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2017/12 ドイツ留学中の女子三人へインタビュー。 「教育」「都市計画」「マーケティング」を、それぞれが語る。

 今回インタビューに応じていただいた、豊川季絵さん、長谷川沙希さん、高木吏花さんたち三人とは、11月10日にフランス・リールで行われた、サッカー日本代表対ブラジル代表戦で行動を共にさせていただき、今回の企画を迎えることができた。
 豊川さんと長谷川さんは現在、筑波大学の大学院生でいらっしゃり、豊川さんは「都市計画」を、長谷川さんは「教育」を専門に研究や調査をし、高木さんは日本での大学を退学し、ドイツの大学入学を目標にドイツ語習得に励んでいる。
 彼女たちそれぞれが現在、そして今後歩んでいく専門分野について話を伺った。

 最後にお届けするのは高木吏花さん。彼女は、普段できない活動を日本で経験していた。長谷川さんや豊川さんのように競技スポーツの経験はなく、だからこそ独自の観点から発せられる言葉には深く頷かされた。それには、ひとつの背景がある。そこから彼女に語ってもらった。

―留学先をここドイツに選んだ理由は何でしょう?
「中学生のときにサッカー日本代表の選手を好きになって、ドイツで活躍していた日本人選手が多いこともあって、そのときから自分のなかにドイツへの意識が入っていって、進路どうしようかなと考えて、『そうだ、ドイツで大学生しよう』と決めました。もうひとつ言えば、高校一年生からバイトでお金を貯めて、高校二年生の夏に一か月ドイツに行ったんです。そのときに通った語学学校で、仲良くなったイスラエルの女の子の母親が戦争で亡くなって、悲しんでいることや性格が変わったところを見て、大きいことだけど世界の平和について勉強したいと思ったんです。世界平和の勉強以外にもやりたいことを考えながらドイツ留学について計画して、いまに至ります」

―サッカーをどんな視点で観戦し、楽しんでいるのですか?
「はじめてサッカーに関心を持ったのは、東日本大震災直後に行われた(2011/3/29大阪・長居スタジアムでの)チャリティマッチをテレビで見てからです。というのも、私は福島出身で震災の避難からバラバラになったり、大人も今後についての意見が分かれたりと混乱していた。その一年後、仙台で行われたチャリティマッチを観に行ったときに、スタジアムにいるみんなが同じ気持ちになって一つになれることに『良いなぁ、サッカー良いなぁ』と思って。また明日頑張ろうって思える力がスポーツにあるんじゃないかなと思いました。音楽にも興味があるけど、いまはスポーツについてやりたいなと思っているところです」

―いまは観客という視点だけれど、仕事となるとどこかに所属することになる。その部分で、こだわりはあるのですか?
「特にこだわりはないです。皆の心のなかにホッコリする瞬間を大切にできる人になりたいです。それだったらサッカーじゃなくてもいいし、音楽だっていい。人の心の豊かさをどう保っていくかに興味があるから、こだわりはないです」

―リールで話してくれたことを改めて聞かせてください。まず、大学一回生の夏にFC今治のインターンに行ったことの話をお願いします。
「高校生のころから、大学に入学したらサッカーに関することをやりたいから、インターンしようと決めていました。いろいろ調べていたら、FC今治にたどり着きました。FC今治の企業理念に『物の豊かさよりも、心の豊かさを大切に』とあって、『私がやりたいのはこういうことかな』と思って、行動することにしました。FC今治へのインターンは一度断られたんですけど、菅良二今治市長や岡田武史さんが委員会会長を務めておられる『バリチャレンジユニバーシティ2016』というインキュベーションプログラムに応募して、『それに行く予定なのでインターンさせてください』と再び連絡してOKを頂きました。その時点では、プログラムに参加できるかは未定だったんですけど、無事に合格して今治市に行くことができました。最初の一週間、午前はゲストハウスのアルバイトをして、午後はFC今治の練習や試合のあと片付けをさせてもらっていただけだったんです。それだけだと、全然踏み込んでいけてない、せっかく今治に来ているのに純粋に勿体ないことをしていると思って、何かできることないかなと考えて、『FC今治に足りないことは、この三つです』とプレゼンしたんです。そのうちの二つは一か月の間ではできないと返ってきました。でも、もう一つのことは提案する以前にできることで、それは今治市民の方々にクラブの印象を聞く、街に何を求めているか、週末の試合を広報することを毎日していました。市民の方々とクラブをどう繋げるかを知りたくて今治に来たから、その活動をしました。その活動をし続けてインターンが終了してお別れの時になったら、コーチや選手、フロントスタッフの方々が色紙にメッセージを書いてくれて頂いたり、回らないお寿司屋さんでごちそうになったり(笑)。自分がやったことに対して、感謝してもらえることが嬉しかったです。FC今治で思ったことと学んだことは、まず決断力がある人になりたい。そして、自分がどういう現状であるかよりも、その場で自分は何をするのかが、重要なのだということです」

―ドイツ留学直前の春に、ある選挙候補者のお手伝いをされていたこともお願いします。
「高校生のとき、福島で活動していたときにお世話になった方が横須賀で選挙に出ることになって、人手が足りない事情もあって一か月お手伝いすることになりました。その候補者の方は仕事もできてすごく良い人で、人をしっかり見てくれて、その人の立場に立って話してくれる人でした。高校生のとき、周りから少し変わった人として見られていたこともあったんです。LGBTについて考えていたことがあって、ちょっとした行動もしていました。男子の制服で登校して、皆の中にある当たり前がどれだけ当たり前じゃないのかということを知りたかった。別にそれを着ていても変態じゃないし、性的にも大丈夫だし、好きな人に好きって言えなかったり、自分が好きな服が着れないことはおかしいと思っていた。制服はなくすべきだ、と校長室に行って校長先生に訴えました。そんな、周りの人から見たら変わったところがあると思われる私でも、その人に会って、その人から『応援しているよ』と声を掛けてくれて、こんな私を個性として受け入れてくれて、それを引きだしてくれた人です。私が関わった時期は、選挙カーに乗ったり、駅前で演説するような選挙活動の時期ではなく、その活動の前のベースにあたる、地域の方々に挨拶して回ったり、チラシを配ったり、どんなことに困っているのかを聞いて回りました」

―現在は語学学校に通われていますが、どんな仕事に就きたいのでしょうか?
「全然決まっていないです。ドイツに来て、サッカーについて勉強したいと思っていますけど、それすら危ういかなと。今年はドイツ語習得に集中しています。大学は、ケルン大学かボーフム大学で迷っていますけど、ケルンに行きたい気持ちがあります。ケルンは大都市で人口が多いから、おもしろい人もいるだろうし、会社も多いと思う。どんな業種でもいいんです。どんな人と仕事をするかが大事だから、その時おもしろいと思った人とやりたいです」

―スポーツマーケティングという仕事に、どんなことを想像しますか。
「私が思うに、スポーツマーケティングの難しいところは、大きな矛盾があるところだと思います。私としては、どっちのチームが勝ってもいいんです。選手が全力でプレーして、サポーターの人たちが勇気をもらえたり、明日頑張ろうって思える、その仕組みに魅力を感じているから、そこを大事にしていきたい。勝つためのサッカーはどうでもいいし、お金のためのサッカーはしたくないんです。放映権料が上がったりすると、それぞれの視聴者が払う料金も上がったりするし、チケット代が高騰して、試合を見れなくなる人が出てくるかもしれない。そうなると、マーケティング的に売り上げは上がらないんです。お金が大事というクラブに入っちゃうと、私が作りたい世界感は作れない。お金じゃなくて大事なことがほかにあるという、価値観をもっているクラブでないと働けないと思います。お金を取るか、繋がりを取るか、まだそこに矛盾があるから、その価値観をどう変えていくかが大事だと思っていて、だったらその価値観を変える分野で働きたいとも思っています」

―90年代からオリンピックは商業化に変化し、サッカーも今や世界で一番お金が動くスポーツでもある。クラブ側とすれば、勝率を上げたいからギャランティーな選手を獲得するなどの投資をする必要があって、そこでお金稼ぎに方針が傾くケースも出てくる。ただ、極論をいえばお金を稼ぐことは悪いことではない。どの部分で、折り合いをつけると考えている?
「自分自身に欲がないから、かもしれません。もちろん、お金がないことで我慢しなきゃいけないのは嫌なので、そうならない程の収入は得たい。でも、サッカー選手って年に何億も貰っていて、本当はそんなに必要ないじゃないですか。それを寄付などで還元している選手もいるけど。私はよく分からないけど、ある選手がお金の方が大事だから移籍するのは良く分からなくて、自分がしたいサッカーとか、生きやすいビジョンとか、理念を持ってるクラブに移籍すればいいんじゃないかなと思っています。答えになっています?」
―高木さんの答えを聞きながら、浮かんでくる背景があって、子供のころはお金といった縛りがない純粋なもので、それが大人になるにつれて縛りが出てきて、それに疲れたり、プロだからそれに徹する選手も出てくる。高木さんはこれからの段階だから、いろんな人と出会ったり、経験したりしてそういったことが形成されていくのだと思う。
「いまのサッカーは、サッカークラブを作ろう、みたいなゲームをしているみたいなんです。選手を獲得して、試合に勝って、お金が入って、また選手を獲得して、クラブは強くなりました、みたいな。その先に何もないじゃないですか。強くなったところで、選手はコマでしかないし、選手にだって感情があって、それぞれに頑張ってきた背景があって、それぞれに向かい合っていないクラブに何の価値もないと思います。もし、私の地元クラブのフロントがそんなマネージメントをしているのなら、勝利に何の価値もないというか・・、チームが一丸となって、どんなサッカーをしたいかと思っていて、それを大切にしたクラブ作りをしないと、地元の人に失礼だと思うんです」

―この世の中のどの部分においても、競争が存在する。競争について思うことは。
「競争することは特に考えていなくて、三十年後ぐらいにはモノは満たされている世の中だから、競争している人は落ちていくと思います。というか、自分を見つめられない人は、いい表現が見つからないけど、落ちていくと思います。確かに、あの人に負けて悔しい、だから頑張ろうと思ったことはあるけど、そればかりではないじゃないですか。誰と競ってきたじゃなくて、自分自身がどう戦ったかが大事だと思っていて、成功体験が大事だと思います。そのことの方が、心に強く残ると思うから。周りと戦う必要はないと思います。目の前の人とどう向き合うか。肩書などを除いて、目の前の人とどう向きあうか、何を求めているのかを感じ取って、その人が喜ぶことができる純粋に優しい人が増えていったら、人と人との繋がりが増える、太くなるんじゃないかなと思います」

―高木さんはFC今治の理念に共感してインターンを経験したり、選挙活動のお手伝いをしたりと、アイデンティティーがある人と触れ合って、高木さん自身にもそれが備わっていると、これまで話してくれたことを通じて、そう感じます。
「政治家も自分が偉くなりたいとか、有名になりたいから政治家になったとか、そんな人もたまに見ればいるんです。どんなに小さな市議会議員でも、地元を愛して地域のために活動がしたいんだという人は、見ればわかるじゃないですか。有名になりたいとか、そんな政治は好きじゃないというか。でも、ちょっと頑固と言われることはあります。頑固なつもりはないですけど、コミュニティの当たり前が自分の当たり前になると思うんですけど、それを取り除いて物事を見れる人になりたいと思います。『原発廃止にしよう』にも、『するべきだ』という皆の頭のなかにあって、廃止にした方が良いかどうか、そのための知識を皆が持っているわけではないんだなぁと思っています。『こうするべきだ』という、そのコミュニティにある当たり前を取り除いて、自分がどうすべきか考えられる人は強いのかなと思っています。そこで社会の捻じれが起きていて、それを取り除ける人になりたいです。高校生のときのLGBTについての行動も、それに繋がります。当たり前を取った時に、どんな社会が残るのかをしっかり見れる人になりたいです」

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keisuke-imachi

Ayrton Senna, Football, Sports Journalism. 2017.8~2018.7 in Germany. ドイツに居た頃の取材活動と、これからのことを記していきます。

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