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個展「枯花」京都、ウリュウユウキ・逢坂憲吾写真二人展「そこから なにが みえますか」展示総括(備忘を兼ねて)

2020年9月に京都個展「枯花」を、10月にウリュウユウキ・逢坂憲吾写真二人展「そこから なにが みえますか」を開催しました。
その両展示総括を、備忘兼ねて書きました。
おおよそ3500文字、読了に10分弱です。
(2021年1月7日 加筆修正 約5100字 読了10分)


 2020年、展示を三度開催しましたが、それぞれ足を運んでくださった皆様に改めてお礼申し上げます。
 2月個展「枯花」東京に180名、9月個展「枯花」京都に270名(KG+参加)、10月の二人写真展「そこから なにが みえますか」320名の方にご来場いただきました(人数は概算)。
 covid-19の感染拡大直前の2月下旬、9月末から10月中旬にかけての展示でしたが、そうした状況において足をお運びいただけたことは本当に嬉しかったです。
 10月展示のみですがVR展示も行なっております。
 ぜひをご覧くださいませ。


・展示作品
 9月展示用に1点、10月展示用に1点、とそれぞれ新作を制作しました。
「2月の個展から半年経ったし、新作用意しないと!」と思って準備をしたのですが、友人から「でもこっち(関西)のお客さん、ほぼ全員が初見じゃね?」と言われて「そういえば!」と気付かされたことを思い出します(苦笑)。
 とはいえ9月に展示した新作は思いのほか力強い作品で、展示誘導へのきっかけになりました。
 余談ですが、作者の自分でも出力して初めて気がつくことも多く、細部にこだわりのある作品であれば「サイズ」は重要だと改めて感じます。

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 新作は、個展のポスター・DM(ダイレクトメール)イメージにも採用したのですが、会場ではまじまじと観てくださる方が多く、ノートリミングで緊張感のある作品をつくっている僕としては非常に嬉しかったです。
 会期終了後、個展会場の「ペルナマン京都」からほど近いギャラリー「ONE AND ONLY」にてKG+の展示が開催されることもあり、新作含む2点を延長展示することにしました。
 結果、会期終了後も展示を見に来てくださる方がいて、大変ありがたかったです。
 会場外からも大変目立つ作品でした。
 なお、追加作品2点に関しては、フォトグラファー・レタッチャーの塚本宏明氏に依頼、画像処理にご協力いただきました。拝謝。


・展示設計
 展示設計は、個展・二人展ともに悩ましい結果となりました。
 まず個展。展示数は5点(2月展示より4点、新作1点)。
 壁面の問題から、当初予定と異なる展示方法を採用せざるを得ず、設営費用がかさむ(材料費2万円強)結果に。
 また、作品のセンター位置が160センチと高かったため、近接して作品をご覧になりたい方にとって大変見難い展示でした。
 特に背の低い女性にとっては見難い展示になってしまいました。
 そのため二人展では、作品センター位置を個展時より30センチ近く下げることで鑑賞体験を改善。
 両展示を見に来てくださった方(特に女性)からは「前回よりはるかに見やすい」「何でこんなに見やすいんだろう、て思った」との声を頂戴しました。
 正解のある話では無いのですが、僕の作品は近接鑑賞しようとする方に比較的女性が多いという実感がありますので、そうした皆様への配慮を含めた設置は、今後の展示重要課題です。

 なお、展示設営には京都藝術大学アートプロデュース学科所属学生2名にご協力いただきました。
 学生と記載しておりますが、彼らは専門的知見と設営技術を持ち、自身で展示設営を複数回行なっている専門家でしたので、非常に助かりました。
 たまたまギャラリーからご紹介を受けたのですが、専門教育を受けた学生に展示設営協力求めるのは、展示初心者にとっては有意義と感じました(9月10月とも有償で来ていただいております)。

20200923ペルナマン京都003


 続いて二人展。
 展示数はウリュウ10点、逢坂9点(2月展示7点+9月新作展示1点、新作1点)
 振り返ってみて痛恨の極みだったことが一つあります。
 それは「スペースに対して展示数が多すぎた」こと。
 展示会場であった「MEDIASHOP Gallery2」はスペースも広く天井高もあり非常に良い環境だったのですが、そこに目がくらんだ結果「鑑賞者の体力を考えない展示」という愚を犯してしまいました。
展示スペースに作風の違う作家の大型作品を総計19点。
 「これでもか!」とばかりに見せてしまう展示設計になったため、鑑賞者にとっては重たい展示になってしまいました。
 この点、非常に反省しております。
 濃いめの作品が大量って、鑑賞するだけでも疲れますよね。
「カツ丼大盛り二杯!」(CV西脇綾香@2009年大阪城ホール)
 今なら、それぞれ7点ずつの14点、までで展示設計します。

 作品集が個展時よりも売れませんでした(9月30冊、10月30冊)
 これは想像の域を出ないのですが、僕個人の分析としては、
1)重い作品を展示会場にめいっぱいにおいたため、鑑賞者を満足ないし、ややオーバーフローさせてしまったこと。
2)ウリュウ氏の作品集と合わせると5,000円(逢坂2,000円)になるため、作家が二人いる状況だと、どちらかだけを買うのがはばかられた(どちらか不在の場合には、在廊作家の作品集だけが売れました)。
3)特に欲しくなかった。
 の複合的理由と総括しています。
 特に2)に関しては2冊購入者特典での割引や販売担当者の在廊、を検討すべきでした。
 作品販売を含めて「買いやすい環境」整備は大切。
 管理者に販売委託ができるギャラリーなら、費用はかかりますが上述の問題は解消できるのでは、と考えております。
 値付は本当に難しいですし、販売環境も本当に難しいな、と改めて感じました。
 なお、作品集を用意した2展示とも「ご祝儀買い」は発生しませんでした。正直、印刷代(約27万円 紙質・ページ数の結果)は回収できる程度には売れることを期待して400冊刷りましたが、販売は80冊程度(会場60冊、通販25冊)、献本分あわせても300冊弱手元に残りました。
 今後の展示やフォトイベント等で販売していければ。

20201013写真二人展展示風景010

 また、作品に対して予断を持たず観てもらいたいという作家願望により、テキスト情報を極力排した展示として構成したのですが、二人展においてはそれが裏目に出てしまいました。
 展示側にとって自明のこと、が伝わっていなかったのです。
 特に「二人展である」という点について、理解のない方がそれなりにいらっしゃいました。
 二人展であることは会場入口含め、ポスターやDMで周知していたつもりでしたし、見に来てくださった方はそれらを頼りに来られたはずなのですが、基本的情報が思った以上に共有されていないことに驚きました。

 情報を盛り込んだDMとは逆に会場内でのテキスト情報のなさは、アート鑑賞機会の少ない方を戸惑わせる結果になりました。
 作家としては「鑑賞者が作品をみて、何かしら考えてくれること」を期待したわけですが、そうしたこちらの思いや考え自体がそもそも伝わってないわけで、それは戸惑いますよね…。
 こうした状況は、二人が在廊しない時間もある展示4日目以降に来てくださった鑑賞者にとって不親切なのでは? と考えるようになりました。
 最終的にテキストを増やし、作品については「相互に作品を紹介するテキストを掲示する」形で落ち着かせることにしました。
 作家としては悩ましいところではあるのですが、とはいえ鑑賞者にこちらの都合を押し付けるのもどうかと思いましたし、作品理解を深めていただけるきっかけにもなったので、結果的にはテキスト情報を提示してよかった、と考えています。

 なお「相互に作品を紹介」という形は、鑑賞者から面白いとのお声をいただけました。今後他作家と展示するようなことがあれば、同様の方法を採用しても良いなと考えています。

20201014写真二人展展示風景086

20201014写真二人展展示風景087


・展示費用

 前回2月の個展に関してはこちらのエントリーでも紹介したのですが、今回は細かい数字は出さないことにしましたが、総額だけ書きますと最終的には大凡30万円の出費でした。
 ただ、これは様々な補助金利用による結果で、差引最終金額になります。
 なお、前回同様不測の事態で細かな出費が重なったことや、文化庁の補助対象企画の事前立替金額が大きかったため、急激に資金繰りが悪化して10月下旬から〜12月初旬は非常に厳しかったです。
 12月31日現在、補助金に関しては小さなもの一つを除いて全て事業報告終了、入金完了しましたので、無事に年を越しております。
 補助金については、これを取り巻く政治的事情もあったので、個人的にその事情に配慮する形で少し頑張って申請してみたのですが(A-2)、当時は事前出金額の上限があり、事業費用の大半を申請者が立替しなければならないものでした。
総額が大きければ大きいほど、申請者負担が大きくなる仕様。
 これに関しては、事業目的に照らして事前出金額は不適切では?という申請側によるロビイスト活動の結果、第3次以降、申請総額の半額までが事前出金対象となりました。

・情宣活動
 これに関しては、非常に成功しました
 特に公共交通機関の協力を得られたことで、周知力が高まり、上述の来場者数に間違いなく繋がっています(アンケートやインタビューから確認)。
 まず京都市営地下鉄。
 今回の企画が京都市の文化行政補助採択事業であったことを梃子に、適正手続にて申請、結果特定期間中にDM配架を実現。
31駅に50枚ずつ設置いただきました。
 また、阪急電鉄では、京都河原町・烏丸・大宮・西京極駅それぞれに設置されているコミュニティボードが「無償企画で掲載に値すると見なされるものであれば、無料で10日間掲示可能」だということを知り、8月末ごろから10月の会期終了まで掲出させていただきました。
 これらに併せ、飲食店やショップ、医療機関でポスター・DMを目にしたことで来場動機に繋がった方が多かったです(多くの方にご協力いただきました)。
「公共的要素の強い空間と私的要素の強い空間と、それぞれで目にすることで、内発動機が発生する」というのは非常に興味深い現象でした。
 マーケティングとかにもそういう話がきっとあるんでしょうね。

 ただ、そんな中でも一つだけ失敗したことがあって、それは掲出場所に「花屋」を検討していなかったこと。
 花の作品なので、花屋さんで掲出してもらえれば関心もってくださる人はより多かっただろうな、と会期中に気が付いたのですが、それまではさっぱりだったのです。実際、判明してるだけで花に関わる仕事や趣味の方が5名ほどお越しでした。
 次回はどこで展示をやるにせよ、会場にほど近い花屋さんへのポスター・DM掲出願いは必須と考えています。

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(上3点撮影 ウリュウユウキ)

 なお、会場内には作家サイトおよびインスタグラムへ誘導できるよう、自己紹介文の下などにQRコードを設置しました。
 ここから作品を見に来てくださり、インスタをフォローくださった方もいるので、積極的に自作を広めたい方はこうしたことを実施されるのはいかがでしょうか。
 僕はここでQRコード変換しました。

20201014写真二人展展示風景081



 ・感染対策
 選定当初から、換気可能なギャラリーを探しました。
 9月は扉をオープン、会場換気システムをフル稼働させて対応。
 入口および記載台や作品集配置場所全てにアルコールを設置、ボールペンも10本ほど用意して、使用前と使用済を分けるように対応しました。
 10月はこれに加え、強力なサーキュレーターを2台用意。
 会場の換気システム自体が思った以上に強力であったために、有用でなかった可能性はあったのですが、会場内の空気循環促進という点では一定の効果がありました。
 ここだけで3万円程度かかりましたが、鑑賞者の心理的安心・実質的安全確保を考えるとかけた費用は無駄ではなかったです。

20201013写真二人展展示風景067

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 ・余談
 
会場の照明
 10月の展示ですが、左側がギャラリー照明(白色蛍光灯)、右側が用意した照明(高演色昼白色蛍光灯)です。
 プリントの彩色をできる限り正確に見てもらうために、全40本を入替。
 友人フォトグラファー久岡健一氏のご協力で実現しました。
 改めて拝謝。

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 以上、備忘としての展示総括日記でした。
 2021年も展示を実施したいと妄想しておりますが、そのためにもまずは資金調達せねばと思う年の瀬でございます。
 作品のご購入希望や、業務撮影のご依頼ございましたら、ぜひお声かけくださいませ。

 2021年も作家 逢坂憲吾 をどうぞよろしくお願いいたします。
 

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