医療者向けYouTube戦略、アクセスを解析しブログとの共通点を探る

YouTubeで動画コンテンツを作り始めて3ヶ月。

まだチャンネル登録者数も少なく実績は不十分ですが、現時点ですでに興味深いデータが得られているため公開します

【注意】
いつも書いていますが、情報発信のやり方に正解はありません。
私は「いかに多くの人に発信するか」ということにこだわっていますが、
「親和性の高い少数の人に地道に発信する」
とか、
「自分が好きで長続きしそうな方法だけで発信する」
といったように、100人いれば100種類の手法があると思います。
よってこの記事は「こうあるべき」という指針を示すものではないことにご注意ください。


まず、少しだけ前書きです。

私はこれまでウェブサイトを使って長文テキストで情報発信する、という方法で約1年10ヶ月活動してきました。

これまでのサイトへのアクセスは以下の通り。

合計730万PV(ページビュー)ほどです。

「医療者向けブログ戦略、必ず知っておくべき基礎知識」で書いた通り、多い時は70〜80万PV/月ほどありましたが、検索エンジンのアップデートにより激減。

最近は10〜20万PV/月程度です。

※ブログのアクセスの集め方については以下のnote参照。


一方YouTubeを始めたのは2018年12月末。

自分のサイトのテキストコンテンツをそのまま動画に変換することによって、動画で情報収集したい人のニーズを満たすためです。


近年、YouTubeで情報収集する人が増えています。

検索エンジンの検索窓ではなく、まずYouTubeの検索窓に知りたいキーワードを入力しているということです。

動画の方がテキストより単位時間あたりに受け取れる情報量は少ないと思いますが、動画には「受動的に情報を受け取れる分、受信者側の負担が少ない」というメリットがあります。


特に、テキストなら取っつきにくい医療の知識も、動画ならエッセンスが簡単に伝わります。

その点で、動画は間違いなく、医療者にとって重要な発信チャンネルになりえます

ところが、YouTubeの医療分野の動画には、現在非常に大きな問題があります。


「無法地帯」のYouTube

医療分野において、現在YouTubeは完全に「無法地帯」になっています。

医療者が調べればすぐに分かるので、あえて具体例は挙げませんが、誤った情報が溢れかえっています

不安を煽るような釣りタイトルに、ソース不明の医学的根拠に乏しい情報が流れる動画が、数十万というレベルで再生されています

数年前のGoogleの検索結果を見ているようです(現在はアップデートにより随分改善している、という点は「医療者向けブログ戦略、必ず知っておくべき基礎知識」でで書いた通り)。


テキストコンテンツでは、公的機関や医療機関のサイトを検索上位に優先的に表示するアルゴリズムを採用することで、こうした事態は改善したと言えます。

ところが、YouTube検索は昔のままです。

そもそも、これらの危険な動画に代わる信頼性の高いコンテンツ自体が、現在ほとんどありません

つまり、今後仮にアルゴリズムが調整されたとしても、代替できるコンテンツが少ないため、結果に大差はないということです。


動画検索が今後増えることが予想される以上、誰かがこの領域に注力しなければ、近い将来かなり危うい状況に陥るでしょう。

私を含め、医療者個人では限界があるため、企業レベル、あるいは医療機関、公的機関レベルで介入した方がいいのではないかと思います。

私の目的はむしろ、こうした方々に参考にしていただける「人柱」となることにあります。


最終的にはどこかの誰かにYouTubeに大量の動画を投下してもらい、私の動画が再生されないくらい場外に追いやってほしいと思っています。

さて、前置きが長くなりましたが、ここからYouTubeとサイトのデータを比較しながら現状を読み解いていきます。


主体となる戦略

YouTubeは従来、好みのチャンネルを登録し、登録した人の配信する動画を定期的に見る、というスタイルが一般的です。

結果的に発信側としては、「チャンネル登録者(=ファン)を増やす」ことが一つの目標になっています。

エンタメ系のコンテンツであれば、それが基本戦略になるかと思います。


一方、情報提供を目的とした学習コンテンツは、ファンを増やすのではなく、疑問を検索したユーザーに、そのタイミングで単発で情報提供する、いわゆる「オンデマンド型」の考え方が必要になります

チャンネル登録してもらえなくても、その都度必要な情報だけ吸収してもらえばOK、というわけです。


私のチャンネルで具体例を挙げます。

以下は「痔核(いぼ痔)」について解説した動画と、「風邪」について解説した動画の、投稿後約40日間の総再生時間の推移です。

(縦軸は再生時間の累計です)

(上が「風邪」、下が「いぼ痔」)


「風邪」の方は、最初に急峻な角度で再生時間が増え、その後はかなり失速しているのが分かります。

一方「いぼ痔」は、初速こそ遅いものの、じわじわと再生時間を伸ばし、最終的には「風邪」を抜いています

これは私の狙い通りなのですが、なぜこういうことが起こるかを考えてみます。


動画をアップしたら、私は毎回Twitterで告知します(3月14日現在フォロワーさんは約25000人)。

しかし、「いぼ痔」はSNSに向かないコンテンツです

なぜなら、リアルタイムで痔に困っていない人は、TwitterのTLを眺めていて、あえて「今すぐ痔の動画を見よう」とは思わないからです。

「そのうち時間ができたら見ようかな」と思って後回しにしているうちに忘れてしまい、結局痔になった時には動画の存在も忘れてGoogle検索しているでしょう。


一方、「風邪」はSNS向きのコンテンツです。

風邪は誰しもが困る病気ですから、「役立つかもしれないし今見ておこう」という気持ちになりやすい傾向があります

よってRT数も「風邪」の方が圧倒的に多くなり、再生時間の初速は「風邪」の方が大きくなります


ところが、1ヶ月以上経過すると、総再生時間は「いぼ痔」が「風邪」を上回り始めます

傾きを見れば、さらに今後も「いぼ痔」は伸び続け、「風邪」が二度と追いつけなくらいに引き離していくことが予測できます

なぜこういう現象が起きるのでしょうか?


YouTubeにおけるオンデマンド型情報提供

なぜ「いぼ痔」の動画はSNSで全く拡散しないのに再生時間が伸び続けるのか。

理由は簡単です。

YouTube検索すると、

「いぼ痔 治し方」

私の動画が1位〜2位に表示されるからです。


いぼ痔のような、他人に相談しにくい疾患は特に、ネットを使って情報収集したいと考える人が多い傾向があります

また、いぼ痔に罹患(りかん)する年代は幅広く、YouTubeの検索ボリュームもそれなりに多いと予想できます。


私のウェブサイトには、いぼ痔に関する同趣旨のテキストコンテンツがあります。

>>いぼ痔(痔核)の治し方と、病院に行くべき症状、原因と検査・治療法

こちらは、検索エンジンのアップデート前にはGoogle検索で同じ「いぼ痔 治し方」で1位〜2位に表示されていました

この時のアクセス数は、500〜800PV/日でした。

一方、YouTubeの方の再生回数は、約50〜80回/日

ここから予想できることは、

「いぼ痔 治し方」というワードでYouTube検索する人は、現時点では同じワードでGoogle検索する人の約10分の1程度はいる

ということです(他のキーワードでも見られているためあくまで目安)。

(余談ですが、いぼ痔は「人に知られず自力で治したい」と考える人が多いため、「治療」ではなく「治し方」というワードを使って検索する人が多い)


いぼ痔で困って情報収集したいという人は毎日一定数いるため、ゆっくりと再生回数は伸びていき、最終的に「風邪」の動画を抜きます

私はこれを「ウサギとカメ」の現象と勝手に呼んでいます。


ウェブサイトのテキストコンテンツでも全く同じ現象が起きます。

これはPV数の推移ですが、SNSで拡散した記事(上)と、検索されてPV数が増える記事(下)の比較です。

(YouTubeと違って、縦軸は累積ではなく1日あたりのPV数)

上の方はピークで5500PV/日程度となっており、下の方のピークを上回ります。

しかし下の方はゆっくり上昇したPV数がなかなか減りにくいため、結果的には上の方の記事のPV数を上回ります

ここでは上が「ウサギ」、下が「カメ」です。

SNS向きのコンテンツはウサギ型、つまり短時間で爆発的に利用される一方、SNSに向かないコンテンツはカメ型、つまり長期間ゆっくり利用されるというわけです。


トータルとして、より多くの人に発信できるのは「カメ戦略」の方です。

ただし医療者の場合は要注意、ということは、以下の記事で書いた通りです。


テキストコンテンツにおけるカメ戦略のノウハウはほぼ確立していますので、本格的にブログ運営したい方は以下の記事をお読みください。


ただし、一般向け情報発信を考える医療者に関しては、カメ戦略に注力しすぎることは必ずしも得策とは言えません


ウサギ戦略のメリットは?

ウサギ型コンテンツは、SNSなどで広くシェアされることにより、一時的に大きな話題を提供できます

この「瞬間最大風速」的な力は、情報発信する医療者にとって重要な役割を果たすことがあります。

これが新たな発信チャンネルの獲得につながる可能性があるからです。


直近の具体例で言えば、以下の大塚篤司先生(@otsukaman)の記事はいい例です。

(素晴らしい記事ですので、未読の方は必ずお読みください)

この記事は、SNS経由で万単位というレベルでシェアされたようです。

結果としてこの記事はSNSの域を超え、テレビ番組でも取り上げられ、多くの人の知るところとなりました。


私も、ブログ記事や連載記事が広くシェアされることがありますが、こうした機会が多いと、書籍執筆や寄稿、取材の依頼をいただきます。

より多くの人に声が届くプラットフォームで発信するチャンスが得られる点では、ウサギ戦略に大きな価値があるということです。


またウサギ戦略は、「毎回見てくださるフォロワーさんたちに向けて発信する」という点でも非常に重要です。

例えばYouTubeで私が「いぼ痔」「憩室炎」「虫垂炎」「アニサキス」といった動画(=いわゆる「カメ」)ばかり作っていたら、

「この人は自分の興味のない動画ばかり作る」

と思われ、そのうち飽きられていきます。

いつも自分の作ったコンテンツを見てくださる方が興味を持ってくれるコンテンツ(=ウサギ)も、きっちり発信しなければならないということです。


もちろん、前述の通り、ウサギ戦略に偏るのも得策ではありません。

「自分のことを知らない人たち」にも声を届ける必要があるためです。

疑問に感じたことを、疑問に感じたタイミングで情報収集したい、という方は、「誰が発信しているか」をあまり意識しません

自らの疑問を効率よく解決できれば、目的は達成されます。

そういう方は、YouTubeでもあえてチャンネル登録しようとは思わないでしょう。

こうした方に、いわば「旅先のドライブスルー」のごとく情報提供するには、やはりカメ戦略も必要になります。


重要なのは、

このコンテンツはウサギかカメか?

を意識し、バランスよく発信していく、ということではないかと思います。

こうした心がけが、多くのユーザーの満足度を高めると考えます。


届けたい気持ちそのままに大声を出しても、なかなか声が届かずもどかしい思いをすることはよくあります。

小さな声でも心に届くよう、常にユーザー目線できっちり対策していくことが大切です


ブログ運営を本気で考えている方は、ぜひ以下の記事も読んでみてください(有料)。


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