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「おかえりなさい」と言えるその日まで(3月10日『NCT 127 3RD TOUR 'NEO CITY : JAPAN - THE UNITY'』雑感)

3月10日にNCT127の『NCT 127 3RD TOUR 'NEO CITY : JAPAN - THE UNITY'』を東京ドームに観てきました。文章に書こうと思って観ていたわけではないので、ディテールはほとんど覚えてません。ただあまりにも素晴らしい内容で、NCT127としても一つの区切りとなる公演だと思ったので、雑記として簡単な記録を残します。

自分の席は一塁側で、センステはしっかり見えるけど、顔面を判別できるほど近くもない。実物のパフォーマンスを見たいけど、ディテールは大型モニターじゃないとわからない。今回はメイン、センター、花道とステージ全体に大きく使って、あちらこちらでいろんなケミを爆誕させているようなライブでした。あっちでユテ、こっちでマクドン、一塁側にジャニとジョンウが歩いてきた、ああドヨンとジェヒョンが歌ってる……とかアワアワしてたら、「Chain」のヘチャンとか、「Cherry Bomb」の倒れ込みダンス(言い方間違ってたらすいません)を見逃してしまって、「あぁ~(後悔)」となってました。

『THE UNITY』はとにもかくにも神セトリ。パフォーマンスも自分が観た範囲で過去最高。ハイセンスな衣装も、品の良い演出も完璧でした。でも一番はメンバー全員のパフォーマンスがめちゃくちゃパワフルだったこと。ほんと全員主役。「Skyscraper」「Parade」(この2曲マジ好きなんですよ)みたいなラップパートではテヨンとマークだけじゃなくて、歌えるジャニとジェヒョンも超イケてるラップをしてて、そこに悠太、ドヨン、ジョンウ、へチャンという歌チームがうっすらとメロディーを乗せてきて、しれっと美しいハーモニーも作ってる、みたいな。イリチルはやっぱオシャレすぎる。こういうとこが好きやねん。

しかもメインステージでシンプルに歌うバラードパートもシックで良かったんですよね。曲は「Gold Dust」(シズニのスマホライト感動的だったよね)「Fly Away With Me」(名曲だよね)「White Lie」(泣いたよね)「Love is a beauty」(この曲は特にテイル様にいてほしかったよね)。バラードにありがちな退屈さはゼロ。演出やダンスで魅了することもできるけど、しっかり聴かせることもできちゃう。シンプルに全員が超歌ウマっていうのもあるんだけど、ヴォーカルのメロディーの中にもグルーヴがあるような気がした。だからただ聴き入るだけじゃなくて、メンバーが表現する感情に浸りながら踊れるっていうのかな。いわゆるアメリカ的なR&Bのソウルフルとも違う、SMの歌の遺伝子を完全にアップデートさせたイリチルのグルーヴ。このパートに限ったわけじゃないけど、ジャニ、悠太、ジェヒョン、ジョンウ、へチャンのオールラウンダーっぷりがとんでもないと思った。

あんま言及できてないんだけど、マークは最初から最後までめちゃくちゃすごかった。僕はラップが好きだからマークのラップの何がすごいのかを考えながら聴いてたけど、マークはラップのリズムが単調にならないように、声のトーンを変えたり、強弱をつけたり、アクセントを入れたり、っていうのをものすごく細かいレベルで常にやってた。しかもリズムに対してピッタリのタイミングでラップしてることが多いから、あんまトリッキーに聴こえないというか、目立たないんですよ。でもそこにめちゃくちゃ細かいスキルが散りばめられてて、改めてこの人はとんでもないと思いました。イリチルのグルーヴの屋台骨はマークのラップなのかも。

あとはなんといっても「英雄」からの展開だよね。このへんからずっと泣いてたんでよく覚えてないんです。「2 Baddies」はずっと頭振ってて、「Fact Check」のサビ前の「アーッ!」って叫びがとんでもなかったのは覚えてます。ほんと「これで本編終わり?」っていうくらいあっという間でした。実際は25曲もやってたんですけど。

『NCT NATION』以降の現象だと思うけど、とにかく掛け声がすごかった。例えるならヨーロッパや南米のサッカー観戦に近い(行ったことないけど)。しかもゴール裏(行ったことないけど)。全員が一体になって飛び跳ねてチャントを歌い続ける感じ。自分が行った公演でもシズニの声がすごすぎて、アゲ曲では音がよく聴こえなかった。でもそれが気持ちいい。一体となった掛け声の中にいると「シズニであること」を実感できるんですよ。包まれてる安心感と高揚感。ポジティブなエネルギーが場内で大きなうねりを作ってました。

※自分がイメージするサッカーのチャント

そういえば今回初めて「Simon Says」を生で観られました。イリチルの中でも屈指の好きな曲だから超嬉しかった。「やっと」って感じ。イリチルってK-POPの中でいちばんエッジィでアートなダンスポップをやってるグループだと思う。難解な楽曲やコンセプトを完全に自分のものにして、しかもお客さんにエンタメとしてアウトプットして、さらに完全に納得させちゃってるのがヤバい。普通に考えて「Simon Says」はありえないレベルでアヴァンギャルドだと思う。なのにあのイントロが流れた途端、観客みんなが「心から待ってました」とばかりの大歓声が上がってた。あんな狂った曲でブチ上がってる状況を作ってるのがカッコよすぎた。

さっきもちょっと触れたけど今回は衣装がめちゃカッコよくて、うろ覚えなんだけど、赤衣装の時、ジョンウのパンツの腰回りがちょっとボンテージパンツみたいなディテールだったような。退廃的な演劇のような「Tasty」にもぴったりだったなあ。あと最近Primal Screamのボビー・ギレスピーの自伝を読んでた影響もあって、Siouxsie And The Bansheesみたいな80年代のニューロマンティックを思い出してたし、やっぱ自分的には中学生の時、最初にBUCK-TICKを好きになったのが今に繋がってると勝手に思ってました。自分的ハイライトだったのは「Favorite(Vampire)」かな。この曲は僕の好きなドヨンの雰囲気が爆裂してると思う。勝手に現代のニューロマだと思ってる。ああいうの大好きなんですよ。あとあやふやなんだけど、確か最後のサビ前に赤い紙吹雪が舞う中、ヘチャンがバレエダンサーのようにジャンプしてて「超Favoriteしてるじゃん」と思って感動しました。

BUCK-TICK - Just One More Kiss

Siouxsie And The Banshees - Spellbound (Official Music Video)

MCでは初めて見るようなメンバーの表情をたくさん見ました。自分にとってイリチルはステージのイメージが強いので、ジェヒョンはクールなカリスマだと思ってたけど実はめっちゃ人間臭い人で、最後の曲を歌うと公演が終わってしまうから、わざとMCを長く喋ったりしてて。あの“カッコいいジェヒョン”はセルフプロデュースと努力の賜物だったんだな、と思ったり。

セルフプロデュースといえば、ジャニはさらに磨きがかかってた。さらにジョンウも垢抜けた(偉そうですいません)。ステージでより自分の魅力を表現できるようになってたと思う。もともと超かっこいい人たちが、さらにかっこよくなった感じ。立ち振る舞いに自信を感じた。2人がいるだけでステージにファッショナブルな雰囲気が出るようになった気がする。

あとメンバーが事前に撮った個別コメントをステージで観るシーンがあったんだけど、ずっと泣くのを我慢してたテヨンが悠太の映像の時に堪えきれなくなったのを見た時はみんなも泣いたよね。ほんと改めてイリチルに悠太がいることってすごい。K-POPのグループに日本人がいるって今では当たり前だけど、イリチルがデビューした2016年の段階ではめちゃくちゃレアだった。しかもSMっていうデカい事務所で。

言葉が通じない異国文化の中に10代で1人飛び込んで、ドームツアーできるレベルのグループに身を置き続けてるってとてつもないことだと思う。しかも前例がほぼないわけだし。あと当時は今ほど日韓関係が良くなかった。そういうことも含めて、悠太が同い年のテヨンと友情を育んだことは、歴史の教科書には載らないけどほんとに重要なことだと思う。イリチルのみんなが当たり前に日本語でMCしてくれるのも、まちがいなく悠太の存在がデカい。

最後に、テヨンはさっき言った「K-POPでいちばんエッジィでアートなダンスポップをやってるグループ」としてのイリチルを存在で体現してる人だと思う。真ん中にテヨンがいるからこその説得力がある。少なくとも僕はそういう印象でずっとテヨンを観てた。デヴィッド・ボウイや櫻井敦のような、ザ・フロントマン。でも今回のMCではずっとストレスがあったと話してた。そりゃそうだ。彼はイリチルだけじゃなく、NCT全体のリーダーでもあった。デビュー以来、SMの顔として最前線で活動してきたのだから。でもイリチルは8年の活動を経て、特定の誰かじゃなく、全員が主役の最強のグループになったと思う。3月10日の『THE UNITY』でそれを証明してみせた。だからこれからもイリチルの活動が楽しみ。スタイリッシュなままいろんな形で活動してくれるだろうと思う。

もちろんテヨンがいなくなる時間ができてしまうのは寂しい。けど、僕らは「おかえりなさい」と言えるその日まで彼を待っていたい。


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