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自分の体が感じたことを表現する朗読アーティスト トコラテンさん

新しい朗読の表現にチャレンジしているトコラテンさんにお話を伺いました。

プロフィール
出身地:北海道札幌市
活動地域:東京
経歴:ミュージカルなどの演劇を経て、
2010年より朗読を始める。
NPO法人現代朗読協会で、朗読表現について学んだ後ソロ活動を開始。
約2年かけて、昭和初期の作家、黒島伝治氏の長編小説をオープンマイク等で読みつぐ試みを行い完走。
現在は、朗読&モノローグ劇「ここなみ舎」
ウクレレとのデュオユニット「朗読バラード」
ソロ活動と、様々なステージパフォーマンスを展開している。
現在の職業及び活動:朗読アーティスト
座右の銘:人生は捨てて拾って繰り返し

死ぬまで舞台表現すること

Qどんな夢やビジョンを持っていますか?

トコラテン:夢やビジョンについて聞かれたとき、夢とかビジョンはほとんどないと思ったのですが、今あらためて思うと、死ぬまで舞台表現することですかね。それには健康であることが必要、生活の基盤も整えることが必要、人に嫌われてもできないので、人との繋がりを保つ必要もあります。

記者:何を表現したいと思われていますか?

トコラテン:朗読の作品を選ぶときに、その時々でテーマが出てきます。戦争のテーマ、仕事のテーマ、色んな作品をコラージュのように組み合わせます。30分で読みきれる作品は少ないので、長い作品を切り取ってやります。
そこで、その時自分が思っているもの、抱えてるものを表現します。

記者:それを聞いてる人にどう受け取って欲しいという思いはありますか?

トコラテン:実はどう受け取って欲しいとかはないですね。最低限として、不快な思いをして欲しくはないなと思っています。できたら気持ちいい時間を過ごして欲しいです。
朗読を「聞いてもらえますか」というよりは「感じてもらえませんか」という気持ちです。その時だけは愉快で気持ち良い時間を過ごして欲しいですね。

テキストと自分のコラボ

Q:朗読をするときはどんな思いを持っていますか?

トコラテン:我を消して、作品に没入して、作品だけを表現するという人もいれば、朗読はツールであって自分を表現するのが大事という人もいます。私はテキストと自分とのコラボだと思っています。
その為にはコラボするものや、人や作者を知る必要があります。私は色々な作品をやりたいと思っています。今ここ見えるものと自分とのコラボをやっています。
昔、ミュージカルをやっていたり、コンテンポラリーダンスを踊っていました。私のやっていたダンスは自分の身体感覚で出てきたものを表現しています。それがあるのか、私をお話を読んでみた時の自分の体の感じを表現するようにしています。

記者:奥が深いですね。

トコラテン:そうですね。朗読は字が読めて声に出せるという点ではハードルは低いのですが奥が深いですね。
私は舞台表現としてやっているのですが、自分が思っているよりも、可能性が広い表現だと思います。ここに見えている以外にも、聴いている人の頭の中で世界が広がる可能性があるので、音声だけで出しても、その音声だけではない表現ができ、すごいものがあることを感じています。

戦争を知っている世代がいなくなってしまうことに危機感を抱く

Q今どのような活動をされていますか?

トコラテン:今は、ソロ、ユニット、といろんな形で活動しています。
ソロだけでしばらく、都内のライブができるお店で活動していましたが、去年からユニットでの活動が増えました。
今は、ソロ、「朗読バラード」というウクレレとのコラボ、「ここなみ舎」で朗読モノローグ劇のユニットと、様々な形で活動しています。

記者:被爆者体験の方の朗読されているのですね。なぜ、そのテーマで朗読をしようと思われたのですか?

トコラテン:私は昔から中国が好きでした。中国の歴史を調べるうちに、そこに残されたものを伝えていけたらと思いました。中国の人が日本人を嫌いなことや反日運動のことも気になり、日中戦争の歴史を調べ始めました。その史実を意外と知らなかったことに驚きました。
そして中国の戦争の話を朗読していました。その朗読をしていて、次に何をやろうかと模索していた時に、「杉並区の被爆者の方の声を語ることをやってみませんか?」と、ここなみ舎を立ち上げた秀さんに声をかけられました。被爆者の方の実録を声に出して読むというのは、私がやりたいことにかなり近いことだったので組織的なことは苦手だったけれど、これならやってみたいと思いました。

また、もう一つのきっかけとして、新宿住友ビルにある平和祈念資料館(シベリア抑留、引き上げ体験を紹介してる)のホールでイベントがあり、そこで戦時中に戦死した友人の訃報を伝える役目を担ってたおじいさんが子供のように、赤ん坊のように泣きながら話していました。その話を聞いた私は、そこでもらい泣きをしてました。その話をしていた方は私の祖父と父の間くらいの年代の人だと思います。戦争を知っている世代がいなくなってしまうことに危機感を感じました。会場にはおじいさんと似た世代しかいなく、こういう話を伝えていかなくてはいけないのでは?と思ったのです。
自分が何も知らないことに危機感を覚え、お腹がズンと来るような焦りを感じました。
声をかけられたことをきっかけに、ここなみ舎での活動を始めました。
今年の3月に、ここなみ舎で4人のメンバーが集まり、
埼玉の丸木美術館にある、原爆の図第10部「水爆実験の禁止署名の絵」(杉並区の魚屋さんから始まった署名運動)が杉並区の公共施設で展示されまして、その展示を応援する公演を行いました。
私が参加してから初めて、ここなみ舎の公演で、被爆体験者の方の話しが朗読に組み込まれたのですが、私ごときが読んでもいいのかと責任を感じました。それは身がすくむような体験でした。けれど、私はこういうことをしたくて朗読をしている、腹を据えて読まないといけないと思いました。

戦争のことを忘れない

Q戦争の話を朗読することで気づいたこと、感じたことはありますか?

トコラテン:話が重たいものというだけで拒絶感を示す人もいますが、その人たちに対して、突破口を開いていけたらと思っています。
その朗読劇を政治的だと評価する人もいますね。興味ある人だけでなく、日常的に考えたこともなかった人にも来てもらえたらいいなと思います。この朗読を聞いた人が戦争っていけないんだと思ってくれたらいいですね。戦争の悲惨なことを聞くのは精神的に負荷がかかります。それによって精神的に壁を作る人もいるので、雪みたいに、粉が振りかかるみたいに、何かの拍子にあんなこともあったなと思い出す感じがいいなと思います。
自分の子供・家族を守るために、戦争を肯定しないで欲しいという思いが伝わればいいと思います。

音読が楽しい

Q朗読を始めたキッカケはなんですか?

字を音読するのが好きなのです。看板だったりメニューだったり、何でもいいのだけど、その音読が楽しくて、それがきっかけでした。
記憶して言うことと、この字を見て読むというのでは脳の使い方が違うようです。気楽にできて、声を出す面白さを感じます。話をしたい衝動も欲求も満たされます。
私が役者をやっていたのはセリフを話したかったからです。お芝居は時間をかけてお稽古をするのですが、お稽古をなぜやるかというとセリフを暗記するためです。練習時間の7割ぐらいはその為に使っていると思います。朗読であれば、そんなに稽古する必要がないのです。朗読は記憶しなくて良く、手軽に言葉を発することができるので私の欲求が満たされます。 

昔は劇団でお芝居していました。けれど、その組織的なのが私はダメで、一人でできる朗読を始めました。
そして、世の中に役立つことをやりたかったのです。

Q役者になりたかった背景はありますか?

トコラテン:小さい頃から漫画が好きで、お話を作って友達に話したりしてました。
小学3年の時にアドリブ劇の主役に指名されたました。主役をやったらやめられないとはこのことかーと感じましたね。小学6年のときには演出、台本など全部やりました。中学に入り、入りたかったソフトボール部がなかったので、演劇部に入部しました。地区の合同公演にも何回か出ました。

小さい頃覚えているのは家族みんなでボーリングをしている時に、私はフロアでずっと踊っていました。そのフロアのことを思い出すと、踊りが好きだったのかもしれないと思います。

Q最後に読者の方へメッセージをお願いします

トコラテン:挫折などもありましたが、今、好きなことができているのは、運が良い方だと思います。やってて一番楽しいことを見つけられていない人には見つけて欲しい、それがあれば自責の念があったとしても幸せに生きていけるのではないかと思います。未来が真っ暗けでも、芯があれば死ぬまでの課題があり、良い課題があれば死ぬまでは長くはないと思います。
朗読で仲間・つながりがあり、毎日が忙しいけれど、好きなことをやれて感謝しています。

記者:一言一言丁寧に、思いを持って話されている感じを受けました。戦争のことは本当に伝え続けていかなければいけないと思います。その一つとしての被爆者体験の方の朗読。ぜひ拝見したいたと思いました。本日は貴重なお時間をありがとうございました。

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トコラテンさんの情報
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FB:https://www.facebook.com/ten.tokoro.79

ブログ:https://ameblo.jp/tentokoe/

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【編集後記】

今回インタビューを担当した善家、岸本、細井です。インタビュー中の「私は役者」ということばが印象に残りましたが、朗読に対しての熱い思い、本当に心から好きなことをやられているんだなと感じました。一言一言が素敵に響いてきました。
トコラテンさんの益々のご活躍をこれからも応援していきます。

この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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