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ローマの休日

ペンネーム Mr.K

 初めてローマの休日を観たのは大阪なんばの名画座であった。

雑誌を何気なく見ていたら、リバイバル上映の情報を見つけた。
さっそく、当時付き合っていた彼女を連れ出し観に出掛けた。

 その頃はレンタルビデオ全盛の時代で、
たいがいの映画はビデオで観ることができたのだが、
何故かこの映画だけは映画館で観ようと心に決めていた。

 当時は、名画座は二本立ての興行という形で上映されることが
多かったのだが、もう一本が何だったのかを今は憶えていない。
それほどこの映画の印象が強かったのかもしれない。

 映画は愉快にそして軽快に、心地よく進んだ。
しかし決してハッピーエンドではなかった。
ラスト、二人は互いに惹かれあいながらも別れることになる。
ここが切なさをふくらませる。
ただ、その時、ヘップバーンは一筋の美しい泪を流すのではあるが、
サーッと綺麗に去っていく。
一方、グレゴリー・ペックは何度も振り返り、振り返りしながら
会場を後にする。
 このシーン、男と女の別れを象徴していると誰かが言っていた。

 今、映画館で映画を見る人はどれほどいるのだろうか。
これからも、普及したDVDだけでなく、
今後増えるであろうネット動画配信などの利用拡大で、
ますますその数は減少していくことだろう。
しかし、このときの、ときめくような感動は映画館の中にだけある
気がする。

 ところで、
その彼女とは長い交際期間を経て別れることになったのだが、
しかし、彼女は美しい一筋の泪を流すことはなかった。
映画はあまりに美しすぎる。

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