繰り返される悲劇の感想と考察② ~はじめての繭期2020に寄せて

はじ繭は先週の今日でとっくに終わっているというのに、まだまだ考察は終われない!!!
今回は、SPECTER再演、COCOON月の翳り・星ひとつ、そして小説集Pendulumと、現在出ているほぼすべての作品を網羅しての感想・考察を書きました。またこれが長い…。
以上の作品を履修済み、あるいは、ネタバレ気にしないよ!という方向けとなっております。

はじ繭4作品+LILIUMまでの考察をした前回の記事はこちら

ではさっそく参りましょう。

SPECTER(再演)

初演と再演の違いを中心にまとめました。
再演は、初演にあったわずかなギャグすらもなく、徹頭徹尾、怖いくらいにシリアスですよね…。

・こ、これは…噂の、鏡舞台ってやつ…。
TRUMPシリーズ作演出の末満さんが手がける舞台刀剣乱舞で、初演と再演が綺麗に反転していて、ただしタイムループしちゃっている刀剣男士だけが同じ向き、ってのがあるんですが…。これも、それじゃん…。
今回、初演と再演をぶっ続けで見てみて初めて気づきましたよ…。もう熟練の繭期の方々は気づかれてたんでしょうか…。

あらゆるキャラクターの出てくる向きや会話の立ち位置などが反転しているんですよ。
わかりやすいのはカルロの家や、萬里が怪我をして寝かされるベッドが、舞台のどっち寄りになっているか、でしょうか。細かいところでは、ローザがクラウスにすがる向きなんかも反転しています。

で。
反転していない人物がいるんですよ。
クラウス!!!!

ローザがクラウスに向かって話しているときは、クラウスは完全に興味のない「無」って感じで、ローザがメインだからか、反転しているんですけどね。
クラウスとクラナッハの会話が!!!
ここものすごく細かくて、クラナッハが、クラウスのことを調べ上げて脅迫した、って話すところまでは、反転してるんですよ。
でもその直後、クラウスが自ら話し始めるところから、初演と同じになるんですよ…
わかりやすいのが、空に向かって手を伸ばすクラナッハを見て、やめてくれ、と倒れ込むクラウスの向きですね。ここは初演再演とも同じ向きなんです…。
はああ…刀剣乱舞どころじゃなかった…。クラウスはこの世界から逃れて死ぬことができないから、同じ向きに閉じ込められたまま…。
末満さんほんと恐ろしいこと考えますね…。

そして反転したことでもう一つ、絶望の輪廻を感じる出来事が。
再演で萬里を演じているのは、松井勇歩くん。初演ではヒューゴ役でした。
さて、SPECTERのライネスは、萬里がヒューゴに刺され、そのあと「無数の刃に貫かれる」ところでしたね。萬里vsヒューゴの対決は、スローモーションの演出がなされ、初演再演ともに力の入った場面です。
初演では、舞台の上手(客席から見て右)にヒューゴ、下手に萬里。
再演では、上手に萬里、下手にヒューゴ。
…お気づきでしょうか?
松井くんは、二度とも、舞台の上手にいるんですよ…。
どうやっても殺し殺される運命から逃れられない…。

・ライネスについて。
前回の記事で、萬里が死ぬときに流れる萬里の声が、「”お前の”目の前で誰も死なせやしない」って言ってないか?と書きましたが、戯曲を確認してくださった方により、それは私の幻聴だということがわかりました。「俺の」ですね。
再演でもしっかり、過去語りシーンと同じく「”俺の”目の前で誰も死なせやしない」と言っています。
しかも、ヒューゴに刺された直後の萬里のセリフが、
初演:「世話のやけるクソガキだぜ」(おそらく萬里の息子がノームであることの示唆?)
から、
再演:「言ったろ、俺の目の前ではもう誰も死なせやしないって」
に変わってますからね。ここまではっきり言うからには、やっぱりこれがメインテーマなんですよね。

でもそう考えるとやっぱり、これはやらかしではないのでは?とも思えてきます。
だって、萬里が死んでしまったら、もう萬里の目の前で死ぬ人はいなくなるわけですから。
それとも、自分の目に自分の死を映してしまうことが過ち、ということ?確かに、自分の目に最も大きくはっきり映るのは自分の死かもしれませんが…。

あるいは、萬里自身が死ぬということは、もう萬里自身が誰のことも守れない、だから過ちなのだ、ということなのかもしれません。あ、これがいちばんしっくりくるかも。
ちょっと脱線しますが、仮面ライダーに人助けをするキャラ(OOOの伊達さん)がいるのですが、その人は、いちばん大事なのは自分が死なないこと、って言うんです。だって、自分が死んだら、誰も助けられないから。その人は紛争地域にも赴く医者なので、確かに、そういう環境で医者に死なれるのは困りますよね…。
それと同じで、俺の目の前で誰も死なせやしない=目の前にある全ての命を守る、と誓った萬里が、もう誰のことも守ることができなくなる。それこそが、取り返しのつかないライネス、やらかし、ということでしょうか。

・シャドが!!!!生きとる!!!!!!
いやもうちょっとこれ、再演って名乗っていいの??登場人物の生死をひっくり返すとか、もはやリメイク、改変では??????
…はい、落ち着きます。もうこれが今回のセルフ繭期祭りのいちばんの衝撃です。
なので前回の考察記事には「初演の生存者」なんていう回りくどい書き方をしましたよ。

シャドが明確に出てくるラストシーンは、ローザに「もうお前でいいや」って言われてローザを貫き、その亡骸を抱いて燃える村の中に消えていくところ、です。
その後の、繭期少年少女失踪事件を締めくくる石舟のセリフと、そのときに死者として舞台上に出てくる(勝手に死者の葬列と呼んでいます)登場人物を比較してみましょう。

初演
「ローザ、シャド、カルロ、トルステンら、事件の主だった人物は村の消失の際に死亡。」
死者たちの葬列に、シャドも加わっています。

再演
「ローザ、シャド、カルロ、トルステンら、事件の主だった人物は村の消失の際に死亡したと”思われる”。」
明確に死亡って言ってないんですよ!!!石舟!どうなってるんですか!?遺体を確認はしていないんですね!?
そしてここで、再演での死者の葬列では、死者は仮面をつけて出てくるんですね。
このとき…シャドは、葬列には出てくるけど、仮面はつけていないんです…。
加えて、何度目かのカーテンコールでも、死者のキャストは仮面をつけて出てきてくれるのですが、そのときも、仮面はなし…。

再演のシャド、生きてますよね…?

はあ…このことに気づいて、再演で三好くん(初演では石舟)が演じたシャドの気持ち悪さに納得がいきました…
初演のシャドはそこまで気持ち悪くなかったもん…!単にローザ好きすぎる過激派って感じだった…だから愛するローザを追って死んだ…はず。たぶん。
でも再演シャドは、ローザが好きってだけじゃなくて、どこか気持ち悪さがあって…それは、愛する女をあれほどに守ってから自らの手にかけたあとも、自分はなお逃げ延びようとする、生に対する執着だったんですね。まるでローザの生への執着を引き継いだかのよう。
え、これ、このあとのシリーズのどこかで、シャドが出てきたりしませんかね…。

・繭期4人組の雰囲気が、グランギニョルの3人組を思わせるような、凶悪性よりも不思議ちゃんな感じが増しましたね。グレコほんとかわいい。
そして繭期のイレギュラー症状についての言及が増えました。
バルトロメの特殊性が、単に虚言癖なだけではなく、「妄想を他者と共有できること」と明言されたり(マーガレットもこれで親衛隊を結成していた)。グレコがそれに影響されていました。
イレギュラーの一つとして嗅覚過敏もあると言及されたり。おそらくLILIUMのマーガレットはそうなのでしょう。誰にもダンピールだと気づかれていない彼女そして彼に、ドブネズミの匂い、と言っていたのですから。
そしてなにより、末満さんが前から明かしていましたが、サトクリフとオズは兄弟であると明示されました。死を視る兄と、未来を視る弟。サトクリフによれば、オズが未来を読めるのは5分10分の話だったそうなので、グランギニョルでは実験によってかなり能力を拡張したのでしょうね…。なにしろキキの約2800年後の子孫を見ていますから。

・ところでこの村、宿がないってことはそもそも、外部から人を入れる気が微塵もないんですね…。徹底してる。

・あと細かいところですが、嬰児ソフィの引き取られ先が、孤児院ではなく、「身寄りのないダンピールを集めた養護院」に変わっています。変わったというか、月星に向けて、より正確になったんでしょうね。

・両方に出てるメンバーのキャスト変遷だけまとめておきますね。
中山くん:萬里→クラウス
三好くん:石舟→シャド
松井くん:ヒューゴ→萬里
竹下くん:クラナッハ→石舟
井上くん:ノーム→ヒューゴ
星璃くん:サトクリフ→カルロ
吉本くん:バルトロメ→トルステン
人間、ダンピール、繭期の子、って分けると、同じ属性を二度やった人はほぼいないのがわかりますね(唯一クラナッハ→石舟だけが人間)。みんな業が深い感じになってる…。


月の翳り

・この先出てくるかもしれない設定メモ。
吸血種の社会は階級主義 1から10までの身分階層がある
そのうち特級と呼ばれるのは吸血種がこの地上に現れた3000年前から続く第一身分の家系のみだ(アンジェリコ)

・ラファエロとソフィの不思議な類似について。
NU版ではウルが、兄さんとソフィの剣は似ているような気がする、って言ってますけど、クランに来たばかりのラファエロは、「このクランにいるのは他人を血筋や家柄でしか見ないものばかり」なんて、まるでソフィみたいなことを言うんですよ…。
アンジェリコとウルが実は血のつながった兄弟ですから、それの対になるような感じにしたんでしょうかね…。
もっとも、ソフィには萬里という叔父がいますけどね。

・LILIUMとの類似。
アレン、というもうそこにはいない吸血種の名を少年たちが叫び始めるの、シルベチカを思い起こさせますね。
そしてジュリオちゃんの「退屈すぎて涅槃像」いただきましたw
ちなみにジュリオ役の田中くん、この直前にSPECETRのクラナッハをやってるんですよね…メイキングには苦労しながらも食らいつく田中くんの姿が入っています…!この子はすごい…。

・乱闘になったとき、アンジェリコがラファエロとエミールをかばってる…。

・アンジェリコが下の者を見下すのは、ある意味では重圧のない彼らが羨ましい面もあるんでしょうね。
貴族の地位はその重圧と引き換えなのに、地位だけを羨んだり崇めたりしてくる奴らに対して、何にも知らないくせに勝手なことを言ってくんじゃねえ、って突っぱねる。それが、自分たちだけが重圧を背負っているんだ、というプライドともあいまって、見下す態度として現れるのでしょう。
ほんとは孤独なんですよね。その重圧を分かち合えるのは数少ない同じ貴族だけだから。この苦しみは誰とも分かち合えない、っていう深い孤独。だから、見下してるというよりかは、単に孤独の発露なのかもしれない。同じものを背負っていない以上、もともと友達になれるわけがないのだから。
差別とか下に見ているという意識はなくて、本当にアンジェリコにとっては、ノブレスオブリージュを分かち合えない吸血種など、価値がないんでしょう。兄弟のいないアンジェリコは、分かち合える相手を誰よりも求めてたのに。

・アンジェリコは、実子でないがゆえに、ゲルハルトに無意識のうちに避けられていたのでしょうね…。父親から避けられるように生きてきたって…。
ラファエロに向かって、デリコの当主になるよういいつけられてきたんだろ、僕はそんな言葉をかけられたこともない、って…。
そして一方のダリは、実子でないウルには甘く、実子であるがゆえにラファエロには厳しく期待をかけてきた…。
期待されたかったアンジェリコは期待されず、(コクーンで重症化していたとはいえ)期待が重荷だったラファエロは当主になれ弟を守れと呪われ続ける…。親と子の性格が反対だったらよかったのにな…!

・父を信じ切れているか、がこの二人の違いか…。
素直に追えばいいアンジェリコと違って、ラファエロは父の言葉を信じきれないんだ…だってその父が不義を犯した(と思っている)んだから…いやほんとダリちゃんの不器用さが…。
だってダリちゃん。グランギニョルのあの事件の直後に、お母様は遠くへ行ったもう帰ってこない、ってのと、今日からこのウルが弟だ、っての、セットで伝えてますよね…ラファエロが、赤子のウルを抱いたとき、って言ってますから…。
もう!!!!!ダリのバカ!!!!!!わずか3歳の子にそれをいっぺんに言うんじゃないよ!!!!!ってかなんでそこはすんなり言えるのにウルの本当の親は言えないんだよ!!!!!守れなかったとかつまんねえプライドはいいから今すぐ言ってやれ!!!!バカダリ!!!!!

・マルコの血脈、性格そっくり…アンジェリコとウル…。
(星でアンジェリコがウルを刺すところのチャプター名が「マルコの血脈」なんですよ。鬼か)
思い込みが激しい、みたいなことをアンジェリコがラファエロに言われてましたが、まさにその通りで。思い込みで相手を自分の理解者だって信奉して、君のことならなんでもわかる、君と僕とは友達だろ、君は僕であり僕は君なんだ、って勝手に迫って。ゲルハルトもまあ似たようなことやってましたが、あれはダリへの期待でこそあれ、君のことならなんでもわかるまでは言ってなかったぞ…。
そしてラファエロもソフィもそんな彼らを「僕とは関わり合いにならない方がいい」と拒絶する。
それは2人とも、それぞれの呪いを一人で背負うと決めているから。ラファエロはデリコの家名を、ソフィはダンピールの宿命を。
彼らの側は理解者を必要としていなかったんですよ。
ラファエロは、ウルの秘密を誰にも話すわけにはいかなかった。ソフィは、養護院の卑屈なダンピールたちが嫌いだったし、クランではダンピールなのは自分だけだと思ってたから、理解者を求めなかった。ああやっぱりここ2人、どこか似ている。
理解者を求めることが禁じられていてできなかったのがラファエロ、理解者などどうせいないのだから求めても意味がないと諦めていたソフィ、という違いはあれど、彼らは、その呪いを一人で抱え、高潔で孤独であろうとしたんですよね。
でもマルコの兄弟は、そんな彼らの事情や心情など考えずに、ただ一方的に思い込んで踏み込んで、そして一方的に狂っていくんだ…。ラファエロやソフィ側からしたら、はた迷惑な話でしょうね。

・ラファエロはきっと、両親から呪われることは、苦しいだけじゃなかったんですよね。それは愛という名の呪いで、期待とも呼べるもので。呪いだったそれはいつしか、自分の願いにもなっていたはずです。コクーンの投与のせいで、呪いの面だけがラファエロを襲っていたけど、でも、本当は一方的に押し付けられたものじゃなくて、ラファエロ自身もそうありたいと願うようになっていたのでしょう。
ディエゴとのいちばんの違いはそこ。ディエゴは、ダンピールの宿命も、貴族の家も、全部苦しかった。自分で望んだことなど何一つなかった。
コクーンを投与されたラファエロは、家督もウルも、呪いだ、としか受け止められなくなって、その結果、自分が何者であるのかわからなくなってしまった。気づいたときには空っぽのはりぼてだったんだ、という言葉は、コクーンのせいで今はそう思わされてるだけ、と私は解釈したいです。だって終盤、アンジェリコとウルを選ばされたラファエロは、ウルを選ぶのですから…。俺はウルを守れるくらい強くなりたい、それが俺の望む俺だ、と言って…。
本当は、呪いと自分の望みは一致しているのに、呪いの面だけを強調されてしまった。だから、呪いから逃れたいと思って、自分の望みでもあるはずの呪いを、自分から引きはがしてしまったんですよ。そりゃあ自分迷子にもなるわ。
いや、願いや望みというのとは、ちょっと違いますね。依存だ。ウルを守る、という体での、ウルへの依存。ラファエロが依って立つものはもうウルしかなくなってしまってるんだ。たとえそれが呪いから始まったものだとしても、その呪い以外にはラファエロにはなにもないんだ…。依存という形で、自らウルを求めている。だから、それが呪いであろうとも、捨てるわけにはいかないんですよ…。

・今作のライネス:キレたアンジェリコが、お前さえいなければ、とウル(エミール)を襲う場面。やってることが完全にウル(本人)なんだよな…。

・ラファエロはTRUMP本編や星でウルに「兄さんは自分ってものがない」って糾弾されてましたけど、あったんだよラファエロにも自分というものが…でもそれを見せれる可能性のあるアンジェリコと袂を分かってしまったならもう、それは押し込めて消し去るしかなかったんだよ…。
そしてラファエロは、押し付けられた呪いそのものを、自らの願いだということにするしかなかった…自分がないように見えるのは、呪いに自らを合わせにいった結果、そう見えるだけなんですよ。呪いを自らに課す、という決意は、ラファエロ自身の意志でしたことなんですよ…と、信じたい…。

・他人には言えない事情を隠してがんじがらめで生きてる人物ほど、他人にはそれが空っぽのハリボテに見える、っていうの、つらすぎませんかね…。ゲルハルトは不能を、ヘンルーダは正体を、そしてラファエロはウルのことを隠していた…。誰よりも重いものをそれぞれ背負っているのに、それを隠そうと取り繕うと、はりぼて、と言われてしまう…。しんどい…。

・ラファエロとアンジェリコの決裂は、アナベルとエリカにも似ていますね…自分の背負う秘密を、理解してもらおうなんて思わない…。

・ラファエロとソフィの似てるところもう1つありました。
大切なものを失ってしまってから、もはや手遅れなのに守ろうとする、身勝手さ。
1番目に大事なものを優先して、2番目に大事なものを失うけれど、もはや手遅れになったあとで、2番目のものを守ろうとすること。
ラファエロは、ディエゴにウル(エミール)が狙われないとわかると、2番目に大事であろうアンジェリコを守ろうとする。
ソフィは、クラウスからもウルからも必死で逃げ回るのに、クラウスに噛まれてどうにもならなくなってから、ウル死ぬな、と守ろうとする。ソフィの場合は、いちばん大事なのは自分で、2番目がウルなんでしょうかね。(まだウルを親友だと認め切れてない時点の話)。

・ドナテルロは、本で繭期についての仮説を読んだと言っていますが、その内容はほとんどバルラハが言っていたことですね。バルラハ本人、ないしバルラハが所属していた組織が書いた本でも読んだのでしょう。
一応内容をメモしておくとこんな感じです。
すべての吸血種は精神的にTRUMPとつながりをもち未だにその影響下にある
繭期は大人になる過渡期、感受性が開かれる時期
繭期はTRUMPとの結びつきが強い状態
神とも言えるTRUMPの心が顕在化したものが繭期

・繭期オタクおじさん、生徒たちがアレン、と言い始めたのを、すっごく楽しそうに「繭期による認知障害かも」と言ったり、
すっかり更生したグスタフを見てあのころのまま大人になったみたいだ、なんて言ったり、ヤバいのを隠そうとしてないのがヤバい。終始表情がいっちゃってる。

・TRUMP本編でグスタフが「従順であれ、服従を示せ」みたいなことを厳しく言うのは、かつて繭期の自分が起こしたことへの後悔なんですよね…。厳しすぎるんじゃん?なんて思ってましたけど、彼なりの信念あっての言葉だったんですよね…。

・ドナテルロはヴラド機関には参加していないんでしょうね。
TRUMPの影響なのかしら、その心が乱れれば災いが、ってミケランジェロが言っちゃうのを、グスタフが止める場面があります。2人は当時からヴラド機関付きで、だから知らないふりをしなきゃいけないのに、うっかりミケランジェロが本当のことを言っちゃった、ってシーンなのでしょう。
あるいは、この時点ではグスタフもミケランジェロもまだ何も知らなくて、月の事件をきっかけにヴラド機関に参加した、と見ることもできます(友人はこの説推し)。

・繭期オタクおじさんのグスタフに対する幻想もまた、アンジェリコやウルのような強い思い込みを感じますね…。月星そしてTRUMP本編は、友人の強火担が勝手に期待して失望する話…。

・SPECTERを見て、繭期4人あまりにひどくないか、どこかでコクーン投与でもされたか、って思いましたが、月を踏まえると、
SPECTERがTRUMP本編の14年前、月の翳りは3年前ですから、SPECTER時点ではまだ、ドナテルロがクランでコクーンを投与するには至ってないはずですね。ドナテルロはこのクランに来て日が浅いようですから。
まあ、あの4人のひどさについては、クランを出てしまって抑制剤が切れたから、ってことなのでしょうね。グランギニョル3人組はそもそも抑制する気がないので論外です。

・屋上での会話シーンでジュリオちゃんが、「星は死そのもの、月はそれを悲しんでいる」って言ってるんですよね。星は死そのもの。クラウスもソフィも、死という星に手を伸ばし続けている…。
D2版の歌や、星ひとつの話を踏まえると、星は死ばかりではなく、手に入れたい友のことも表していると思うんですが、ここで明確に星は死、って言われるとしんどみが増しますね…。

・ディエゴについて。
家督を継ぐ重みをアンジェリコに説かれて、そんなのわかるか、俺は自由に生きる、と言ってのけるディエゴですが、そりゃ貴族じゃないもんな、ノブレスオブリージュなんてわからないよな…。わからないというのは、かっこつけとかじゃなくて、もう本心だったんですよね。
自由に生きる!みたいなディエゴの言葉の数々は、一見かっこよく聞こえるけど、その実、がんじがらめになっていることの裏返しだったんですね。ここから逃げたくて、理想の自分を自分で演じているだけ。

ディエゴが空に手を伸ばすのを見て、ダメだ、ってもう反射的に思っちゃいましたね。この両の手はなんだって手にすることができる、ってそんなポジティブに言いますけどね、いやいやそれ、このシリーズでは、なんもつかめないやつですから…

ディエゴが繭期に溺れたのは、嫌でも真実を突きつけてくれるからなのかな。あまりに嘘で塗り固められて苦しい自分を、いっそ暴いて、責めてくれるから。他人に嘘をつきつづけたディエゴは、嘘のない繭期だけは寄り添ってくれると感じたのかな。繭期は、そうだよね、他者ではなく、誰あろうTRUMPとの関わりだから、嘘などそこにはない。
もっとシンプルに考えると、身体でダイレクトに感じるものだから、かもしれません。ダンピールの孤児だろうと貴族の子だろうと、繭期は誰にも等しくやってくる。まるで、なにもわからないけど酔っている俺は確かにここにいるぞ、みたいな、アル中みたいな溺れ方。
あと、全部から逃げ続けていたから、目の前にあったはずの友情すら感じられなかったんだ…。
しかしまあ、もうここからは逃げない、っていう最終地点に、よりにもよって繭期を選ばなくてもーーー!!!チョイス!!!

・ディエゴが養護院を逃げ出した原因は、同じ養護院にいたソフィ。あの高潔で、冷徹な目。

・自分、グランギニョル見てからイニシアチブの研究には目を配っているんです。
そしてジョルモロちゃん(繭期大夜会以降、愛しくてこう呼んでしまう)は、ディエゴとアンジェリコの重複イニシアチブを受けています。
そのときアンジェリコは、「僕にはフラの血が流れている、そこにいるダンピールより僕のイニシアチブの方が上だ」なんていうんですけど、これ、アンジェリコの思い込みなんでしょうかね…。バルラハのような研究者の発言じゃないので、なんとも、なんですよね…。
仮説①ほんとはイニシアチブに血の高貴さなんて関係なくて、バルラハの言うように意志の強い方が勝つのであり、アンジェリコは単に意志の強さでディエゴを上回った。だってそもそも、アンジェリコには、高貴なフラの血など流れていないのですから…。
仮説②バルラハは人間であるがゆえに、吸血種の血の高貴さが及ぼす影響にまでは思い至らなかった。実際は血の高貴さもイニシアチブには重要。
うーん…。血も意志もどっちも重要、ってのもある気がしますけどね…。
あるいは、高貴かどうかはさておき、吸血種の血がどれくらい濃いか、は重要なのかもしれません。LILIUMでソフィがリリーからもイニシアチブを受けて行動を制限されたのは、ダンピールであるがために、ということもあるようですから(各公演パンフレットや小説集にある年表より)。それならダンピールであるディエゴが負けるのもわかる。

・アンジェリコ、口では「お前たちは何者にも縛られることはないお前たちは自由だ」って言っときながら、直後のジョルモロちゃん、ディエゴを襲ってるんですよね…つまりアンジェリコの本心は、やっぱり、自分の手下、ってことですよね…。

・そして、TRUMP本編で、モローがラファエロを刺すときのセリフ「これが自分が望んだことなのか、もうわからないんです」の意味が、重い…。
アンジェリコのイニシアチブを受け、でも、階級社会をぶち壊すという言葉に惹かれて、自らの意志で屈服した、はずだった。でも今、ラファエロを刺しているのは?これは自分が望んだ服従なのか、それともイニシアチブなのか?重い、重すぎる…。

・加えて、TRUMP本編での、アンジェリコの自信に満ちた態度の謎も解けました。クランの生徒たちを噛みまくって大暴れのとき、生徒を噛むなんてティーチャーたちが許さないはず、みたいにソフィが言っても、「黙っていればわからないさ」って啖呵切るんですよ。それは、3年前にジョルモロ2人を噛んだことが、この3年間ずっとバレてない、っていう実績からくる自信なのでは?って思いました。

・とても高貴な血を引いてるようにはみえない、お前も俺と同じでフラ家の血なんて引いてないんじゃないのか、とディエゴが正解を言ってますね…

・最後は、ディエゴ自ら、養父へのイニシアチブを解いたのですよね(以前一緒に観劇に行った友人より)。

・最後のシーンのジュリオちゃん、お袖のひらひらがなくなってる。大人になってしまったんですね…。

・夕暮れ、血のように赤い。二人の感情の色に似た、血のように真っ赤な悲しい夕暮れ。
これで赤い衣装で殴り合うって…。
TRUMP本編でもアンジェリコは、ラファエロの目が気に食わない、と言って潰そうとしますよね。
ここでアンジェリコは、「あんな目で僕を見るのは許さない」と、「そんな目で僕を見ないでくれ」と相反することを言っています。
前者は、ディエゴたちと屋上で話したときの、貴族の宿命から逃れて別の自分になれるんじゃないか?みたいな、逃避への希望をたたえた目。そして、お前は逃れようと思わないのか、みたいな、哀れみも含んだ目。一緒に宿命を背負うことを望んだアンジェリコにとっては、そりゃあ許せないでしょう。
そして後者はおそらく、冷たい、拒絶の目。TRUMP本編でもずっとラファエロが見せている、「高潔で冷徹で不愛想でとても孤独」、そんな感じの目なのでしょう…。

・前の記事で、シリーズを通して、各作品の事件の黒幕って、何種類かに分かれるんじゃないか、ということを書きました。
残酷劇をTRUMPに捧げようとする者、ダミアンストーン。(グランギニョル、SPECTER、星)
永遠の孤独に閉じ込められて、どうにか孤独を紛らわせようと、いろいろやらかしているソフィ。(マリーゴールド、LILIUM)
そしてこの月では、「繭期中毒者」という新しい敵のカテゴリーが出てきたように感じました。
ラファエロに関してはグランギニョルからの仕込みが大きい面があったとはいえ、今回の悲劇の台本を書いたのは、主にドナテルロですから。
ディエゴに関しては、大本をたどるとソフィが原因で、それに演出をしたのがドナテルロ、といったところでしょうかね。
やっぱり、ダミアン、ソフィ、そして繭期中毒者、この3種類に分けられる気がします。
敵の勢力、強すぎません?勝てる気がしない…。
そしてここで、クラウスが何にもしてないのが怖い…。え、だからTRUMP本編は、あいつが…。


星ひとつ

・ダミアンストーン!!!お前か!!!!
だからさっきの話から続けますけど、黒幕はダミアンかソフィか繭期中毒者のどれかなんですよ…。星、そしてTRUMP本編の黒幕は、ダミアンという集合体。マルコ=ダミアンによるウルへの仕込みと、あの養護院にいたダミアンの合作、というわけです。

そして、ダミアンはTRUMP本人を巻き込むグランギニョルも厭わない、ということがわかりました。クラウスのもとにソフィを送り込むなんぞ、確信犯でしょう。ソフィの経歴からネブラ村関連のことが巧妙に隠されていた、数あるクランから作為的に選んだ、って、完全に確信犯。
SPECTERがあんな展開になっちゃったのって、ダミアン的には成功なの失敗なの?って思ってましたけど、ダミアン的にはおそらく成功でしょうね。クラウスを楽しませることができた、と思ってるでしょうから。なお当のクラウスは別に何をされても何も感じない模様ですが。この冒頭で死んだダミアンも、クラウスからすれば、どうぞご勝手に、ですよ…。

・シリーズではお決まりのキャストパレードですが、こんな全部ネタバレのキャスパレある?これで成り立つのがすごい。
ラファエロvsソフィの剣術試合と、ウルを抱くダリとそれを見下ろして去るクラウスとソフィって…
そしてキャスパレの萬里のとき、隣に再演SPECTERのノームの衣装持ってきて、アンサンブルのみんながあの死の仮面つけてる…。だから小道具協力に劇団Patch(SPECTERをやったみんな)の星璃くんと吉本くんの名前があったんですね…。

・喧嘩のシーンで、ソフィとウルそれぞれを守る萬里とラファエロ、という構図になっており、もう完全に兄と叔父による代理喧嘩の体。萬里のソフィへの思いが、シリーズ中いちばん強く出ている気がします。このシーン大好き。
そもそも萬里は、なり手のいないこの任務に志願してきたそうですし(ピエトロのように殺されるリスクもありますからね…)。ソフィのこと大好きじゃん…
ソフィに向かってクソガキっていう萬里、かつて初代萬里に自分が言われたのと完全に同じ調子ですもんね。名をもらった親からの言葉を、名づけ子へとつなぐ…。

・ウルが自らの出自を知ってしまったのは、7つのときに使用人の噂を聞いてしまったから…。体が弱くいつも屋敷の中で過ごしていた…。ガーベラじゃん…。

・アンゼルム盟長、って名前が何度か出てきました。NU版TRUMPで、ダリ卿が待ってるから盟長室に来なさいね、というミケランジェロのセリフが、ずっと漢字変換できなかったんですよ…。盟長ってそういう字だったのね(チャプター名見てわかった)。

・レイン中級議員が上級に昇進してました!やったね!てか君、元気だったんだねよかった。。。この世界で14年間経つと何があるかわかんないじゃん!?よくぞ無事で…!

・クラウスはもう全部わかってますね。ニコの血族によろしく、だなんて。

・クラウス、ここではイニシアチブは使わないようにしていた、欲しいのは操り人形じゃないって、ファルスと同じこと言ってる…。

・ソフィをどうしようがかまわん、falseにでもなんでもすればいい、ままごとにだってつきあってやる、お前の心の平穏が吸血種の命運を握っているからだ…。このダリの決意…。良くも悪くも、種全体のことを考えた発言。血族を統べる王として、2800年後に名前を残すにふさわしい…。

・FALSE OF TRUMP、って言ってるんですよね。FALSE OF VAMPではなく。
年表では、血の戦争の頃にいたのを「FALSE OF VAMP」としてるので、それとの差別化でしょうか?

・ジョルジュとモローがソフィたちを挟み撃ちにして「どこに行くんだい」っていうの、サトクリフとバルトロメがロダンたちに「どこにお出かけですか」っての意識してるよなあ…。

・前回の考察記事で、ソフィのイニチアチブか!?(実際はクラウス)とみんなが誤認するとき、ソフィが「跪け」って言っちゃえるのはやばいよな、残酷さの片鱗が見える、みたいなことを書きましたが、この星では、そのセリフないんですよね。
いや、単に、これはTRUMP本編のsideデリコみたいなものだから、ソフィのセリフは削ったんだ、って見方もできますが。
これ、つまり星って、ウル視点のTRUMPなわけですよ。もしかして、もしかしてですよ、ウルにはソフィが高潔に見えているから、そういう、ウルが見たソフィらしくないことは、言わない…というより、ウルには聞こえていないしウルはそれを覚えていない、ということでは…?これはウルによって理想化されたソフィなのでは…?

・もしかして、ラファエロがソフィとの剣術試合に負けたのって、モローに刺された負傷のせいじゃなくて、クラウスのイニシアチブ???
おんなじ話をD2版でもNU版でも、TRUTH/REVERSE含め4パターン見てるのに、この星を見て初めて、そうかも?って思いました。今までどの作品でも、負傷のせいもあっての実力差、みたいに見えてたから…。星ひとつで初めて、答え合わせとしてわかりやすい演出(ラファエロにスポットライト)をしたのでしょうか。

・クラウス、ソフィ、ウル、萬里の話の噛み合わなさがめちゃくちゃ強化されてて怖い。
クラウスは、もう明確にソフィがソフィに見えてなくて、ソフィ?アレンですって言ってる…
そして、クラウスに萬里やソフィの言葉が届いてないのと同様、ウルもウルで、萬里やクラウスの話をろくに聞いてないんだよなあ…。

・ウルの最期、「僕は君に」で、なりたいなって言い切れず死んだ…これがTwitterでお見掛けした噂の、TRUMP千秋楽バージョン…。だって、もう、反対の役を演じて、「君になる」ことはないから。今回はTRUTH/REVERSEがなく、反転がないから、ずっとこれなんですね…。

・ダリは!フリーダと結婚するくらいだから!ほんとはめちゃくちゃな差別主義者ってわけではない!!!でもクランフェストを見守るとき、他の貴族とのつきあいで、ダンピールは駆逐せねばなんて言わなきゃならない!!
ウルの亡骸の前で、ソフィをクズって言って悪かったとか、頑張ったなとか、いい友達を持ったなとか!!!!それは!本人が!生きてるうちに言えよおおおおおおお!!!!!

・最後に、ウルの遺体は綺麗だった、まるで誰かが守ったように、ってダリが言います。その前にはソフィが覆いかぶさるような仕草も。
で、D2版とNU版見返したら、ちゃんと、あるんですよ、ソフィがウルに覆いかぶさるシーンが!まあ、覆いかぶさるというかは、抱きしめる、という感じではあるんですが…。
つまり月星の構想はもう本当にずーっと前からあったんでしょうね。
グランギニョルのコメンタリーでも、「次は青春もの」って言ってて、マリゴでは「当初予定してたものは別のもの」って言ってたので、ずっと月星をやろうとしてたんですね…

・ラスト、マリーゴールドともつながる考察を。
星ひとつに特徴的な場面のひとつに、クラウスとダリが、TRUMPとヴラド機関という正体をわかった上で話すシーンがありますね。
ダリに、なんでティーチャーなんかしてる、と問われたクラウスは、ずいぶん前にある人に、繭期は私の心の写し鏡だと言われたから、と答えます。このクランは私には必要な場所なんです、とも言いました。
…この記録、おそらく、ヴラド機関に残りましたよね。
そして、この記録から、2800年後のヴラド機関は、ソフィが繭期の子らを攫ってきて擬似クランを作って、って好き勝手やっているのを、ああTRUMPが自分のためのクランを作ってるんだ、って誤認しているのでは…!?!?
TRUMPには繭期の子らが必要なのだ、という情報が、私たち観客に明かされただけでなく、ヴラド機関もまたそれを知ったのですよ…!だからマリーゴールドでのソフィは、TRUMPと誤認されて、お咎めなしになってるのでは…!?!?!?!?
いやほんとマジでクラウスだよ…。ソフィ使って監視外して、今どこで何をしてんだよ…。発表されてる新作キャストにはSPECTERのクラウス役の中山くんがいますが、彼はまたクラウス役なのか、果たして…?

→7/23追記 マリーゴールドのパンフレットに載っている情報を@sayo6様に教えていだきました。
ヴラド機関はTRUMPを見失っているが、代わりにTRUMPに深く関わるある吸血種を監視している、とのこと。
さすがにヴラド機関、そこまで間抜けじゃなかったですね。ソフィがTRUMPでないことはきっちり分かったうえで、それでもなお、監視、というか黙認、をしているようです。


小説集Pendulum

「灰かぶりの世界」
この語り手、もしかしてダミアン?もしこれが、ニコヴラドかダミアンのどちらかならば、後者な気がします。灰かぶりの世界を引き起こしてしまった罪悪感から従うようになったとか…?いや、やっぱりなさそう…。
そしてやっぱり、クラウスの願いは、「放っておいてほしい」なんですね…。グランギニョルを捧げる!とか言われても、本気で、なんですかそれ?って思ってるんでしょうね…。

「シモンには動機がない」
シモン=石舟の動機は、人を助けること、では…?本人は無意識だろうけど、人を助けることが生きがいになっているような感じがしました。
ソフィが萬里、そしてカザンが後の歌麿ですね。

「ホフマンと双子の繭期」
出た!繭期偏愛者!
先ほど月の考察で、新たな敵勢力、と書きましたが、そう、やっぱり、いるんですよ、こういう奴が。
ドナテルロ、ホフマン、あとはバルラハもきっとこの系統。実はもうすでに結構いるという。あとホフマンには共犯者もいるそうですし。
そしてホフマンもバルラハも人間なんですよね…おそらく、隣の芝生は青く見える方式で、繭期を実際に経験する吸血種よりも、人間種の側に、繭期偏愛者は多くいるような気がします。
年表にあるキルバーンの首謀者もそんな感じなんでしょうかね?

LILIUMで、紫蘭が強硬に「このクランを守らねばならん」って言ってたのって、こういうことだったんですね…。紫蘭が竜胆と一緒に大人にならずに生きていける場所、はここだから…。操られてはいたけど本心でもあったんですね。

ところで新作には双子のキャストさんがいるらしいんですが、紫蘭&竜胆じゃない気がしています。だって小説では、二卵性で似てないって言われてるので。

「二輪咲き」
・シルベチカは二重人格者だった!!!!!!
さあ整理していきましょう、この時点では、元の人格シルベチカはだんだん消えかけていて、リコリスがシルベチカを乗っ取りつつあった。眠くなっちゃった、ってのは人格が保てなくなっているってことですよね。
キャメリアのことを好きなのはリコリス。リコリスはシルベチカとして、キャメリアと愛し合っていたわけですね。
ってことは、LILIUMの冒頭で身を投げたときのシルベチカは、もうリコリスなのでしょう。あんなにもはっきりとした意志で語り、なにより、最後までキャメリアを想っていましたから…。

ここでちょっとマリーゴールドを思い出してほしいのですが、ヘンルーダが自分の過去を語るシーンで、ヤンとシルベチカの最初の会話が描かれます。
ヤンが名前を尋ねたとき、シルベチカは、「私は…シルベチカ」って、変な間を空けるんですよ。自分の名前を言いよどむなんてこと、普通はあんまりないですよね。
これっておそらく、シルベチカとリコリスで、人格の取り合いになってるのでは?
まだこの頃は、リコリスはそんなに強くなくて、時と場合によってどっちが出てくるかわからない、くらいだったのではないでしょうか。

二輪咲きのレポで、リコリスはファルスと同化が進んで生まれた人格、だから支配から逃れているのかも、って書いてらっしゃる方もいました。二輪咲きは2015年に上演されていますからね、当時の考察としては十分にありえるでしょう。
しかしマリーゴールド(2018年)を見ると、もともと二重人格なんだろうなってわかります。

さて本題。なぜシルベチカにはソフィのイニシアチブが効かないのか。
その理由は、スノウやリリーのように、血による同化が進んだから、ではない。なぜなら、ウル(薬)を摂取する前、ヘンルーダの回想で語られた頃から、シルベチカはヤンを逃がす行動をとって、イニシアチブに逆らう様子を見せていたから。だから血の同化は関係ない。
私の仮説はこうです。
「イニシアチブは、噛まれた吸血種の第一人格にしか効かないのでは?」

ソフィが掌握したのは、あくまで「シルベチカ」のイニシアチブ。
だから、「リコリス」はイニシアチブに制限されず、自由に動ける。
ヤンを逃がしたときには、リコリスの人格が表に出てきたのでしょう。
二輪咲きの中でも、シルベチカが忘れてしまったピーアニーのことを、リコリスは覚えています。あなたが忘れてしまっても。あたしが覚えている、と。
リコリスは、ソフィによる記憶改変の影響を受けない、あるいは受けにくいのでしょうね。

シルベチカはそれとは別に、自分が死ぬ予知夢を見たり、誰かに記憶を操作されているかもと疑っていたりしますが、それは多少リコリスの影響はあれど、主には繭期のイレギュラーや感覚鋭敏によるものでしょう。あくまで人格としては、ソフィのイニシアチブの支配下にあり、かつ、リコリスに押されて消えつつあるのが、シルベチカ。

つまり、この二輪咲きの最後の「私を忘れないで」は、消えつつあるシルベチカの人格からのメッセージ…。

・チェリーのこの言動、やっぱり、チェリーもダンピールなんですね。マーガレットがドブネズミの匂いと言っていたのは当たっていた。
マーガレットのイレギュラー症状が嗅覚過敏なのでしょうね。LILIUMではソフィにもドブネズミの匂いって言ってたし。
でも、LILIUMでは、そのチェリーが率先して、マリーゴールドをののしったり、石を投げたり…自分もそうであるとばれないように必死なんですよね…。つらい。

「雪のおわり春のはじまり」
ダンピールの宿命に備えて弟子を取っておく、犬扱いしてやる…からの、「シモンには動機がない」なんですね。
ダンピールの闇に飲み込まれるな。ここ、ここを読んで本当に泣けてしまうんです、だって、ウルは、ローザは、アナベルでさえも。あれほどたくさんの人が陥った「闇」を、白雪の言葉は、強く強くはねのけてくれる。ポジティブダンピールですよ…。

「Pendulum」
・そことそこがくっつくんかーい!!!!グレコとキキ!!!!確かに似たような状況で逃げたなあとは思ったけど!!!
グランギニョルで、永遠に繭期でいられたら、2人をずっと愛していられるのに、というキキに、オズが「繭期が明けても、きっと愛する人に出会えるよ」って予言するんですよね。
いやでもまさか、それがグレコだとは…。
そしてですよ、ここからキキの血は、フラ家の名を継ぐものと出会わなければならないわけですよ。ヤン・フラからガーベラへとつながるのですから。ええええ、こんなめちゃくちゃな境遇で、どうやってフラ家のような名門に??それともやっぱり、跡継ぎを失ったフラ家は没落したのか???マリーゴールドで、ヤン・フラの名を聞いたシルベチカが、えええーあのフラ家!?みたいなことを言ってなかったので、フラ家没落説もありうるかもしれません。

・そして、ピサロって、誰。
春林の実の父親であり、白雪と春林の敵。
そしてバルラハたちが所属していて、身を投げたドナテルロを保護した(年表より)「ペンデュラム」の、リーダー?ではないにしても、それなりの地位にいる吸血種。
ペンデュラムは、TRUMPを信奉し、繭期の中でTRUMPとのつながりを見出すことを教義とする、犯罪者集団。
うーん、先ほどまでの黒幕のジャンル分けをすると、繭期偏愛者、に近いでしょうかね?繭期偏愛そのものが目的ではないですが、コクーンを製造してますからね…。でも教義はむしろ、原初信仰者とも言えるし…。
グランギニョルではダミアン(緑髪)とつながっていましたし、あちこちに現れては引っ掻き回してくる面倒な集団、といったところでしょうか…。
今後、このピサロの結末もしっかりと見届けたいところですね!クラウスは自分たちのことなんかなーんも気にしてないって知って絶望してほしい!w

・TRUMP本編でクランに来た萬里には、相棒がいたんですね…。
てことは、萬里、そんな簡単に死んではいけなかったのでは…?崔はきっと萬里の帰りを待ってたでしょうに…。

「深海にて」
これだけ年表に載ってないんですよね…。まさか、これが、死ぬことのできないクラウスの末路だというのか…?それとも、クラウスが地上に現れる前の話…?


おまけ:繭期大夜会

ジョルモロちゃんっっ!
アンジェリコがラファエロを求めたように、この2人もまた、ここでしか分かち合えないものを持っていたんですね…。
マリーゴールドでの姉妹や母娘の決別、そして月星でのアンジェリコ・ラファエロ、ウル・ソフィの決別を見てしまったあとだから、2人の友情にほっこりしました。いやだって、そりゃ2人の背負った中級貴族の宿命や、2人のクランでのいろいろは決して幸せだったとはいえないかもしれないけれど、この2人は、この2人だけは、TRUMP主要キャラの中でほぼ唯一、決別も死別もせずに、寄り添い続けたんですよ…?尊い…。この2人がシリーズの癒しになるなんて、誰が予想しました…?


最後に

小説集にある年表をたどると、クラウスがソフィを噛んだのも、ソフィがリリーを不老不死にしたのも、自らが不老不死になってから3000年後なんですよね…。
この3000年周期っていうのが、何か鬼門なのでしょうか。+6000と+12000にも大きな動きがあるようですしね。
さて新作はおそらく、+3000~+6000の間の話ですよね。上京はまだ厳しいかもしれませんが、配信もあるので、楽しみに待ちたいと思います。

はあああここまでまた18000字くらいある!ここまで読んでいただいた方、いらっしゃいましたら、本当にありがとうございました!!!


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