繰り返される悲劇の感想と考察① ~はじめての繭期2020に寄せて


はじめての繭期2020から日曜の繭期大夜会まで、皆様、お疲れ様でした!
そして今日はなんと、新作の作家さんの発表!期待値上がりまくりですね!!

自分はこの間に今回のラインナップ外の円盤も見返し、自分で自分にコクーンを投与するがごとく繭期に狂っておりました。
絶対に絶望するってわかってるのに、なぜか何度も見てしまうんですよね…もはや中毒症状かもしれません…

本稿では、はじめての繭期2020でラインナップされた4作品+LILIUMについて、
各作品それぞれの感想や考察はもちろん、シリーズとして見たときに思いつく考察を書いていきたいと思います。
自分がこの先シリーズを見続けていくときにチェックしたいポイントをまとめていますが、はじめての方にもそうでない方にも、お読みいただけたら嬉しいです!
※めちゃくちゃ長いのでご注意ください。なんで5作品まとめちゃったんだろう。


TRUMP

(2015年NU版=今回配信されたもの)

・ソフィがウルを友達だと認め切れてないのがもどかしい!!!
ソフィが育ったのはダンピールの孤児が集められた養護院で、そこで卑屈なやつらばかり見てきたソフィは、自分には友達などいらないと言い張りつつも、ウルを突き飛ばしたことをあとで謝りにきたりするわけですよ…素直じゃない!

・ウルは、ダンピールの話題になったとき、おそらく自分の自尊心のために、「吸血種に上も下もない」なんて言うわけですが、それは図らずもソフィの心にも届いている言葉だと思うんですよ…。もっと早く素直になっていれば、友達として過ごす時間をもっと持てたかもしれないのに…。

・SPECTERを見るとわかるのですが、萬里はソフィの名付け親なので、完全にソフィの親戚のおじさんムーヴをしてくるわけですが、そこの会話が、
友達はいないのか→いらない
ウルは友達じゃないのか?→そんなんじゃない
そういうのを友達って言うんじゃないのか?
ってね…!もう、思春期の子と親戚のおじさんの会話にしか見えない!!
わがままでひとりよがりで寂しがり屋、とかね、これ、萬里がソフィに言う言葉で、確かにソフィのことを言い当ててはいるんですけど、萬里目線からすると、甥っ子に偉そうなこと言いたい若い叔父、みたいなのも見えてきて…萬里も言いたかったんだね!って思うと、作品に場違いな微笑ましささえありますね。

・地下書庫でソフィとウルの会話で、ここには一生かかっても読み切れない本がある、とかウルが言ったあとに、「ここにある本を全部僕に読ませる気か」ってソフィが言うんですけどね…あなたは読めてしまうんですよ…時間は永遠にある…

・永遠の繭期でもいい俺は生き続けるんだ!とウルが叫ぶ、それにソフィの返しは「たった一人でか?」なんですよね…わかってるんだこの子は…不老不死の苦しみを…自分が一人で生きてきたからなんですかね…?
アレンも同じことを言うんですよね、永遠の命って言われてすぐに、いらない、みんな死んでいくのに一人で生き続けるなんて、そんなの寂しい、って。アレンはソフィとは違って、メリーベルという大事な人がいることを自覚していたから、自分一人が生きながらえても意味がないとわかっている…。
そして結局ソフィも、ウルがいないなんて、ってアレンと似たような思いをこじらせていくわけですしね…。アレンとの違いは、大切な人がいることの自覚が早かったかどうかってだけで、ほぼ同じことを考えている。
永遠が孤独だなんて、すぐにわかる人ばかりじゃないのは、不老不死を求めてもがく人が絶えないことや、スノウがソフィを受け入れてしまったことからもわかります。
その中でアレンとソフィは、クラウスのように現に経験しているわけでもないのに、実際に不老不死になる前から、それは孤独だ、とすぐに結び付けているのですよ…。血族だ…。

・アレンが、メリーベルが泣いてる、っていうの、繭期による感覚鋭敏なんでしょうかね。遠隔透視のような、一種の超能力めいたものだったのでしょうか。

・クラウスはわざわざ街にメリーベルの顔を見に行っている。だからソフィを見て、あの女にそっくりだった、なんて言ったわけですね。街に買い出しに出たときにちらっと見ただけなんて嘘だろ…

・ソフィはこの2800年後にマリーゴールド、3000年後にLILIUMをやらかすわけですが、この時点でのソフィはそんな狂ったことをするようには見えないんですよね。
でも、ちょっとだけ、あっソフィってほんとはやばい性格では?と思う場面が。
クラウスのイニシアチブで喧嘩が止まって、みんながソフィのイニシアチブかと誤認するとき、ソフィがイニシアチブを確かめるかのように、
「みなよ、僕たちの足元にひざまずけ」って言うんですよね…。
ここ、この、ひざまずけって言ってしまえる精神性。自分が人を言いなりにできるのかも、となって、それを言えてしまうこと。
この場面を見て、ああ、そうか、ソフィの中にも、この残酷さ、支配欲、そういうものの片鱗はあったんだな…って思いました。
しかもここ、「僕”たち”」ですからね。本心ではウルのこと友達だと思ってるんじゃん、というのも見えて、さらにしんどい。

・TRUMPに僕を選べと迫るウルが、君こそいなければ、ってソフィに襲い掛かる場面。
ここでソフィは、「ウルやめろ、君は僕の友達だ」って止めるんですよね…。
いやいやいや、直前までずっと、僕には友達はいらないとか言ってた人がですよ。
好意的に解釈すれば、なんだよほんとは友達って思ってたんじゃん、素直じゃなかったんじゃん、ってなるんですけど、
自分の身を守ろうとして咄嗟に出てくる言葉が「友達だろ?」はやばくないですか…?
これもまた、LILIUMをやらかすような、ソフィの残酷さが現れてるなあと思います。

・ピエトロの話。クラウスに、なんであなたはここにとか聞かれてるあたり、人間のハンターが任務で来ていることはクラウスにはバレているみたいですね。
またピエトロは、何のためにお前を遣わしていたと、ってモブのティーチャーに怒られてる(当時のヴラド機関担当のティーチャー?)。アレンがクラウスの心を乱していると把握していて、その抑えとしてピエトロが同室にされてたんですね。
そして終盤、ピエトロがクラウスに、アレンが人間に襲われてるって知らせて、頼れるのはあんただけだなんて助けを求めちゃってから、「僕はなんだってクラウスなんかに」って言うんですよね…
ヴラド機関付きである彼の任務からすれば、TRUMPであるクラウスの心を乱すようなことは言ってはいけないんですよ。
なのにその使命よりも、きっと、アレンを助けたい、アレンが大好きなクラウスならなんとかしてくれる、という思いが勝ってしまったんでしょうね(おそらく他のティーチャーはまたあいつか、という反応でしょうし)…人間のハンターでありながら、アレンに情が移っちゃってたんですね…

・ラファエロはソフィを噛んでいる。
そしてグランギニョルで、ダミアンコピーが機能し続けているということは、永続的な命令であれば、イニシアチブは、その掌握者の死後も生き続ける、って言われています。
ということは、ソフィは、ラファエロとクラウス、二人にイニシアチブを掌握されているんですよね…?
ラファエロが命じたのが、ひざまずけってのと、ウルから離れろってことだけで、永続的な命令ではなかったから特に何も起こっていないだけで、掌握はされているわけですよね…

ここで思い出してください、グランギニョルでのイニシアチブ実験。
重複イニシアチブを受けると、5,6人で発狂死するという。
つまり、ソフィは、ラファエロとクラウスの重複イニシアチブを受けてから、性格が歪んでしまった…という見方もできるわけです。
同じく、ウルがあれほど不安定だったのも、マルコの「死におびえ続けろ」というイニシアチブによるものだけではなく、
マルコとダリ、2人からの重複イニシアチブによる狂気、ということもあるのではないかと…
加えてウルは、2つのイニシアチブが真反対のこと言ってますからね、そりゃあ狂うわ、と…。

・さらに深読みすると、ラファエロの「ウルの前にいちゃいけない」という命令は、永続的なものだったのかも、という解釈もできます。
マリーゴールドでは、ウルごっこを終わらせる羽目になる。
そしてLILIUMでは、ウルと名付けた秘薬で保っていた永遠の繭期が終わってしまう。
ソフィは、このラファエロのイニシアチブのせいで、ウルと一緒にいることはできないのでは…?無理すぎる…。

・グランギニョルでダリは「負けるな」とウルに命じます。
そしてクランフェストでの剣術大会、ウルは準決勝まで勝ち残り、ウルvsアンジェリコだったはずの準決勝第2試合は、ラファエロが燃えたことに端を発する混乱の中、行われないまま…。
ウルは確かに「負けなかった」んですよ…。

・ダリが、TRUMPのことを神にも等しいとか言ってしまうのを見て、グランギニョル後に見ると、本当に悲しい…。14年前は、TRUMPなんていないって言ってたのに…そう言わせられるほど、この14年間、ヴラド機関の仕事に従事してた、ってことですよね…。任務が任務だから、もう認めるしかなかった。

・燃えるクランの中、ダリのセリフに「これが我らの結末か」ってありますけど、これ、グランギニョルに対するアンサーだったんですね…。君はどんな結末を迎えるだろうね、というマルコの言葉の…(Twitterからいただいた知識です)

・ウルは、ソフィのその気高さ、ダンピールの宿命を悲観しない強さに惹かれていました。たとえそれが強がりだったとしても。
でもマリーゴールドやLILIUMを観ちゃうと、今のソフィをウルが見たらどう思うんだろう…って思っちゃいますね。あの高潔なソフィはどこにいった、って悲しくなっちゃいそうだし、もしソフィがそれをウルに指摘されたとしたら、それも耐えられない…。
クランが廃墟になっている冒頭と最後の4500年後時点でのソフィなら、ウルが憧れたソフィに近いかもしれませんね。何もかも悟ったような感じ。まあ夜盗の老人をあっさり殺すのはちょっといただけないかもしれませんが、マリーゴールドやLILIUMの頃のあがいてもがいていたソフィよりは、元のソフィの性格に戻っているような気がします。

・ソフィは、4500年後の時点で、人とちゃんと話すのは久しぶりだって言ってます。てことは、LILIUM後は何して過ごしてたんでしょうね…?
→とか思ってたら、次回作は、時系列的にはLILIUM後ですね…!?現時点の作品の中ではいちばん時代が進んだところ…!ソフィは出てこないのでしょうか(発表キャストの中にソフィ経験者はなし)。
クラウスもソフィも、自分で不老不死者を生み出しておいて放置プレイだからな…!もっともソフィはリリーがそうなっているとは知らないのでしょうが…


LILIUM

・シルベチカをめぐる設定、演出がすごいですよね。というか、舞台ならではで、小説とかではできないことをやってる。
「リリーだけがシルベチカを覚えている」ってただ言われたら、観客もシルベチカがいたのかわからないし、なんなら多数派に流れて、シルベチカなんていないんじゃ?って思ってたかもしれない。
でも、舞台だから、事前に配役が発表されてて、そこにしっかりと、シルベチカは、いる。
そして少女Aっていう設定で(笑)、しれっと出てきていたりもする。
だから、「シルベチカはいるのかいないのか?」じゃなくて、「なんでみんなはシルベチカを忘れているのか?」というのがメインの謎なんだと、はっきりわかるわけですね。

・クランを探検してるとき、カトレアが「おばけがいるっていうことは、死んでもまだ続きがあるってことでしょ」って無邪気に言ってますが、これも示唆的なセリフ。
カトレアは死ぬのが怖いんでしょうか。ある意味、ファルスの共同幻想にいられて幸せなのかなあ。それとも逆に、好奇心旺盛なカトレアのことだから、死すらも体験してみたい!って思ってる…?だとしたら死ねないのは苦しみになりますが…捉え方一つで希望にも絶望にもなるセリフだと思います。

・ソフィは確かに「ダンスは昔習ったことがある」んですよね…元のクランで…。

・TRUMP本編で、生徒たちを燃やしまくるクラウスは、萬里に「同族殺しは禁忌」と糾弾されていました。
ところがLILIUMの、というかLILIUMに至るまでのソフィは、もう、実験で何人殺したのやら…そしてまたマリーゴールドを燃やして…
人間種の叔父がかつて「禁忌」と責めたことを、こんなにも平然と行ってしまっているソフィ…。

・不死の血を投与すると対象物を不死に近づけることができる。ソフィがやってることは完全に、父であるクラナッハがクラウスの血を花に吸わせてたのと同じなんですよね…。
おそらく、不老にできても不死にはできない、という点も似ているのだと思います。クラナッハの小屋に咲き乱れている花は、おそらく枯れないようにクラウスの血で保たれている。でも小屋に火が放たれると燃えてしまったわけですから。
単なる偶然かそれとも、ソフィはどこかで父の記録を読んだのか。
TRUMPのクランの地下書庫は、ソフィやウルがそこで過ごしてたということは、100年前の火事でも無事だったようですから、もしかしたら、ソフィはたびたびあのクラン跡地に資料を読みに行っていた…かもしれません。

・同じく、記録の伝承という話からすると、シルベチカはどこで庭師=クラナッハの話を知ったのか、という疑問もありますね。石舟の記録の中にしかないはずなのに。
シルベチカいわく、古くから伝わるおとぎ話。よく母さんが聞かせてくれた、だそうですが、シルベチカは純血の吸血種のはず…、人間側のヴァンパイアハンターの記録に残る話が、いつしか吸血種社会に伝わり、おとぎ話として語られていた、ということですよね。おい不可侵条約どこいった、やっぱりズブズブじゃないか。

・シルベチカにイニシアチブが効きにくく、真実を知ってソフィに逆らったのはなぜか。
LILIUM当時は、シルベチカもまた、スノウやリリーと同じように、ファルスとの同化が始まっているのかという考察が多かったようですが、
マリーゴールドを見ると、初めからシルベチカはイニシアチブが効きにくい体質?だったようですね。
この記事ではここまでしか言えない……

・イニシアチブの優先度は、意志の強い方が優先される(グランギニョルより)。しかし、血によるものである以上、血が同化すると効かなくなるんですね。終盤、リリーがファルスの行動を制限することができています。

・マリーゴールドは繭期の感覚鋭敏化で、オズやサトクリフほどではないにせよ、一種の予知能力を持っていたってことなんでしょうかね。だから、スノウはリリーを不幸にするだとか、夢の中にいるような気がするだとか、わりと核心をつくことを言っていた。
あるいは、ガーベラを名乗っていた頃は、優しいふりをしているけど実は自分を疎んでいるエリカの本心を見抜いているような素振りもありましたし、本質を見抜く力、のようなものなのかもしれません。

・LILIUMでのキャメリアはたぶん、マリーゴールドのときのウルごっこのときの記憶はないんでしょうね。ソフィの協力者でもなく、ただ操られている生徒。だってマリーゴールドをさらってきたなんて記憶あったら困りますから。
200年前に自分がファルスと一緒に同級生をさらってきた記憶を消されて、ずっと一生徒だと思わされている…ソフィに振り回されまくっているキャメリア、こう考えるとかなり不憫です(全員不憫ですが!)

・終盤、ソフィのイニシアチブによるリセットが入るとき、紫蘭と竜胆も倒れるんですよ…。てことは、この二人もまた、ソフィのイニシアチブの奴隷、協力者だと思わせられているだけ…。
マリーゴールドでのソフィは、紫蘭と竜胆に馬鹿にされるような幻覚を見ていました。てことはやっぱり、彼女らも本当の協力者ではないんですね。本当に信頼しあってたらこうはならない。

・そしてリセットから立ち上がってみんなが去って行くとき、マリーゴールドは「さようなら」と言うんですが、どうもこれだけうまく解釈できてなくて。
仮説①この直後、スノウのイニシアチブによってスノウへの憎しみを思い出し、スノウを刺すことになるから、スノウへの別れの言葉?
仮説②リリーがイニシアチブで全員を自死させようとしている意志をすでに受けていた?だからこのクラン、というかこの世への別れの言葉?
でもみんなはきゃっきゃして去って行ったし、リリーはまだあのタイミングでは意志を固めていたとは言えないのでは…?
いや、もしかしたら、ファルスとリリーのイニシアチブの引き合いになっていて、ファルスのイニシアチブが効いた子はきゃっきゃと去って行くが、マリーゴールドに対してはファルスよりもリリーのイニシアチブのほうが効いていて、集団自死の意志をすでに受け取っていた…ということかも???


グランギニョル

・演劇で「全部誰かの筋書き」とか「これはウルという吸血種が原案を書き、ダミアンが脚本と演出をつとめ、ダリデリコが主演するグランギニョルだ」とか言っちゃう…!
つまりクロードが行った粛清のシーンで泣いてたのがウルとスーなわけですね。ウルが持っているダリ家への恨みが、このグランギニョルの原案…。

・フリーダ様…。共存主義者、という存在にめちゃくちゃ救われたのに、次回作、グランギニョルから2814年後のマリーゴールドを観ちゃうと…。ぜんぜん共存とは程遠くて泣ける…。吸血種社会も人間社会も、なーんも変わってなくて泣ける…。

・ちなみに、グランギニョルでのジャックブレアは血盟新聞(たぶん民間紙ではなく政府の機関紙のようなもの)の記者を名乗っているので、新聞はある、と。
そして2814年後の人間界にはケリトン出版社がある。
二つの作品の舞台は似たような文化技術水準の世界のようです。この世界では吸血種人間種を問わず、社会や技術の激変というのはないようですね。

・めちゃくちゃ重要なイニシアチブ実験関連をメモしておく
重複イニシアチブ→普通は5,6人で発狂死
相反する命令であれば意志の強い方の命令を聞く
複数人で同じ命令を重ねれば強化できる
無理な命令は無理、何も起こらないか、運が悪ければ発狂死
だが、重ねることで無理も通るようになる
繭期でないと効果がなく、ずっとコクーンを投与しつづける必要がある
繭期は全ての吸血種のイニシアチブの頂点にあるTRUMPと深くつながるためにあるのでは?
(バルラハ)
後天的ヴァンプである歌麿のイニシアチブは短時間しか持続しない
単なる主従関係ではなく、脳に誤作動を起こさせ潜在能力を引き出す
(春林)

・コクーンという薬剤で大人にも繭期を誘発できる、繭期に投与すれば症状が深刻化する
コクーンを開発したのはバルラハが所属する組織。

・ダミアンコピーは、イニシアチブによって知識と人格を継承している。バルラハは、ダミアンはある意味では不死、と。

・バルラハ→アンリの執着は、君を死なせやしないって言葉からも、クラウス→ソフィ、ソフィ→リリーにも似ているんですけれど、バルラハは不死じゃないしそもそも人間なんですよね…。不死の友が欲しい、とかじゃないのに、なんでこんなに執着するんだろう。マッドサイエンティストみたいな感じの人だからな、ちょっと何考えてるかよくわかりません…。

・マルコがヨハネスのイニシアチブを握ってる件について
ド頭から、捜査を命じられたダリが「回りくどい、ヨハネス卿らしくもない」って言ってるんですよね…
バルラハとダミアンが一緒にいた情報が握りつぶされてるのも、たぶんマルコに操られたヨハネスの指示…?
そしてヨハネスが襲い掛かってくるときの、マルコの驚くふりをする顔!白々しくてもう!!

・「操られている」って、これも舞台ならではのトリックですよね。
それを明示しないこともできるし、効果音(あのイニシアチブの音)一つでそうであることを明示することもできる…
そして、目の前にいる、この人の姿をしている人物は、いったい本当の中身は誰なのか?って言い出したらもうわけがわからん!
紛れもなく板の上にその人が立っているのに、中身別人ですとか言われたら、疑い出したらキリがない!!!

・そして、そんな、人格が変わった状態で子をなしたら、その子の父親は誰って言えばいいんでしょうね?
人格が変わったからと言って遺伝子が変わるわけじゃないから…
アンジェリコとウルの父親は誰だと言えばいいのか。やっぱり元々の人格であるウル、なのかなあ。
でも、スーと結ばれたのは紛れもなくウルの人格だろうけれど、マリアが誘惑したのは…?だってウルにはスーがいるし、ダミアンに乗っ取られなければ、下級貴族のマルコとすり替わろうなんて思わなかったはずですし…マルコは人格ではなくあくまで偽名だから、アンジェリコの父親はダミアン…?うわあ…。

・染様(ダリ)りょんくん(ゲルハルト)東くん(春林)ってキャスト揃えておいて、栗山航さん(マルコ)が弱いわけがないんだよなああ!!全て知った今は、一周回って、栗山さんの、ほんとは強いのに弱いふりをしている殺陣が逆にすごい。

・ダリの屋敷で何度もスーとマルコは会ってしまっていたわけですが、スーは内心どう思ってたんだろう…人格を乗っ取られたかつての幼馴染を、腹の子の父を…。
もうね、屋敷での初対面から挙動不審なんですよね、直前まで元気にダリに食って掛かってるスーが、マルコに対しては「どうも…」ですから…。
そしてね、この子の父親は…って言いかけるときに、ちらっとマルコの方を見てるんですよ…。ヨハネスの来訪で遮られますけどね…。

・これを見てからだと、アンジェリコフィーバーをどういう顔で見たらいいのかわかんなくなりますよね…一滴もあなたにはデリコの血なんて流れてないんですよ…。

・オズが予知したのは、キキの子孫マリーゴールドが花に囲まれて笑っているところ。しかし「マリーゴールド」を見ちゃうと、そんな場面はあくまでイメージ、幻想だとわかる。あの花に囲まれた屋敷でガーベラが笑うことなんてあったのか…?あったとしても、ガーベラがまだ幼く、窓際の化け物だなんて呼ばれる前のことでしかないでしょう…。
ここでキキに「もう泣かないって決めたの」と言わせる…!リリーと出会ってもう泣かないと決めたマリーゴールドの祖先(そして同じキャスト)に…!

・生き残った人メモ
ダリ、ゲルハルト、春林、歌麿、ヨハネス、キキ(逃走)、アンリ(強制収容クランへ)

・アンリの不死の力は、666人のイニシアチブ+コクーンを投与し続けてその効果を持続させていたことによるものなので、コクーンの投与が止まれば死ぬことができますね。よかった…
いや良かったってなんやねんって話ですけど、TRUMP見てると生死の感覚がバグりますよね…。
で、ってことは、リリーももしかしたら、ウル(薬)の投与切れで死ねたりしないかな?という、これを希望と呼ぶのか?レベルの希望が生まれます。希望の感覚もバグっている。

・繭期少年少女失踪事件まとめ
グランギニョルでは、バルラハ一派が各地からさらってきている。
SPECTERでは、繭期の少年4人が脱走していますが、この4人の脱走にも「ダミアン・ストーン」が一枚噛んでいるらしいって情報屋黒猫が言ってましたね。それで、まさか同一名の人間が無限にいるなんて思わないから、あいつはなんなんだ、って言ったところで黒猫は殺されています。
つまり、SPECTERの話そのもの、あの村が全滅した話のまるまる全部が、どこかにいる別の「ダミアンストーン」が、繭期の少年たち4人を脱走させることで生み出した、1つの「グランギニョル」なんですね…。
ちなみに2814年後の誘拐事件は全く別物で、ソフィが自分の似非クランに攫っています。

・最後にマルコがウルを咬むのは、次なるグランギニョルの下準備のつもりだったかもしれませんが、14年後の成長したウルをめぐる騒動は、TRUMPに捧げるというよりかは、クラウス本人を巻きこんじゃいますからねえ。これはダミアン的には大金星なのか大失態なのか…。

・いやもう雰囲気の違いがジェットコースター。
バッチバチのキレッキレのセリフがダリとゲルハルトに飛び交ったかと思えば、繭期の少年少女たちの、あの不思議な連帯感、つながり…誰一人まともではないんだけれどそれでもなお、いやだからこそ、互いに互いしか理解者がいないからこその、あの3人の不思議な一体感。
あの繭期組の3人、キャスパレでは「踊る」んですよね…繭期の少年少女たち…ソフィの「踊ろうか」…うっ…永遠の繭期…

・なーーーにが「あたしたちの故郷の言葉で、希望」だよ…単発で希望を見せるのやめてくれ…

・これで「お父様同士こんなに仲良かったのになんでアンジェリコとラファエロはああなるの!?」って新たな疑問が生まれ、最新作でまた回収されていくんですよね…希望と絶望の終わらない輪廻…。

・自分らをさんざん苦しめたTRUMPを監視するヴラド機関に行く羽目になるダリちゃんとゲルハルトマジで不憫すぎませんか…。そしてダリちゃんはTRUMP本編でのあの発言に…。
そしてよりによってそのクランに自分らの息子を送らねばならない。心中いかばかりか…。

・このシリーズ、みんな頑張ってるのに、本当の悪人は少ないのに、なんでこう、どう頑張っても悪い方に行くんだろう…って、最初は単に、シリーズの特徴として思ってたんですよね。
でも、このグランギニョルを見て、かつSPECTERにもダミアンがいると知ってから考えると、何もかも悪い方に行ってしまうのは、あらゆる事件の裏にダミアンコピーがいるからなのでは…?
私たちは、ダミアンコピーたちのグランギニョルをいくつもいくつも見せられているだけなのでは…?


SPECTER(初演)

・SPECTERの序盤の4人組脱走シーンで、ティーチャーたちのまぬけづら、黙って脱走する4人を見ていた、って言っていて、最初はクラウスのイニシアチブかな?って思ってたんですが、グランギニョルを踏まえると違うとわかります。
これは、SPECTERの物語というグランギニョルを引き起こしたかった、ダミアンストーンの仕業。グランギニョルで、ダミアンがそっちの脱走にも噛んでるって黒猫が言ってました。ダミアンがティーチャーたちを噛んで操ったか、あるいはクランのティーチャーの中にダミアンがいるのか…。

・しかし、今回の配信順ではグランギニョル→SPECTERでしたけど、上演はSPECTERが2015、グランギニョルが2017なんですよ…SPECTERの時点で、歌麿の名前や「デリコ家の件」って言葉が出てくるのすごくないですか?末満さんの頭の中には本当にもう、シリーズの全てができてるんでしょうね…。

・この繭期組はもしかしたらどっかでコクーンの投与でもされたか?症状がひどすぎませんか?でも、まだこのころはバルラハがコクーンを開発したばかりだから、そんなに出回ってないはず…?

・スティグマ事件について整理しておきます。
心臓をえぐり取る事件(石舟が記録から見つけた事件)を起こしたカルト教団はローザ父が作ったもの。血盟議会により教団は壊滅したが、ローザ父だけがネブラ村に逃れてきて村長になった。
グランギニョルに出てくる原初信仰者たちとはまた違う教団なわけですね。原初信仰はそれだけ広まってるってことだな…
(クロードが粛清したのはあくまでスーとウルがいた教団なのでローザ父のカルト教団はまた別)

・「僕はTRUMPになりたい」、まさかの、ローザにそそのかされたヒューゴのセリフ。ウル、ゲルハルトに続き。

・サトクリフの予言確認
萬里は無数の刃に貫かれて死ぬ。→本作で達成
ノームはあっさり死ぬ。→TRUMPで達成

・SPECTERのサトクリフの予知も、ダリのドブネズミの匂いも、母ではなくその胎内の子のことを感じ取っていたのですよ…

・設定こそ村だけど、どこかクランを思わせるこの、閉鎖性、若者しかいないがゆえの狂っていくさま…教え導く者が不足してるし、ローザの立ち位置が完全にアンジェリコ…

・アレン後(クラン焼き討ち後)のクラウスの表情が、マジの、無。白い無垢の無ではなく、すべてが降り積もって真っ黒になって何も感じなくなった、無。山浦さんのお芝居恐ろしい。

・末満さんによると、SPECTERは「クラウスが猫を拾う話」なんですよね(DVDに収録のトークイベントより)。
クラウスのあらゆることに興味なさそうな態度からもわかる通り、あの頃のクラウスには、アレンのこと以外どうでもいい。いや、たぶんですけど、アレン前でも、だいたいのことはどうでもよかったのでしょう。長い孤独の中で、アレンとその血族だけが彼に手を伸ばさせた。血の戦争以降のクラウスはずっとあんな、全てを諦めた感じで生きているんでしょう。
そして思い出してください、クラナッハに切りつけられ、不死でも痛いでしょうと問われたときの、クラウスのセリフ。
「痛みは危険を察したときに体が発する危険信号」「私には痛みは必要ない」。
そう、「痛みは必要ない」んですよ。
…グランギニョルでダミアン(マルコ)はなんて言ってましたっけ?死ぬことのできないTRUMPが生を実感できるように、この世に残酷をもたらす、でしたっけ?
このSPECTERと全く同じ時期に、グランギニョルの物語が進行していて、供物としての残酷劇を捧げられていますけど…なーんとも思ってなさそうですよね…。繭期に揺り戻されたダリの情緒があんなになってるというのに…。
ダミアンは残酷劇を捧げ続けるでしょうけれど、でも、当のクラウスには、何ひとつ届いてないんですよ。彼に、痛みは、必要ないから。
グランギニョルは、無意味。
ただダミアンたちが勝手に捧げているだけ。
繭期はTRUMPと深くつながる状態、というバルラハの仮説が正しいとしても、それはおそらく、クラウスの感情が繭期の子らに届くだけで、その逆はないのでしょうね。

・クラナッハが無邪気に手を伸ばすのを見てダメージ受けるクラウスがほんとしんどい、確かにクラナッハはちょっと変かもだけど、一途で、何にも悪くないのに。
この14年後、ソフィに手を伸ばしたのは、このクラナッハが手の届かないものに手を伸ばそうとするのに影響を受けた面も、少なからずあったのかも。自分も手を伸ばしてみようと思った、のかも?

・クラウスがハリエットやロダンと鉢合わせしなくてよかったね!?クラナッハを呼びに来たのはノームだし、あと会ったのは、ローザシャドカルロあたり。
この村の創始者の家系=アレンの血族に会わなくてよかったですね…ここで会ってたら阿鼻叫喚ですよ…。

・不死の力は血を介することで与えられる、ってのが本当にしんどい。ソフィは父と全く同じやり方にたどり着いてるんですよ……

・萬里の妻リリーを殺したのは、片目が銀色の吸血種、ということですが、片目を隠してた吸血種ならいましたね…?

・「狂っていようが!所詮、女なんだよお前は。」倫理のかけらもないセリフだけど大好きですね…(再演でなくなってた…泣)

・森でバルトロメと出くわしたときのクラナッハ、自分が襲われても無頓着に受け入れるのに、ソフィが襲われると反撃するんですよね…!恋人の死をどうやって悲しんだらいいかさえわかんないような男だけど、ソフィへの愛は確かにあるんですよ…!
あとここで、バルトロメが命って簡単に壊れちゃ~う!とかいうの、クラウスに聞かれたら燃やされるぞ。

・ライネスについて。末満さんいわく、古英語で「やらかし」で、TRUMP本編ではソフィが噛まれるシーン、グランギニョルではマルコがウルを噛むシーン、マリーゴールドではアナベルが襲い掛かるシーンと、いちばん、うわあああああ…って感じの、取り返しのつかないことをやっちまったな、ってところで流れる曲です。
SPECTERではそれが、萬里がノームをかばって、無数の刃に貫かれて死ぬときなんですよね。これがちょっと謎で。
萬里はその前に、「俺の目の前で誰も死なせやしない」と誓っていて、ノームをかばうことでその誓いを守れたわけですよ。別にやらかしてはないよな?と思うわけです。

でも、シリーズを通して見ると、やっぱり萬里が死んだのはやらかしだな、って思えます。
だって、彼の持つ、「萬里」と「ソフィ」、二つの名が、それぞれ受け継がれてしまったんですよ。そしてその名が、ノームやソフィだけではなく、「リリー」までも巻き込んで、何千年も続く悲劇を生んでしまう…。
これも前述のトークイベントでの末満さんの発言ですが、「リリーが殺された10年前、リリーはソフィの子を身ごもっていた。そしてロダンがノームを拾ったのも10年前。……そういうことです」らしいんですよ(ここで萬里を演じていた中山くんも知らされてなかったらしくめちゃくちゃ驚いている)。
ってことはですよ、萬里は、自らの息子をかばうことで、息子に自らのハンターネームを継がせ、死地へと赴くハンターの道を歩ませることになってしまったわけで…。これはやらかしとるわ…。

そして、これはちょっと確信が持てないのですが、初演の萬里が死ぬシーンで流れる萬里自身の声、「お前の目の前で」誰も死なせやしない、ってなってませんか?
怪我をして自分の過去を語るシーンでは、「俺の」って言ってるのに。
これが「お前の」の場合、お前って、当時まだ胎児だったノームのことですよね…。その目の前で、かつてソフィだった頃の萬里は、リリーを守れなかったことを悔いている、ってことになる…。
そして今また、ノームの目の前に、今度は自分の死を見せてしまう。その目に、人の死を映さないと誓ったはずなのに。
こう考えると、明確に「やらかし」ですよね…。
ていうかここのセリフ!!!実際、「お前の」って言ってますよね!?中山くんの滑舌の問題じゃないですよね!?誰か戯曲集で確認してくださる方はいませんか!?
→7/22追記 お手持ちの戯曲を確認してくださった方(@sayo6様)から情報をいただきました!「俺の」になっているそうです。ありがとうございました!
ということでこの件は、筆者の幻聴と幻覚ということにしておいてください…(笑)

・ソフィは孤児院に引き取られた。アンダーソン姓は、孤児院で便宜的にもらった姓なんでしょうかね。

・初演の生存者:ノーム、石舟、グレコ、シャド

・地味にこの先使うかもしれない情報:クラウスを噛んでもイニシアチブは取れない!

・シャドくんほんと不憫すぎませんか…カルロに「君は優しいな」って言われてましたけど、たぶんあのときカルロ殺すまで人を殺したことなかったですよね…。ローザの頼みでなければカルロへの嫌がらせなんかも絶対にしなかったと思う…。

・結果として、ネブラ村は全滅しました。しかし、ヒューゴたちが殺した分って、そんなに多くない気がしていて。じゃああとはっていうと、クラウスに燃やされたのと、たぶん、燃やされたのと同じくらい多いのが、シャドがローザを守って殺した村人…。しんどい…。シャドが村を滅ぼしたようなもん…。

・ウルもソフィも、名前としては、二代目、二人目、なんですよね…。
そして二人とも、父の死に際に腕の中にいて、父の呪いを受ける。
生きることに絶望せよと。
永遠に枯れない花を作れと。
逃れられない、絶望の輪廻…。


マリーゴールド

・グランギニョル、SPECTER、マリーゴールド。
3作品ともすべて、両親はしっかりと、子を愛したんだよ…
クラナッハとハリエットも、ウルとスーもウルの意思はあったし、アナベルとヘンルーダも…
やめろアンジェリコとラファエロの話はやめてやれ!!!月の翳りでぎゃあああってなるから!!

・ヤン・フラって、フラ家の名前を継いでる。
そしてそのヤンがヘンルーダであり、その子がマリーゴールド。
ということは、ヤンには、グランギニョルのキキの血が入っているんですよね。
オズの予言は、キキの子孫がマリーゴールドに囲まれて笑ってる、というものでしたから…。
てことは、キキはあの場から逃げたあと、フラ家で血をつなぐということになります。あの立場あの状態から、どっからどうやったらフラ家に入るんでしょうね!?もちろん、キキ本人じゃなくて、何代か経てからフラ家と交わるのかもしれないけど。
というか、唯一の跡継ぎであるアンジェリコが死んでるのに、フラ家の名はどこでどうつながるんだ?まあゲルハルトはまだ生きてるか…ゲルハルトは養子でも迎えたのか、はたまた跡継ぎを失って没落貴族となったか?

・同じくデリコ家の顛末も気になる。ダリ・デリコが伝承になってるってことは、デリコ家、あのまま終わった説すらある。ダリの名が人間界にまで轟いているのは、ダリを超える後継が現れなかったことの裏返し?

・ダリちゃん呼びのルーツをたどってみると、グランギニョル&TRUMPでは、ダリ自ら名乗ってるんですよね。
そしてここでは、ソフィがキャメリアにイニシアチブで「ダリちゃんっていうのはどうだ」って言わせてからの、自分で「冴えてるな」なんて…そんなやりとり、地獄では?本当に「友達”ごっこ”」なんだなって思い知る。ソフィはどこかでダリ自身がダリちゃんと名乗っているのを聞き知ったのでしょう。全ては空虚なごっこ遊び。

・これまでTRUMPを求めたウルやローザは、自分のために、自分が死にたくないがためにだった。(ゲルハルトはフラ家のため)
でも、アナベルは、我が子のためなんですよね…なんて愛にあふれた物語なんだ…なのになんでこうなるんだ…。

・永遠の命が欲しいというアナベルに、ウル(キャメリア)が「永遠に生きるなんてろくなもんじゃない」って言うけどこれ、ソフィの本心では?でもソフィが自分で言うのはつらすぎるからキャメリアに言わせてる、言ってもらってるのでは…。
それとも、ソフィによって永遠の繭期の中に閉じ込められているキャメリアの本心…?もう嫌だってどこかで無意識に思ってる?

・二人のダリは同じ過ちをしている。我が子に本当の親を明かせばいいのに、でもその親が望まれぬ血だからと、隠し続ける。ダリもアナベル(ダリ)も同じ。
ダリがウルに言えなかったのは、ウル(マルコ)とスーを守り切れなかった自分を悔いているからかな…
それとも、人間との不可侵条約を掲げて違反を取り締まる立場上(表向きの血盟議会・血盟警察の姿)、まさか人間の女が産んだ孤児を引き取ったなんて言えなかったのかな…。
アナベルはもう完全に、ヘンルーダを守るため…。ヘンルーダが吸血種であるとばれないために…。そして、ヘンルーダは、吸血種だとわかれば吸血種の社会に連れ戻されてしまうから、ここで、他人のふりをしながらでも、一緒にいるために…。
回想アナベルの、ヘンルーダが吸血種だと明かされたときの「それがなんだっていうの?」がね、少し震えてるのに、それでもなお強いんだ…。

・アナベル、人に真実を話して助けを求めるのが下手ってところまで本家ダリに似なくていいんですよ!!ねえ!!!!それで真実を話してもらえないのがグランギニョルでもマリーゴールドでも同じ愛加あゆさん(フリーダ/エリカ役)なのもつらすぎる!!

・ヘンルーダが、医者だから合法的に血を手に入れられて助かる、ってのは、ガーベラに与えるためだけではなくて、自分も飲むためですよね…。

・こっそり産ませるはずだったのに、アナベルは予定外の早産だった…。
グランギニョルではウル、SPECTERではソフィというダンピールの出産が描かれましたが、いずれも、えっ今!?って感じでした。グランギニョルに至っては破水してたし。
もしかして、ダンピールは早産になりやすい、とかなのでしょうか…?
ダンピールは先天的疾患を持って生まれてくることが多い、とのことなので、それは早産によって先天的疾患を抱えてしまうから、というのも、ない話ではない気がする…。

・アナベルの次回作が少年少女失踪事件、アナベルはその真相に近づこうとしている、だからその犯人であるソフィが露見を恐れて殺しにきた、が本来の目的だったんですよね。
窓際の化け物の話さえ聞かなければ…。連れ出して、街中で母親を殺さなくちゃいけないなんて話をして、街中で暴れるように仕向けてる…。あの高潔なソフィがこんなになってしまって…。

・てか、ガーベラをそそのかすのにウルと2人がかりなの、ずるくないですか?だってウルのセリフも全部ソフィが言わせてる。実際はソフィの一人二役、全部ソフィの台本通りなのに、さも自然に会話しているかのように、うまいことガーベラを誘導していて…。ひどい…。

・新聞にダリデリコ=アナベルと載ったのは、独自調査で正体にたどりついてたベンジャミンからのリークでした。実は初見時は編集長を疑ってました、マジごめん。編集長は本が売れればなんでもいいんだもんな!あんたの強欲をなめてたわ!w
ちなみにポーチュラカが、編集長~~って走ってくるとき、編集長は一人で「ケリトン出版社」の最後のポーズを決めています。さてはあんた、一人で踊ってたね?w

・血盟議会とソフィとTRUMPの関係を推測してみる。
まず冒頭から、血盟議会、真っ黒なんですよね。ヤンを尋問してる血盟議会の尋問官たちが、「まさかあの擬似クランから逃げ出すものが出るとは」「秘密を知られたからにはこのままにはしておけない(ヤンが大人のいないクランと言ったことかな)」「種の安定のためには生贄が必要なのだ」「TRUMPのお心に平穏を」ともう、クロなセリフのオンパレード。
血盟議会は、ソフィの擬似クランを黙認、いや容認しているってことですよね。

ってことは、ソフィは血盟議会から、TRUMPだと誤認されている?
TRUMPのお心に平穏を、ってことは、ソフィはTRUMPだから、繭期の子らをさらって好き勝手しているけれど、種の安定のためには目をつぶるしかない、って思ってるんですよね?
それとも、血盟議会は、TRUMP=クラウスであることはわかった上で、クラウスの平穏はソフィのおかげだから、ソフィに手出ししないことでクラウスの平穏を保つ、的なすごい遠回りな理屈?どっちだ???

アナベルが見つけた記録では、2800年前(TRUMP本編)にクランにTRUMPがいた、そのクランは消失し周辺は長きにわたり立ち入り禁止、TRUMPはその混乱の中で姿を消し、血盟議会はその消息を掴めないままでいる、とのこと。
つまり、やっぱり、血盟議会・ヴラド機関は、TRUMP本編でクラウスを見失ってしまい、そのあとしばらくしてから、疑似クランをつくるなど暗躍しはじめたソフィの存在に気づいて、ソフィをTRUMPだと誤認しているのでは…?

ベンジャミンのセリフでは、TRUMPの心が穏やかならば種族全体が平穏、だから議会はいるかどうかもわからない神様のご機嫌を伺い続けなきゃならん、と言っています。まあベンジャミン自身ははTRUMPなんているはずがないって立場ですけどね。
さらに部下が、2800年前より吸血種の社会は安定してるというのが通説、と口を挟む。
それってつまり、クラウスがソフィを手に入れてから、クラウスの心が平穏ということですよね…。問題は、その安定をもたらしてるのはソフィの存在、ソフィがいることでクラウスが穏やかなのだ、という仕組みに、血盟議会が気づいているかどうかですよね。
気づいていない場合の血盟議会の認識は、なんで平穏な時代になってるのかはよくわかんないけど、とりあえずソフィはTRUMPだから、彼のやることは容認するしかない、みたいな、すごく後手に回っている感じになる…。

そしてソフィも、自分がTRUMPだと誤認されていることをわかっていて、それを最大限に利用しているような気がしました。血盟議会なんて怖くない、あいつらにとって繭期の子らはTRUMPに捧げる供物だからね、と言っちゃってますから。
真相に近づきつつあるとはいえ、人間のアナベルをわざわざ殺しに来るってことは、吸血種社会や血盟議会では罰されることはないとわかっているのでしょう…。

で。
血盟議会がソフィをTRUMPだと思って動向を監視しているってことは、クラウスは、ソフィを使って、ヴラド機関の監視を外したってことですよね?
ソフィをスケープゴートにして、自らはヴラド機関の監視を外れて、どっかでのびのび、いや彼の望みはひっそりか、望み通りひっそりと暮らしているってことですよね?
……おい!!!!

・血盟議会が怖くないソフィでも、繭期の子らの親たちが取り戻しに来るのは怖い、と言っています。だから真相を隠蔽し続けなければならない、と。親たちが来たら「またみんな殺さなくちゃならない」と言うあたり、前科あり、な感じがしますね…。
繭期の親たちが怖いのって、希望的な解釈をすれば、あなた自身が親に愛されたからではないの…?って思いたいところです。記憶はなくとも、クラナッハもハリエットも、共に過ごした時間は本当にほんの一瞬だけど、確かにソフィを愛したのですから。
でも、現実的には、ソフィは孤児院で育ったわけでしてね。もうすでに攫った子らの親をたくさん殺してきてる、その経験で言ってるだけ、かもしれません…。

・ところで、ベンジャミンは血盟警察の吸血種ですが、下っ端なのでしょうね。裏では人間社会とズブズブで、出先のヴラド機関ではTRUMPを監視していて、っていう、血盟議会の真の姿を知らない。TRUMPなんているはずがない、なんて、中枢にいる吸血種なら言わないですから。捜査官というだけで、貴族の家の名もないですしね。

・アナベルとの会話でソフィ、TRUMPを信じますっていった二言目に、「彼は今もどこかで生きている、永遠の孤独の中で」って言うんだけど、それ、経験者じゃないとすらっと出てこないセリフだと思うんですよ…。永遠は孤独、だなんて、すべての人がすぐに結びつくわけじゃない。スノウだってそれがわからなかったからこそソフィの申し出を受け入れてしまったわけだし…。経験者感…。

・これまでの作品では、吸血種が周りの吸血種を噛みまくると、さあイニシアチブ祭り来た!って思ってたから、ソフィに噛まれてどんどん死んでいくの新鮮。ここは人間の世界なんですよね。

・永遠なんてくそくらえよ、って、かつて自分が2800年前にクラウスにつきつけたセリフをここでガーベラに言われるソフィしんどすぎません?そりゃ幻覚も見るわ…。

・三津谷ソフィが人間たちを噛んだあとの口の拭い方が、工藤ファルスにそっくりなんですよね…。LILIUMとは200年しか離れていないので、同じ仕草として取り入れたのかも。

・一方、ソフィの傷がふさがっていく、という場面では、ああ、TRUEではなくFALSEなんだな、と思う演出があります。
SPECTERで切りつけられたあとのクラウスは、初演も再演も、身体をするりと滑らかに撫でる、という仕草をするんですよ。
でもマリーゴールドでのソフィは、拳に力を込めて身体をなぞる。本来の力ではなく、外部の力で無理矢理に治しているかのように、ぐぐぐ、と効果音がつきそうなくらい力を込めて。TRUMPでは、ないんですよね…。

・今作のライネス:ソフィがアナベルを操ってマリーゴールドを襲わせ、呪いの言葉をかけているとき。「あなたを産んだのは間違いだったわ」のとき。
ちなみに、ヘンルーダの告白では、同じメロディのLILIUM版ライネス「純潔のライネス」が流れています。こっちもやらかしだからな…。

・ラスト、アナベルの、私にあなたを殺させないで、ってセリフすらも、ソフィのイニシアチブだそうです(円盤リリイベの知識をTwitterから)。
だからソフィは笑ってるだけなんですね…「すごい、イニシアチブに逆らおうとしているのか」はキャメリアが言うんですもんね。キャメリアにはそう見えていても、ソフィには、逆らってなどいないことはわかりきっている。
いつかその手に触れてくれる人が現れる、とかも、ソフィが全部言わせてるわけで。それ完全に、疑似クランへ連れていくための甘言じゃん。リリーがそうなるとわかっているわけじゃなくて、この人間の世界なんて捨てて一緒に行こう、という気にさせたいがために言わせてる…アナベルがソフィにガーベラを託すようなこと言うのも、全部、全部…。

・ところで、アナベルはソフィに噛まれたあと、後天的ヴァンプとして覚醒し、ソフィのイニシアチブ下にありました。
このように、後天的ヴァンプが自分を噛んだヴァンプのイニシアチブ下にあるなら、グランギニョルの歌麿もまた、どっかのダミアンのイニシアチブ下にあるってことですよね…?えっ歌麿大丈夫か??歌麿を噛んだダミアンが、歌麿が後天的ヴァンプになっていることに気づかず、人格継承とかの命令を下していないことを祈るしかない…。

・この残酷劇を笑ってみているソフィ、完全にダミアンのようになってしまっているんだよな…。
シリーズを通して、各作品の事件の黒幕って、何種類かに分かれると思ってて。
ダミアンストーンという、残酷劇をTRUMPに捧げようとする者が引き起こしたのが、グランギニョルとSPECTER(主犯はローザですが繭期4人組の脱走にはダミアンが関わっている)。
そして、永遠の孤独に閉じ込められたソフィがやらかしてるのが、LILIUMと、このマリーゴールド、ですよね…。元をただせばヤンをさらってきたところから、って考えても、やっぱりソフィのせい。
ソフィ自身が、残酷劇を求めるダミアンと同じようなことをしてしまってる、っていうのが、どうにもしんどくて…。ウルを操って筋書き通りしゃべらせているのも、いかにもダミアンっぽいし。
そして、クラウスが主犯である物語はない、っていうのもまたしんどい…。彼はただ、放っておいてほしいだけなんですよ…。え?TRUMP本編はクラウスが悪いじゃないかって?それは…星ひとつを見てください…。

・マリーゴールドの花言葉には、絶望のほかに、変わらぬ愛、ってのもあるんですよ…。ヘンルーダとアナベルの、何があっても変わらぬ愛、じゃん…。

・エリカとガーベラは、結局、ガーベラの本当の父を知らぬまま?
でも、コリウスがベンジャミンと差し違えたときの遺言で「ヘンルーダより先にアナベルと出会いたかった」って言ったのを二人とも聞いていたので、察したかもしれませんね。いや頼むそうであってくれ。


おわりに

さて、ようやくまとめ終わりが見えてきましたね。
先ほど、黒幕が何種類かに整理されるって話で、主にダミアンとソフィだって書いたわけですが、じゃあ同じように不老不死者にされてしまったリリーは、いろいろやらかしたりしないのかな?って思ってたら、新作はリリーの旅とのこと!!!期待大です。

それと、今回の記事は①とつけておりますが、つまりまだ②があるわけでして。
今回は配信されなかったSPECTERの再演と、現時点での最新作、月の翳り・星ひとつ、それに小説集Pendulumまでを踏まえた考察も書きたいと思っておりますので、もしよろしければおつきあいいただければ嬉しいです!
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!!

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