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美術私手帖

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美術・芸術について
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#展覧会

おおがまめお漫画展『404』@虚屯

虚屯イベントスペース(福岡市中央区平尾3-17-13)で開く展覧会企画第三弾、おおがまめお漫画展『404』が明日12月1日よりスタートします。 カラクリワークスの公式Facebookなどにも書きましたが、おおがさんとの出会いは同じ美容室に行っていることだったりして、でもその時の縁から展覧会まで漕ぎ着けたのは感慨深いものがあります。 本展覧会を企画した濱門のおおが作品との出会いは、福岡市の美容室「今山」でした。 そこに置かれた小さな漫画冊子に閉じ込められていた物語に惹き込ま

化学実験と造形芸術を行き来する/斎藤悠奈個展「うつわの化学式」展@虚屯

規則性のない割れ方。無造作にみえる滲み。 斎藤悠奈の作品は、一見無秩序な要素が多いようにも見える。しかし実はそれが自然の秩序の発見に真正面から取り組んだ結果生まれた作品だということは、よくよく話を聞いてようやくわかる。 2020年7月15日(水)〜21日(火)に虚屯で開催の「うつわの化学式」展は、斎藤にとって人生初の個展。タイトルは、この彼女のオリジナリティを表現するべく付けられたものだ。 出会いは2019年秋。私が愛知県立芸術大学陶磁専攻に非常勤講師として通う中で、当時4

テクノロジーの発展で変わる人間の思考を観た「未来の芸術展」@森美術館

森美術館で開催中の展覧会「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」 を鑑賞。建築に始まり、服飾や医療など人間を取り囲むあらゆるのものがテクノロジーの発達とともにどう作用していくのかな、みたいなことを見通すようなキュレーション。 パッと印象付けられるのはやっぱり人工知能系か。特に面白いと思ったのはゲーム形式のシミュレーション「倫理的自動運転車」(マチュー・ケルビーニ)。あるアクシデントの場面に遭遇する直前に、そこで巻き込まれる人やモノなどあらゆる事

笑った展覧会|「国芳から芳年へ」@福岡市博物館

福岡市博物館の展覧会「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」(2019年11月16日〜12月22日)に行った。久留米市美術館で開催されていた熊谷守一と同じく、これまで印刷物で観る機会はとても多かったけど、作品に直接対峙した経験が少なかったジャンル。ってことで楽しみにしてた。 印刷物で観るのももちろんいいけど、やっぱり生で観るのはいい。ここまで迫力ある印象は持ってなかった。生で観る価値ってすごくある。当たり前かもしれないけど、展覧会に来るたびに改めて感じることの1つだ。 大きなカエル

熊谷守一の展覧会「いのちを見つめて」@久留米市美術館

久留米市美術館で開催している熊谷守一の回顧展「いのちを見つめて」に行ってきました。11月からやってるのに全然知らなくて、慌てて。というのも「1月までやってるし、いつか行こう」と思ってると、結局会期が過ぎているなんてことは少なくない!からです。会期のあるものはすぐ行くことが肝要だし、それができなければすぐスケジュールに組み込む。それができてなくて見逃した展覧会の多いこと。同じ過ちは繰り返したくない。 熊谷守一の作品がすごく好きだった割に生の作品に対峙した経験って少ないよな、印

クリスチャン・ボルタンスキーの展覧会「Life time」@長崎県美術館

クリスチャン・ボルタンスキーの展覧会「Life time」が長崎県美術館で開催されていたので、勇んで行きました。なぜ勇んで行くか。この展覧会は2019年2月から5月まで大阪の国立国際美術館で開催されて、そのあと6月から9月まで東京の国立新美術館で開催されて、そして最後の開催地として10月から2020年1月5日まで長崎市県美術館での開催になってました。それを知った上で、ゴールデンウィークに大阪行った時に行こうとして行けず、東京出張の折に行こうとして行けず「開催中にその近くにいる

『なんていうか、SFっぽい展』の空間でイメチェンにチャレンジした話

展覧会を観た。舞鶴(福岡市中央区)の美容室「今山(イマサン)」で行われている展覧会『なんていうか、SFっぽい展』だ。まめこ・F・まめおさんの個展。以前このお店でまめこ・F・まめおさんが描いた「今山」が登場する漫画を拝見したことがあるけど、今回の展覧会ではその新作や原画などが展示されている。 展示インスタレーションは、奇を衒う感じも既視感もなくて、だけど惹きつけられて心地いい。壁に展示されている作品も、ひとりよがりな印象がなくてすーっと感覚に入ってくる感じ。決して大きな空間で

なぜ絵を描くのか

若い画家に出会った。これは新しいオフィスで展覧会などをやることを想定していることが生むメリットだ。展覧会でいい作家がいると「一度見にきてくださいよ」とか言えて、実際遊びに来てくれる。今回もまさにその流れだ。 芸術作品、美術作品というものは、鑑賞にあたってはどのような解釈があってもいい、と思う。むしろ、というか、だから芸術は面白い。作家がまったく意図していなかった解釈もある。でもそれをコントロールすることはできない。不特定多数の他者の思考に介入するなど、できないとかいうことで

ラジオで福岡市美術館リニューアルオープンについて話しました

カラクリワークスの山ちゃんこと山本真己と出演するラジオ番組『大名!ナカユビコゾウ』は今回が5回目の放送。改めて紹介しておくと、この番組は福岡市天神にあるコミュニティ「コミてん」 で、毎週水曜日21時から放送しているもの。毎週いろんな人たちがゲストやメインパーソナリティーとして出演していて、カラクリワークスはほぼ月一くらいのペースで出演させていただいている。この番組に出演させてもらうことになったのは、高校時代からの友人が番組の作家をやっていて「月一くらい出る?」的なお誘いをうけ

やっぱりもう少しだけ福岡市美術館オープニング展覧会の続き

福岡市美術館のオープニング展覧会に行ったことは前回書いて、その続きは27日21時からのラジオ(大名ナカユビコゾウ)で、と思っていたんだけど、やっぱり書き足りなくて補足的に少し。 今は「デイトペインティング」で有名な河原温が、20歳くらいで描き続けていた『浴室シリーズ』が観れるのはすごくいい。今、このタイミングで実物観れる機会ってそんなにないのかもしれない。わからんけど。観ていい作品。あと視界に入って「おー」ってなったのは、モーリス・ルイスの絵画。作品自体はもう少し色が強いも

リニューアルした福岡市美術館に行ってきた!続きは27日のラジオで。

オフィス引越しによる腰痛が悪化してはいたものの、いち早く!という思いでヨタヨタと行ってきました3月21日にリニューアルオープンした福岡市美術館。大濠公園はどこかの国から来た人たちがたくさん、それはもうたくさんいて、ランニングしている人も避けながら走ってる感じ。桜を見に来たんだんだと思うけど、まだそこまでは咲いてないっすよね。 福岡市美術館リニューアルオープンに関して、私的結論。美術館は何が変わったかあんまりピンと来てない。オープニング展の展示作品はすごくいい!「リニューアル

建築家「田根剛」と映画「ギルティ」

土曜日なので例のごとくtikiでカレーを食べて、イムズ・アルティアムで開催されている「田根剛・未来の記憶展」[http://artium.jp/exhibition/2019/18-08-tane/]と、キャナルシティ博多で上映されている映画「ギルティ」[https://guilty-movie.jp/]を観た。 「田根剛〜」は建築家である田根氏の思考やプランのプロセスを垣間見るような展覧会。建築の展覧会って好きで、それは最終的にみえる建築物(もしくはプラン)自体の面白さと

ベルント&ヒラ・ベッヒャー私史/3の2

(タイトル写真はPHILLIPSのWEBサイト引用キャプチャー:[https://www.phillips.com/detail/BERND-AND-HILLA-BECHER/UK010117/10]) 大学生協の書籍コーナーで出会った1枚の写真から、すっかり心酔してしまったベルント&ヒラ・ベッヒャーの作品。調べていくと「1990年のベネチアビエンナーレではあの写真の作品で彫刻部門の賞を受けたらしい」みたいな話も出てきて、余計に「ベッヒャーかっこいい!」って気持ちは高まってい

熊本市現代美術館の展覧会の話

熊本市現代美術館の展覧会を2回連続で観ることが出来た。1本目は『魔都の鼓動 上海現代アートシーンのダイナミズム』<2018.9.22(土)〜 2018.11.25(日)>、2本目が『バブルラップ:「もの派」があって、その後のアートムーブメントはいきなり「スーパーフラット」になっちゃうのだが、その間、つまりバブルの頃って、まだネーミングされてなくて、其処を「バブルラップ」って呼称するといろいろしっくりくると思います。特に陶芸の世界も合体するとわかりやすいので、その辺を村上隆のコ