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NIMS材料de大回転コンテスト(2021)応募作品一覧

全動画を集めたプレイリストはこちら


NIMS材料de大回転コンテストとは

2021年4月、日本は未だパンデミックによる活動自粛の渦中にあった。三密回避とか、東京オリンピックやるとかやらないとか、ワクチン打つとか打たないとか、とにかく世の中が騒がしい。そんな中、物質材料研究機構(NIMS)が例年行っている「NIMS一般公開」も、早々にオンライン企画となってしまった。その中の一企画としてTwitter上で参加型企画として始まったのが「材料 de 大回転コンテスト」であった。これは簡単に言うと工夫して何かを回して動画を撮り、その面白さ(?)を競うコンテストであった。この時は筆者の出勤制限は厳しくはなかったが、ちょうどゴールデンウイークで特にどこにも行けないので、これは大人の夏休みだ、夏休みと言えば自由研究だ、とばかりに参加することにしたのだった。前年に参加した同様の企画「NIMSロゴコンテスト」では、最終選考には残ったものの最優秀賞を逃したので、今回こそはという気もあった(その時の投稿動画はこちら)。前回はたくさん動画を投稿しすぎたことも選ばれなかった要因では・・・と薄々感じていたので、今回は少数精鋭にして最優秀賞を狙いに行こうと思っていたのだが、思いついたのをどんどんやっていくと気づいたら結局12件も応募していた。例のごとくX(旧Twitter)がいつ終了するかわからないので、ここに動画と解説をまとめておく。

動画の作製

今回も、動画はすべてiPhoneで撮影してiMovieで編集するというスマホ完結型スタイルで作製した。ルールに従って、一つの動画は30秒程度で、できるだけ初めは工夫なしで回して、そのあと工夫して回した動画につなげるようにした。

10円玉回せ!

銅やアルミニウムは磁石にくっつかないが、「電磁誘導」という現象によって動いている磁石(磁場)で動かすことができる。 10円玉の真ん中に少し出っ張りをつけておいて、マグネチックスターラー(磁石のかくはん棒を回して溶液をかき混ぜるのに使う化学実験の必需品)の上に置くとコマのように回る。このままだと何がどうなっているかわからないので最後はマグネチックスターラーのガワを開けて中を見せている。何気なくつけた「ハンドパワーです」のキャプションに世代を感じる。

日本列島回せ!

物体を回すときに重要なのが重心で、重心を中心に回すと日本列島みたいないびつな形のものでも意外にちゃんと回すことができる。以前にこの記事を読んでいて覚えていたので参考にした。まずは息子にどこにつまようじを刺したらいいか予想して回してもらい、そのあと調べた重心付近に刺して回した。あとから見るとちゃんと回って筆者だけが興奮しているのがちょっと恥ずかしい。そのあと北海道、九州、四国も回した。

使ったそれぞれの島の重心。

ピンポン球回せ!

ドライヤーの気流にピンポン玉が固定されるのは「コアンダ効果」と呼ばれるもので、これにセロテープで羽根をつければ回るのかな、ということでやってみたらあっさり回った。回っているのがわかりやすいようにマジックで線を入れているのが工夫。ただテープの貼り方は安定してよく回るようにするために結構試行錯誤した。ちょっと上の方に斜めに貼るのがコツであった。よく音を聞くと、回っているのを見て感心して拍手したらお茶をこぼしてしまった風呂上がりの娘の声が入っている。

画用紙回せ!

これはいわゆる樟脳船が動く原理と似ていて、水以外の物質(この場合はエタノール)が染み出して周囲の表面張力を下げることで水平方向の力が生まれることを利用している。NIMS公式の動画でも石鹸(界面活性剤)を塗った木片を回していたが同じ原理だ。画用紙にロウを塗ることで、エタノールが染み出す方向を決めて回転運動にしている。染み出す方向と反対方向に力が発生して回るので、動画ではロウを塗るパターンを変えることで回る方向を変えている。画用紙を切り取る形やロウの塗り方などには研究の余地があり、子供たちと色々試してみたところ、最後の星形は結構速くきれいに回った。

風船ホバークラフト回せ!

風船ホバークラフトは定番の工作なので、これを何とかして回せばいいだろうと安易に考えたのだが、これが意外に苦労した。初めはDVDの下にらせん状の溝などを加工してみたのだが、それだと全く回らない。DVD全体が浮くために円盤の下で空気の動きを変えるのは難しいようだった。このアイデアはボツかと思い始めた時に、思いついてペットボトルの空気穴を回転力を生み出すようにプロペラ状に加工することで何とか回すことができた。

卵回せ!

生卵とゆで卵の見分けるために回してみるというのは有名なライフハックだ。生卵は中が液体なので回転が安定しないが、ゆで卵は固体なので普通に回る。しかしベイスタジアム(ベイブレードというおもちゃのコマの台)を使うことでゆで卵が安定して立ったままで、結構長時間回ったのは発見であった。

安全ピン回せ!

ラトルバックという玩具で、この場合時計回りには安定して回るが、反時計回りには回りづらく最後には時計回りになってしまう。動画の最後では単に揺らすだけでも時計回りに回る。角運動量の保存に反しているんじゃないかとか考えはじめるとなんか不思議な気分になる。下の部分の形状がミソらしく、完成品も市販されているが、100均の安全ピンと粘土で簡単に再現することができた。

使った材料

シャーペンの芯回せ!

シャーペンの芯の材料である黒鉛は反磁性で、磁場に反発する弱い力が働く。縫い針とセロハンテープでヤジロベーを作っておいて、ネオジム磁石をタイミングよく芯に近づけることで反発させて回している。そのほか水に浮かべるなどすれば弱い反磁性が観測できる。NIMSによるこちらの動画も参照。

ベイブレード手で回せ!

当時我が家で回せと言えばベイブレードだったのだが、単に回すだけだと工夫も何もないので、手で回すことを考えた。左回転のコマ(ガイストファブニル)が右回転のコマ(リバイブフェニックス)とぶつかって回転力を吸収して、単に手で回すときよりも長く回る。実はこれはベイブレードあるあるで、アニメ版にも手回しで相手に勝つ場面が出てくる。右回転のベイには左回転のベイを当てるのがセオリーなのだ。

磁気浮上で回せ!

円盤を重くしていって回転モーメントを大きくしていくと回転がなかなか止まらなくなるという、当たり前と言えば当たり前の実験。軸受けを永久磁石の反発にして摩擦を低減すれば長く回るのでは?と単純に考えたのだが、バランスが悪くなって軸との摩擦が大きくなったようで、ビー玉を入れても思ったより長くは回らなかった。単に回すだけならハンドスピナーとかベアリングを軸に使った方が断然よさそう。それでも重くするとだんだんと長く回るようになっていく様子は面白い。

磁気浮上で回せ!2

前からやってみたかった磁気浮上の実験。ネオジム磁石の上下を反磁性体のビスマスで挟んで、上から磁石で吊り上げる。段ボールで作った枠でうまく磁石間の距離を調節して、釣り合いが取れれば安定して浮く。最後のほうではストローで息を吹きかけて回しており、結構きれいに長く回る。実際にやる前は誤解していたのだが、ビスマスの反磁性は弱いので、あくまで上下にくっつかないために磁力のバランスをとるためだけに使っており、浮上自体は上にあるネオジム磁石の引力により起こる。だったらこれビスマスいらないんじゃないの?と思っていろいろ試したが、磁石の距離を変えると上にくっつくか下に落ちるかのどちらかになってしまい、やはり安定しては浮上しなかった。ビスマスはネットで1000円くらいで買える。ビスマスを溶かして立方体の結晶を作る実験もそのうちやってみようと思う。

球体回せ!

Hoberman sphereという構造体の玩具で、購入したものを使用した。スムーズに大きさが変わるのが面白い。これに糸をつけて引っ張ると縮むようにぶら下げて回している。小さくしたときに回転の速度が大きくなるのは角運動量の保存によるもので、フィギュアスケートの選手が広げていた手を縮めると回転が速くなるのと同じ原理だ。本当のところ、この構造体の大きなやつを自作しようとしてかなりの時間をかけたのだが、あまりにパーツが多く、また段ボールと割ピンいう素材のチョイスも良くなかったため強度や動きのスムーズさが足りず途中で断念したのが悔しい。これはいつかリベンジしたいと思う。

段ボールと割ピンで途中まで作ったHoberman sphere

結果

2021年5月23日(日)にオンライン生放送で行われたNIMS一般公開では、最終選考に「磁気浮上で回せ!」がエントリーし、一般投票の結果、見事に最優秀賞に選ばれた。だんだんと回転が長くなっていく様子が評価されたようで、大変嬉しかった。ネットの生放送にも電話で参加することができ、前年の心残りをすべて晴らすことができた。


いただいた賞品の数々

材料を使えば何でもありだった前年のロゴコンテストに比べて、今回は「回転」の原理がある程度限られることから、ほかの応募作(とNIMS公式で例として出していた動画)とのネタの被りが多くなってしまった。そのためアイデアだけでなく、見せ方の面白さが求められるなという印象で、それはそれで動画を作っていて大変楽しかった。このような楽しい参加型の企画を行ってくれたNIMS広報の方々に改めて深く感謝したい。
このように2年連続オンラインで参加したNIMS一般公開だが、2022年はつくば市民限定で現地開催、2023年は一般というよりは研究者(を志す人)向けのイベントへと変わり、ネット上参加型のコンテストは開催されなかった。実は手ぐすね引いて待っていたのでちょっと残念だった。もしまた開催されることがあればぜひ参加したい。とりあえずそれまでには3Dプリンターを導入したいと思う。

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