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生産性向上のためのマーケティングの考え方と、そのための方法論まとめ

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先日、社内向けにマーケティングの勉強会を開催しました。

内容的にはマーケティングの基礎の話だったのですが、そのさいに話した内容に
「働き方改革とか生産性向上というけど、マーケティング無しには本質的な実現はできない」というものがありました。

働き方改革の流れのなか、労働時間を伸ばすことで成果を出すという選択肢が難しくなっているのは事実としてあると思いますが、
組織としても個人としても、労働時間を言い訳にして成果が下がって良いということはありません。

そんななかで成果を上げるためには、まさしくマーケティングが必要になるという話です。

今回はその話について書きたいと思います。

【働き方改革の流れと現状課題】

働き方改革という言葉が使われるようになって久しいですが、
サイバーエージェントでもその例に漏れず、労働時間の管理はかなり厳しいというか、しっかりするようになっています。

自分が入社した2008年のころはガチガチのベンチャー感がまだ残っており、
新卒で入社していきなり時間外労働が200時間を超えたこともありました。
(自分のいた子会社が異常だったというのはありますが)

その後のソーシャルゲーム開発では、もはや仕事時間という概念すら怪しくなり、週に2日くらいは会社に泊まっていました。
家に帰るのが面倒なので着替えを持ち込んで、会社の向かいにあるカプセルホテルのジャグジーに入ったりしていたものです。
今思うと、非効率の極みのような時代ですね。

それが今では、月間の残業時間も制限があり、それを超えないように全社一体で取り組んでいます。

しかし、当然ながらこの取り組みには、以下のような疑問が浮かんでくると思います。

「残業時間が減ったなら、仕事量も減ったのか?」
「仕事が減ったら、成長機会も減って、活躍できなくならないか?」
「それらを通じて、会社の競争力も落ちるのではないか?」

普通に考えたら、それもそうだと思います。

実際、働き方改革についてのTV報道などでは、
結局仕事が時間内に終わらないためにPCを持ち帰って仕事をするなど、本末転倒な働き方について言及されたりもしています。

要するに、「残業は減らさなければならない」「業績は落としてはいけない」という二律背反のような状況下で、現実的にそれが達成できていないケースが多いということですね。

そこまでではないにせよ、例えば新卒や若手の立場からすれば、
「長い時間働かないとしたら、どうやってオッサンたちを超えるような成長をすればええんや!」という気持ちもあるかもしれません。
なにせ当時の自分と比べると、本当に半分くらいの仕事時間で成果を出さなければならないわけです。

当時の非効率さと比べるのは意味がないことですが、とはいえこういった状況下で成果を出すにはどうすればいいのか、というのが今回の本題です。

【生産性向上のために必要なこと】

結局のところ、働き方改革を成功させるには、ただ残業を減らすように呼び掛けるだけではなく、”生産性の向上”がセットで必要になります。

では、生産性とはいったい何か?

生産性とは、かけたコストに対するリターンの大きさのことです。

もう少し具体的に言えば、「金銭的・時間的・人的リソースの投下量に対する売上高」です。
これをスループットなどと呼んだりもします。
(厳密な定義とは違いますが)

要するに働き方改革の場合、「時間的・人的リソース投下量に対する売上高比率を向上させる」という打ち手がないと、単純に労働時間を減らした場合は売上高が下がるわけです。

「いいや、うちは残業制限をしたけど売上は下がってないぞ!むしろ残業代が減って利益は増えたぞ!」
という会社もあると思いますが、それは非効率な仕事がもともと多かっただけですね。

基本的には、働き方改革を成功させつつ競争力がある組織であるためには、生産性の向上が必須です。

では、生産性を向上させるにはどうすればいいのか?
それは「①顧客に対する提供価値を高める」「②同一の提供価値にかけるリソースを減らす」の2点になります。

この場合の顧客とは、BtoBの場合もあればBtoCの場合もありますが、基本的にはどんな業態であっても同じです。
顧客への提供価値が高ければ売上高があがる、または提供価値を変えずにリソースだけ減らせれば利益があがる、というシンプルな話です。

このうち、②については進めている企業が多いようにも思われます。
RPA(機械によるプロセスの自動化)に代表されるように、手作業をシステムで自動化して効率化するとか、AIで作業を自動化するとか、色々な取り組みがあります。

一方で①についてはどうでしょうか?あまり語られる機会が多くないように感じています。

しかしながら、リソースの削減だけを進めていても、そこにイノベーションは生まれません。
効率的に同じ提供価値のものを生み出し続けていても成長できず、いずれは縮小していくのみです。
特に働く個人としては、いわゆる「AIに取って代わられる人材」のように、付加価値のない仕事ばかりになるリスクがあります。

よって、働き方改革の話をするさいは、①の「提供価値を高める」という視点がセットで必要です。
組織としてだけではなく、個人としてもこの視点を持つことで生産性を高め、これからの時代を勝ち抜いていかなければならないということです。

では、顧客への提供価値を高めるにはどうすればよいのでしょうか?
それこそが、マーケティングということになります。

【マーケティングとは業務進化のことである】

生産性の向上のためには”提供価値の向上”が必要ということですが、具体的にはどうすればよいのでしょうか?

まず大前提として、「提供価値」を決めるのは顧客です。

どれだけ自分たちが良いと思っているものでも、顧客がそれを認めてくれなければ意味がありません。
ここの認識ができていなかったことが、2000年代以降の多くの日本企業の衰退につながりました。
高性能とか革新的といったことは本質的には関係なく、とにかく「顧客が価値を認めてくれるかどうか」ということです。

そのため、提供価値を高めるには、
「顧客が何を望んでいるのか」を可能な限り高精度に理解する必要があります。

これについては昔から色々な手法が開発されており、市場調査やユーザーインタビューなどを通じて顧客理解のアプローチがなされてきました。
しかしながら、ライフスタイルが細分化した現代においては、そのアプローチだけではカバーしきれないケースも多くなっています。

そのため、近年ではデータ分析に基づいた顧客分析を活用するケースが多くなっています。
例えば以下の記事のようなケースです。

■参考記事
ヤオコー FSPの顧客セグメントを細分化

端的にいえば、ポイントカード会員の購買データを分析し、顧客をセグメント別に分類することで、
各セグメントに最適な提供価値を作るようにしているということですね。

記事内では明確に書いていないですが、おそらく施策に対するセグメント別の反応=売上や来店回数の変化を追跡していると思われます。

ということはつまり、顧客ごとに効果があった施策かどうかが、常に高精度で振り返ることができるようになります。
例えば「チラシを増やしてもこのセグメントの来店数が変わっていない」とか、「子供向けイベントをやったらファミリー層の来店が増えた」とかいったことがすぐに分かるわけです。

これによって何がおきるかというと、すなわち
・生産性の高い業務を増やす
・生産性の低い業務を減らす

ということが実現できることになります。

チラシが仮に無駄だとなったら、チラシ発注関連業務の負担が減るし、出稿費用も減ります。
逆にイベントが効果的だとなったら、他の生産性が低い業務を減らし、イベントにリソースを集中できるわけです。

それはつまり、
「顧客データ分析をもとに、顧客のことを高精度に理解することで、業務効率を格段に向上する」ということになります。

これこそが現代のマーケティングだと考えています。

これを図式化すると、以下のようになります。

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このように、
顧客理解に基づいて業務を進化させていくことが、マーケティングにおいて取り組んでいくべき実務ということになります。

この図に記載しているように、業務進化の対象となる業務というのは、プロモーションの話だけではありません。
商品の企画開発やカスタマーサポートなど、売上に関わるあらゆる業務が対象になります。

この一連の活動を「ビジネスプロセス」と表現したりもします。

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出典:https://lt-s.jp/lts-column/2015-8-19

詳しくは以下の本を読んでみるのも良いと思います。

とにかく、ここまでの話で、
「生産性向上のためにはマーケティングが必要であり、その本質は顧客の理解とデータ活用に基づいた業務の進化にある」

ということが理解いただけたかと思います。

ちなみに個人的には、ここまでの話を実感として理解できるようになるまでは2年くらいかかりました。

前職のリヴァンプという会社にて、「マーケティング支援やってます」と言ってはいたのですが、
当時の上司からは

「お前の言うマーケティングとはつまりどういうソリューションのことを指しているのか全然わからん。業務が改善しないソリューションが事業を良くできるわけないだろう。だからお前は薄っぺらいんだ」

という有難い指摘をずっともらっていました。

当時はこの意味がよくわからなかったのですが、今は理解できていると思います。

以前書いた以下の記事も、背景にはこの考え方があったわけです。

広告レポートを見直してから自動化すれば、デジタルマーケティングの成果は2倍にも3倍にもなる

この話も、単に「レポーティング業務が減って効率化できたね!やったね!」という話ではなく、
データ分析業務の改善を通じて、よりクリエイティブ設計業務に集中できるようになったこと、
クリエイティブ設計において即座にデータを参照して効果的なクリエイティブを考えられるようになったこと、が本質的な成果の源泉になっています

【まとめ】

ここまでの話をまとめると以下のようになります。

・「働き方改革」において、労働時間を減らしつつ成果を上げるには「生産性の向上」が必須である
・生産性を上げるには、業務の自動化などを通じたリソース削減も有効だが、本質的には「顧客への提供価値の向上」を実現しないと成果が縮小していく
・顧客への提供価値の向上のためには「顧客理解」「データ活用」を通じた「業務の進化」が必須であり、これこそがマーケティングがもつ根本的な価値である

ここまでの話には3Cとか4Pのような戦略設計やクリエイティブの話が出てこなかったので、マーケティングの話というのがピンとこない人もいるかもしれません。

しかしながら、それらはすべて戦略設計業務やクリエイティブ業務といった個別の取り組みのことであり、
マーケティングはその上位概念にあります。

そのため、戦略やクリエイティブも非常に重要であり、その実現精度が事業を左右するのも確かではあるのですが、あくまでそれは個別業務です。
業務全体を俯瞰して進化させていくことが組織成果を大きく伸ばすのだということを理解しておくとよいと思います。

近年はいわゆる「戦略コンサル不要論」のような話もあるのですが、戦略だけを担うコンサルティングの価値が相対的に低下しているのは、こういった背景があります。
現代の事業においては、戦略だけではなく業務全体を進化させるソリューションが必要であり、だからこそアクセンチュアのようなソリューションを持っている会社のニーズが高まっているわけですね。
※コンサル業界に詳しいわけではないです

今回は実務をやってみないと中々わかりづらい概念もあったかもしれませんが、
この考え方こそが、働き方改革の流れの中で成果を出すための最重要な概念だと思っています。

ぜひとも個人としても意識しながら、業務と向き合ってみるのが良いと思います。

今回は以上です。

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