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モーニング・ページの問題点



一、広く認知された朝活


 はじめに断っておくが、私はモーニング・ページという習慣を否定する気はない。
 私も実践した経験者で、いい点も分かっているからだ。
 ただ、ずっと疑問に思っていたことがあり、それについてどう思うかを読者諸賢にも投げかけたくて、こうして記事をしたためている。

 知らない方のために解説しよう。
 モーニング・ページとは、ジュリア・キャメロン著作の『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』という本に出てくる、アーティストになるためのメソッドだ。日本風に言うと「朝活」の一種である。
 やり方は大まかに説明すると、朝起きたばかりでなにかをする前の状態で、A4ノートを開いてペンで3ページ分、三十分かけて思い付いたことをつらつら書いていくというものだ。書けないときは「なにも思い付かない」等とか書いていい。これを毎朝やるのである。
 この説明を読んで「ん?」と思った人は、きっと鋭い。
 説明はシンプルだが、やってみるとこれがまた大変なのである。
 以下にやってみた上での問題点と、これからモーニング・ページをやる人に向けた、個人的な質問を書いていく。


二、基本ルールに潜む矛盾


 まずA4ノートを用意しなければならないのだが、ここでひとつの疑問が浮かんでくる。
 それはこれだ。
「A4ノート3ページ分を文章で三十分で埋める」
 この基本ルールである。これがものすごく難しい。というよりは、不可能である。
 ためしに暇な人はA4ノートを買って、1ページでいいから何か、日記や作文などの思い付いたことを、ダーッと書いてもらいたい。
 それだけで何分かかっただろうか。

 私の場合は、家に一冊A4ノートがあったので試しに書いてみたが、早くても1ページで三十分かかるのである。こういうことだ。
 これがモーニング・ページ最初の難関となる、疑問の浮上だ。私はモーニング・ページを書いている間、この疑問で頭が一杯になってしまう。
 1ページで早くても三十分だ。3ページなら単純計算で一時間半、場合によっては二時間かかることもある。私はA4ノート3ページ書くのに二時間かかった。
 これを毎朝やるのである。
 これを毎朝。
 これを毎朝。
 とてつもない努力が必要になる。

 私は以前このような呟きを、Twitter(X)に投じた。



 書いてから反応らしい反応はなかったが、呟いてからひとつ訂正したいことがあったので、ここに書いておく。
 二時間かけてモーニング・ページをやっている人も世の中にはいる。
 これを毎日続けられる人は、きっと「何かを持っている」人だろう。


三、時間をかけるか時間を守るか


 ここでモーニング・ページをやるものには、とある選択肢がある。
 ルールを自己流に変更することである。
 ちなみに私の場合であるが、家に趣味で集めた大量のノートが余っていたため、メインはモレスキンのルールド(横罫)、ラージサイズのノートでやって、それが終わったらペーパーブランクスのウルトラサイズでやった。A4ノートとの差異を考えて4ページ書いた。
 それも二時間かかった。

 モーニング・ページのルール変更には、大まかにわけて二通りある。
 文章量をとるか時間をとるかである。
 私は文章量を基本ルールに寄せたが、その代わり三十分ではなくなってしまった。これが人によっては、文章量ではなく制限時間を掛ける場合がある。時間を決めてやるのである。

 私の場合は、まず基本ルールにどうあってもはまらないため、書いている最中、大きな葛藤があった。
 モーニング・ページには「書いている内容を決してだれにも見せてはならない」というルールがあるため、あまり詳しくは言えないのだが、簡単に言うならら、私は書いたモーニング・ページの文章の内容がほぼ「こんな書き方でいいのだろうか」という疑問の繰り返しになってしまった。
 書く内容が自由でいいとはいえ、せっかく時間をかけているのに、本末転倒もいいところである。


四、効果報告と激励

 私はモーニング・ページをやりながら次々にノートとペンを試し、三ヶ月続けてみた。
 とある変化があった。
 頭のなかがスッキリするのだ。
 著者のジュリア・キャメロンは作中でモーニング・ページのことを「脳の排水」が目的と謳っている。
 モヤモヤしている普段からの疑問や未解決の問題、心の奥底にあった過去の嫌な思い出、一日のこれからの予定を考えるワクワクした気分、眠いなどの素直な体の感覚、書いているうちに思い付いた小説のネタなど、様々なことが浮かんでくる。そしてその全てを飲み込んでくれる。
 それがモーニング・ページだ。
 作家のためのメソッドとは良く言ったもので、これをやっていたことをきっかけに、作家になった人物もいる。

 とてつもなく時間はかかるが、なにかをしたいと思っている人にはいいかもしれない。ただし、文章量を忠実に守るとなると、朝早く起きなければならないため、とても大変になる。
 継続が目的なら、三十分でやるなどの制限を掛けることが重要になるが、A4ノート3ページのところ1ページ程度になるとなると、効果の低下は否めない。
 ちなみにモーニング・ページには「一日3ページ以上は書いてはならない」というルールもある。それ以上は疲労するため逆効果になるのだろう。

 あなたはどちらをとるだろうか。
 文章量か、時間厳守か。
 どちらが正解とも言えないが、どちらかは犠牲にしなければならなくなる。
 これからモーニング・ページをやろうと思っている人は、どうするか決めてやるといいだろう。

 かく言う私は現在はやっていない。ルールに落としどころが個人的についたら、またやるかもしれない。
 しばらくはどうするか、考えているところだ。
 書くこと自体は好きなのでやってみるのもいいが、また家に大量にあるノートを消化することを優先するだろうから、そこは自己流になると思う。
 
 興味のある方は、ジュリア・キャメロン著作『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』を読んだり、モーニング・ページについて解説しているYouTubeを見たり、検索をしてルールを解説している記事を読んだりして、確認した後に始めるといい。
 モーニング・ページを絶賛する声の多い世論の中、疑問が膨れ上がって、一石を投じてみた記事を書いたが、参考になれば幸いである。
 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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