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OKRを「止める」決断をするまで…運用半年で得た学びとは

 9月11日にハイマネージャー(@himanager_me)主催のイベント「OKR/1on1/CFR勉強会#1」を開催しました。6人のスピーカーが各々の事例、知見を共有し、30人の参加者と共にOKR・1on1・CFRについての学びあいの場となりました。

 2人目のスピーカーは株式会社WACULの池田さん。
OKRを運用し始めてから半年。「うまくいっていた」ものの、なんと今月に「止める」決断をしたとのこと。

 組織の中で何が起きていたのか。何を学びとして活かせるのか。
生々しい経験を基に、貴重な知見を共有して頂きました。

OKRは「最強」ではない

 皆さん、はじめまして。WACULで人事をしています池田と申します。

 WACULでは約6か月ほどOKRの運用を行ってきました。WACULがこの半年でどの様にOKRを導入し、日々運用し、結果どの様な気づきを得たのかなど、経験からお話出来ればと思います。

 まず私自身のキャリアですが、新卒入社したのは日本航空グループです。1stキャリアの一部上場の会社が経営破綻するという凄まじい経験を得ました。結果、「組織を作り、強くしていく」ことに興味関心を抱くようになり、現在人事をしています。

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株式会社WACULの池田さん

 「OKRはイケてる会社が使う最強の組織活性化フレームワークだ!」と思い、本日ここに参加頂いている方、最初に謝罪します。申し訳ございません。笑

 なぜかと言いますと、OKRにはそもそも合う会社、合わない会社があると思っています。そしてさらに言うと、運用次第では絶対に根付かないと感じています。そのあたりを中心にお話できればと思います。

OKRの特徴:「高い目標」x「主語チーム」

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 OKRの特徴は様々語られますが、本日こちらでお話させて頂くことは大きく2点あります。

 まずひとつ目が「高い目標に専心する」ことです。Object(O)を設定する際にストレッチゴール(ムーンショット)であるべきと言われていますが、それは高い目標を掲げることで目標達成に対するモチベーションを高めることができると言われています。そしてその高いOの達成指標としてKR(Key Results)を定量的に評価出来るよう設定し、KRのプロセスとして週次でP1,P2を設定し、物事の優先順位が明確になり生産性が上がると言われています。

 もう一つが、「主語チーム」です。これは弊社の造語なのですが、「主語がチームになる」すなわち「全社員がチーム視点になる」という意味です。O・KRの設定は全社のO・KRからツリーの様に各グループへと続き、そして通常OKRは人事評価と連動しないため、全社のOを意識しつつ各グループごとのO・KRの進捗を管理することを求められます。また、週始まりのCheck-inという宣言や、週終わりのWinセッションという成果への称え合いにより、全社的なコミュニケーションが促進され意識づけもされます。

 結果「ムーンショットなWACULのOを達成するために、自分たちのチームはどうあるべきか」を考えるため、「主語チーム」の状態で「高い目標に専心する」ことが可能になります。

OKRが合う会社とは

 その特徴を踏まえてOKRが合う会社とは、少し乱暴な言い方をすると、成長フェーズのベンチャーではないかと思います。

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 成長フェーズのベンチャーとは非常に広域でかつ雑に聞こえてしまうのですが、「組織・文化」「事業・サービス」によって合う合わないがあると思っています。

 まず成長フェーズ企業の「組織・文化」は、少数精鋭だったりで、全社的に組織成長していかなければならず、セクショナリズムなどあってならなくて、チームとしてのまとまりがとにかく重要ではないかと思っています。

 そして「事業・サービス」の点で言うと、自社サービス(特にSaaS)を持っている会社の場合は、組織が機能別に分かれている場合が多いと思います。人はグループに分かれると敵対心を持ちやすいとも言われていて、責任の押し付け合い=セクショナリズムになりかねないと思っています。なので、自社サービスがSaaSの場合はより、OKRが合うのではないかと思います。

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 結果、WACULはとても合う会社だと思っています。現在の組織体制ができたのは最近でで、正社員数50人弱の組織にです。自社サービスはSaaSで、機能ごとにチーム(グループ)が分かれています。そして、WACULの場合は行動指針に「システム思考」というのがあり、この行動指針が浸透されているからこそ、目先の業務効率化に走りやすいという組織課題もあります。よってOKRというフレームワークが合うと考えています。

根付く運用のポイントは「意義の理解」「ルール」「管理」

 合う会社だとしても、運用次第では根付きません。では「根付く運用とは何だ?」というところを次にお話しします。大きくはこの3つかなと思っています。「意義を理解」し、「ルールを作り、守る」そして、日々「運用管理」をする、この3つです。

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 キックオフで全社員がOKRをする意義を理解するのが重要です。そしてOKRを運用する上でのルールをみんなで決め、みんなで守ろうよと約束する。また、誰かがPMとしてOKRが正しく運用されていることを管理することも重要ではないかと思います。

 実際、WACULでどのようにインストールしたか簡単にお話させて頂くと、最初はトップダウンで導入を決定しました。その後全社でのキックオフを行いました。
日々の運用に関しては有志で委員会を発足し、回しました。簡単にまとめるとこちらの資料の通りです。

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 全社のOは3年間fixして、各グループのOKRについては四半期で決めます。そして毎週月曜日はCheck-in、毎週金曜日はWinセッションを実施し、四半期の終わりに振り返りをする...という一連の基本的なOKRの流れをフォローしています。

半年で何が起きたか

 今四半期で一度振り返りを行いました。結果分かったことがあります。それはOKRについて腹落ちしていない社員がいるということです。理由が何なのか社員と一緒に考えました。

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 様々な課題が意見として出たのですが、大きくなにが原因か考えたら3つほどありました。1つ目はキックオフの時にいなかった新しい社員が増えていたことで、その社員に対して何のフォローも無かったことです。

 2つ目はルールの周知が曖昧だったことです。例えばKRの達成度が0か100に近づいたらそもそもKRを再設定しなければいけないなど、ルールへの理解が不十分で、結果「とりあえずこの前と同じやり方やろう」と思考停止に陥っている部分もありました。本来、OKRはもっと自由な発想のもと行うべきだと思います。

 3つ目はPMの不在です。委員会はあくまで有志なので責任はありません。そのため、「誰が責任取るの?」「誰が意思決定するの?」ということが起こり、O・KRそしてP1P2の設定が曖昧になったり思考停止を誘発したりしました。

 これらのことから、「やる意義は分からないけどみんなやてってるからとりあえずやる」という様な状態が起こってしまいました。
このまま続けると組織成長が鈍化してしまうのではないかと判断し、「一旦立ち止まる」という決断をしました。

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 正直、結構な判断でした。部長、執行役員、取締役に状況を共有し、話合いを設け、そして最終的に一旦ストップしようと決断したのが実は今月です。

「人事制度は企画2割・運用8割」はOKRにも当てはまる

 OKRは良いフレームワークだと、私も本当に思っています。ですが、組織や事業の特徴よっては合う合わないがあると思っています。

 そして、本日ここにいるのは人事や組織活性担当の方が多いので共感頂けると思のですが、やはり人事制度は企画2割・運用8割と言われる通り、OKRにおいても運用が重要だと思います。

 OKRが最強だから導入すればどんな会社も最強になるわけではなく、まず特徴を理解し、自社にどの様にインストールするか設計し、運用コストを割いてでも妥協せずやるという決断とその意義を理解出来れば、組織活性に繋がるのではないかと思いました。

 WACULは今月、「一旦立ち止まる」という意思決定をしましたが、現在は再スタートの準備を進めている最中です。WACULらしいOKR、「WACULのOKRってこれだよね」「WACULでOKRをやる理由はこれだよね」と全社員が自分の言葉で言える状態にすることを目指し、現在進めています。今後にご期待ください!どこかでまたお話出来たらと思います。有難うございました。

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株式会社WACULさんのオフィスを
会場としてお借りしました。
ありがとうございました!

最新イベントのご紹介〜OKR/1on1/CFR勉強会#4〜

「OKR/1on1/CFR勉強会#4」は2月26日(水)の開催。

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OKR勉強会 OKR成功企業の運用ポイント 近年、Googleも取り入れて話題になっている”OKR”

ただ、新しい手法である”OKR”導入は日本企業ではなかなか難しく 導入に苦戦しているかと思います。
今回は日本の企業でOKRの導入を成功し、うまく運用している企業さまを集めて 勉強会を開催します!

◆このような方におすすめ
・OKRや1on1の運用に課題を抱えている方
・ミッション・ビジョンを深く浸透させていきたい方
・マネージャー育成/マネジメント改善にお悩みの方


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