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ハーレー・ダヴィッドソン

ペンネーム Mr.K

 Sさんは私の小・中学生時代の同級生の父親である。
また、私の母親の同級生でもある。

Sさんは、高度成長期に大きな都市間の中間地点に、
先駆者としてドライブインを興し、
モータリゼーションの波にも乗り大きく成功した。

 ある日、Sさんが学校の同窓会のお開きの後、
私の母親と鮨屋で一緒にいるとのことで電話を頂き、
私を店に誘ってくれた。

 店に着くとSさんは赤ら顔の笑顔で迎えてくれ
鮨を振舞ってくれた。
 そして諭すような口調で語られた。
「なあ、君はうちの息子と同級生だろ。
同級生は減ることはあっても増えることはないんだよな。
うちの息子とも仲良くやってくれよ。」
そう言って、銚子を傾けられた。

 10年程前、Sさんは店を手離して隠居生活に入られた。
譲渡金でかなりの額が入ったとのことで、
大型のハーレー・ダヴィッドソンを購入し、
息子のところまでやってきたそうである。
 隠居年齢で大型バイクを買う、気の若さ、豪放さに
驚かされたが、息子が驚いたのはそれだけではなかった。
「いやー、ハーレーってすげぇーな。
 バックするバイクなんて初めて見たわ。」
Sさんは得意げであったそうな。

 数年前、Sさんは鬼籍に入られた。
私の母親は同級生を一人減らした。
  
 私は今もSさんの息子と連絡をとっている。

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