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電気のおはなしその4・力と加速と質量と(その1)

前回までのおはなしで、

  • 電気の正体は電子という粒。

  • 電子が移動する現象が電流。

  • 電子が移動するということは、電子に対して力が働いているということ。

  • 物体に働く力が大きいほど、物体はビューンと大きく加速する。

  • でも物体が重いと、あんまり加速しなくなる。

  • というわけで、電子の移動は力学の法則に従っている。

ってことを書いてきたつもりです。(電子だけではなく陽子も電気を持っていて云々というツッコミもあるかと思いますが今は知らん顔しといて…)

さて、この力学の部分について、ちょっと掘り下げていくことにします。前回のおはなしでも書いた、

物体に働く力が大きいほど、物体はビューンと大きく加速する。
でも物体が重いと、あんまり加速しなくなる。

という性質ですが、これについても昔の科学者がさんざん実験や研究を重ねた結果、次のようなことが分かっています。

物体の質量をm、物体に働く力をF、物体に発生する加速度をaとすると、
a=F/m
という関係式が成立する。

この式を運動方程式と呼び、高校の物理学で必ず出てくる公式です。

…いや、a=F/mなんて式は習ってないよ?F=maっていう式で習ったよ?という人も多いかもしれません。確かに、数学的には同じ内容を示す式ではありますが、

F=ma
質量mの物体にaの加速度が生じているとき、働いている力Fを求める式。

a=F/m
質量mの物体にFの力を掛けたとき、物体に働く加速度aを求める式。

という解釈の違いが生まれるわけですね。私がなぜ、あえてa=F/mと書いたかというと、

加速度と、物体に働く力Fは比例する。
加速度と、物体の重さは反比例する。

という話をしたいからだったのです。とりま、これは必ず覚えておいてほしいことなのですが、自転車の話でお分かりの通り、これは誰もが日頃から経験的に知っていることなんですよね。

車でレースをするとき、エンジンを強化するのはもちろんとして、運転席以外の座席を取り外したりもしています。アレは、力を大きくするのと同時に車体自体を軽くすることによって、力と重さの両面から加速を強化しているわけですね。ちゃんと物理学の法則に従ってるんです。

上のほうでは、mを「質量」と呼んでいたのに、ここでは「重さ」になっているのは、意図的にやっていることです。後ほど、説明したいと思います。

ところで、力・加速度・質量の単位を話していませんでした。

  1. 力(英語ではForce。略号はF。)
    力の単位はニュートンで、記号ではNと書きます。1ニュートンの大きさは、質量1kgの物体に1m/s^2の加速度を生じさせる力の大きさです。

  2. 質量(英語ではmass。略号はm。)
    質量は、力が加えられた場合の加速のしにくさの度合いです。単位はkgで、1kgの質量は、1Nの力が加えられたときに1m/s^2の加速度が発生する物量です。

  3. 加速度(英語ではacceleration。略号はa)
    加速度は、1秒間にどれだけ速度が増えるかの値です。例えば、静止している物体に力が加わり、1秒後に1m/sの速度で動くようになったとしたら、この間の加速度は1m/s^2となります。

さーて、高校で物理の力学の勉強をしていると、この辺から意味ぷーになってしまう人が多いんじゃないかと思うんです。なにしろ、加速度の本来的な定義は速度の微分値ですからね…。
ただ、ボクはそういう面倒くさい話をしたいわけじゃありません。力・質量・加速度の3つの定義を見ていると、力は質量と加速度によって定義され、質量は力と加速度によって定義され、加速度は力と質量によって定義され…って循環しているだけじゃないですか!!

でも、力・質量・加速度の3つの定義をよーーーく見ると、これら3つ以外の値によって定義される値がひとつあります。加速度です。加速度は、

1秒間の時間の間に、どれだけ速度(1秒間当たりに進む距離)が増えるか

ですから、「時間」(単位:秒)と「距離」(単位:メートル)という2つの外部の値によって決定されます。それじゃあ、「時間」「距離」はどのように定義されたかというと、

人間がテキトーに決めた値

なのですよ奥さん!!(えぇぇぇぇぇ! と、スタジオにいるサクラが驚きの声を上げる)
時間の定義は、1日を24時間とし、1時間を60分とし、1分を60秒とした値です。昔の人がテキトーにそう決めただけです。
距離の定義は、地球一周を4万キロメートルとし、1キロメートルを1000分割した値を1メートルとし、1メートルを1000分割した値を1ミリメートルとしただけです。これも、昔の人がテキトーにそう決めました

※本当は、質量についても、「この物体を1kgってことにしよう」と昔の人がテキトーに決めたのが基になってます。

つまり、運動方程式っていうのは、

昔の人がテキトーに決めた1kgという物体に対して、ある力を加えてやったら、昔の人がテキトーに決めた1秒間という時間のあいだに、昔の人がテキトーに決めた1秒間あたり、昔の人がテキトーに決めた1mの距離を進むという運動をするようになった。これを1ニュートンっていう力の大きさにしようや。

って話なんですね。
物理学で、クーロンの公式を覚えるときに、真空の誘電率ε=8.85×10^-12だとか、電子の電荷-1.6×10^-19だとか、電子の質量9.1×10^-31とか色んな係数とか定数とかを暗記させられますが、あの値は何かというと、

昔の人間がテキトーに決めた質量とか長さとか時間とか、それらに関係するいろいろな現象同士の値を相互に調整するために逆算した値

なんです。だから、宇宙のどこかに地球と同じような星があったとして、そこに住んでいる宇宙人が人間と同じ知能を持っているとしても、その星では地球の1kgとは別の量で1kgを定義しているでしょうし、地球の1mとは別の長さで1mを定義しているんだと思います。とうぜん、いろいろな物理定数なんかも、地球での値とは別になっているはずですね。

長くなったので、今日はここまで。
早起きは三文の得。猪鹿蝶は五文。雨四光は七文。
花見酒とか月見酒は速効で五文だからずるいよね。あ、でもお互い様か。

図1・急に呼び出されて困惑する小野道風先生

以上。

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