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趣深い日本の色彩 #21 麹塵

こんばんは。グラフィックデザイナー、カラリストの藤田です。
今日は難読色名かつ禁色きんじきという概念のお話。

灰色にも、くすんだ緑にも見える色

麹塵は、「きくじん」と読みます。
名前そのものは、「こうじのカビ(塵)の色」という意味で、少し地味な感じがしますね。
麹黴こうじかびは、お酒や醤油、お味噌などの発酵に欠かせないもので、日本人には古くからの付き合いがある存在です。
日陰ではグレーっぽく、光のもとでは緑に色づく不思議な色彩です。

色の混ぜ方がちょっと変わっている

色を混ぜて緑を作る時、皆さんは何色を使いますか?
ふつうは青と黄色ですよね。

でもこの麹塵は、紫と黄色。
正確には、紫根と苅安を使って染められます。
紫根は名前の通り、紫を出します。
赤紫のそれは、椿の灰汁に通していくと青い紫へと変わっていくそうです。
それに、黄色の色素である苅安を加えると、このくすんだ緑になります。

天皇のみに赦される色、禁色

こうして出来た麹塵色の布は、平安時代の天皇が日常で着用するほうに使われました。

天皇が使う色で、平民には使えない色。
「使用を禁じられた色=禁色」となりました。
禁色はその名前の通り「使ってはいけない色」なので、特定の1色を指す言葉ではありません。

ちなみに、対となる公で着用する袍は『黄蘗染こうろぜん』と言って、こちらも同じく禁色です。しかも天皇以外着用禁止の「絶対禁色」!
あと自分が好きな紫も、昔は禁色でした。

別名もあります

麹塵の別名は「青白橡」。
別名も難読すぎる…。
こちらは「あおしろつるばみ」「あおしらつるばみ」と読みます。
あとは「山鳩やまはと色」とも言うそうです。

高価な紫根を使って、でも紫の染料なのでこの色に染めるのは安定しないという、なんとも贅沢な色彩でした。

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