【備忘録】CMって、なんだろう。【企画術】

前回のnote(「いい買い物だったと、売れて思う」と書いた理由【宣伝会議賞を振り返って】)から、5ヶ月ぶりの更新。

今回は、CMの企画について。最近CMを考える機会があったこともあり、博報堂時代にビールの仕事をしていて感じていたこと、そしてNEWPEACEにきてから学んだことを整理してみた。(クリエイターの先輩方からしたら当たり前のことかもしれないけど)考え方としては、一定の効果のあるフレームな気がする。今のところ、自分の中ではしっくりきている。

CMは、3つの要素からできている。

まず、そもそも「CM」が何から構成されているのか、考えてみる。
商品、サービス、ブランドロゴ、企業ロゴ、タレント、コピー、タグライン 、SE、タイアップ曲....挙げたらキリがないような気がするけど、大きく大別すると以下の3つではないかと思う。

「画」:「見る」もの。タレント、表情、商品など。
「音」:「聞く」もの。
歌やメロディ。
「文」:「読む」もの。
コピーやセリフ、CMストーリーなど。

この3つで、CMを捉え直すとわかりやすく&考えやすくなるなぁと。
以降、具体例を挙げていく。

CMは、「画」である。

まず、ひとつめ、「画」。このカテゴリに分類されるCMとして僕が好きなものが2つあるので紹介したい。ひとつは、「サントリー プレミアムモルツ」もうひとつは「マツダの企業広告」。マツダのやつは、動画がなかったため画像のみだけど、画像だけで映像を思い出せる人はそこそこ多いのではないかなあ。

ここで大事なポイントは、伝えたいこと、感じてほしいことを象徴的な1シーン(一枚絵)に落とし込んでいること。例えば、プレモルなら「高級感」や「プレミアム」「美味い(美味そう)」という情報を、「表情」と「モノクロの世界」、そして「金色に輝くビール」を使って一枚絵に落とし込んでいるし、マツダの場合は、運転する楽しさを「表情」「手の動き」「風」で表現している。

CMは、「音」である。

「音」に軸足を置いたCMは、わかりやすい。まずはいくつか事例を。

今も昔も変わらない、歌によって商品名を刷り込むタイプのクリエイティブ。ちなみに「Qoo」は、「クーッ」っていう「音」のCMであると同時に「画」のCMでもある。「こどもだって大人のマネがしたい」という商品コンセプトが、本当に素晴らしいと思う。昔のやつでいうと、「アミノ式」とか「Fit's」とかもこのカテゴリに分類できる。

(「ドンタコスったらドンタコス」って幼い頃めっちゃ歌ってたなあ。僕が思い出せるCMで最も古いCMかもしれない。)

CMは、「文」である。

さて3つめ。「文」に限っては、その長さでさらにふたつのタイプに分類できる。あえて名前をつけるなら、ひとつはキャッチコピータイプ。そしてもうひとつがストーリータイプ

キャッチコピータイプは、短い文章もしくはセリフで端的に、企業やブランドの持つ考えをメッセージするタイプのCM。

たとえば、ゼクシィ。
「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私はあなたと結婚したいのです。」のコピーがこのCMのすべて。多分、どんな映像にしても成立したんじゃなかろうか。

一方、ストーリータイプは説明が必要な事柄を例え話や物語の中でメッセージするCM。こちらは、三井住友カードのCMを挙げてみた。

このCMではお金にまつわる価値観を「現金主義」から「キャッシュレス主義」へ更新すべく、いろんなストーリーを展開している。このCMはなるほどなーってなるし、物語としても見てて面白い。TCCグランプリを獲ったCMなので、気になった方はぜひ他のCMもどうぞ。

「何を訴求したいか」で、注力するポイントは変わる。

「画」「音」「文」の3つを「機能」の視点で捉えるとどうなるか考えてみた。ざっくり、こんな感じではなかろうか。

「画」:サービス内容や情緒的価値を訴求。
「音」:商品名やキーワードを訴求。
「文」:新しい価値観や考え方・思想を訴求。 

プレモルのCMは「美味しそう」「プレミアムなもの」と訴求するのに特化したCMだし、ペイペイはサービス名を覚えてもらうのに特化したCM、ゼクシィは、結婚しない選択肢が当たり前にある時代に「それでも結婚したい」という意思を代弁することで、「結婚」の価値を高めるCMになっている。ように思う。

だからCMを考える時は、訴求したいことから逆算して注力するポイントを決めて考えてみて、その上で他の要素をどう付与するか考えてみる、というのが良いのかもしれない。

もちろん、全てに共通して「課題=what to sayが正しく設定されていること」が大前提ではある。

この考え方に当てはまらないものも当然ある。

自分の思考の整理のためにここまで書いてきたけど、この考え方に当てはまらないものもある。

ナイキとか、

カップヌードルとか。

これらは商品から遠い(直接的にはつながらない)部分でターゲットとつながり、とにかく好きになってもらうことを目指している広告のように思う。ナイキが数々のCMで描くのは「信念や誇りの強さ」であり、ここ数年のカップヌードルは「青春の賛歌」だ。そこに共感が生まれ、好感を持てるからこそ、ターゲットはそのブランドのファンになる。

CMって奥が深い。

考えれば考えるほど、CMは奥が深いと感じる。たかだか15秒or30秒の映像だけど「画」と「音」と「文」の組み合わせの数だけ、企画はある。(そこから何が一番いいかを決めるのだから、クリエイティブディレクターという仕事は本当に大変な仕事だと思う。尊敬します。)

今はYouTubeのおかげもあり、過去のCMを見ることもシリーズもののCMを一気見することもできる。勉強する環境は揃っている。「何がいいCMか」その答えを自分の中に持つためにも、引き続き分析と実践を通じて、考え続けたいと思う。(訳:CMの仕事もっとしたいなー。)

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