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「U.S.A.」大ヒットの今だからこそ。DA PUMPの低迷期〜現在を数少ないシングルで辿る

お久しぶりです。実は先月、度重なる転機により10年で1度あるかないかの超バタバタな日々でして、せっかく記事を書き始めたのに途中から手をつけられないでおりました。執筆当初の熱をキープ出来たかはいざ知らず、一段落したこのタイミングでなんとか書き上げましたので、よかったら読んでってくださいな。お題は、現在ノリに乗るあのグループについて。

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先日、DA PUMPの特集が組まれた「SONGS」を見た。メンバーの変動が繰り返される中、ただ一人のオリジナルメンバーとして覚悟を背負うISSA、そして暗雲立ち込める状況の中でもISSAとともに葛藤・奮起するダンサーメンバーたちの思いの丈を画面越しに知り、純粋に心を打たれた。

というのも私、DA PUMPの全盛期に青春街道まっしぐら。その後も長きに渡って動向を追うようにしてきたファンの一人でして。楽曲の完成度の高さは元より、やっぱり、目が離せないんだよね。あのダンスから、あのボーカルから。先述した「SONGS」や他の音楽番組でも、ISSAの力強いパフォーマンスはまったく衰えておらず畏敬の念すら覚えた。それこそ、ショッピングモールの地道な巡業にも足繁く通った生粋のフリークたちは、今回のブレイクにさぞかし感極まったことでしょう。言わずもがな、この私も。

で、表題です。ご存知の通り、「U.S.A」のヒットでめでたく再起を果たしたDA PUMPですが、その境地に到達するまでには険しい紆余曲折がありました。作品の中には世間に気付かれず、無念のままなりを潜めていったものも少なくありません。そこで、一世を風靡するこの機会に彼らの「停滞期」の作品にあえて迫ってみようと思った次第です。数々の試行錯誤の跡も、今ならきっと評価されうると思うので。

DA PUMPの低迷期を考える

件の作品群に迫る前に、DA PUMPの低迷期がいつなのかを自分なりに考察してみようと思います。彼らが初めてオリコンのTOP10入りを果たしたのは、1998年発売の5thシングル「Rhapsody in Blue」でのこと。意外にも、1997年にシングル「Feelin' Good -It's PARADISE-」でデビューしてから1年もの月日を要しました。当時のCD売上規模は今と比べてまるで違うので、チャートの数字だけで一概に当時の風速を推し量ることは勿論出来ません。ですが、この年に「紅白歌合戦」に初出場した経緯等を考えると、「世間一般にも認知され、徐々に人気を強固にしていったのが1998年」というセオリーは、あながち的外れでもないと思っています。

その後、2000年にシングル「if...」が超ロングランヒット(現時点でDA PUMPのCDシングル最高売上を記録)。続くシングル「Purple The Orion」がオリコン最高3位、初のベストアルバムがグループ初のミリオンセラーと立て続けにヒットを飛ばすなど、「if...」の勢いを受け2001年も完全にフルスロットル状態だったDA PUMP。ISSAのドラマ出演も相まってメディア露出も多かったですし、全盛期を唱えるならこの頃とするのが妥当でしょう。

では、低迷期は?売上やチャート面だけで見ると、翌2002年のシングル「RAIN OF PAIN」を境に急激な右肩下がりがスタート。2003年にはシングル「Night Walk」で初のセルフプロデュースに進出したものの、一般受けからはますます遠ざかって陰が薄い存在に…。ただ、個人的にこの時期はあえて”挑戦期”だと謳いたい。彼らが音楽的意欲を剥き出しにして戦っていた時代で、現に楽曲の説得力や自由度は極めて高い(ダンス番組「少年チャンプル」も好評でしたしね)。結果論ではありますが、次のフェーズへの橋渡しとしてなくてはならなかった作業だったと思うし、いちファンとしてポジティブな印象があります。

そんな中、DA PUMPは大きな転機を迎えます。デビュー当初からのメンバーだったSHINOBUのワケあり脱退です。ただでさえアウェイな見方が強くなっていた中で起こったこの出来事によって、一般はおろかファン層も縮小を避けられず、「もうこれどうするよ…」という嘆きの声がどこからともなく聞こえてきそうでした。以上の事項と、デビュー以来初めてTOP20位圏外に陥落してしまった事実を総括し、僕は彼らの”苦境の時代”を2006年9月発売のシングル「ALRIGHT!」からに定めることにします。低迷期の終わり?ご存知「U.S.A.」です。長ぇ…。

低迷期に埋もれてしまった名曲たち

前置きが長くてすみません。いよいよここから、低迷期の作品を追っていこうと思うのですが、驚くなかれ、先述のシングル「ALRIGHT!」から再ブレイクを遂げた「U.S.A.」までの12年間で、彼らはたったの6枚しかシングルをリリースしていません。2年に1枚って、寡作もいいところ。当然、アルバムのリリースもなし。で、そのリリースの地味さに反して、YUKINARIやKENが脱退したり、かと思えばメンバーを増員したりと、グループ構成そのものは目まぐるしい変わりよう。今思えば、その極端な流れについていけない人も多かったのだと思う。

とは言え、作品そのものはじつに粒ぞろい。J-R&B好きの食指もグイグイ刺激するはずなので、ぜひチェックしてください。

「ALRIGHT!」(2006年)

SHINOBUが脱退し、ISSA・KEN・YUKINARIの3人体制になって初のシングル。楽曲提供者にBENIや遊助の作品で知られる今井大介を迎え、ブラック・フィーリング満点の快活パーティーチューンに。セルフプロデュースで培ったカンの良さがミュージックビデオにもしっかりと落とし込まれ、歌って踊るDA PUMPを陽気に体現。サビのISSAのコーラスが滑らかでイカします。

「Christmas Night」(2006年)

「ALRIGHT!」から2ヶ月足らずでリリースされたクリスマス・ソング。DA PUMPの冬うたと言えば「All My Love To You」が挙げられますが、こちらはクリスマス・スタンダードの一節を拝借したりと、よりストレートに”聖夜感”を打ち出した仕上がり。もっとも、今井大介お得意のメロウな所作によって、耳を介して流れ込むフィーリングはすこぶるクール。

「SUMMER RIDER」(2009年)

打って変わって、ど直球のサマーソング。前作からの2年半の間にYUKINARI脱退→ダンサー7人増員で計9人となったDA PUMPは、大所帯ならではのわちゃわちゃ感を引っさげて最高にみずみずしいポップ・チューンを送り出してきました。透き通るシンセサウンドと豪快なISSAのボーカルが問答無用に夏を加速させ、アウトドアが捗る捗る。リリース当時から大好きな1曲です。

「Can't get your love」(2011年)

ISSAのハイトーンボイスが初っぱなから炸裂するシリアスなダンスナンバー。ついにKENまで去ってしまったDA PUMP。作詞を当時のレーベルメイトである谷村奈南、作曲を引く手数多のヒットメイカー・ERIK LIDBOMやFAST LANEらが担当したものの、残念ながらセールスは振るわず…。が、代表曲のセルフリメイク「if... arekarabokura」やセンシュアルなEDM「Let me get you now」など、トータルの趣向としては断じて侮れないシングル作。

「New Position」(2014年)

DA PUMPの黎明期を支えたプロデューサー・m.c.A・T(富樫明生)が久々に登板。野郎たちの咆哮が今にも聞こえてきそうなワイルドこの上ないトラックはもちろん、ダイナミズムを重視したボーカルプロダクトも紛うことなき冨樫印。歌詞では「雨ニモ/風ニモ/ブレヌPride/無礼でも」という今現在の彼らに通じるアティテュード表明も。ちなみに、本作リリース前にダンサーのKAZUMAが脱退したため、このシングルが現メンバー体制での出発作にあたります。

「U.S.A.」(2018年)

そして、この曲。Joe Yellowが1992年に送り出した同名ユーロビート曲の日本語カヴァーで、メンバー自体もきっと待望した大ヒット作。キレのある歌声や一周回ってフレッシュなメロディラインとサウンド、さらには「いいねダンス」の導入も奏功し、今や若かりし頃のDA PUMPを知らないティーンエイジャーすら巻き込む一大ムーヴメントを形成しています。

従来の楽曲とは異なった趣を放っていることは、彼らが初めてシングルでユーロビートに挑んだという事実から見ても明らかです。正直に言って、初めは違和感の方が強かった。でも、今は違う。ユーロビートの日本語カバーを様式化し、90年代に数多くのヒットを送り出したライジングプロダクションの中にいながら、20年にも渡ってユーロビートと無縁だった(というか、あえて避けていたとすら感じる)DA PUMP。それが、このタイミングで満を辞して歌い、踊ったことで存外なバズを生んだわけですから、こんなにもドラマティックな話はないなと。きっと、十余年の逆境を着実に乗り越えてきた彼らの底力というやつが、時代やタイミングに恵まれついに爆発したのでしょう。本当に綺麗な返り咲き。楽曲、ビデオ、ジャケットに”ダサ要素”が取り込まれているのも、彼らの吹っ切れ、もとい不退転の決意が反映されているからなのだと今なら分かります。

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さて、未だ興奮冷めやらぬ「U.S.A.」フィーバーの中で次回作以降の話をするのも野暮ですが、おそらくはまた新たな機軸を打ち出してくるのではないかと踏んでいます。なんたって”カッコいい”にとことんこだわるDA PUMPですから、逆説的に見れば安易に二匹目のドジョウなど狙ってこないはず…というのが超・個人的な見解であり、願い。ダンスミュージックの選択肢は無限にあるわけですし、彼らが次なる一手にどの分野をチョイスするのか、そして「U.S.A.」を足掛かりに彼らがどこへ向かうのか、引き続き興味深く見守って行きます。

最後に、「U.S.A.」で初めてDA PUMPの活躍に触れた若い世代の人たちにとっては、今回ご紹介した曲はもちろん、黄金期の作品も耳新しいかと思います。シングル、アルバムともに緻密でクリエイティブで、尚かつスタイリッシュに歌い踊るグループはここ日本にそう存在しませんので、このエントリーがそれらへと飛び込む取っ掛かりになれば幸いです。

*初のベスト盤「Da Best Of Da Pump」の感想はこちら。
http://groovinrb.blog32.fc2.com/blog-entry-2023.html

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