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国際交流イベントで人と人が繋がり新しい価値を生み出す

今回は、関西大学教授、亀井克之さんにお話をうかがいました。
亀井教授は研究や学生の指導、リスクマネージメント学会を運営するかたわら、数々の国際シンポジウムを企画し、人と人との繋がりを通して常に新しい価値を創造し続けていらっしゃいます。

【亀井克之教授プロフィール】
関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 教授
日本リスクマネジメント学会事務局長
AMAROK JAPAN事務局長
日仏経営学会会長 他
【略歴】
1962年 大阪府吹田市生まれ
1990年 大阪外国語大学 文学修士(フランス語専攻)
1993年 関西大学大学院商学研究科 博士課程 単位取得
1998年 エクス・マルセイユ第3大学DEA(経営学、フランス政府給費留学)
2002年 大阪市立大学 博士(商学) 2004年-2009年 関西大学 総合情報学部 教授
2005年9月-2006年8月 フランス モンペリエ第1大学経営学部 客員教授
2010年 関西大学 社会安全学部 教授
【モットー】
 学生によく言う言葉は『ATM(明るく、楽しく、前向きに)!

■活動の原動力は父に対する想いとフランスへの恩返し

記者:亀井教授、先月(2019年6月)は日仏経営学会の会長就任おめでとうございます。数々の国際シンポジウムの主催や企画、それにマラソンまで(笑)! 本当に様々な活動を精力的にされてますが、その原動力の秘密は何でしょうか?どのような想いがあるのでしょうか?

亀井克之教授(以下亀井と略):
ありがとうございます。
マラソンは4時間を切って自己ベストを更新し続けています(笑)。
さて、シンポジウムの主催や企画の原動力や想いは、改めて考えてみると二つあります。一つはリスクマネージメントの学問についてですが、それは父に対する想いです。
そしてもう一つ、国際交流やイベント企画については、フランスという国や人にお世話になったので、それに恩返しをしたいという想いです。

記者:お父様(関西大学の商学部 元名誉教授 亀井利明様)は、日本にまだ「リスク」という言葉が知られていなかった時代から研究されていたそうですよね?

亀井:そうです。私が生まれる前1961年に「リスクマネージメント」の理論を日本で最初に研究、広めたパイオニア的な存在です。
私は現在、「中小企業の事業承継」という課題について健康という視点からリスクマネージメントを研究しており、私も父の研究という事業をまさに承継しているのですが、同じ構造が中小企業の事業承継にも存在します。
つまり、企業として成長した背景には創業者の企業理念や考えている範囲や深さがあるのですが、それらが2代目、3代目と受け継がれ、発展していくには何が重要なのか?という課題です。

■中小企業経営者の心の健全さが社会全体を活性化する

記者:何が重要で、健康とどう関係するのでしょうか?

亀井:一言で説明するのは難しいですが、日本の全企業数の99%以上を占める中小企業経営者自身の健康は「経営資産」という考え方です。現在では精神医学の分野とも連携した研究を行なっています。
つまり、永年続いている学会や企業には、力強い最初の想いや広い概念があるものです。それを承継するためには健全な心が重要だと考えています。

実は、私も父に反発していた時期や葛藤もありました。学会の運営とか研究内容に関するものでした。
しかし、研究を進めているうちに父がパイオニアとして苦労してきたことや考えが理解できるようになりました。
だから、企業経営者などの創業理念、最初の想いを理解するためには反発ではなく、真摯な探求と心の健全さが大切だと考えるのです。

そして、中小企業経営者が心の健全さを保ち、活き活きする事で社会全体が活性化すると思うのです。

■フランス留学でホスピタリティを実感

記者:なるほど。それでは、もう一つの「恩返しをしたい」というのはどのような想いなのでしょうか?

亀井:それは、フランスのアクサン・プロバンスに留学した際、私の妻や子供達も一緒に行き、家族共々とてもお世話になりました。そして、今の研究や私があるのもこのフランス留学のおかげです。
だから、国際的な規模で社会、世界に恩返しをしたいという気持ちがベースにあるのです。

記者:それは美しいですね。

亀井:もちろん、アジア人ということで差別を受けたり、厳しいこともありましたが、とても大きく深い支援を受け、ホスピタリティというものを実感しました。フランス政府からの国費留学という事にも感謝しているという面があります。

■誰もが日常の何気ない事に喜びを感じられる社会

記者:そうなのですね!ところで、亀井教授はこれからどのような時代を作っていきたいのでしょうか?

亀井:夢というか、望んでいる姿というのは、誰もが日常の何気ない事に喜びを感じられる社会です。スマホばかりではなく、例えば芝生の上を歩いて感じるその感覚を大切にする生き方を優先する社会です。マーケットでニンジンを買う時の土の香りとか、暖炉で薪をくべる時の独特の匂いとか。。。そこに喜びを感じる社会、大切なものや正に生きていることを実感できる社会。これも南仏の生活から大きく影響を受けています。

記者:そのためにどのような目標をお持ちですか?

亀井:これからも、どんどん様々な企画を行なっていきます(笑)。
国際交流や、企画・イベントもマラソンと一緒で、様々な苦労があるのですが、終わったら次のマラソン大会に応募しているように(笑)、次の企画を構想しています。

■企画によって人と人とが繋がっていく

記者:それはすごい(笑)! その背景には何があるのでしょう?

亀井:三つあると思いますが、一つ目は先ほどの「恩返し」とも通じるものがありますが、国際的に人をお招きするのが好きだということ。
二つ目はイベントや企画そのものが好きだし、三つ目は企画によって人と人とが繋がって新しい価値を生み出していくのが好きなんです。これが一番大きい喜びかも知れません。自分とは全然違うタイプや考えの人や、私以外の人同士が繋がることが嬉しいです。

少し前にも、「ホスピタルアートがある街“堺”」と題して堺市の耳原総合病院と堺市、近畿大学の先生とでイギリスのチェルシー・ウエストミンスター大学の方をお招きしてシンポジウムを行いました。
これによって、西日本でNo.1のホスピタルアートを取り入れている耳原総合病院をクローズアップできたし、イギリスの大学や近畿大学とも繋がりができました。

つまり、企画を行う背景として、昔は認められたいとか、大学で成果をあげたいとか思っていましたが、今は、単純に自分と参加して下さった方々の喜びのためですね。そして、リアルな人と繋がっていくことで、感性が豊かになっていきます。生きていることを実感するためには感性が必要ですから、学生には「感性を磨け!」と言ってます。「映画は吹き替えで観るな、字幕で観ろ!」とも(笑)。

■これからは縄文的な感性の時代!

記者:面白いですね。リスクマネージメントと聞くと、ロジカルに分析して戦略やリスク回避を行なっていくような研究分野というイメージが強いですが、亀井教授のお話には感性のお話が多いですね。

亀井:ええ、そうなんですよ。実はリスクマネージメントには感性や直感が重要なのです。

記者:?

亀井:例えば、拙書の「決断力に見るリスクマネジメント」に書いてあるのですが、決断には2パターンあり、理性と感性です。

理性はリスクをコストとして発生確率から算出して。。。といった理論的に積み上げていった判断、決断です。

一方で感性の方はタイタニック号が氷山にぶつかりそうだ(笑)といった際、どっちに舵を切れば良いのか?といったとっさの判断、決断です。データが無い時に信じるのは経験と直感なのです。

記者:なるほど。ところで、これからはAIが活躍する時代ですが、その中でどのような生き方、どんな時代を創っていく必要があるとお考えでしょうか?

亀井:ズバリ、『感性』『思いやり』が重要だと考えます。特にAIには追いつけない直感を生み出す『感性』です。最近ブームになっている縄文土器に象徴されるような立体的、つまり三次元的な思考ができる『感性』がこれからは必要になると感じます。昨年、パリで日仏友好160周年記念にて縄文土器の展示を観たのですが、その良さは驚異的です。詳しくは谷川徹三さん、(この方は詩人の谷川俊太郎さんのお父さんなのですが)の「縄文的原型と弥生的原型 (1971年)」を読んで頂きたいです。日本人の感性、美意識には縄文的なものと弥生的なものが脈々と受け継がれていると説かれています。また、1952年に発表された岡本太郎さんの「縄文土器論」も感性を磨く上で、是非読んで欲しいですね。

記者:フランス留学や数々の国際交流イベントで培われた亀井教授のお話は、学生にとっても貴重なものだと思います。最後に一言お願いします。

亀井:結論は、
①引き続き外国の方をお招きして日本文化を知っていただく
②日本人にはそういう方々のシンポジウムを聞いてもらう
③人と人とのつながりを大切にしていくといったことをこれからも行っていきます。

記者:本日は、本当にありがとうございました。

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【編集後期】
インタビューの記事を担当した、池田、小畑です。
様々な国際交流イベントや企画をフットワーク軽く、本当に楽しんでどんどん開催されている亀井教授の想いや背景など、その秘密に迫ることができたインタビューでした。
個に閉じた社会になりつつある時代だからこそ、亀井教授のような「人と人がつながっていく価値のある企画」をプロデュースする力はこれからも大いに重要になると思います。
お忙しい中、貴重な機会を作って頂き本当にありがとうございました。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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