見出し画像

ハイパーコネクティッドな世界で

社会のサステナビリティに多様な立場で関わる仲間と、毎年恒例の清里合宿に行ってきた。今年はオンラインとオフラインのハイブリッド開催。僕は清里現地で参加だったけど、赤ちゃんをあやしたり、子供の受験の送り迎えをしながらのオンラインでの参加の人もいて。お互いへの暖かい配慮に溢れる素敵な時間だった。振り返りのnoteです。

つながるとは、何か?

「もっと目の前の世界と、よく繋がれないだろうか?」

仕事で、プライベートの団欒の場で、いつもこの問いが頭を巡っている。

合宿中、ある人が言った。「まず、何か問題があった時に、自分のものと引き受ける。引き受けた上で、それが起こるべくして起きたと見つめる」その言葉をもらった時に、僕はこう質問をした。「引き受けることが出来たとして、それでも現実は変わらないという諦めと、起こるべくして起きたという感情の違いはなんでしょうか?」相手はこのように返してくれた。「僕も以前ね、ある人にこのように言われたことがあるんです。"自分の影響力を自覚せず、現実への諦めとともに、そこに居たほうが楽ですよね"と」

繋がることで、より孤独が深まることもある。自分の考えを強化する情報にばかり触れる副作用もある。このような時、繋がりがレジリエンスを弱める。一方、よい繋がりは、自分の外で起きている世界を自分のこととして引き受け、ともに良さを探索するエネルギーが巡る。

テクノロジーがもたらすもの

ZOOMやslackで、僕たちはいつでも繋がれるようになった。僕もその恩恵を受け、東川町からリモートで働いている。しかし、デジタルで繋がりたい時に繋がれるようになった世界は、合目的的な判断を無意識のうちに強化する。自分の判断で簡単に繋がりを断ち切れるため(「すいません、回線が悪くて落ちてました!」)、思考の流れに一定の癖がつく。流れる情報に認知が追いつかず、受動的に情報を浴び続ける。既にSNSがもたらしたように。

今日も社会のどこかで、繋がりすぎた世の中で孤独を感じ、楽な情報処理を学習した果てに、永遠とスマホでゲームをしている人がいる。既に現実として起きていることだろう。

心の中の3つの箱

合宿中、心の中に3つの箱が浮かび上がるような感覚を持つことがあった。真ん中と、右側と、左側。そこに何かが投げ込まれると、コロコロと音をさせながら体を巡り、自分に響かせる。3つか。振り返ると、これまでは箱は一つだったかな。新しい箱の場所はこれまでより少し高い位置。

仮に、その3つの箱に、「人の営み」「自然」「テクノジー」と名前をつけてみた。敬愛するティム・インゴルドが著書「メイキング」で語っていたことを思い出しながら。

僕たちは、自然にあるモノ(素材、風の流れ、木のささやき、自然にあるモノ全て)をインプットにし、テクノロジーを活用することで、営みを豊かにしてきた。ただこれは単線で繋がれた一方通行の活動ではない。それ自体が開かれた存在である、自然にあるモノとの運動のさなかで思考する。それは快感を伴うものだ。

「人の営み」「自然」「テクノジー」

「自然と人が出会うために、スノーボードをデザインしている」東川町もフィールドにしているスノーボードブランドのデザインコンセプトを読んだ時の衝撃ったら。今年は、一歩でも二歩でも近づきたいと思う。

合宿中に描いた絵

2022年の願い

トランジションには4つのパターンがあるそうだ。

①「代替」100年単位での新たなシステムへの移り変わる
②「変形」外の世界からのプレッシャーを受けながら、人々が学習しながら形を変える
③「再構成」色々な技術・サービスを少しずつ取り入れながら変化
④「破壊と再生」既存システムが一度ゼロになり、そこから再生される

Geels, F.W. and Schot, J.W., 2007. Typology of sociotechnical transition pathways, Research Policy, 36(3), 399-417

現実には、これら4つの濃淡を織り交ぜながら、変化をしていく。変化の担い手は、自分らしい介入に自覚的になるとともに、必要に応じて別の介入の仕方(システムの中で繋がりを強化したり、未接続のもを繋いだりする方法)を探索できるといいかもしれない。

2022年も、変化と学習の流れを作る一人として、5つのことをテーマに掲げた。

1.「人の営み」「自然」「テクノロジー」のよい出会いと繋がりの実験

僕が住む東川町は、雄大な自然を前にし、よい人の営みとは何か?を常に問いかけてくれる。この大好きな町から、今年はプロジェクトを世に問うていこうと思う。

今年の前半には、テクノロジーと地域が、よりよく出会うラボを開設する予定だ。僕が籍を置いているNESソリューションイノベータが持つ、テクノロジーをリソースに、実験的なショーケースを作る。

2.「住む」営みにまつわるシステムの再構成

今年は、東川に家を建てる。家を建てる中で、違和感やシステムの歪みに気がつくことが多い。今年は「住む」にまつわるステークホルダーとともに、システムの再構成に向けた実験をしていく。「家づくり」の生態系を体で感じ、学んだことから意思決定するようなプログラムも実施したいな。

3.方法を編む

「人の営み」「自然」「テクノロジー」のよい繋がりを探索するなら、そこにはデリバリーの難易度が高いプロジェクトが生まれるだろう。生命のエネルギーをほとばしらせながら、関係者で良さを探索し、知を豊かにめぐらせ、組織化する方法論としての組織学習を深めたい。MIMIGURIの仲間と実践と研究に取り組みながら、今年は何かの形でアウトプットもしていこうと思う。

4.外の世界への小さな働きかけを意図的に増やす

自分の外の世界で出来事が起きて、心がざわついた時、そのざわつきを"おさめる"ような力の使い方をする習慣がある。「どうすればざわつかないか?」という問いは、どこか閉鎖的な"ざわつかないような状況づくり"を強化する。本来、自分と外の世界は相互に関わるのだから、ざわつかないように閉鎖的になるのではなく、自分で小さく働きかけながら、外の世界とよく繋がっていきたい。

5.世界との関わり

「遠又くんみたいに、感受性の豊かな人が、もっと世界と繋がって欲しいと思っているんだよね。今、世界に出ている日本人の99%が、当然素晴らしい人もいるけど、グローバル資本市場のゲームで戦っている人だと思っていて」20代の頃出会ってから、ずっとお世話になっている方が届けてくれた言葉。

「大学生活最後に」と両親がニューヨークに留学させてくれてからか、意識の中にいつも世界はあって。合宿中夢の中で、暖かく燃えるインドネシアのジャングルとも出会った。会いに行けたらな。


僕自身、清里合宿に参加するようになり5年目、今年は今までより少し、清里に集う大好きメンバーとよりよく出会えたような感覚も残った。

2022年もよい年になりますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?