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2017/12 ドイツ留学中の女子三人へインタビュー。 「教育」「都市計画」「マーケティング」を、それぞれが語る。

 今回インタビューに応じていただいた、豊川季絵さん、長谷川沙希さん、高木吏花さんら三人とは、11月10日にフランス・リールで行われた、サッカー日本代表対ブラジル代表戦で行動を共にさせていただき、今回の企画を迎えることができた。
 豊川さんと長谷川さんは現在、筑波大学の大学院生でいらっしゃり、豊川さんは「都市計画」を、長谷川さんは「教育」を専門に研究や調査をし、高木さんは日本での大学を退学し、ドイツの大学入学を目標にドイツ語習得に励んでいる。
 彼女たちそれぞれが現在、そして今後歩んでいく専門分野について話を伺った。

二つ目にお届けするのは豊川希絵さんの「都市計画」について。豊川さんは筑波大学理工学群社会工学類を卒業し、現在はシステム情報工学研究科社会工学専攻に在籍している。幼い頃からサッカーをしており、十文字高等学校や筑波大学サッカー部に在籍していた。「都市計画」ひとつを取っても、様々に分類できるが、豊川さんはスタジアムやアリーナといった競技場を中心とした「都市計画」について研究と調査をされている。日本とドイツ、競技場を中心とした街作りはどの点で違いがあるのだろうか。

―豊川さんが専攻されている学部は、素人の自分から言うと専門的な分野にあたる。なぜ、筑波大学のその学部を選んだのでしょう?
「正直なことを言うと、大学へ入学する以前までは都市やスタジアムについては興味がなかったんです。自分の空間を作りたいというボヤッとしたものだけど、建築系に進みたい気持ちがあったんです。それに加えて、筑波大学ならサッカーもできるし、建築の受験資格も取れるから、そこへ入学したいという希望があって、推薦とかいろいろあったら受かっちゃった、いうのが正直なこと言うとあって。断る理由もないし、自分がやりたいと思ったことができるので、そのまま進んでいきました。そうしたら、いざ大学生活が始めると部活もあるから、一軒家のようなゴリゴリの建築よりも、都市計画という広い視野を持って展開する必修授業があって、それが建築よりも面白そうだなと思っていまも続けています」

―自分の空間となると、自分の部屋をデザインしたり、家具を置いたりとか、そういったことに興味があったということですか?
「お兄ちゃん二人いるって、話したじゃないですか。兄妹のなかで一番下だから、おさがりばかりだったんです。自分が好きなものを買って、それを使ってどうのこうのじゃなくて、もともとあるものをどう使うか、なのである程度決まった状態にあって、それが嫌だった。こうしたいとかあったけど、新しいものを買うことも高校生のときはできなかったし、今あるものを捨てる訳にはいかない。自分の部屋なりを、自分でデザインしたり作ったりすることができなかったので、高校生のときからモヤッと今やっていることへの動機がありました」

―大学四年間では、どういったことを勉強されていたのですか?
「二~三年生の時から都市計画を専攻で学んで、四年生になると研究室に配属されます。自分は国際的な研究室に入って、それと言うのも、おおざっぱに言えば世界に興味があった。留学もしたかったですし。四年生になってからは、修了に向けての研究をし続けてきました」

―大学生になれば休学して一年間バックパッカーしたりする学生もいるけど、独自の行動はされたのですか?
「大学一回生のサッカー部のオフシーズンに暇だからバイトしようと思って、その前にキッズリーダーの指導資格の講習会に行って、その時の講師の方が鹿島アントラーズの方でした。「指導をやりたかったら連絡ください」と名刺をもらって、サッカー指導にも興味があったので、その方のもとでアシスタントコーチとしてアルバイトをしました。それを始めたキッカケで、そのバイトの仲間たちと鹿島アントラーズの試合を観るようになって、ガチで応援するようになった。それがキッカケでスタジアムに興味を持ち始めて、アウェーゲームにも行ったりしました」

―卒論は何をテーマに研究されたのですか?
「旧国立競技場の歴史をたどって、その建設に携わった一人に注目しました。スタンドの下に会議室などのホスピタリティを設けたのは、当時の日本のスタジアムでいえば最先端なんです。その機能を設けられたのは設計者が海外に視察して、その必要性に気づいたということです」

―ドイツへ留学した理由はなぜでしょうか?
「日本サッカー界がドイツを見本にしている部分はスタジアムをはじめ、そうあるので、ドイツのスタジアムを調査対象として修論を書いてみたいというのがあって、ドイツを選びました」

―豊川さんのなかで、魅力のあるスタジアムはあるのですか?
「この前、カンプノウに行ったんです。ゴール裏の三階で見ました。魅力をどう定義するかは人それぞれですけど、これが世界で魅力的なスタジアムなんだと思いました」

―事前に話を伺ったときに、研究対象としてStadion Essenを選んでいると聞きましたが、その理由は何ですか?
「Fortüna Düsseldorfの瀬田元吾さんとお話しする機会を頂きました。瀬田さんから『君は何を研究したいの?』と聞かれて、その時点では何も決まっていなかったんです。そう答えると、『それだと、こっちも何を話したらいいのか分からない』と。でも、『都市とスタジアムの繋がりについてやりたい』と伝えたら、『それだったらStadion Essenがおもしろいと思う』と答えてくれました。Stadion Essenは最近(2012/8/12オープン)できたばかりで、そこを本拠地としているRot Weiss Essenもいまは四部(Regionalliga)で強くない。それなのに『新しく作ったのはなぜか。そこを僕は知りたい』と。いま、東京五輪ということもあって、新しい競技場の建設ラッシュが進む中で、『新しいスタジアムを作るうえでの過程と、作ったことによるポジティブな面、ネガティブな面を日本に持ち帰ったときに何かが見えてくるものがあるんじゃないかな。僕はそれを知りたい』と言われて、『確かに』と。Stadion EssenはSGS Essen(Allianz Frauen Bundesliga所属)という女子チームも本拠地として使用しているので、サッカーをやってきた自分にとって大きい意味があると思う。男子と女子とでチーム比較もできるし、スタジアム活用方法について言えば、スポーツ活用だけでなくコンサート活用についての意見も聞けたらおもしろい。日本でも、スポーツ活用だけでは難しいということは考えられているから、Stadion Essenを研究対象にするのは自分にとってプラスなのかなぁと思って、いまやっています」

―RW Essenのここ最近のホームゲーム観客動員数のほとんどは、一万人を下回っている。現在のキャパシティが20,650だから、稼働率でいえば50%を切っている。
「それについても瀬田さんが言及していたことがあって、『まずRW Essenは箱を作った。先にチームを強化して、もし昇格して観客動員が増えたら、小さいままのスタジアムだと入りきらない。オフシーズンがあるとしても、その間に工期が完了するわけではないから、シーズン中にスタンドの拡張工事をすると、今度はその部分が使えなくなって観客が充分に収容できない。それはマイナスになる。だったら、先に箱を作って整えてしまえば、あとはチームを整えるだけ。それが成功例になるかはこれからだけど、これからお金を費やすところはチームの部分になる。それが成功すれば観客動員増に繋がるかもしれない。ソフトを先にするのではなく、ハード面をさきに整えたEssenの新しい試みは、実はMSV Duisburg(2.Bundesliga)とAlemannia Aachen(Regionalliga)がそれで失敗している。どっちに転ぶかはEssen次第で、その部分をチームや行政側から聞き出せたらおもしろいよね』という話をしました」
注釈:
Rot Weiss Essenの本拠地「Stadion Essen」20,650人収容。今季前期のホームゲーム10試合平均観客動員は約7018人。


MSV Duisburgの本拠地「MSV-Arena」31,514人収容。今季前期のホームゲーム7試合平均観客動員は約16,173人。


Alemannia Aachen の本拠地「New Tivoli」は32,960人収容。今季前期のホームゲーム7試合平均観客動員は約6585人。

―この試みが、日本のロールモデルにも繋がる、ということでしょうか?
「RW Essenが成功すれば、日本でいま建設が進んでいる箱にチームを入れたら、それもまた日本のモデルになるかもしれない。時間が足りないので調査しきれないので、いまは何とも言えないです」

―ただ、四部レベルで総工費64mil.€の新しい箱を作って、またさらに拡張工事を予定している(35,000人収容の見込み)。Jリーグクラブとしたら、羨ましい限りだと思う。


「それは日本とドイツのサッカーに対する差だと思います。国のなかで捉えられているサッカーの重要性や文化であるとか。そういったことになると思います」

―日本の事情のひとつとして、需要が見込めるのか?という懸念があるのだと思う。立地条件にしても、好都合なところは限られている。
「日本の場合はそもそも良い場所がないと思います。どの部分を重視して、どこを捨てるかというのは、クラブの方針なのかなと。どこを目指して、どういう人に見てほしい、そういった部分で変わってくると思います」

―「都市計画」となると、広い定義でいえば「マネージメント」といえて、これから東京五輪開催にむけて作られている施設を、五輪後どのようにしていくかに繋がる。アリーナに目を向けると、B.LEAGUEがいま盛り上がっていて、バレーボールがプロ化にむけて動き出している。東京五輪ということもあってお金が動く、引っ張れる時期だから、何か思惑的なものを感じずにいられない。先を見越しているのか、という懸念がそこで浮上してくる。
「それは一番、問題視されている部分です。アリーナでいえば、B.LEAGEのほかにF.LEAGUEもあるので、その二つがアリーナを使う競技でいえはトップレベルで、優先的なことがある。プロリーグ化については、バレーボールに加えて卓球も動いていますよね。日本って、いままでは選手や一般利用者、といえる?)のための施設で、観客のために施設を作ってこなかった。プロリーグ化を目指している競技に対して、それに見合った施設は現状では少ないです。いま、新しく施設を作っていますが、それが正解なのかな?とは正直あります。いまあるものを改修する手段もあるし、それ以上、増やす必要はあるのか? 作りすぎて結局、無駄でしたというリスクはあると思います。サッカースタジアムしか見れていないけど、日本は考えている部分が浅いのかなと、ここにきてそう思います」

―欧米ではスポーツが日本よりも定着しているから、それがベースとなって観客動員などの要素も含めて計算や見通しがあるのだと思う。日本の場合、それが逆なのだといえる。
「今まではやっぱり、W杯や五輪のような大きな大会だけの競技場を作ってきていたので、一般利用のためのものとして考えられていない部分があります」

―豊川さんが現場で働いていくタイミングは、そういった施設ができあがっていくタイミングになるよね?
「一番は、できる前の段階からできた後まで携わりたいです。それは責任に繋がるので、管理・マネージメントをしていきたいです。最終的には、スタジアムを中心に街が大きくなるように作っていければと思いますけど、日本でそれがやるならまだまだ先になると思う。まずは、どうやってスタジアムに人を呼ぶか、ということになるのかなと、いまは思います」

―豊川さんの場合はサッカーをしてきたから、競技の魅力も絡めて伝えることができると思う。
「そうですね。コンサートも好きだから、ひとつの場所、ひとつのイベントに大勢の人びとが集まって、ひとつのものを共感共有する場所を作ることって、すごいことだと最近思っていて。そういうことを、どういうふうに提供したら興奮、感動を感じられるのかなとも思います」

―ここドイツで、何を得たいですか?
「正直、そもそも国が違うから、そこに触れたら終わりだと思うんです。考え方が違うから。じゃあ、それを除いてどの部分で比較できるかとなったら、イベントに対してどういう提供方法があるか、スタジアムの構成であったり、機能の違いになる。サッカースタジアムしか行けていないですけど、調べていければと思っています」

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keisuke-imachi

Ayrton Senna, Football, Sports Journalism. 2017.8~2018.7 in Germany. ドイツに居た頃の取材活動と、これからのことを記していきます。
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