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東京ヴェルディ 新スタジアムに関する考察

 現在、味の素スタジアム(東京都調布市)および味の素フィールド西が丘(東京都北区)をホームスタジアムとしている東京ヴェルディ。以前から新スタジアムに向けた構想については構想・検討が進んでいたものの、経営母体がゼビオグループに変更となってからは、そのような動きや噂は全く聞こえなくなった。

 2022年末の中村社長によるラウンドテーブルにおいては、ヴェルディの練習場を含めた構想については発表があったものの、新スタジアムについては構想策定ですら進んでいないような状況である。

 ここからは全くの私見ではあるが、新スタジアム候補地と、実現性に向けて考察してみることにする。

新スタジアムの候補地

 
 現時点で、新スタジアム建設地の候補として挙げられるのは、以下5箇所である。候補地は、いずれもヴェルディのホームタウンである事を前提としている。渋谷や築地等今後スタジアム建設の可能性のある地域については、他のチームも注視しており、ヴェルディのアドバンテージが見込めないため、除外している。

 どの候補地も課題・問題があるものの、基本的には自治体等からの土地無償貸与等の条件が得られ、建設や運営については資金調達を民間に頼る等の上下分離方式が前提となると言えよう。

 また、経済産業省が提唱する「スタジアム・アリーナ改革 ガイドブック」に記載のとおり、スタジアムがまちづくりの一環となり、人が集まり経済活動が活発となる様なスキームが必要となる。

①稲城中央公園総合グラウンド(稲城市) 可能性:20%

 稲城中央公園総合グラウンドは、稲城市が所有し、(公)いなぎグリーンウェルネス財団が指定管理者となっている施設である。1991年の稲城中央公園開園と同時に供用が開始され、サッカー等の球技が可能なグラウンドと陸上トラックが備わっている。

 京王相模原線・稲城駅から徒歩圏内にあり、アクセスも悪くない。

 2021年に策定された「稲城市公共施設等総合管理計画 市有建築物アクションプラン」においては、築30年となっているメインスタンドについては「長寿命化を図るため、適切な維持保全を行う」とされており、新スタジアムに関する検討は、全く行われていない。

②多摩市陸上競技場(多摩市) 可能性:30%

 多摩市陸上競技場は、多摩市が所有し、多摩市健幸スポーツパートナーズ(代表企業:株式会社フクシ・エンタープライズ、構成企業:株式会社ハリマビステム/日本体育施設株式会社)が指定管理者となっている施設である。サッカー等の球技が可能なグラウンドと陸上トラックが備わっている。

 京王相模原線/小田急多摩線・永山駅や小田急多摩線・はるひ野駅から徒歩圏内にあり、アクセスも悪くない。

 ヴェルディは2011年に、多摩市と「市立陸上競技場の活用に関する協定」を締結、多摩市陸上競技場を練習拠点として使用している事もあり、多摩市との関係性は良好である。また、2016年には有志により多摩ニュータウンスタジアム構想が立ち上がり、収益面でも問題無いとの判断に至ったものの、その後大きな進展は見られていない。結局、2019年に改修工事が行われたに止まっている。

③京王プラザホテル多摩跡地(多摩市) 可能性:10%

 2023年1月に営業を終了した京王プラザホテル多摩は、多摩センター駅から徒歩2分という抜群のロケーションを誇っている。客室稼働率の低下が営業終了の主な理由だが、建物の老朽化に関しても、営業終了の一因となった。京王電鉄が所有する私有地という事もあり、用途は多岐にわたるため、主に海外で見られるショッピングモールとスタジアムの一体化等、イベントの無い日においても集客ができる環境を作るという点では、候補のうち最も適していると言えよう。

ただ、敷地面積が5,484㎡のため、隣接する駐車場(タイムズ 多摩センター中央第3 恐らく土地の所有者は京王電鉄)と一体となった開発(公道を挟むため、工夫が必要)が必要となり、実現に向けたハードルは非常に高い。

 京王プラザホテル多摩の営業終了後も、テナントとして唯一営業していた「三井住友銀行 多摩センター支店」も、2023年9月に新百合ヶ丘に移転。今後、近いうちに現存建築物の解体が予想されるが、その後の用途は未定となっており、京王電鉄の中期経営計画においても、跡地の用途についての言及は無い。

④立川公園陸上競技場(立川市) 可能性:5%

 立川公園陸上競技場は、立川市が所有しているが、指定管理者は不明となっている。サッカー等の球技が可能なグラウンドと陸上トラックが備わっており、多摩モノレール・甲州街道駅と柴崎体育館駅から徒歩圏内とアクセスも悪くない。

 立川公園陸上競技場は築60年以上と老朽化が激しく、2029年の共用開始に向けて、改修工事に関する検討が進められている。但し、あくまで市民利用を前提とした検討となっており、これから新スタジアム建設の構想が進むという事は考えづらい。

⑤味の素フィールド西が丘(北区) 可能性:5%

 ヴェルディおよびベレーザのサポーターにお馴染みの味の素フィールド西が丘は、独立行政法人日本スポーツ振興センターが所有・管理を行っている。都営地下鉄・本蓮沼駅やJR埼京線・十条駅から徒歩圏内にあり、JR赤羽駅からもバスが多数発着しており、アクセスは良好である。

 1972年にオープンし、2009年にはピッチの全面改修が行われたものの、周囲に住宅地やトレセンがある事もあり、現状からの拡大については非常に難しいと言えよう。

まとめ:暫くは味スタという時期が続く

 
 主に新スタジアムの候補地となる5箇所について紹介したが、いずれの場合も官民共に新スタジアム建設に向けた動きは見られておらず、直近で新スタジアムの建設に向けた検討が進むとは到底思えない状況である。

 自治体の協力が得られない中で新スタジアムの構想を練るとなると、最も現実的なのが③の京王プラザホテル多摩の跡地活用となる。ロケーションにおいては申し分無く、イベントが開催されない日時における集客についても申し分無いと言えるが、所有者の京王電鉄の計画次第となる。前述のとおり、京王プラザホテル多摩跡地のみではサッカーグラウンド1面を用意するのも困難な為、隣接する駐車場を含めて複合施設(商業施設+球技専用スタジアム+駐車場)とするのが現実的といえよう。ヴェルディのホームタウンの中でも多摩市は繋がりが強く、ショッピングモールとスタジアム、アリーナが一体化となった施設を作るという点では最適な場所と言えよう。

 阿部裕行・多摩市長は、京王プラザホテル多摩の閉館セレモニーにおいて「閉館された後についても京王電鉄、東京都などと連携し多摩センター発展のよすがとなるよう共に協力してまいります」とのコメントを残している。
 
 果たして、新スタジアムが一体となった施設が多摩センターの発展に繋がるのかどうか、今後の動向に注視したい。

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