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ひとり親パパと娘のふたりきりな日常の話 その2

こんちわ。
東京で映像クリエイターをしている
1児のシングルファーザーのKENと申します。

シングルファーザーになるまでのお話はこちらから


元嫁と別れた後、娘のケアを最優先におもいっきり甘やかして遊ばせてました。遊園地にアイスクリーム。
でも僕はそれが娘にとっては単なる誤魔化しだと思えたし、僕自身もそうした行為が自己欺瞞なんじゃないかと感じていた。

だから様々な問題を解決していかなければならないのだけど、そうもいかなかった。

三日後にはすぐに仕事をしなければならなかったからだ。



映像編集のお仕事

僕のお仕事がどんな様子なのかわからないとこの状況の説明は難しい。
なのでまずは簡単に説明しておく。

僕の職業は「オフラインエディター」と呼ばれる職業で、映像の編集を専門に行うお仕事だ。
主にTVCMやWebCM、企業VPなどのお仕事に関わっているのだけど、映像のお仕事は多岐にわたる様々なスタッフによって成立している。
順序としては

  1. 企画(広告代理店)

  2. プリプロダクション(制作会社による撮影準備)

  3. 撮影

    • 制作部

    • 演出部

    • 撮影部

    • 照明部

    • 美術部

    • 録音部

    • メイク

    • 衣装

    • 出演者

  4. ポストプロダクション(編集スタジオによる仕上げ)

    • オフライン編集(仮編集)

    • カラーグレーディング

    • CG制作

    • 音楽録音

    • オンライン編集(本編集)

    • MA(ナレーション録音・整音)

ものすごく非常にざっくり言ってこれだけの数の役割と工程があり、僕はその一部分でしかない。
具体的には4番のポストプロダクションにある「オフライン編集」だ。別名で「仮編集」とも呼ぶ。
これは撮影された膨大な量の映像素材を、
OKテイクとNGテイクを分け
OKテイクの中から良い部分を抜き出し
アクションを綺麗に・かっこよく・自然に繋ぐ。
15秒のCMであれば15秒に、30秒CMであれば30秒にそれぞれ編集して作品の長さを決める。
オフライン編集とはそういうお仕事だ。

特殊効果や高度な合成、モーショングラフィックスなどはその後の「オンライン編集」(別名本編集)に任せることが多いけど、オフライン編集でもある程度は行う。
このオフライン編集の段階で作品の形は大体固まるので、この段階でも監督だけでなく広告代理店やクライアント(広告主)による試写も行われる。

試写をするわけだから、もちろん様々なリクエストも出てくる。
カットが短い、とか、もっとテンポよくとか。文字を見やすくとかも。

なので広告代理店やクライアントが僕が編集作業をしている現場に立ち会ってその都度僕はリクエストに応えながら映像を調整していく。

10年ちょっと前まではオフライン編集の専用スタジオを使っていたけれど、最近は機材の進化やコスト削減の流れもあってもっぱら制作会社の会議室を使うことが増えた。
いまやノートパソコン一台で映像編集ができてしまう時代なのだ。


説明が長くなってしまって申し訳ないが、とにもかくにもこのような仕事の現場に僕は娘を連れていくしかなくなった。

電車で移動は避けた

普通はノートPCやキーボード、モニターなど様々な荷物をリュックに入れて電車で仕事場まで向かうのだが、今回は娘を連れて行くのでクルマで移動することにした。
重い荷物もあるのに娘の手を引いて都心の通勤ラッシュに揉まれるのはリスクが大きいからだ。
駐車場代を請求するのはさすがに心苦しいので、特Pを利用した。
長時間駐車してもとても安いので助かった。

そして仕事にはクルマで移動するのがとても楽だとわかったので今後もそうするようになった。

離婚前でも電車移動に重い機材を背負って行くには体力的にも腰痛的にも良くないし、深夜作業になった時に長距離のタクシー代を請求するのも心苦しく思っていたのだ。


簡単なお仕事のはずだったが

元嫁が去ってから三日後、僕は仕事に娘を連れていくことになった。
この時のお仕事は前年度からの続きで、この日はほぼ試写だけだと聞いていた。
じつは前年度の年末27日までがっつりお仕事をしていたのだ。

当然、前年度の時点で離婚は確定していて、年明けからひとり親になるという話はお客さんにも伝えていたし、年明けの仕事では立ち会い編集に娘を連れていくことに同意してもらっていた。

すでにほぼ作業は終わっていたし、試写だけなのですぐに終わるだろうと思っていた。
夕方に広告代理店の方々がいらっしゃって試写を行い、修正点があればその場で修正して解散だと僕は読んでいた。

連れてきた娘はお客さん達には歓迎された。
ご迷惑になるのはわかっていたのだが、このような状況を受け入れてくれて本当に感謝するしかなかった。

実は娘がまだ0歳の頃に別のお仕事で別の場所に連れてきた事があったが、そのときはまだ一日中寝てるだけだったし、僕一人だけの小一時間で済む内容だったので問題にならなかった。

得意先のスタジオにて。まだ生後5ヶ月のころ。

でも今回は違う。娘も5歳になっており、毎日元気に走り回るし騒ぎまくる。
事情を話してはあったが、正直気が気じゃなかった。
でもプロダクションの皆さんは娘の相手もしてくれて作業は問題なく行えた。
娘も気を良くしたのか泣いたり不安定になったりもせずに比較的大人しくしてくれた。
まあ新しい環境にいきなり放り込まれて少しは緊張していたのかもしれない。

しかし事はそうそう上手く行かない。

どうしても遅い時間になってしまう映像業界

映像業界はとても長時間労働が多い。
撮影前だと制作部はほとんど寝れない事が多いようだし、僕のような編集のパートであっても意見の相違や検証でとても時間を取る。
仮に15秒の短いTVCMであっても

  • テイク違い

  • カット順違い

  • アングル違い

  • 尺違い

  • タイトル違い

  • 色違い

  • 商品サイズ違い

  • ナレーション違い

  • 音楽違い

などなど、無限にタイプ数が増える。
それらをさらに組み合わせたりして検証し、議論するのでハマると何時間でもかかってしまう。
だから編集では徹夜作業や連日泊まり込みの作業が発生する。

前年度の年末の時点で編集の現状は広告代理店サイドにも展開されていたはずだし、あとは試写と多少の直しだけで済むだろうと思っていた僕の見込みは外れた。

結局作業は23時を過ぎてようやく終わり、そこからクルマで自宅に戻った頃には26時になろうとしていた。

子連れで立ち会い編集は無理がある

まだ5歳の女の子を深夜まで仕事に連れ回すのは無理があった。
子供なので当然眠くなればすこぶる機嫌が悪くなる。
しかし娘は文句一つ言わなかったのでそれなりに気を使っていたのかもしれない。

帰りのクルマの中ではぐったりと寝ていた娘だが、本当に多大な負担をかけてしまったと反省している。
僕自身も長時間の仕事や運転に、娘に気を回してほとほと疲れ切ってしまった。

その日はお風呂にも入れず寝るしか無かった。
明日からはまた娘を起こし、朝ごはんを作って食べさせるのだ。

今回の事があってますます仕事をどのようにしていけば良いのか考えなければならなくなった。
仮に今回のように先方の許可を貰って仕事場に娘を連れてくるとした場合、娘は今はまだ幼稚園生なので最悪幼稚園を休ませて連れてくることは可能だが、来年の小学校入学以降はそうもいかないだろう。

やはり僕の仕事は内容的にどうしても深夜までかかってしまう。
このような負担をかけさせるわけにはいかないだろう。
当然お客さんにも多大なご迷惑をかけてしまう。

今後の対応として考えられるのは

  • 延長保育を利用する

  • 24時間保育を利用する

  • ショートステイを利用する

  • 友人に預かってもらう

  • 親戚に預かってもらう

  • そもそも立ち会い編集の仕事をしない

  • 転職する

このくらいだ。
まずはひとり親になったのだから市役所まで手続きと、預かり関連の行政サービスがあるのか探ってみよう。

そんな事を考えながら娘の寝顔を見ていた。

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