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[無料]登山の行方不明者を探すデバイスいろいろ

登山で行方不明になってしまった人を探すのはとても大変です。どの山のどのコースに行ったのか分かればマシで、それすら分からないと、監視カメラや交通機関の残された情報を元に捜査するところから始めなければいけません。

それをサポートするのが各種デバイス(端末)ですが、特性を理解していないと正しく使えません。今回は、私が持っているデバイスを中心に、それぞれの特徴、利点、欠点、使い方などを解説します。

こういうの好きなので、いろいろ試しました。

主にGPS Bot、IBUKI GPS、Airtag、Tile、ココヘリについて書いていきます。


デバイス自体が経緯度を発信するタイプ

私は「位置送信端末」と呼んでいますが、デバイス自体にGPS機能とインターネット通信機能があり、それ自体が位置をインターネットに送るものです。これらを使うと、スマホのバッテリーを消費すること無く、ある程度現在地を送ることが出来ますし、家族はスマホで位置を確認することが出来ます。ただし携帯エリア圏外では位置を送れません。

GPS Bot

上記写真左のGPS Botは一般的に子供の見守り端末として使われています。私はこれが登山者の追跡に使えないかと考えて一時期使っていました(現在は解約しました)。

位置送信に開始や停止の操作は無く、夜間や静止時を除いて常に座標を送信しています。通信回線としてはLTE-Mを使っています。

送られた位置はスマホのアプリから確認できます。子供がデバイスを持ち、親がスマホで現在地を確認するという運用になります。位置はカレンダーから過去に遡って見ることが出来ます。

街で使うことを前提にしているので地図は街の地図だし、トラックログを取り出すなどの機能はありません。最新機種はトーク機能で音声を送受信する事も可能です(トークありで月額748円(税込)、トークなしで位置を送るだけなら月額528円)。デバイスは5280円です。

IBUKI GPS

主にトレラン用に作られて使われている位置送信デバイスです。トレラン用なのでトラックログをダウンロードできたり、仲間と走る時に一時的に位置を共有できたり、かなり高機能です。トレラン大会でも使われているようです。

位置情報を送るには開始の操作が必要で、開始をするためにはWebサイトを開かなければいけないので、登山口が圏外だと開始できなくなります。そういう操作は電波があるうちにやっておく必要があります。走り終わったら停止の操作をします。

IBUKIはオフライン中のトラックデータをある程度メモリに溜めておき、オンラインになるとまとめて送信する機能があります。そのため、実際にはオフラインだった部分でも記録が残ります。どこでオフラインだったのかはリアルタイムに監視して貰う必要があり、私がテストしたときはSNSで友人に監視してもらってオフライン部分を推定しました(ここからここまで記録が来なかったよ、などスクショを撮っておいてもらった)。この機能のため、オフライン部分も含めてキレイにログが残ります。

料金は、最初に2万円程度でデバイスを買って、月額は880円(税込)が掛かります。

ちなみにデバイスのハードウェアとしては京セラのGPSトラッカーを使っているようです。

子供見守りデバイスいろいろ

この手の位置送信デバイスは、登山用よりも子供の見守り用として様々なサービスがあります。例えばソニーやmixiの見守りデバイスがあります。概ねデバイス代金が5000円くらい、月額が500円くらいというのが相場になっています。

カーメイト coneco

以前、カーメイトさんにお借りして試用したconecoはなかなか面白い端末でした。回線はLTE-Mを使っており、携帯圏外では位置を送信できなかったのですが街での使い勝手は良かったです。

電子ペーパーを使った画面、非発火型リチウムイオンバッテリー、ボタンで定型文を選んで送る機能など、とてもユニークで優れた端末でした。スマホを与えるにはまだ早い児童などがメインターゲットだそうですが、その目的としては最高の端末だと思いました。

LTE-Mとは?使い勝手は?

これらのデバイスは通信回線としてdocomoのLTE-M(LTE Cat.M1)を使っているものが主流です。LTE-MはIoT向けの広域、低速、省電力、低料金の通信規格です。通信速度が遅い代わりに省電力で遠くまで電波が届くという規格で、経緯度情報みたいな小さいデータの送受信に適しています。

通信範囲は、私が検証した限りですがスマホより少し狭い感じでした。スマホの方が筐体も大きいし電池も大きくて電波出力も大きいためでしょうか。実績として、スマホがギリギリ通信できている場所でもLTE-Mのデバイスは位置を送ることが出来ていませんでした。

LTE-Mを使った位置送信デバイスのメリットとデメリット

登山におけるメリットはスマホのバッテリーを節約出来ることです。スマホを機内モードにしても、送信デバイスがある程度は位置を送ってくれるので、本人がどの山に登ったのか、どの登山道を歩いたのかは情報が残ると思います。スマホの電池が切れても送信デバイスの電池が残っていれば位置を送れます。

ただし、スマホが圏外になるような場所に行ってしまえば位置送信デバイスも圏外になってしまうので、最終的な位置が残るかは通信のサービスエリア次第です。

docomoのLTE-M回線を使うケースが多いので、auやソフトバンク、楽天のスマホを使っている場合は意味があるかもしれません。特にソフトバンクや楽天のユーザーは山で繋がらない事が多いので、docomo回線を使った送信デバイスの恩恵は大きいと思います。

デメリットは月額料金です。月額500円でも年間にすると6,000円掛かります。地味な金額ですが、結局山奥では位置を送れないデバイスの維持費としてどうなのかは財布と相談になるでしょう。

なお、「どこの山に行ったのか?」は、こういうデバイスの有無にかかわらず家族に残しておくべき情報です。登山でも山菜採りでも渓流釣りでも、必ず行き先を告げておきましょう。行き先を告げずに山に入るなんて自殺行為です。位置送信デバイスがあるからと言って、行き先も告げずに山に入るのはやめましょう。

LTE-M以外の通信を使った位置送信デバイス

見守り端末の多くはLTE-Mを採用していますが、スマホの通信範囲と大差ないというのが使ってみた実感です。LTE-Mではない通信方式の位置送信デバイスもあり、それらは使ったことがないのでどの程度通信できるのか分かりませんが紹介しておきます。

FIELDCONNECT(フィールドコネクト)


2024/1/26追記 『FIELDCONNECTは、2022年8月1日にご提供を開始いたしましたが、この度、パートナー企業より主要機能の提供が廃止されることなどにより、今後のサービスの継続が困難と判断いたしました。』とのことで、FIELDCONNECTは1年半でサービス終了となりました。


SigfoxというIoT向けの通信規格を使っていて、LTE-Mよりも広い範囲をカバーできるようです。端末が38,000円、月額利用料は990円となっています。

位置の送信と共有、SOSの発信、定型文の送受信が出来ますが、使ったことは無いので使用感は分かりません。GPS BotやIBUKIは位置を送るだけですが、FIELDCONNECTはSOSや定型文を送れる点で優れています。

登山用途ならIBUKIよりFIELDCONNECTが良いかなと思います。(私はIBUKIを既に使っているので、今のところこちらには手を出してません。持ってなかったら買ってたかも)

クアドラプランニング株式会社 SEAKER_L3(シーカーエルスリー)
ソニーのLPWAであるELTRESを使った位置情報ビーコンがSEAKER_L3です。見通せれば100km離れていても通信できるそうなので、山間部でもある程度通信できるかも知れません。ただしSEAKER_L3は海での使用を想定しているみたいです。

端末代金が55,000円(税込)で利用料は月625円(年契約)となっています。まぁまぁしますね。

海での使用を想定した端末デザインなので、登山用としてはザックへの収まりが悪いかも知れません。あと、どの程度山間部で使えるかは未知数です。対応エリアは下記ページで参照できます。

ELTRESについて詳しくはこちら。

ガーミン inReach
GPS端末で有名なガーミンの製品・サービスです。イリジウムの衛星通信を使用します。衛星通信なので、空が見えていれば地球上どこでも位置情報、SOSの送信、メッセージの送受信が可能です。通信方式としては最強ですね。

デバイスは、小型のinReach Mini 2で5万3千円くらい、

新しく出たinReach Messengerが4万3千円くらい、

高性能なGPSMAP 66iで10万円くらいです。

月額はプランによって変化しますが、ざっくり月に2,000円程度です。さすが、ここまで高機能だと料金もそれなりに掛かってしまいますね。

無料で位置共有したいならGoogleMapの位置共有などを使うといい

LTE-Mを使った位置送信デバイスだったら、通信範囲的にはスマホと大差ありません。だったら、スマホの位置共有機能を使ってもいいのではないかと思います。スマホだけで済むので追加料金はありません。

GoogleMapの位置共有機能
詳しくは下記ページで解説しています。

共有期間を指定しなければ、GoogleMapの位置共有は開始や停止の操作が無く、常に位置をGoogleに送信して家族などと共有できます。家族を家に置いて登山に行く人は全員設定して、「帰ってこなかったらここを見て」と、操作を教えておいてください。

位置共有期間を1時間単位で指定したり、共有を手動で停止することも出来るので常に位置を共有することに抵抗がある場合はそのようにしてもいいと思います。ただ、そうすると登山の開始と終了に合わせて操作をせねばならず、どうしたって忘れてしまうことがあります。遭難した時に限って位置共有を忘れていたりするんですよね…。ご注意ください。

ヤマレコ いまココ
トラックログの記録にヤマレコを使っているなら、ヤマレコのいまココを使うとよいでしょう。ログを記録しているあいだヤマレコのサーバーに位置を送ります。家族はいまココというアプリやWebサイトで位置を確認できます。

ジオグラフィカ グループデータリンク
拙作の地図アプリ、ジオグラフィカにも位置共有の機能があります。ジオグラフィカクラウドにログインし、複数のメンバーでグループを作って位置などを共有します。複数人での同時行動を想定した機能で、例えば捜索や狩猟などで使うことを想定しています。そのため、ちょっと操作が複雑で万人にはオススメ出来ません。

いずれ、もうちょい簡単に自動で位置共有する仕組みも作ろうと思っています。

Apple 「探す」
家族や友人が全員iPhoneユーザーなら、「探す」で位置を共有する事もできます。でもAndroidでは使えないので、利便性としてはGoogleMapの共有に劣ります。

とりあえずはGoogleMapの位置共有
まずはGoogleMapの位置共有を使えばいいと思います。GoogleMapならみんなのスマホに入ってますし無料ですし、家族に使い方を教えるのも比較的簡単です。

格安SIM(MVNO)で予備機を用意するのもアリ

ソフトバンクや楽天の様に、山で繋がりにくいキャリアと契約している方は、サブスマホを用意してdocomo系の格安SIMを入れるのもおすすめです。

docomo回線のデータ専用格安SIMを1000円未満で契約して、機種変などで余ったサブスマホに入れてGoogleMap位置共有をすると安心感が増します。昼時や帰宅時など、混む時間はネットが遅くなりますが、サービスエリアはdocomoの普通回線と同じです。

私は3回線(docomo電話付き(1,600円)、au(530円)、ソフトバンク(900円))全部格安SIMで、月額合計は3,000円くらいです。未だに携帯1台で月に7,000円とか払ってる方は乗り換えを検討してみるといいかも知れません。

携帯キャリアの乗り換えは大変だろうって?いえ、全然簡単ですよ。家の引っ越しより全然楽勝です。

スマホで位置共有をするなら機内モードにしてはいけない

GoogleMapの位置共有もヤマレコのいまココも、当然スマホを機内モードにしてしまうと位置を送れなくなってしまいます。

一昔前は、「登山中はスマホを機内モードにしてバッテリー消費を抑えましょう」というのが常識でしたが、位置送信機能を使うのなら、機内モードにしてはいけません。

谷沿いの登山道や斜面のトラバースなどは圏外になりがちですが、稜線やピークなどでは一時的に通信が回復することがあります。その瞬間に位置を送れることがあるので、機内モードにせず使ってください。

山間部ではモバイルバッテリーが特に重要

スマホを機内モードにせず登山をするとバッテリーを多く消費します。

近くに基地局があるなら弱い電波出力で通信できますが、山間部では基地局が遠くにしかありません。すると送信電力を上げなければならず、街より多くのバッテリーを消費します。距離が近ければ弱い光でも明るく見えるけど、離れると強い光でないと見えないのと同じです。電波も光も似たようなものですから。

また、距離が離れると通信品質が落ちてリトライが増えます。それもバッテリー消費増の要因になります。

機内モードにしないでスマホを登山に使う場合、モバイルバッテリーは超重要装備になります。登山前には残量やケーブルの断線などをよくチェックしてください。

近くのスマホ経由で位置情報を残すデバイス

私はTile(タイル)とAirtag(エアタグ)というデバイスを使っています。どちらも本来の使い方は落とし物防止タグで、鍵などの持ち物に付けます。

落とし物防止タグ。AirtagはAppleの製品なのでiPhoneと相性がいい。

落とし物防止タグは、デバイス自体にGPSの機能は無いし、インターネットと直接通信しているわけでもありません。これらは近くのスマホとBluetoothで通信をして、そのスマホの機能を借りることで位置を送ります。GPS測位とインターネット通信をするのは、近くにいた誰かのスマホです。

なので、これらを人探しに使う意味はあまりありません。だって、近くの人のスマホと通信してるだけなんだから。本人のスマホとGoogleMapなどの位置共有をしておけば同じことです。

ただ、本人のスマホが機内モードになっていて位置共有が途切れた場合でも、誰かとすれ違えば、その人のスマホ経由でTileやAirtagの情報が送られるかもしれません。「最後に本人と誰かがすれ違った位置」が残ります。

AirtagならAppleのスマホやタブレットと通信します。Tileは誰かのスマホに入っているTileアプリと通信するので、周りにTileユーザーがいなければ意味がありません。どっちかと言えば、TileユーザーよりAppleユーザーの方が多いのでAirtagの方が位置が残る可能性は高そうです。

私はAirtagをキーホルダーに付けて、Tileは財布に入れてあります。Airtagはちょっと厚いので財布に入らないんですよね。

私がキーホルダーや財布を落としてしまったとしたら、最後に通信できた位置(つまり落とした位置)が私のスマホから分かるようになっています。通信が切れた以降は、誰かのスマホ経由で位置が送られて来るかもしれませんが、近くに通信可能なスマホがいなければ追跡できません。

以上のことから、登山で自分の位置を残すという目的には適していないと思います。これらはあくまで、落とし物防止タグです。自分の位置は自分のスマホのGoogleMapやヤマレコで送ればよい。

料金は端末代が5000円前後で、維持費は掛かりません。Airtagや電池交換が可能なTileなら数年に1回電池の交換をする程度です。Tileは電池交換不能の使い捨てもありますが、コスパが悪いので私は交換式を選んでいます。

常に信号を出して存在を知らせるデバイス、ココヘリ

最後はココヘリです。

詳しくはWebサイトを読めばだいたい分かると思いますが、簡単に説明します。

これは旧端末(HTCC-T03)です。現行端末(HTCC-T05)は黒くてLIFE BEACONというBluetoothビーコンの機能もあります。LIFE BEACONはオマケみたいなもんと思ったほうが良いでしょう。要は端末自体をウッカリなくしてしまった時にスマホで探せるという機能で、落とし物防止タグと同じようなものです。遭難時に捜索で使われるメインは920MHz帯の信号発信です。

ココヘリは、小さな送信端末(会員証端末)から会員番号を含む信号を発信して、それを受信機で受信することで、距離と方角が分かるというデバイスです。受信可能範囲は、ヘリからの捜索で最大16kmとされています。


2024/1/26追記 2024年になって、GPS(GNSS)を使って座標を取得し、ELTRESの通信網で座標送信をする新端末が発表されました。少なくとも登山口や、エリアによっては稜線やピークから位置送信が可能になると思われます。端末からの信号発信は現行端末と同様に行い、2ヶ月はバッテリーがもつ仕様になっています。最強では?

以下の文章は、従来のGPSなしの端末とサービスについて記述しています。


送信機は測位もネット通信もしていない

現行の送信機はGPSで測位している訳ではなく、ネットと通信しているわけでもありません。送信機が送った信号を受信機で受けて、信号の強弱や方向から位置を探るという仕組みです。雪崩ビーコンに近い仕組みですね。

「座標」を送っているわけではなく、「存在」を送っています。

最大16kmというとすごい数字のようですが、どの山に行ったのか分からなければ探しようがありません。そのため、ココヘリで捜索をしてもらうには「どの山に行ったのか分かっていること」が必須条件になっています。

当然、送信機を登山者が持つことも条件に入りますし、端末を充電しておくことも重要です。端末を持っていなかったり、電池切れで信号が出ていなかったりすると探せません。

送信機のバッテリーは3ヶ月程度もつとされています。測位やネット通信をしないという単純な仕組みだからこそ長時間もつのでしょう。

探してもらうための条件

ココヘリで捜索してもらうためには、まずどこに行ったのか登山届や本人からのLINEなどで分かっていることが最重要。そして、家族がココヘリに連絡して遭難したと判明したら捜索活動が始まります。

  • 本人がどの山に行ったのか分かっている

  • 本人がココヘリ送信機を持っていって電池が残っている

  • 家族などがココヘリに連絡する

この3つが揃わないと捜索できませんし、捜索に入っても見つけることが出来ません。会員の義務は、

  • 行き先を文字情報で家族などに残すこと

  • 送信機を携帯し、充電しておくこと

  • 「いつまでに下山しなければ通報してくれ」とリミットを伝えておくこと

です。

行き先は、ココヘリの登山届提出機能を使うと良いでしょう。ログインしてマイページから利用可能です。最低限としては、家族にLINEなどで行き先の山名やコースを伝えておいてください。それでも一応探しようはあります。

料金など

料金は、入会金が3,300円ですがキャンペーンなどで無料になったりします。例えば、私の紹介コードは「6071」ですが、これを入会申込で入力すると入会金が無料になります。(そして私は会費が割引されます)よかったら紹介コードを使ってみてください。

年会費は5,500円です(※)。以前は3,650円で、1日10円と言ってましたが、jRO(遭難時の捜索費用を補填するサービス)を買収した結果jRO分の2000円が乗って5500円になりました。ネット回線などの維持費が無いので会費が安めの設定になっています。

これまでも個人賠償1億円やアウトドア用品補償3万円などが付いていましたが、jROと統合されたことで捜索費用550万円も付くようになり、より安心感が増したと思います。

※細かく言えば、シンプルプラン(旧端末)、スタンダードプラン(Bluetoothビーコン機能付き)、プラスLプラン(スタンダードプラン+子機のBluetoothビーコン付き)があり、5,500円はスタンダードプランの価格です。BluetoothビーコンはAirtagなどを使えば似たようなことが出来るのでココヘリの基本機能としてはシンプルプランでいいような気がします。ただ、会員証端末を無くしがちなオッチョコさんにはBluetoothビーコンが便利なのかも。

捜索事例

直近の捜索事例を見ることが出来ます。正しく送信機を使えていた場合、多くが短時間で発見されています。詳しくは下記レポートを参照してください。

ココヘリ 社内連絡ツールでのやり取りhttps://hitococo.com/cocoheli/pdf/timeline_0402.pdf

事故ってから3時間で助けてくれるサービスではありません

捜索実績のページに「40%が60分以内、86%が3時間以内での発見を実現しています」と書かれていますが、これはココヘリの対応が始まってからの時間、あるいはヘリが飛び立ってからの時間です。上記事例に載っているグラフのタイトルは「捜索所要時間」となっています。

遭難が起きて、それが家族に伝わる、あるいは帰ってこないのを家族が心配して警察やココヘリに連絡してから捜索が始まります。そこから山域の特定やヘリの手配が始まるわけで、遭難後1~3時間で見つけてもらえる訳では無いし、まして助けが来るわけではありません。遭難したことが伝わる時間や準備の時間も考慮したら、事故から1日や2日は掛かっていたケースが多いのではないかと思われます。

実際、「岩手県での登山中に起きた遭難に伴う捜索事例」は、1日目に事故が起きて17:37に家族がココヘリに通報、翌日の11:00にヘリ出動、11:45に対象者発見、13:00に救助隊到着となっていて、事故からは20時間程度経っています。あくまで、捜索開始をすれば短時間で見つかるという話です(それだけでも十分画期的なサービスです)。

ココヘリは捜索サービスであり、救助サービスではない点も注意が必要です
。ココヘリに限らず、今回紹介しているサービスに「救助」サービスは一つもありません。遭難者を捜索するのがココヘリの仕事です。

警察や消防のヘリにココヘリ受信機を積んで捜索した場合は、そのまま救助に入るかも知れませんが、基本的には提携ヘリやドローンを使って捜索し、見つかったら救助隊に引き継ぐまでがココヘリのサービスです。位置がわかってから実際に救助されて病院に運ばれるまでは、まだ時間が掛かると思っておいたほうが良いでしょう。山から人を運ぶのは大変なのです。

よくあるらしい、ココヘリについての勘違い

ココヘリが自社のヘリコプターを持っていて、通報すればすぐに駆けつけてくれ助けてくれるサービスと思われている方もいるようですが、違います。

ココヘリは今のところ自社ヘリを持っていません。飛ぶのは、沖縄や離島を除く日本国内の提携ヘリコプターで、一部を除く警察や消防のヘリコプターも対応しているようです。

登山予定の山域が判明していて、それら提携ヘリに空きがあり、天候などの条件が合えば飛んで、受信機を使って探してくれます。送信機がちゃんと信号を出していれば短時間で見つけてもらえます(86%が3時間以内に見つかったそうです)。

ヘリ以外の地上班も動くことがあり、警察や消防と協働して徒歩やドローンで受信機を使って捜索するようです。登山者が送信機ごと滝壺などに水没していると探せない事も(電波が水に吸収されてしまう為)あるようですが、その場合は潜水による捜索も想定して準備するそうです。

ココヘリは捜索(遭難者の位置確定)がメインのサービスで、救助自体は警察、消防、民間救助サービスが行います。電話一本でどんな条件でも速攻駆けつけて助けてくれる、夢のようなサービスではありません。

それでも十分画期的なサービスですし、料金も安い(例えば自社ヘリを持ったら今の数倍の会費になるでしょう)です。もっと多くの登山者が入るべきサービスだと思います。

遭難した時、携帯圏内なら自分で通報

もし山などで遭難したとき、そこが携帯圏内なら自分で110番に通報してください。自分で通報すれば、自動で通報者の位置情報が送られます。ただし、短時間の通話では位置の精度が上がらず、基地局の位置や精度が低い位置情報しか送ることが出来ません。ある程度の通話時間が必要です。

地図アプリなどで現在地の座標がわかっているのなら、それを口頭で伝えてください。使っている地図アプリで経緯度を調べる方法を確認しておきましょう。

3日は生き延びられる装備と技術を持ちましょう

どの方法でも、ピンポイントで位置が分かれば助かる可能性が高くなります。しかし、位置がわかってもすぐに救助してもらえるかどうかは天気や状況次第です。ココヘリを使っていても、事故発生がココヘリに伝わって捜索が始まるまでにはタイムラグがあります。例えば3時間下山が遅れたからと言って、普通は通報しないでしょう。通報された時点で12時間程度は経っているはずです。そこから捜索の準備が始まります。天気が悪ければヘリでの捜索は出来ません(ココヘリの有無に関わらず)。

ココヘリを使っていなくて、入った山域しか分からなければ捜索だけで何日も掛かります。広大な山域から人間を探すのはかなり難しい作業です。まして、行った山も分からないなら見つけてもらうのは絶望的です。

登山の基本は自力下山、セルフレスキューです。道に迷ったら地図、コンパス、GPSアプリなどで現在地を割り出しましょう。どこを歩けば安全なのか読図をして自分で考えましょう。その日に自力下山するのが無理ならビバークしましょう。

怪我をして動けないのなら、その場で何日も耐えなくてはいけません。行った山も分からず誰も捜索していなくても、偶然誰かが通りがかるかもしれません。諦めず頑張ってください。

ビバークのためのツエルトは必須装備です。買っても使ったことがなければいざと言う時に使えませんよ?練習しておきましょう。Youtubeにも解説動画があります。

雨具を持ってない?ヘッドランプも無い?水も食料も下山後に空っぽになる?ダメですよ。3日程度は生き延びられる装備を持ってください。

なぜ晴れた日にも雨具や防寒着を持って登山をするのか?それは、その日に帰れなくなる場合もあり、翌日や2日後は雨が降るかもしれないからです。「備えよ、常に」です。備えて冷静に対処し、諦めずに生き延びてください。

まとめ

特徴を表にまとめてみました。特性や初期費用、ランニングコストなどで選んでください。
  • 低コスト簡単操作で位置共有がしたいなら、とりあえずGoogleMapの位置共有やヤマレコのいまココ、Appleの「探す」を使いましょう。

  • 少しお金が掛かってもいいのなら、GPS BotやIBUKI GPSなどもよいでしょう。スマホのバッテリー節約に貢献します。IBUKI GPSは山で使うことを想定しているので使い勝手も良いです。

  • 金ならいくらでもあんぞー!という方はガーミン in Reachもよいでしょう。衛星通信は最強です。

  • 落とし物防止タグはあくまで落とし物防止タグです。人探しには使えないと思ったほうがよいでしょう。

  • ココヘリも万能ではなく、仕組みをよく理解して、家族にも説明して使いましょう。でないと、せっかくの送信機がただのお守りになってしまいます。新しいGPS対応端末はコスパも考えたら最強かもしれません。

  • こういうデバイスに限らず、山で使う道具は機能や使い方をよく理解して正しく使いましょう。山は危険な場所で、登山は命がけの遊びだということをお忘れなく。

  • どの山に行くか、どのコースを歩くのか、いつまでに帰るのかは、目的に関わらず家族に伝えておきましょう。ココヘリで探してもらうためとか以前に、登山者として最低限の義務です。

わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。