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僕が見た”やらせ”の世界。堅実企業から国民的スターまで。


誇大広告など問題じゃない。想像力は豊かなほどいい。
(映画『グレイテスト・ショーマン』より)


映画『グレイテスト・ショーマン』の主人公でもある実在の興行師、P・T・バーナムは、かなり強引なショー作りをしていた。

見世物になりそうな人材を大量に集めて、「160年以上生きている黒人女性」などとキャッチーなプロフィールをでっち上げて見世物小屋を作ることからキャリアをスタートした彼は、嘘をつくことを何とも思っていなかったようだ。

だが、彼は邪悪な嘘つきではなかったと思う。顧客の楽しみを最大化するために嘘をついていたし、エンターテイナーの最大の使命は顧客を楽しませることだと強く信じていたのだと思う。たとえ、真実を犠牲にしたとしても。


映画『グレイテスト・ショーマン』は、そんなバーナムの生き方が十全に表現されていてすごくいい。彼は嘘つきだが、エンターテインメントに対する姿勢は最高に真摯だ。

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(映画『グレイテスト・ショーマン』より)


冒頭で引用したセリフは、批評家に「お前のショーは嘘ばっかりの誇大広告ショーだ」と言われた時の反論である。辛辣な批判に対してバーナムは鮮やかに言ってのける。「誇大広告など問題じゃない。想像力は豊かなほどいい」。

更に彼はこう続ける。「最近、笑顔になったかい?腹を抱えて笑ったかい?劇場に喜びを見いだせぬ批評家さん……はたして、詐欺師はどっちかな?」と。

僕はこのシーンが大好きだ。エンターテインメントとは何か、という問いかけに溢れている。彼は嘘つきだが、自分が最高に楽しみ、観客を楽しませている。苦虫を噛み潰したような顔をし続けている批評家こそエンターテインメントの世界にふさわしくない、そんな彼の矜持が感じられる。


バーナムの名前は、今も心理学現象の中に残り続けている。占いで、「あなたは普段明るく振る舞っていますが、実は傷つきやすい一面も持っています」と、誰にでも当てはまることを言われても「すごい!当たってる!」と信じ込んでしまう現象をバーナム効果と呼ぶようになった。

嘘のショーを作り続けた彼の名前が、占いという嘘のショーを支えるための心理学現象において残っている。実に素敵なことだと思う。


エンターテインメントは嘘でいい

僕はこのバーナムの生き方に全面的に賛同するというか、「エンターテインメントは嘘でいい」と思っている。その方が面白い。「内分泌物質の異常によって身体が成長しすぎてしまった2m20cmの男性」よりも、「巨人の国から来た3mの大男」の方が面白いに決まっている。

サピエンス全史』の中で、著者のユヴァル・ノア・ハラリは「ホモサピエンスの基幹能力は虚構を信じられることだ」と主張している。我々が人生の拠り所にしている経済も国家も宗教も、実体を持たない虚構にすぎない。僕たちは社会を発展させるために虚構を信じることにしたのだ。だったら、娯楽を楽しむために虚構を信じることにしてもいいじゃないか。

もちろん、真実を伝えるための報道が虚構だったら困るけれど、少なくとも娯楽のためのコンテンツは虚構でも一向にかまわないじゃないか。想像力は豊かなほどいい


しかし、世の中はそういうバーナム的価値観で動いてないらしく、やらせが問題になって番組が終わるケースは枚挙に暇がない。

『クレイジージャーニー』では、実際には捕まえていない(事前に用意した)動物を、その場で捕まえたような動画を流したことが問題になったらしい。

「実際には捕まえていない動物を捕まえたことにするなんて嘘つきだ!」という怒りの声が視聴者からたくさん寄せられたようだ。クレイジージャーニーという番組は純然たる娯楽番組であり、嘘でもいいような気がするのだが、一部の視聴者はやたら怒っていた。「視聴者を騙すなんて許せない!」という、虚構への拒否反応である。

彼らはホモサピエンスが発展させてきた巨大な虚構についてはどう思っているのだろうか。彼らの理論を踏襲すると「実際には価値のない紙切れを1万円ということにするなんて許せない!」と怒るべきなのではないだろうか。

虚構取り締まり警察の皆さんは、最終的に「国家」とか「経済」とかいう最も基本的な人間のインフラにも怒らなければいけないジレンマを抱えている。いずれ彼らは国籍を捨てて物々交換で生活するようになるかもしれない。

やらせ問題に対してやたら怒ってる人を見たら、「おっ!いずれ物々交換を始めるんだね!」と思っておくといい。


僕が見た”やらせ”の世界

そういうことで、僕は国家も経済も手放さずに生きていくつもりであり、娯楽のための虚構も肯定しているので、頼まれれば割と普通に”やらせ”に加担する。

そして、根が正直なので、やらせであることをうっかり口走ったりもする。


うっかり口走ることも稀にあるとはいえ、基本的には虚構をやる時は「虚構をやるぞ!」という強い気持ちなので、表沙汰にしないことが多い。


ということで、今日はどこにも言っていない「僕が加担したやらせ」の話をしたいと思う。

割と堅実な企業が作ったコンテンツから、国民的スターの作るコンテンツまで、僕が直に見てきたやらせ事情を赤裸々に書いてみようと思う。


ということで、やらせコンテンツを作った人たちの実名も全部出るので、当然ながら以下有料になる。世間のやらせ事情に興味がある方はぜひ課金して読んでいただきたい。

単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。定期購読はいつ始めても今月書かれた記事が全部読める。1月は4本更新なので、バラバラに買うよりも2.4倍オトク。


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