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ケンイチが、2017年上半期の傑作アルバムを選んでみた

7月ですね。

年々、1年が短くなっている気がするんだけど、これ死ぬ前兆とかじゃないよね?

10年後とかにはもっと耐え難いスピードが出ているのかと思うと眩暈がするわ・・・。



というわけで皆さん、下半期初のケンイチタイムでございます。

今日こうして、重い腰を半ば引きずりながら執筆しているのはほかでもなく、私恒例の「上半期ベスト」をお伝えするためです。

いつも通り、上半期に発表された作品の中から個人的な推薦作をまるっとお届けしようと思うのですが、冗談を抜きにして、過去5年ぐらいの中で一番選ぶのが難しかったです。何やかんやで毎年言ってる気がするけど、今年はガチ。どのくらいガチかと言うと、上半期分だけで1年間の順位を固定したいぐらいにガチ。つまりは、現時点で名作がばっこばっこ毎週のように登場している状況です。昨年のシーンの流れからして、今年はより盛り上がるんじゃないかなと踏んでいましたが、まさかここまでとは・・・んで、そういうときに限って全然ネット上でアクション起こせないっていうね。俺としたことが!!

さっそく、1枚1枚紹介していこうと思うのですが、今回はあえてアルバム編から投下します。ラインナップを見てもらえば、俺がいかに興奮しながらこの6ヶ月を過ごしてきたか、分かって頂けるはず・・・・・・(本当は40位ぐらいから解き放ちたいところだけど)20位から参ります!

No.20 ONIGAWARA「ヒットチャートをねらえ!」

男性2人組ユニットの1stフル作。エモーションズ「Best of My Love」を下敷きにしたとされる爽快なタイトル曲に始まり、ジャズ、ラップ、渋谷系ロックと天井知らずのバリエーションで楽しませてくれる逸品。80〜90年代あたりのミュージックシーンの良いところをしこたま詰め込んだような作風は、昨今のMAY'Sにも通じるところがあるかな。感触そのものはすこぶるポップなので、どなた様でも気楽にイン出来ちゃうのが彼らの面白いところ。

No.19 畑中ikki「Almighty2」

前作「Almighty」から2年、自作自演屋の彼がまたしても名作をドロップ。隆盛を極めるキャッチーなダンスポップの自己流消化はもちろん、音楽的ルーツを歌うちゃきちゃきNJS「Golden」、セクシーなラブソング「Fractal Love」など、そのクリエイティブな才能に羨望が止まらない全8曲。何気に本作中もっともスタンダードな作りのバラードである「誓い」がとても素敵な出来。

No.18 MAY'S「波音 Never Ending」

先に話題が出たMAY'Sが18位に。位置づけとしては、前作の「抱きしめてShining」に続く”80'sの再構築第二弾”といったところなのだけど、何と言っても今回は、夏に向けた1作という点で最強。ピーカンの太陽の下、というよりは涼しい木陰で聴きたい麗しい楽曲の数々に、またしても一本取られてしまいました。ただ深い意味はないものの、旧来のMAY'Sファンが今の彼らをどう捉えているのか、時々無性に気になるんですよねぇ。俺?大好きですけど?

No.17 FAKY「Unwrapped」

4人体制になって初のアルバム作品。今年発表したシングル曲「Surrender」、さらにはCMタイアップ付きの「Someday We'll Know」など、彼女たちが常に意識してやまないクラブミュージックのフレッシュな趣を大胆にパッケージ。他方、大沢伸一提供の「Keep Out」は歌モノとしての意匠にも富み、良い意味でジャパニーズなスパイスに。これでもっと曲数が多ければ間違いなく上位入りしていたであろう1枚。

No.16 FlowBack「VERSUS」

ダンスボーカルグループ界期待の星が、メジャーデビューから1年足らずのタイミングで送り出したゴージャス&デリシャスなアルバム。トラップ、ファンク、そしてバラードと、楽曲のバリエーションも以前と比べて格段に広がり、ただカッコいいだけじゃない野性味あふれる男性像を演出。個人的には、「Champagne Shower」のようなメロウ・チューンをやってのけたのが一番の好ポイント。ブルーノ・マーズのあの曲をあっさり連想させちゃうのがまたいいんですわ。

No.15 Beverly「AWESOME」

今年に入って急激なプッシュが始まった新世代の歌姫、ビバリー。メディアの煽りっぷりは相当なものだけど、彼女の歌声を聴けば、それが過大なものではないことがすぐさま分かるはず。しかも本作に関しては、R&Bの要素がとても色濃く出ていて、伸びやかなハイトーン・ヴォーカルの見せ場も申し分なく用意されているという神仕様。ワケあって自分でストレス発散できない人は、この際彼女に委ねちゃいましょう。

No.14 w-inds.「INVISIBLE」

先行曲「We Don't Need To(略)」の威力には思わず「おったまげ〜!」となったわけですが、例によってアルバムの方もイカしていました。序盤のオントレンドな流れから「おっ、今回はこういう感じね」と察したのも束の間、後半に向かうにつれて楽曲の多様性が一気に頭をもたげ始めます。特にメンバーのソロ曲の存在は、w-inds.の引き出しの多さを小気味よくカバーしており、涼平のメロディアスなソロ曲「In your warmth」に至っては本作のハイライトを狙える勢い。

No.13 Awesome City Club「Awesome City Tracks 4」

”Awesome City Tracks”シリーズ最終作にして最高品質。褒めちぎりたいわけでは断じてないつもりだけど、彼らの織り成す無垢な若者描写や、時として心をえぐりにかかるダイナミックな音像を聴いていると、どうにもこうにも現代を象徴するマスターピースのように思えて仕方がない。リード曲の「今夜だけ間違いじゃ無いことにしてあげる」は言わずもがな、青春を甘さ一辺倒で片付けない彼らの素晴らしさがこの一枚に。

No.12 JAY'ED「Here I Stand」

往々にして囁かれるジンクスとして、「アーティストが大々的な移籍をすると作風がコケる」というものがありますが、「そんなもの知るか」と言わんばかりに清々しく自信を打ち出したのがこちら。アタック感ムンムンの「The Paradise」にはじまり、トロピカル、ディスコ、そして過去曲のリメイクと、自慢の喉を生かした佳曲のオンパレード。正直ここまで振り切ってくるとは思わなかったし、それでもなお「良いシンガーだな」としみじみさせるだけの説得力もあって、まさしく会心の出来なのではないかと。

No.11 City Your City「N/S」

k-overとTPSOUNDで構成される2人組。1stアルバムとなる本作は、インディーR&Bに顕著なダウナーな空気感と、やや女性的なニュアンスを漂わせる甘い歌声が見事にドッキング。耳に飛び込んでくるファースト・インプレッションこそ、巷のエクスペリメンタル系アーティストのそれに似ているものの、彼らはほぼ全編”日本語”で勝負しているという点であまりに異端。次世代のシティポップ、あるいはJ-R&Bの深化形と、あえて呼ばせて頂きましょう。

No.10 Suchmos「THE KIDS」

このタイミングで宣言すると露骨にミーハーっぽいけど、私Suchmosが大好きでして。ORIGINAL LOVEを彷彿とさせるアーバンかつソウルフルに織り上げられたサウンド、テン年代シティポップの旗手と呼ぶにふさわしい洒脱な演奏スタイル、そしてヴォーカル・YONCEのファッショナブルな存在感。どれを取ってもド直球にカッコよく、とりわけ本作に関しては、そのひとつひとつが渋みのピークに到達。CMでオンエアされている「STAY TUNE」が爆発的に浸透したのも、彼らのパンチある実力に魅入った人が多かったからこそだと思っています。

No.9 清水翔太「FLY」
自身でトラックまで手がけるようになって以降、プリミティブな感触の楽曲が劇的に増えたシミショー。欲を言えば、もう少しアッパーな流れも欲しいところなのだけど、パーソナルで内省的なメッセージと世界規模のトレンド状況を鋭くアウトプットしている事実を踏まえると、本作がウェット寄りの仕上がりであることにも全力で頷けてしまう。この”底意地ゆえの磁力の強さ”みたいなものが相変わらず素敵だよね。インタールードやカップリング曲(milk tea)の配置、さらにはピアノ一本のナンバーと、彼にしては珍しいアプローチが多いのもファンにとっては嬉しいポイント。

No.8 シェネル「Destiny」

初めてアルバムを一周した際、シェネルのめくるめく覚醒ぶりにため息すら漏れました。元よりかなりの歌唱スキルを備えていた反面、彼女の出自である英語圏ならではの音楽的性質は、長らくアピールの機会を失ってきたように思います。それが本作ではどうでしょう。ルーツであるR&Bをタフに歌い上げる姿も、色気たっぷりにディスコを演じる姿もありありとパッケージされているではありませんか。特に、松尾潔プロデュースの「Destiny」を皮切りにした序盤の切れの良さは出色。オススメです。

No.7 Meyou「〜Sea Muse〜」

かつてR&Bシンガー/ラッパーとしてメジャーシーンに登場したMeyou。そのキャリアは20年を数え、すっかり貫禄あるベテランの域に突入した彼女が、10年ぶりにアルバムをドロップ。収録曲の大半が、自らの武器であるセクシーな歌声とラップ回しが映えるオーソドックスな打ち込みトラックで、これがもう悔しいぐらいに上質。この衝撃は、為岡そのみの「MOVIN'ON」を初めて聴いた時以来かも。客演もShing02、HI-D、韻シストのShyoudogと磐石の布陣。いつの時代も、クラシックは正義だね。

No.6 RIRI「RUSH」

出ました、新世代トップクラスのニューカマー、RIRI。昨年11月発表の作品に続くこのEP第2弾でも、大人顔負けのふくよかな表現力と圧倒的な楽曲クオリティに跪く結果となりました。リード曲にして冒頭を飾る「RUSH」なんて、完全に出オチ同然。必殺技かよ。その後も、アンビエントテイスト込みの「It Feels」など、オントレンドなR&Bで胸をときめかせつつ、アコギが牧歌的に掻き鳴らされる「Heart Can't Lie」では、不意に彼女の新たな魅力を知ることに。

No.5 ゴスペラーズ「Soul Renaissance」

Meyouと同じ”大御所がクラシックに挑む”方程式のもとで繰り出された傑作。タイトルからして2000年発表の『Soul Serenade』(これまた鬼級クオリティ)の兄弟作という位置づけが出来るのだけれども、ただのリヴァイバルに収まらず、終始現代へとアップデートする形でR&Bが咀嚼されており、お兄様方の凄まじい気概を感じずにはいられません。オススメは、久々にRHYMESTERと相見えたスリリングな「Hide and Seek」、うねるグルーヴが憎い「暁」など。俺のまわりのJ-R&Bリスナーさんにももっと聴いて、評価してもらいたいです。

No.4 三浦大知「HIT」

はじめに言っておくと、『FEVER』の5倍ぐらい好きなアルバム。シングル「EXCITE」がオリコンで初めて首位を獲得したという事実を差し引いてもとにかく勢いがあるし、最後の最後まで聴き手の五感を飽きさせない大知流の”正統派エンタメアルバム”だと思います。くわえて、やっている音楽に無駄な背伸びがないんだよね。いちクリエイターとしてちゃんと舵を取って、今あるポテンシャルを安定感のある形で最大限に落とし込んだ上での産物というか。「誰もがダンサー」のような気さくなタイトルに臨めたのも、そうした余裕から生まれているような気がしてならんのです。

No.3 SPiCYSOL「SIGNAL」

今期最大のダークホース。クオリティはかねがね知ってはいたけど、まさかこんなにメロウでどっぷり浸れる音楽も呈せるとは。”シティポップ的な志向”はご存じの通り昨今のキーワードですが、彼らの場合、そこにサーフミュージックの爽やかな個性をプラスし、アーバンはアーバンでもすこぶるリゾート感に富んだ趣に。極めつけは、ヴォーカル・KENNYがもたらす得も言われぬ多幸感。どっしりしているんだけどとても抜けが良く、何度でも耳に入れたくなります。J-R&B的には、Sowelu嬢が客演しているのも大きなトピック。

No.2 AI「和と洋」

その名の通り、日本(邦楽)と世界(洋楽)両方のプロパティをそれぞれのディスクで丁寧に発揮した2枚組アルバム。和楽器を大胆に取り入れたりクリス・ブラウンとコラボしてみたりと、コンセプトに則ったパンチのある手法が耳を惹くものの、一番驚いたのは、オーセンティックなR&Bを内容の主体としている点。要するに、日本が誇るディーヴァ・AIの歌ヂカラをこれでもかと味わえる1作なのです。洋ディスクに収録されている「Sweet Nothing's」なんて特に最高。エモーショナルなフェイクと美麗なメロディに涙ちょちょぎれたわ。

No.1 FREAK「BRING IT ON」

私、ケンイチが選ぶ2017年上半期の1位は、FREAKの2ndフルアルバム「BRING IT ON」でした。おそらくこの記事を見ている大多数の人が意外に感じたかと思います。何ならその顔まで鮮明に想像出来ます。でもこのアルバム、めちゃくちゃ良いんです。コンテンポラリーR&Bの真髄を究めた硬派なプロダクトと、若手男性グループにありがちなキラキラした遊び心。この2つの持ち味を、メンバーそれぞれが絶妙なバランスのもとで謳歌していて、万人が楽しめる仕様になっているのがまず、とてもデカい。また、メンバーが詞曲やアレンジを手がける割合も格段に上がり、彼らのクリエイティビティがよりダイナミックな精度で生かされている点も特筆。「Cry For Me」「Look At Me」などのバラードを筆頭に、ヴォーカル面もすっかり堂に入っているしで、毎回感嘆しながら聴いていました。


というわけで、長々とお届けして参りました「2017年上半期のTOP20」、いかがでしたでしょうか。合間を見てちまちま書き進めること十数日、ようやく完成して一人で飛び上がっております。

まあ、あれですね、一言で表すなら「混戦かよ。」という感じ。本当にどのアルバムも指折りの出来だったし、新作が出るたびに有り余る幸せを人知れず、感じておりました。あと個人的には、今期に顕著だった”90's的アプローチの連発”がこの上なく嬉しかったり・・・!趣味嗜好は人それぞれですが、今回のランキングが、皆さんの音楽ライフの明日を作る肥やしになれば幸いでございます。

そしてすでに、下半期の方もざわざわし始めていますね。おそらく年の暮れには、名作に埋もれて今以上にウハウハしている私の姿が拝めることでしょう。楽しみだー!


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