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1%の手数料への偏執。ビジネスに失敗した小学生は何を学ぶか?

せせこましい金の話をしているクリエイターは、なんとなくみっともない。


人間は不合理である。何だって、できないよりはできる方が良いに決まっているのだけれど、「オレは細かい金勘定なんてできねえ!」と語る豪気なクリエイターがカッコよく見えてしまう。

逆に、「海外からの広告案件で海外送金を受け取るときの手数料最安はどこだ?」などとセコい話をしているクリエイターは何となくカッコ悪く見えるものだ。

さて、そんなセコい話をしてるクリエイターは誰なのかというと、である。海外送金はSBIレミットで受け取るのがオススメだ。圧倒的に手数料が安い。こないだ油断して楽天銀行で受け取ったら8万円の売上を受け取るために2500円持っていかれて悶絶した。SBIレミットなら880円なので、絶対にこっちを使うべきだ。皆さんもお気をつけください。


手数料にこだわること

クリエイティブに関わる人間なら、細かい金勘定をしない方がカッコいいかもしれない。せせこましい工夫をしているヒマがあるなら、少しでも多くの作品を作る方がいい。手を動かす時間の最大化は、クリエイターの正義だ。

一方、経営者なら、そうではないと思う。経営者の本懐は、1%の改善を繰り返すことだと言える。売上が10億円の会社なら1%の改善で1000万円が浮く。それだけで腕利きクリエイターを1人雇えるのだから、手数料を1%安くすることのインパクトは計り知れない。セコくあることは、経営者の正義だ。


僕は「手数料が高すぎる」という理由で、多くのプラットフォームを退けてきた。一番分かりやすいのは、ゆる言語学ラジオの月額サポーターである。

毎月定額を徴収するのなら、CAMPFIREコミュニティとかDMMオンラインサロンとかを利用するのが定石だけれど、手数料が高すぎる。比較的安いCAMPFIREでも11%(税込)だし、DMMに至っては20%ほどらしい。

一方、Stripeなどの決済プラットフォームを使って自作すれば、手数料は3%くらいになる。月額100万円の売上が見込めるのなら、自分で作ってしまった方がいい。1年もあれば余裕でペイするだろう。

そんなロジックで、決済サイトを自作した。これはクリエイターの倫理にはもとる。クリエイティブな皆さんからは、そんなことをしているヒマがあるなら少しでもコンテンツを作れと言われるだろう。だけど、僕の中のセコい経営者マインドがそれを許さなかった。経営者の倫理がクリエイターの倫理を打倒した瞬間だ。


20年前の原体験が、偏執を植え付けた

僕がクリエイターにあるまじきセコさで1%の手数料にこだわり続けているのには、理由がある。

それが、小学生の時の原体験である。僕が初めての商売をやったのは、12歳で小学6年生だった。この商売は致命的な失敗を内包していたけれど、それゆえに学びがあった。

今日はそんな話をしよう。あまりにもセコく、だけど僕の心にあまりにも深く痕跡を残した、最初のスモールビジネスの経験だ。

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校庭で駄菓子を売る

小学生が金勘定を憶える場所は、駄菓子屋であるように思う。ひとつ10円のお菓子を組み合わせながら、お小遣いの範囲で幸福度を最大化する。駄菓子屋が提供するものは駄菓子ではなく、お金を使う知的ゲームの喜びだ。

当時の僕もその例外ではなかった。小学校の同級生と自転車で駄菓子屋に行き、着色料と甘味料の塊を買った。無限の選択肢があり、たった100円で豪遊できる気分になった。


近所の駄菓子屋に通ううちに、不思議に思ったことがある。店の入り口には「当店は消費税がかかりません」と書かれていた。

僕は子ども心に、「そんなことありえるのか?」と思った。税金というのはどうやら法律で定められた義務であるようなのに、その埒外の店が存在していいのだろうか?

今になって思うと、売上が1000万円未満の事業者は免税事業者だから、事実上「消費税がかかりません」ということになる。もちろん、当時の僕はそんなことを知る由もなく、ずいぶん不思議に思った。

家に帰ってから、母親に聞いた。「あの店では消費税がかからないんだけど、どういうカラクリなんだ?」と。

母は答えた。「よく分からないが、まあ安くするのは店主の権利だから、自腹で勝手に安くしているのではないか。利益は十分出るようになっているのだろう」と。今になって思えばこの回答は見当違いである。ウチの両親はふたりで病院を経営する開業医だが、母は経営にノータッチだった。お金のことに無頓着で、消費税の免税事業者という概念を知らなかったと思われる。


見当違いだったにせよ、この回答は僕の中に大きなインパクトを残した。「そうか、売り手は価格の決定権を持つのだ」「消費税ぶんを自腹で切っても問題ないくらい、小売業者は利益を載せているのだ」といった気づきがあった。

そして、この気づきはすぐに芽吹くことになる。「僕も駄菓子屋を開業したい」という欲望として。

小学生の僕はヒマを持て余していたから、いつも新しい遊びを求めていた。新しい着想を得たら新しい遊びに昇華できないか、真っ先に考えた。

だから、「小売業は自由度とゲーム性があって楽しい上に儲かるのではないか」という気づきを遊びに昇華したのは自然なことだったのだろう。当時の僕は遊び感覚で商売を考え始めたし、その習慣は今でも抜けていない。今も事あるごとに「◯◯をしたら儲かるだろうな」と、面白半分で考えてしまう。


仕入れルートがあり、販路もある

僕が小学校生活を送ったのは、インターネットが世間に浸透していくタイミングだった。最も多感な時期をインターネットの発展と共に過ごしたから、インターネットの住民として生きていく羽目になってしまった。ネットがなければ僕は今ごろ真人間をやっていると思う。

当時はネット通販がそれほど一般的ではなかった。日本版Amazonは洗練されていないダサい通販サイトだったし、楽天はまだ球団を買収していなかった。

Amazonと楽天が市場を席巻する前は、謎の通販サイトがたくさんあった。駄菓子の仕入れルートを探した僕がたどり着いたのも、その中のひとつだ。

もう名前も思い出せない、格安でお菓子を卸売りしてくれる業務用の通販サイト。10円のお菓子が100個入りで、700円とかだったと思う。全部売り切れば300円の粗利が発生する計算になる。

このサイトを見て、僕は「イケる」と確信した。

小学生の僕は「小学校」という強い販路を持っている。同級生たちと一緒に駄菓子屋に行っていたけれど、僕が駄菓子屋になれば彼らがそのまま顧客になる。

小売業は、仕入れと販路が確保できれば、それで9割は完成だと言っていい。僕が参入する条件は整っていた。

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