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中川政七商店のビジョンファースト経営について

こんにちは、中川政七商店 取締役の緒方(@notmegumi)です。

最近ありがたいことに「中川政七商店はビジョン経営がうまくいっている会社」という認知が増えてきているようで、このあたりについて色々な方にご質問いただくこともあり「大枠を整理すると弊社の構造はこうです」というのを書いておくことにしました。
※なお、この内容は7月に私が登壇したDIGIDAY BRAND LEADERSの内容を元に一部を引いたり足したりしています

基本的にはトップに貼り付けた図で話はほぼ完結していて、それの構造を説明していきます。先に言っておきますが長文です。

では、はじめます。

まず、「中川政七商店って何?どんな会社?」という方もいらっしゃると思いますのでものすごく簡単に説明しますと、

・創業300年の老舗企業で主に麻や綿の織物を作り続けてきたメーカー

・2003年よりブランディングを肝にした製造小売業(SPA事業)に転換し、現在全国55店舗展開にまで成長中

・「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、工芸業界活性のためコンサルティングや販路開拓、PR支援など幅広い産地支援事業を並行して行っている

という会社です。
より詳しく知りたい方はこちらをご覧いただければ幸いです。

ではそろそろ本題に。

ビジョンとは?

私達はそれを、意志であり情熱であり目的だと思っています。
そして、ビジョンドリブンな経営を実現・正しく機能させるために大事なのはそれを言語化することもひとつのポイントとなってきます。
ちなみに弊社はSPA事業を本格的に始めたのが2003年。ビジョンができたのは2007年です。
事業成長速度やチャレンジングな経営判断はビジョンワードが定まってからより強くなりました。
なぜかと言うと、創業者(弊社で言うと十三代 中川政七)の情熱がビジョン策定により、ハッキリと明確化され、全社員がそれを自分ゴト化できるようになったからです。それこそ、アルバイトスタッフまで含めて全て。

素晴らしい活動を行っていたとしても言葉にしないと曖昧になりますし、言い続けて意識し続けなければ、自分たちの日々の活動と直結して体感できるものでなくては、自分ゴト化の速度も遅くなりその効果は正しく発揮されません。

私達はビジョンに限らずあらゆるものごとを自社らしく言語化することをとても重要視しています。人間はそれぞれ違う生き物です。違う生き物がひとつの方向性を見据えて一体となって突き進むためには「どれだけ多くの共通認識と言語を持てるかどうか」がとても大事です。それがブランドをより筋肉質にすると私たちは信じています。

言葉をブランドらしく正しく定義すると
①意図しない解釈の発生を防ぐ
②自由演技の幅を間接的に設定できる
という効果があるからです。
長々としたマニュアルを作るよりも筋肉質なキーワードをひとつ策定するほうがよっぽど効率がいいということはとてもよくあります。

では、ビジョンが正しく機能すると企業にとってどうゆう効果があるのか?
私が考えるビジョンキーワードに必要な要素は以下の5つ。

ビジョンキーワードに必要な要素とは?

①戦略が表現されているか
②愛情が表現されているか
③判断基準として機能するか
④事業成果と紐付いているか

⑤誇り高い気持ちになるか

これらが含まれていないとビジョンとミッション以下の関係性が強く循環しなくなり、本来的な意味が失われるもしくは減るので注意が必要です。

ではここで、例として、弊社のビジョン「日本の工芸を元気にする」を分解してみましょう。


①「日本の工芸を」
ビジョンの視座が自社目線ではなく業界全体に向いている

②「元気」とは
利益:工芸業界全体の流通金額が増えること、従事者の報酬が増えること
誇り:従事者が誇りを取り戻すこと、誇り高くなること

③文章全体
日本の工芸を元気にするとは業界が活性化するということ
業界が活性化すればそれだけ多くの生活者の目に触れるようになる
つまり「工芸に関心が高い人をひとりでも多く増やす」という意味も入っている

④「なる」ではなく「する」
「なる」と「する」は主体が他者か自分かの違いがある
明確に「自分たちがする」という意志を込めている

①~③が戦略をあらわし、③が愛情をあらわし、②が判断基準と事業成果の紐づけを意味し、③と④で誇り高い気持ちが作られるということがしっかりと練り込まれた、自社自賛ながら、いいビジョンだなと思ってます。

このビジョンが策定されて以降、私たちは「自社利益向上」はもちろん強く意識しながらも「業界全体の活性化」が最大優先事項となりました。
KGIが業界全体の流通金額、KPIが自社売上金額、ということです。

その結果、弊社の場合何が起きたかと言うと、本業の成長をより本気で頑張るということももちろんなのですが、視座が自社→業界へと一段階上がったことで、
①自社の知見の共有(コンサルティング・教育講座など)
②販路・媒体の共有(テスト販売、合同展示会主催、PR支援など)
③地域活性化促進(地域イベントの開催、メディア立ち上げなど)

などを精力的に行うようになり、その結果、工芸業界成長に直結するアクションに対するアクセルの踏み方が異常という会社、社風になりました。


事業を構造図にするとこうです↓

事業内容は大きく分けると「つくる」「伝える」「支える」の3つ。
良い商品が産まれるということが全ての肝であり、日本の中でその最大化をすべく、自社だけでなく様々な産地、工芸会社をコンサルティングなどを媒介としながら推進しているという構造。
良い商品ができれば中川政七商店でバイイングも行いますし全力で販売します。中川政七商店がその商品にとって適した売り先でなければ販路開拓やPRの支援もします。
これがグルグルと循環する=業界が活性化すれば、おのずと自社の事業も成長をするので、ビジョン達成に一歩近づくというわけです。

僕らは慈善事業会社ではないので、産地を活性化するという仕事と、工芸業界全体の流通金額を上げるということによる自社事業成長という、ビジネスの両輪でしっかりシナジー出す、効果を循環させるというのは必須です。

ビジネスが上手く行ってない、成長ができてない状態で言う綺麗事を、僕たちは戯言だと思っているからです。

CSRはやらない、やるのはあくまでCSV。

社会課題も解決するし、ビジネスも成長させる。
僕ら以外の工芸事業者が成長すれば僕らのものづくりにも、お店にも工芸業界全体の流通総額にも大きなプラスの影響があると信じています。
それを強く信じられるのも、推進する意欲が尽きないのも「ビジョンの力」のひとつです。

正しいビジョン設計と骨太なビジネスモデル。
この両輪が「綺麗事を綺麗事のままで終わらせずしっかりと目的を成し遂げ、それがゆえに綺麗事を言い続けることができる」ように事業を行うための秘訣です。
というわけで、自分たちが達成したい綺麗事、それがビジョンであるとも言えます。
綺麗事の中で生きていきたくて、戯言とは関わりたくない人間が集まるためにも、ビジョンは重要なのです。
極論すると経営者がやるべきことは良いビジョンを作り、それが浸透するまで言い続けることと、浸透しやすい構造を作ることだけで合格とも言えます。
なぜかと言うとこれがしっかりと設計されていれば、あとはそれに共感して集まってきた優秀なメンバーが自走して目的達成してくれるからです。と願ってます。

[PR]中川政七商店はこのビジョンに共感し共に突き進んでくれるメンバーを随時募集しております

「ビジョン達成に必要な2つの要素」と「ビジョンが育てる2つの要素」

先程「ビジョンに必要な5つの要素」の話をしましたが、これをもう少し構造化していきます。
念の為、再掲します。

①戦略が表現されているか
②愛情が表現されているか
③判断基準として機能するか
④事業成果と紐付いているか

⑤誇り高い気持ちになるか

これらは事業に置き換えると並列の関係性ではありません。
①戦略×②愛情=ビジョン
であり、それがうまく機能しているかを判断するために
③判断基準があり、④事業成果に紐付いているかを検証するのです。
そしてその結果、ビジョンをどれだけ達成しているかを把握するという構造である、ということです。
つまりビジョンにとって最も重要でかつ必要な要素とは「戦略」と「愛情」です。

弊社の戦略論についてはこの記事では一旦割愛するとして、恐らくピンと来づらいであろう「愛情」の方を説明します。

先程書いたように「日本の工芸を元気にする!」に基づき、自社資源を共有することで産地活性についてもガンガン推進する、というようなことを経営判断としてやっていると、自ずと変わってくるのが「社内の空気」です。
わかりやすく言うと、
ビジョン「日本の工芸を元気にする」
その達成のためには何でもやっていい、という企業文化(Culture)が育ってくる
のです。
当然まずは経営層からですが、経営層がそうしたスタンスでいてかつ、そうゆうバットの振り方をしていると社内の空気にも当然影響が強く出ます。
「ビジョン達成のためには何でもやっていい」と、こうして文字に書くと多少語弊がありますが(笑)、「日本の工芸を元気にするためならなんでもやっていい!」というチャレンジングな企業文化=カルチャーが自然と育っていくのです。
そしてそのカルチャーが何を生み出すかと言うと「組織一体感」です。
そして、施策優先順位の判断基準も自然と「日本の工芸を元気にするかどうか」が基準になるのです。

社員「新しい企画を考えました!」
経営層「それ、日本の工芸を元気にするの?」
社員「元気になります!」
経営層「OK,GO」
という状態(さすがにここまで極端ではないですが笑)。

怠慢はダメですが、失敗は大歓迎。
日本の工芸を元気にする匂いがする打席にはドンドン立ってほしい。
そのためにはビジョンの自分ゴト化が大事ですし、ガンガンと挑戦をする組織風土が超重要。空振りを恐れず打席に立てるという意味ですね。

自分一人でできることなんかたかが知れてますし、イノベーションはたいてい自分(経営層)がわからないところから産まれてくるもの。
そのためにも特に若手が恐れずチャレンジできる環境作りは重要だと思ってます。
その環境は、ビジョンが正しく機能すると完成しやすいのです。
というわけでビジョンが育てる2つの要素は「企業文化」と「組織一体感」ですというお話。
上下左右の「風通しの良さ」はかなり、いい方だと思います。
※もちろん弊社も(というか特に私ですね、恥ずかしながら)まだまだ全方位において完成・成熟には程遠く、課題は山盛りです(汗)

というわけでそろそろ冒頭の図の出番です!
長かった・・・

改めて説明を始める前に「この図はあくまで弊社の構造分解です」「そして大枠です」ということは断っておきます。

大きく分けると、
定量ゾーン(サイエンス領域)と定性ゾーン(アート領域)で分けられます。大事なのは、定量と定性は重み付けは均等であるということ。
定量でだけで判断はしないですし、定性でだけでも、しません。
データ化できないところにどれだけセンスを高く持ち、外さない判断ができるか。AIの進化が進む今、これからの経営層や組織に求められるのは正にこの領域だと思ってます。

で、中でもコアなのが、繰り返しになりますが「戦略」と「愛情」の2つ。

弊社のようなものづくり企業からすると「愛情(LOVE)」とは何かというと、それはひとえに「商品」と「人」です。
いい商品を作り出そうとする情熱と、その熱意を、商品の魅力を、顧客に余すことなく伝えようとする努力と、その基盤を支えようと骨を砕く奮闘。
つくる・伝える・支えるの3つが、
愛情が「良い商品」と「強いチーム」

を作るのです。

そしてその「愛情」が最大限の効果を発揮するように設計するのが「戦略」。
弊社で言うと大きな割合を占めるのは「ブランディング」と「ポジショニング」。
このnoteではこの部分割愛しますがカンタンにまとめを言うと、弊社は今でこそ知名度も業績も上がってきていますが、事業転換当時は奈良の小さい小さい中小企業。資源も資産も非常に限られた環境での戦いを余儀なくされていました。そこで重要視したのがこの2つ、ということ、つまり、

誰もいないところで戦うことにした(ポジショニング)
            ×
伝えるべきことを正しく伝え続けた(ブランディング)

ということです。

中小企業なのでとにかくできれば誰とも戦いたくない。
そして自分たちの価値を極限まで高く高める必要がある。
これの両立は今も毎日考えてます。
幸せに生きていくということと成長することの両立にはこだわるが、競争には巻き込まれたくないと思っています。

ですので、この部分をブラさないことには命をかけてますので
「同じ価値観を持っている人を探してその環を少しづつ広げること」

「ブランドとして求めるコミュニケーションが実現できないものはやらない」
と決めています。

話を戻しつつ、まとめます。
図を再掲します。


戦略と愛情が両輪で機能している状態で、whatとhowがグルグルと錬成されていき、やるべきこと=ミッションが策定されます。
そしてそのミッション遂行の蓄積・継続が
①良い企業文化を作っていき、その企業文化がまた商品(サービス)とチームの強化に反映する
そして、そうした思いが練り込まれた商品や体験に触れ、その世界観に共感してくれた方がお客様となるということであり、つまり私たちがしているのはその共感の輪を少しづつ広げていくことです。
その結果、
②会社にとって共感をもとにした顧客(及び売上利益)を増やしていき、ブランディングとポジショニングの強化に反映する
ことがポイント。

そして図を見直してほしいのですが、全ては、循環しながら、強くなっていくのです。

ブランドとしての根本的な戦略部分はよほどの外部環境変化がない限りは基本ほぼ不変で、LOVE部分がガンガンと螺旋のように強くアップデートし続ける構造。
場合によってはwhat,how部分のアップデートをうけて、LOVE部分を変化させるということもあります。

重要なのは「変えてはいけないところ」と「アップデートし続けるところ」が明確になっている・なっていないというのは企業活動に大きな差を生むということ。
試行錯誤するポイントは明確であればあるほど、良いからです。
骨組みづくり・仕組みづくりが一定量できている(と思っている)弊社からするとあとはもう「やるべきポイントをとにかくやりまくる」だけ。
やりまくる、というのは先程の「日本の工芸を元気にする匂いがする打席にはドンドン立ってほしい」とも重複しますが、これらの連続が、自然と良い循環となり、より強いビジョンに、より強い会社になります。

パーパス?

最近やたらと耳にするパーパス。
弊社は社内でパーパスという単語を一切使いませんが、弊社も複数ブランドを展開している企業ですので、弊社の構造の中に落とし込むとここになります(多分)。
大事なのは、ブランド同士・ミッション同士でシナジーが出る構造になってないと、パーパス単体の威力だけで戦っていることになり、それだと本来的な意味が薄くなってくるのではないでしょうか、つまりビジョン達成効率が悪くなるということ。
達成すべきはあくまでビジョンです。
複数ブランドでない場合はさっきの図で落とし込むほうが考えやすいと思います。

この業界(?)は毎年新しい単語が爆誕する業界です。概念としては別に新しいものではないのに。
もちろん先駆者の素晴らしい話をインプットして活かすという行動は大事なのですが、事例はそのまま取り入れても基本ほぼ機能しません。一定量抽象度を上げて自社に合わせて良いところ(肝)を取り込むということが大事でかつ、もう少し言うと、自社で、自社らしいワーディングをし、それを見つめて、使いこなし、言い続けて、事業を進めることが大事です。
それは言葉に限らず、施策や設計やあらゆるものがそうです。そのまま取り入れられるものなど、原則的にはありません。

なので、今回紹介したこのフレームが必ずしも皆さんにすべからく役立つものかどうかはわかりません。是非ご自身で考えてみて下さい。

話を戻しますがとにかく、大事なのは事業の中で循環を構造化すること、つまり無駄を生まないことかなと思ってます。

構造は循環でなければならない。
小さい会社は、無駄なことをしている暇も資源もないので。

構造はあくまで循環でなければならない

ただし、脳内にイメージするその循環は二次元的なものではなく、螺旋状に上昇して大きなうねりになっていくような感じです。
最終的にそれをどうやって竜巻にするか。
共感から応援へ、応援から熱狂へどうやってたどり着くのか。
それはポジショニングで定めた場所に立ち続けるということをブラさず継続することと、それに基づいたブランディング=伝えるべきことを正しく伝え続けるということを愚直にやり続けるということ。
これこそが肝要であり、ブレたり、続けられないものは、ブランディングではなく、キャンペーンです。

まとめ

ビジョンとは、わたしたち中川政七商店の人間は、どう生きるか。
その価値観の共有です。

何のために:日本の工芸を元気にするために
なぜ:私たちには残したいものづくりがあるから
どうやって:いいものを作り、世の中に伝えることで元気にする

すべての企業活動はビジョンに繋がる。繋げなければならない。

以上です。

追伸:
中川政七商店は、一生懸命商品を作って、一生懸命販売しています。
よかったら是非一度お店に遊びに来て下さいませ。
中川政七商店 公式サイト|通販サイト


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日本の工芸を元気にする!
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緒方 恵(おがた けい)|中川政七商店 取締役

工芸技術を活かしたものづくりを一生懸命して、それを一生懸命販売しています。よかったらぜひ一度お店にあそびに来てください。中川政七商店 公式サイト|通販サイトhttp://www.nakagawa-masashichi.jp/

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