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学歴ロンダリング俳優、たかまつなな問題を語る

皆さんこんにちは、佐伯恵太です。今日は最近話題になったお笑いジャーナリスト、たかまつななさんの問題について考えたいと思います。

それと共に、いずれ突っ込まれるであろう僕の学歴についても先手を売ってカミングアウトしておきたいと思います。たかまつななさんの記事を見た方も、批判的なコメントをされた方も、今知ったという方も、考えるきっかけにしていただければ嬉しいです。

まずはたかまつななさんの話題について。たかまつななさんはお笑いジャーナリストとして活動しながら慶応大学に通われていて、この度東京大学大学院に合格されました。その記事と動画がこちらです。これが投稿されるや否や批判が殺到しました。その流れをまとめた記事はこちらです。批判の中心となったのが、「大学と院では違う」、「東大に入るのは大変だけど、大学院はそうでもない」ということ。

この2つはおおよそ同じことを意味しています。批判された方はこの受験事情についてご存知なのだと思いますが、大学入試と大学院入試というのは大きく異なっているのです。センター試験、2次試験と多くの科目を要する大学入試と違い、大学院入試では専攻する専門科目のみの試験というのが一般です。

試験が全く別物なので難易度について一概に比較できませんが、東大や京大の場合「大学入試」では相当な高得点を叩きださなければならず、定員割れスレスレのような所謂狙い目の学部というのもないため、大学入試に合格して東大や京大に入学する難しさについてはお墨付きです。

一方で大学院入試は合格に必要な偏差値や点数、そもそも試験の内容自体があまり公にされていないこともあり、その難易度については確かに判断し辛いものになっています。しかし少なくとも東大や京大の大学院に関して言えば大学入試で合格して4年間東大、京大で学んできた人でも落ちる人はいますし、他の大学から受験する人の中にも落ちる人はいます。試験の内容も必ずしも簡単なものではありません。

「大学入試の方がより勉強量を必要とすること」「大学院入試なら偏差値の低い大学からでも東大院や京大院に入れる可能性があること」「その割にこの事情を知らない人にとっては大学院>大学(凄さの比較)のように見えてしまうこと」等の理由が重なって、ある程度知っている人は突っ込んだり批判したくなるのでしょうが、果たしてこの議論は必要でしょうか。

例えば東大卒芸人として活動している芸人さんがいて、その人が東大で何位の学力だったか、留年せず卒業したのか、というようなことまで気にする人がどれだけいるでしょうか。大学から入った、大学院から入ったという議論も同様で、それについて一定のものさしで測ることはできないので、偏った考えや足りない情報量で批判するのではなく、もし大学や大学院に合格してそこで学んでいるという以上にその人のことが気になるなら、その人がそこで何を学んでいるのか、何を感じ、どういう大学生活を送っているのかというところに目を向けてみるのはいかがでしょうか。

大学院であればそれぞれ研究テーマを持っていますし、同じ専攻であっても研究室、研究テーマによって学んでいること、日々の過ごし方も全く違います。むしろそっちの方がよほど大きな違いと言えます。それに大学院であれば修士論文を書いて審査に通らなければ修士号は取れないですし、入る段階の順位はどうあれ、出口でジャッジされる仕組みはあります。

多くの人がこういう見方をすれば、合格した側にとって批判されることがなくなるのがまず良いですし、自分が学んでいることに多くの人が興味を持っていると知れば身が引き締まりますし、その学んだことを発信したり、芸に活かそうとしたりしていくらか還元でき、良いサイクルがまわっていくように思います。

僕は、たかまつななさんが東京大学大学院情報学環教育部で学ばれることが楽しみですし、お笑いジャーナリストという分野でどのように活躍されるのかが楽しみです。

さて、ここで僕の話に移りたいのですが、タイトルにもしている「学歴ロンダリング」という言葉を知らない方もいらっしゃるかと思います。学歴ロンダリングというのは、前述したような、日本で大学院進学の際に自身の出身大学よりも更に上のレベル(学歴)の大学院に進学することを指して、学歴ロンダリングと言います。どんどん洗浄していく、というようなイメージですね。

※基本的には批判の意味を込めて使われる言葉です

僕は京都大学大学院理学研究科を卒業しましたが、それはまさに究極の学歴ロンダリングによる成果です。

高校は、京都府立山城高等学校普通科第Ⅱ類理数系というところでした。高校で水泳部に入り競泳と、当時流行していたウォーターボーイズ(男子シンクロ)に明け暮れていた僕は、学校授業こそちゃんと受けていておおよそテストの点数は良かったものの理数系なのに数学、物理は苦手で赤点を取った記憶があります。さらにセンター対策というものを全くしておらず、模試でも予想通りの結果でした。

関西では京大の次点として関関同立という有名私立大学群があり、さらにその次に産近甲龍という大学群があります。僕はこの「産」にあたる京都産業大学を選んだ模試でE判定を叩き出しました。入試直前の模試です。

そこで、センター試験を必要とする一般入試ではなく、AO(アドミッション・オフィス)入試という、小論文や特殊な試験、面接で合否が決まる試験に的を絞り、京都の理系国立大である京都工芸繊維大学に進学しました。ただし、ではAO入試が簡単だったかというとそうではなく、勉学以外のところでしっかりアピールできる活動をしてきたこと、専門科目できちんと得点できたことが評価されたのだと思います。ちなみに倍率で言えば僕の受験した応用生物学部の一般入試での倍率は3倍、AO入試の倍率は8倍でした。

大学に入ったあとは大好きな生物学が中心となったので劣等感を感じることも少なく、3年あたりでは成績も上位に食い込むことができ、大学院入試で京都大学大学院に進学しました。

大学院入試のために英語、生物学の専門分野をさらに勉強し、入試のジャッジを通ったおかげで入学後の大学院での授業、研究、留学生との英語でのディスカッションや英語でのプレゼンにも対応出来、修士号も取ることができたのだと思います。

さらに、普段はややこしくなるのであまりアピールしていないのですが、僕はその先の博士課程に進学しました。博士過程は3年あり、博士論文を書いて審査に通れば晴れて博士となります。

また、経済状況によらず研究に専念するため、学生でありながら研究員となり給料をもらえる制度があります。その最高峰が日本学術振興会というところが運営している特別研究員という制度で、僕はこの特別研究員に採択されて研究をしていました。

特別研究員として1年間研究活動を続けた後、2年目に入る前に上京し、芸能活動の道に進みました。特別研究員として研究していた経歴をもつ俳優はおそらく史上初ではないかと思います。高校時代の(学力的に)悲惨な状況も考えれば、ある意味究極の学歴ロンダリングに成功した一人だと思います。ですがズルいことをしたとかいう認識ではなく、自分の状況にあわせて判断してきた結果です。特別研究員に採択されるには相応の研究成果、研究の可能性を示す創意工夫等も必要とし、評価されたことに関しては自信を持っています。

また別の問題として、その特別研究員として採択されながらも研究者ではなく芸能の道に進んだことも、今後様々な批判を浴びる気がしています。

それについては、今後の活動で示していくしかないのではないかと思っています。サイエンスの分野でもサイエンスコミュニケーションやアウトリーチ活動という言葉が活発に使われるようになり、専門の人だけでなく一般向けにも研究成果を伝えたり、サイエンスの楽しさを届けていきましょうと言われている時代です。僕は芸能人という立場で、そのことに少しでも貢献していけるよう頑張りたいと思います。実は既に一つ、サイエンスと関わる映画プロジェクトを水面下で動かしています。

僕は学歴ロンダリングを批判する人を全否定するつもりはありません。意図的に一番簡単な受験方法としてこの手段を選択し、進学後の努力もせず、そのくせ学歴を誇張、自慢するような人も確かにいますし、そうでなくても人それぞれ色々な考え方があり、どういう人を応援したくなり、どういう人には批判的な意見を持ってしまう、というのは人それぞれだと思います。

今回の件で批判された方、批判的な意見を持っていた方が、この記事を通じて肯定(応援)に転じる、或いはより根拠のある状態で批判されるのであれば、嬉しく思います。

僕も流石に「学歴ロンダリング俳優」を自称するわけにはいきませんが(この言葉を知らない人もいるでしょうし)、この記事はできる限り公開を維持し、たくさんの方に見ていただける状態にしておきたいと思います。

特別研究員から芸能界に進めたことが一番のロンダリングだったと言えるように、芸能界で活躍できるよう精進します。

今回の記事に関するご意見、ご感想も遠慮なくコメントいただき、記事を読んでくださった方がコメント欄の様々な立場の方の意見も含めて考える機会にしていただければと思います。最後までご覧いただきありがとうございました。

佐伯恵太

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