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経口補水剤に関する研修問題

薬剤師のしらけんです。下痢、嘔吐などで困って経口補水剤を求めて来局された方に、経口補水剤に関して質問されたり、相談されたら適切に答えられるでしょうか?

今回は薬剤師や登録販売者、医療事務さんたちのため、経口補水剤に関する研修問題を作りました。5択の選択問題が全部で4問あります。簡単かと思いますので、チャレンジしてみてください。

問題1

経口補水剤は、水分が体内に吸収されやすいように設計されている。よってジュースやスポーツ飲料と比べて消化管から吸収されやすい。その理由を説明している最も適した文章を選びましょう

1 時間をかけてゆっくり摂取するように、故意に味を飲みにくくしているから
2 糖分と電解質が適度に調整されており、水分の吸収を効率的にしているから
3 抗利尿ホルモンの分泌を促し、消化管からの水分吸収量を増やすから
4 腸内細菌のバランスを整え、水分吸収に携わる細胞を活性化するから
5 体温調節中枢に作用し深部体温を調節し、消化管の運動能をあげるから

問題2

下痢や嘔吐を伴う脱水症状に関する以下の記述で、誤っているものを選びましょう

1 ひどい下痢や嘔吐があると、体内から水とともに糖分と電解質が失われるので、適度な糖分と電解質の補給が重要となる
2 乳児や小児、高齢者は脱水状態になっても口渇などの症状に気が付かない場合があることから、脱水症状が悪化しやすい
3 適切に経口補水剤を摂取しても嘔吐や下痢が継続する場合は、すばやく医師の診察を受ける必要がある
4 毎日決まった時間に経口補水剤を摂取することが、脱水症状の予防になる
5 脱水症は予期せず起こるので、一般家庭でも経口補水剤を購入し、常備しておくことが望ましい

問題3

昨夜からの嘔吐と下痢のため、小児科を受診した1歳7か月の女児とお母さんが処方箋を持参し、薬局を訪れた。処方医からは失われた水分を補給するため、薬局で経口補水剤を購入し、直ちに飲ませるように指導されたとのこと。経口補水剤についてよくわからないようだったので、気が付いた薬局スタッフが声をかけた。経口補水剤の摂取方法の説明として、正しいものを選びましょう。

1 通常は常温で飲みますが、味が苦手なようなら冷蔵庫で冷やしておくと飲みやすくなります
2 ジュースや牛乳に混ぜて摂取してもよいです
3 経口補水剤は独特な風味があり飲みにくく感じるかもしれません。代わりに冷水を与えてください
4 ゼリータイプよりも液体タイプのほうが、むせにくいです
5 水分吸収が遅れないように、すばやくコップ一杯程度を一気に飲んでください

問題4

78歳の男性が内科を受診し薬局に処方箋を持参した。処方医から処方薬が1種類追加になったことから脱水症を予防するために、水分をこまめに摂るように指導されたとのこと。男性は薬局で販売中の経口補水剤をいくつか手に取り、薬局スタッフに声をかけた。スタッフは高齢者の脱水症について指導することにした。以下の文章から誤っている説明を選びましょう

1 高齢者は成人に比べて体液量が少ないため、脱水症を引き起こしやすい
2 腎臓における水分の再吸収能が低下すると、水分を失いやすい
3 加齢や食欲低下、運動機能の低下は、脱水症の発生と関連性がない
4 高血圧に対する薬剤が原因で、脱水症になる可能性がある
5 自分の体調に気が付かず脱水症が進行することがあるので、周囲の人たちの気配りが大切である

いかがだったでしょうか?難しくないですよね。参考になれば幸いです。それと、この問題を解く前にみるための研修動画も作成しました。素人ながら、わたしの声で作った研修用の動画です。問題の解答と解説を見る前に、もし必要であれば参考にしてください。

ここからは解答と解説です。

問題1の解説

経口補水剤は、水分が体内に吸収されやすいように設計されている。よってジュースやスポーツ飲料と比べて消化管から吸収されやすい。その理由を説明している最も適した文章を選びましょう

1 時間をかけてゆっくり摂取するように、故意に味を飲みにくくしているから
👉(×)ゆっくり摂取すると水分の吸収は良くなるが、それはどの飲料でも同じ
2 糖分と電解質が適度に調整されており、水分の吸収を効率的にしているから
👉(○)水分の吸収によりよいバランスで調整されている
3 抗利尿ホルモンの分泌を促し、消化管からの水分吸収量を増やすから
👉(×)抗利尿ホルモンの関与は考えにくい
4 腸内細菌のバランスを整え、水分吸収に携わる細胞を活性化するから
👉(×)腸内細菌のバランスに関与しないと考えられる
5 体温調節中枢に作用し深部体温を調節し、消化管の運動能をあげるから
👉(×)冷たい飲料を摂取して一時的に体を冷やすことはできるが、それはどの飲料でも一緒

問題2の解説

下痢や嘔吐を伴う脱水症状に関する以下の記述で、誤っているものを選びましょう

1 ひどい下痢や嘔吐があると、体内から水とともに糖分と電解質が失われるので、適度な糖分と電解質の補給が重要となる
👉(×)嘔吐、下痢、熱中症などによる脱水症状では水分以外に、ナトリウムやカリウムなどの電解質も喪失する。経口補水剤を適切に使用し、電解質を補給するべき
2 乳児や小児、高齢者は脱水状態になっても口渇などの症状に気が付かない場合があることから、脱水症状が悪化しやすい
👉(×)乳児や小児、高齢者は目立った発熱や嘔吐がみられなくても、脱水症状が進行することがある。保護者や周囲の人たちは脱水について正しい理解をし、脱水症に気を配る必要がある
3 適切に経口補水剤を摂取しても嘔吐や下痢が継続する場合は、すばやく医師の診察を受ける必要がある
👉(×)嘔吐や下痢の原因が、腸重積や髄膜炎など重篤な疾患により生じるものであれば、素早く医師の診察を受ける必要がある。正しい経口補水療法で改善がみられない場合は、救急の対応が必要である
4 毎日決まった時間に経口補水剤を摂取することが、脱水症状の予防になる
👉(○)経口補水剤は軽度から中程度の脱水症状がある人向けの製品であり、常時摂取するものではない。ナトリウム含量が多いことから、塩分過量になる可能性もあるため、必要なときだけ使用する飲料である。この選択肢を選ぶと正解です
5 脱水症は予期せず起こるので、一般家庭でも経口補水剤を購入し、常備しておくことが望ましい
👉(×)症状があってから緊急に経口補水剤を準備するよりは、常備しておくことで素早い対応が可能である

問題3の解説

昨夜からの嘔吐と下痢のため、小児科を受診した1歳7か月の女児とお母さんが処方箋を持参し、薬局を訪れた。処方医からは失われた水分を補給するため、薬局で経口補水剤を購入し、直ちに飲ませるように指導されたとのこと。経口補水剤についてよくわからないようだったので、気が付いた薬局スタッフが声をかけた。経口補水剤の摂取方法の説明として、正しいものを選びましょう。

1 通常は常温で飲みますが、味が苦手なようなら冷蔵庫で冷やしておくと飲みやすくなります
👉(○)経口補水剤は常温で摂取したほうが、水分の吸収効率はよいといわれている。しかし独特の味が苦手で、飲みにくく感じる小児も多い。冷やしておくと冷感により舌が麻痺し、飲みやすくなる。この選択肢を選ぶと正解です
2 ジュースや牛乳に混ぜて摂取してもよいです
👉(×)経口補水剤は水分の吸収をよくするため、糖分やミネラルがバランス良く配合されている。牛乳やジュースに混ぜることで、そのバランスが崩れるため、他のものに混ぜて摂取してはいけない
3 経口補水剤は独特な風味があり飲みにくく感じるかもしれません。代わりに冷水を与えてください
👉(×)経口補水剤は水分の吸収を第一に作られており、味は考慮されていない。水分だけを補給しても、経口補水剤の代用品にならない
4 ゼリータイプよりも液体タイプのほうが、むせにくいです
👉(×)液体タイプだと、のどの奥に移動するスピードがはやく、むせやすい。ゆっくり移動するゼリータイプのほうがむせにくい
5 水分吸収が遅れないように、すばやくコップ一杯程度を一気に飲んでください
👉(×)経口補水剤を短時間で大量に摂取すると、吸収率が低下し、吐き戻すことがある。患児が望んでもゆっくり少しずつ与えるように指導する

問題4の解説

78歳の男性が内科を受診し薬局に処方箋を持参した。処方医から処方薬が1種類追加になったことから脱水症を予防するために、水分をこまめに摂るように指導されたとのこと。男性は薬局で販売中の経口補水剤をいくつか手に取り、薬局スタッフに声をかけた。スタッフは高齢者の脱水症について指導することにした。以下の文章から誤っている説明を選びましょう

1 高齢者は成人に比べて体液量が少ないため、脱水症を引き起こしやすい
👉(×)高齢者は筋肉量の減少に伴い、体液量が減少することが知られている。水分が足りない分、それを補う必要があることから、脱水症に気をつける必要がある。
2 腎臓における水分の再吸収能が低下すると、水分を失いやすい
👉(×)水分の再吸収能は加齢とともに低下する。
3 加齢や食欲低下、運動機能の低下は、脱水症の発生と関連性がない
👉(○)食物や飲料から摂取する水分量は減少し、運動機能の低下は筋肉量の低下の原因となる。おのずと脱水症の危険性は上昇することから、間違い。この選択肢を選ぶと正解です。
4 高血圧に対する薬剤が原因で、脱水症になる可能性がある
👉(×)高血圧に対する薬には利尿作用をもつものもあり、体液量を減らし脱水症を引き起こす可能性がある
5 自分の体調に気が付かず脱水症が進行することがあるので、周囲の人たちの気配りが大切である
👉(×)体温上昇とともに、口渇などの脱水症状に気が付かないことが知られている。家族や周りの人たち、医療従事者が脱水症状になっていないか、積極的にかかわることで脱水症を予防することが大切と考える

もしも内容に間違いがあったり、気が付いたことがあったらコメントいただけると幸いです。

最後まで見て頂きありがとうございました。
しらけん


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