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世界中が注目する徳島県上勝町の「ごみを出さない」暮らし

▲ 標高700m級の山々にぐるりと囲まれている土地、気持ちいい!

徳島県の山間にある上勝町かみかつちょう
人口1500人ほどの小さなこの町は、2003年に自治体として日本で初めての「ゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)」を目指す宣言を行いました。
たくさんのごみをどう処理していくかより、そもそもごみを出さない社会づくりを実行していき、宣言から20年が経つ今、リサイクル率はおどろきの80%(廃棄にエネルギーの掛かる生ごみに関しては100%!)を達成しています。

今や日本全国に止まらず世界中から視察が絶えない上勝町で、その暮らしぶりを体験・見学しに訪れました。

▲『上勝町 ゼロ・ウェイストセンター』


⚫︎ 『ごみ収集所』 『学びと交流の場』 『宿泊体験施設』 がひとつになった場所。上勝町ゼロ・ウェイストセンター

上勝町にはごみ収集車が無く、町民は皆んな上勝町ゼロ・ウェイストセンターのごみステーションに直接ごみを持ち込み、ここで45種類もの分別を自ら行います。

プラスチックも瓶も、汚れたものと洗ったものではリサイクルの際のエネルギーコストが何百倍も違う、と私は今まで知らなかった。
ごみの処理に掛かるコストは分別するボックスの前にすべて記載してあって、町民はそれを『自分ごと』と意識し、きれいに出来るものは洗浄してから持ち込みます。

▲ 町民がごみを持ち込みやすいよう、車で入り込める開放的な作り

ごみと資源を分別することで資源は再利用することが出来て、結果ごみは減っていきます。
分別された『どうしても燃やさなければならないもの』(私たちは単純に『燃えるごみ』と呼んでいるけどここでは違う)はその分焼却効率も良くなり、焼却炉の寿命や埋立地の延命につながります。

海外でもゼロ・ウェイストを推進している自治体はありますが、その多くは、大きな自治体がたくさんの工場や機械の力で解決していく例が多く、
住民ひとりひとりの意識的な行動を得て役場と協力し合う上勝町のようなコミュニケーションは世界的にも非常に珍しく、奇跡のようなことなんだそう。

▲ ごみの分別からはじまる上勝町の朝。
自然と人が集まり、コミュニケーションが生まれる。

私は近所のごみ収集所では無意識に「なるべく早くここから去りたい」と感じてしまうのだけど、そういった気まずい空気(暗い、きたないなど)は一切感じられなくて、ごみの分別が心地よい行動になれることにも気づけました。


⚫︎ 生活の中でどうしても出てしまう生ごみはコンポストで堆肥へ

▲ 『ゼロ・ウェイストセンター』にあるコンポストで私たちも循環体験

焼却されるごみの3~4割は生ごみだと言われていて、水分が多く燃えにくいためCo2の増加にも直結してしまう生ごみ問題。
上勝町では土の中にいる微生物が生ごみを消化してくれる『コンポスト』で解決しています。

▲ この土の中には微生物がいっぱい。

人間が体内で消化できるものであれば同じように分解し、時間を掛けて土に還ります。
町民は各家庭にコンポストを持ち、自分たちが出す生ごみを自分たちで堆肥に変えて家庭菜園に再利用しているそうで、ここでも完璧な循環が成っています。


⚫︎ ごみではなく『資源』と捉え活用出来ると、分別という行動が誇りに繋がっていく

▲ 『ゼロ・ウェイストセンター』の美しい室内

ゼロ・ウェイストセンターにはこんなに美しいオブジェも飾られています。
真ん中には町内から集めたいろいろな瓶を使ったシャンデリアが美しく光を放っていて、これまた捨てられるはずだった約700枚の窓やドアなどの健具たちがランダムに壁にデザインされています。
『捨てられるごみ』は価値がない?どう使う?と、見てる人に静かに問いかけるようで印象的でした。

▲ ただのごみだと見向きしないのはもったいない
▲ 床にも工夫が…。

美しい石の床だ…と思いきやこれは、リサイクルできない陶器などの器を砕いてデザインされた床だそう。たくさんのアイディアに恐れ入りました。
ただごみを捨てたら終わり。とするのではなく、その魅力を見逃さずに活用できると『ごみの分別』は意味を大きく変える。

「町民の皆さんも、自分たちの要らなくなったものが施設の一部になっているのを見れると、小さなひとつが力になれたと嬉しくなれるよね。」
今回ともに旅をしたBRIGHTたちともそう話して頷く。

▲ 交流ホールの『コミュニケーションライブラリー』には
BACH incが監修した環境系の本が並びます。


⚫︎ 小学生のアイディアから生まれたリユース推進拠点 『くるくるショップ』

▲ 町民から持ち寄られた日用品が並ぶショップ。

食器や雑貨などの日用品、洋服や炊飯器もありました。
町民たちの家庭で「使わなくなったけど、まだ使える物」たちが集まってくる『くるくるショップ』では、それを欲しい人が自由に(無料で)持ち帰ることができます。
どんなにエシカルなプロダクトを購入するも、どれだけリサイクルしようも、「今あるものを使い続ける」ことには敵わない、これが究極のエコなんだ。

▲ 大切に使われてきた物たちを継承していく

持ち帰りは町外の人でも可能で、気がに入ったものがあればその重さを量ってノートに記帳していきます。その重さを通してどのくらいの物がくるくる循環したのかを見える化していて、月平均で100kg以上の物が旅立っていき、その循環率は90%近いんだそう。


⚫︎ 「WHY?」 - なぜ?どうして?の価値観を広げていく

▲ ゼロ・ウェイストアクション

WHY do you buy it?
WHY do you throw it away?
なぜそれを買うのか?
なぜそれを捨てるのか?
私たち消費者は問いかけられます

WHY do you produce it?
WHY do you sell it?
なぜそれを作るのか ?
なぜそれを売るのか?
私たち生産者は問いかけられます

上勝町ゼロ・ウェイストセンターでは、WHYという疑問符を持って生産者と消費者が日々のごみから学び合い、ごみのない社会を目指します。

ゼロ・ウェイストセンターHP『EXPERIENCE』より引用

上勝町が特別な町だから、優秀な行政だから、ゼロ・ウェイストを目指していける?そんなことはなかった。実際に訪れて一番感じたのは、町に根ざす『価値観』でした。
自分が手に取るものをどう選ぶのか、手放す時にどう手放すか。前に「WHY?」という疑問符を持つことを、今回の旅で持ち帰りました。

これを読まれた皆さんの中にも、小さな「WHY?」を芽生えさせられたら、それが広がっていけるとうれしいと思い、記事にしました。
ご案内いただいたゼロ・ウェイストセンターカエデさん。一緒に体験してくれたBRIGHTのメンバー。出会ってくださった上勝町の皆さん。ありがとうございました。




location | 上勝町 ゼロ・ウェイストセンター HP / Instagram
writing | keine. HP / Instagram

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