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電気のおはなしその72・電流と電波

第16回で、世の中の電気は全部交流だよ、という話をしました。例えば目の前にある乾電池も、目の前でテスターで測ったりする分には電圧は一定ですが、5年10年20年経てば段々と劣化して電圧が落ちていくことでしょう。また、乾電池が製造される前は電圧が存在しなかったはずですから、長いスパンで考えれば「時間によって電圧が変化」しているわけです。人間の体の中を流れる電流も交流だし、原子の熱運動によって振動する電子による電流も交流です。

電流が流れると、その周囲には磁界が発生することが分かっています。人間の体の表面にある原子の中にある電子も熱によって振動していますから、その振動によって周囲に磁界が発生しています。
磁界が発生すると、今度は磁界から電流が発生することも分かっています。このようにして、一度電流が流れると、電流→磁界→電流→磁界…と連続して作用していきますが、この現象を電波とか電磁波と呼んでいます。最近、スーパーの入り口などで体温を測定する装置が置かれていますが、あれは人間の体の表面にある原子が体温(熱)によって振動し、その振動によって発生した電磁波を測定することで体温に変換しています。体温が高くなるほど電子の振動は激しくなり、人間の体から放出される電磁波の周波数も高くなるわけなんですね。

この、温度と放射電磁波の関係を研究したのがステファン・ボルツマンで、放射される電磁波のエネルギーは物体の温度(絶対温度)の4乗に比例するということを見出しました。その時の比例係数をボルツマン定数と呼んでいます。

鉄を高温で熱すると赤みを帯びてきますが、これもボルツマンの法則によって求めることができ、非常に温度が高いと、放射される電波は人間の目が感じることができる光の周波数まで高くなるわけですね。さらにもっともっと高温になったのが太陽で、6000度程度まで熱せられた気体などが放出する電磁波のエネルギーが地球まで届いているということになります。

「光は電磁波の一種」という話を聞いたことがある人は多いかもしれませんが、電磁波の一種もなにも、電磁波そのものが光です。実は人間の目は電磁波センサーで、ある特定の周波数の電磁波を受けるとそれを光と感じて神経から脳に情報を伝えているのです。感覚的にはにわかに信じがたいことかもしれませんが、人間の目は電波を感じるアンテナそのものなのです。

電磁波は、周波数によって様々な性質を持ちます。ラジオやテレビ、携帯電話など情報を載せて遠くまで飛ばすのに適した周波数の電波、人間の体を突き抜けて体内を透視するのに使える電波(X線)、体に吸収されて体温を上げるために有効に作用する電波(赤外線)、そして人間の目が物体を感知するのに適した電波(光)、そして人間の目には見えないけれども、化学的作用が大きい紫外線…などなど、いろんな電波があります。

そして、人間の思考は脳内の電流によって形作られていますし、「電子の塊」である人間が歩けば「電気を持った粒子が移動」することになりやはり電磁波が発生します。

そう、人間の存在そのものも、ある刹那の時間だけ存在する電波なのかもしれませんね。やがて、光の速さで宇宙の果てに飛んでいき、どこかに消えていく…。

以上。

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