアコースティックにせざるを得なかった公演があったり…。

年齢だって50歳を越えていて、普通であればそんな苦労するようなことをする必要は全くないはずの無い年齢なのに、より高みを目指そうという思いが彼らのライブにはあふれていて、それを見るたびに私は「あー、こんなところで満足していちゃいかんな」と思うわけです。

涙腺崩壊したのは、Jadeという歌で、観客に歌を歌わせる部分、Toshlが歌わずにマイクを客席に向け、その部分の声が無音で、ドラムのYoshikiが泣いている(ように見えた)瞬間。お客さんがいないのに、アーティストは全力で演奏している…。

カメラの向こう側の私たちに、アーティストの姿は見えている。
だけれどもアーティストの人たちには、少なくともリアルタイムで我々の姿は見えていない。
普通のライブとは真逆の非対称性。
これこそアートなんじゃないのかなと、思いました、わたし。
中継を見ている間、何度もぞくっとしました。

誰一人観客がいない客席がうつるたびに、にも拘わらず彼らが全力の演奏をするたびに、「すごいものを見ている…」という思いが強まるのです。

彼らのパフォーマンスは、生で見るのが最高だ、とずっと思っていたのですが、今回、台風という不可抗力によって導かれた無観客ライブが、ライブ以外の、ネットワークとディスプレイを通じた表現に、新しい一ページを書き加えたではないか。

ふぁー、ええもん見せてもろうた。本当に素晴らしかった。

彼らの演奏に勇気をもらって、また明日から生きていこうと思います。

(ライブの様子は、wowwowで放送されるみたいなので、まだご覧で無い方は、ぜひ!)

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