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自責と他責が止まらないわけ

仕事や家庭の中で、失敗して気分が落ち込むことってありますね。
お弁当の発注数が間違っていたり、指示が曖昧で現場に混乱が生じたり、家族への言い方がうまくなくて小競り合いが生まれたり。
僕は毎日のように経験しています。

そんなとき、
「ああ、迷惑かけちゃったなあ」
「もっとちゃんとしなきゃ」
「自分って本当にダメなやつだな」
なんて自分を責める気持ちが湧いてくるものです。

同じ状況から他人を責める気持ちが湧いてくるかもしれません。
「○○さんがチェックしてくれなかった」
「△△さんが手伝ってくれそうになかったら自分でやるしかなかった」
「そもそも□□さんの言い方も嫌な感じだった」などなど。

自責の傾向が強い人、他責の傾向が強い人、自責から他責に転移する人など、失敗からの反応傾向は様々ですが、いずれにしても心の平穏が蝕まれることは間違いありません。
その場から離れても、体の中にモヤモヤが残り、ドロドロと嫌な匂いのするものが渦巻くような感覚は、みなさん日常で起きていることだと思います。

そんな自責と他責のグルグルについて、ラグビーレフリーの視点から何か役に立つかことがシェアできないかというのが本日のトピックです。


ラグビーレフリーの視点

ラグビーでは1試合に100以上のルール違反が起きていると言われています。

・境界線を越えてディフェンスしてきたり(オフサイド)
・タックルされた後も巧妙にボールを保持したり(ノット・リリース・ザ・ボール)
・単純なミスによりボールを前に落としたり(ノックオン)


実はラグビーレフリーは全ての反則に笛を吹くわけではないんですね。
ゲームの流れ、継続性の観点から影響度を判断して、相手に反則があってもゲームが有利に進んでいる場合は流していくのです。
反則は確認しているけれど、あえて笛を吹かない。

一方、本当に反則を確認できていないときもあります、じっさい。
あのごちゃごちゃとした密集の中で何が起きているのか、正直全部は見えません。
プロリーグでビデオ判定があるのは、リアルタイム×肉眼では限界があるという証拠ですね。

生身の人間のがゲームの流れを読みながら、エキサイティングで公平感のあるゲームを演出していくのが、ラグビーレフリーの面白いところなのです。

それでもやっぱりペナライズ

でもやっぱりですね、、、
取られるべき反則が取られないと選手たちは苛立ちます。

ラグビーはそういうスポーツと理解しつつも、
「相手が倒れ込んできてるじゃないか!」
「さっきのタックルは危険だった。ていうか痛かった。。」
「じゃあ、俺もやってやろうじゃねえか」

こんな風になっていくとゲームが荒れます。
汚いプレーや危険なプレーが増え、選手も観客もストレスフルでつまらない試合になっていくー

ラグビーでは反則を取ることを「ペナライズする」と言います。
レフリーは、取るべき反則に対して厳格に笛を吹いてペナライズする必要があります。「罰を与える」わけですね。

・かわいいミスレベルの反則は、相手ボールのスクラム。
・スピーディな展開を妨げるような反則はペナルティキック。
・危険なプレーやリスペクトを欠く行為はイエローカードで10分退場。
・本当に反省してもらいたい反則にはレッドカード。その日は完全退場。
 カードが出たチームは1人少ない状況で戦ってもらいます。

ラグビー競技規則より超訳

危険なプレーや、ゲームをつまらなくなるプレーは「罪」であって、罪は償ってもらう必要があります。
陣地を奪われ、プレイヤーが少なくなり、点を失う。
罪に対して罰を与えるのがレフリーの役割です。

罰とは許しのこと

そして罰を受けたらどうなるのか?
許されるんですね
危険なプレーをして相手に痛手を負わせても、イエローカードで10分退場したあとは、もうグチグチ言われないのです。

レフリーに対して文句をいうのは厳罰で、通常のペナルティに加えて10m後退してもらいます。
レフリーも人間なので、文句を言われたらムカつきます。
けど、その後は?
もう許されるのです。10m後退してもらったから。
そのあともレフリーから目をつけられて意地悪されたりはしません。
罰によって罪は償われたのです。

「ペナルティを与える」の本質は「償いのチャンスを与えること」「許しを与えること」なんじゃないかと思うのです。
レフリーは、やっちゃったプレイヤーに愛と優しさを持って償いのチャンスと許しを与えて、ゲームの面白さを維持する仕事とも言えるのです。


ゲームを止める

前置きが長くなりました。
自責と他責がグルグルと回り続けるのは、償いのチャンスが与えられていないからだと思うのです。
ペナライズされるべきプレーが起きているのに笛が吹かれないから、ゲームが荒れているのではないでしょうか。
誰かが笛を吹いて、一旦ゲームを止める必要があるのです。

自分を許せない気持ちがずっと続くとき、
あなたが笛を吹いてゲームを止めてみましょう。
自分に償いのチャンスを与えてあげましょう。
必ずしもすべてを弁済する必要はないかもしれません。
それでもただ「あなたを嫌な気持ちにさせてしまった」と言葉にするだけで、少しだけ自分を責める気持ちが軽くなるかもしれません。

相手を許せない気持ちがずっと続くとき、
あなたが笛を吹いてゲームを止めてみましょう。
相手に償いのチャンスを与えてあげましょう。
必ずしも相手がすべてを弁済してくれいないかもしれません。
それでもただ「私は嫌な気持ちになった」と言葉にするだけで、少しだけ相手を責める気持ちが軽くなるかもしれません。

「ちょっと止まって」
「伝えたいことがある」
すべてを相手が受け止めてくれないとしても、
自分の感じていることを言葉にすることが、グルグルを止めて、少しでも心の平穏を取り戻すことになると思うのです。

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