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イスラエルから見える世界地図2019:テクノロジーと中東和平

2019年が始まった。ユダヤ教では西暦での新年を祝わないのでひっそりと1月1日を迎えた。テクノロジーブームは花盛りで、おしゃれなテルアビブの街は世界中からの人々で活況を呈している。同時にイスラエルは常にパレスチナ問題や中東和平の課題に直面している。昨年は米国の首都移転が大きくクローズアップされたけれど、中東の一部の国々との雪解けが進むなど今年も動きがありそうだ。元々ユダヤ人が世界中に散らばっているということもあり、イスラエルという国は政治で経済で、世界の色んな国々とつながっている。イスラエルから世界地図を見たときに、今年はどんな動きがあるだろうか?(現地の報道をベースに私見をまとめています)

①中東各国:雪解けの春?それともミサイルの春?
昨年はアメリカ大使館のエルサレム移転問題が大きく世界を動かしたけれど、実は中東各国からの動きは(表面的な反対派はあれ)そこまで長続きしなかった。サウジアラビア・カタールなど中東の内部の仲間割れ問題が大きく、パレスチナ問題は優先度として大きく下がっている印象だ。ネタニヤフ首相がオマーンへの歴史的訪問をしたり、UAEに閣僚を派遣するなど、中東各国との雪解けが確実に水面下で進んでいるようにみえる。同時に北で国境を接するシリアからはアメリカが撤退。イランもバックについており、ミサイル攻撃は当然リスクとして考えられる。アメリカのトランプ大統領はネタニヤフ大統領に「シリアからは徐々に撤退するから大丈夫」と言った様だが、情勢が激変することもありうるのかもしれない。雪解けの春が来るのか、ミサイルの春が来るのか。

②アメリカと中国:貿易戦争 - 共倒れか、漁夫の利か
元来イスラエルはアメリカとの人・資本の繋がりが強く、花盛りのスタートアップにもアメリカとテルアビブの両方に拠点があるというところも多い。中国もイスラエルのテックには興味を持っており、AI、自動運転等投資は非常に積極的だ。イスラエルはアメリカと中国の間に自身を位置付けつつある。そんな中、トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争の影響については様々な予測が飛び交っている。アメリカで投資をしようとしていた中国企業の投資が回ってくるのでチャンスだという予測や、両者の仲介役のような立場になれるのでは、というポジティブな意見も見られる。逆にネガティブな意見もあり、結局アメリカ企業とつながりが強いイスラエル企業に中国からは投資できないだろうとか、中国から投資を受けることでアメリカのビジネスに障害がでるのでは、という意見もある。テクノロジー大国といってもサイズは小国。大国の決める運命には抗えない。

③中米・南米:ディアスポラの故郷、エルサレム移転サポーターは増える?
イスラエルからは遠く関係がなさそうだ。けど実は、アメリカの大使館移転に続いてこれらの国はこっそりエルサレムへの大使館移転を進めている。移転を決めたのは少なくともブラジル・グアテマラ・パラグアイ・豪州の4か国だと思うが、国連でのアメリカ首都認定撤回を求める決議に対しては、多くの中南米の国が棄権・反対している(つまりアメリカ・イスラエル寄りの意思表明をしている)。これはそもそも地理的にパレスチナ・中東との関係が希薄だということと、むしろアメリカとの経済的なつながりが強い(見返りを求めたい)ことも影響しているようだ。さらに中南米の国には歴史的にユダヤ人が一定数居住しており、自国民への配慮もあるだろう。イスラエルにとってはエルサレム首都認定への外堀を固めるために、「お友達」からの支持は固めておきたいところだろう。さらに大使館移転の動きが増すのか注目されるところだ。

④東欧・インド:実はお隣さん、テクノロジー・イノベーションの裏方。
アウトソーシングの先にあるものは?

日本にいるとなかなかイメージしにくいが、イスラエルから見てインドと東欧の国には共通したものがある。それは「実はお隣さん」であるということだ。東に向かえばサウジアラビアを超え、アラビア海を挟んだ反対はインドだし、北に向かってトルコを超えればグルジア・ウクライナ・ブルガリアなど東欧の国々が広がる。実際これらの国々からは移民も多いし、経済的なつながりも強い。イスラエルの国内ではエンジニアが枯渇気味で、人件費が安く時差が少ないウクライナやインド、ロシアといった国へのソフトウェアエンジニアリングのアウトソーシングが大幅に増加している。ウクライナとの自由貿易協定の締結が見込まれるなど、テクノロジーを通じて経済圏が広がってきている。

まとめ
イスラエルは日本の四国程度の大きさしかなく、人口も800万~900万程度と少ない。けれども世界の裏側まで繋がり、テクノロジーを中心とする経済や中東和平の中で(良くも悪くも)大きな存在感を持っているように思える。イスラエルにいると、世界地図の大きさがぎゅっと小さくなったように感覚を持つ。それは近くにある中東各国との繋がりが脆弱で、はるか遠くにあるアメリカや中国、そしてユダヤ人が散らばったロシアや南米の方が繋がりが強いということも無関係ではないだろう。そしてブームになっているスタートアップエコノミーも外交と表裏一体で世界地図の見え方を変えていくのかもしれない。(「(パレスチナ問題で)イスラエルに反対する国はスタートアップエコノミーへのアクセスを失うことになる」といった言葉さえ新聞で見ることもある。)

2019年、テルアビブからどのような世界地図が見えるのか、引き続きウオッチしていきたい。

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kenhosomi

イスラエル・テルアビブ在住。米・ノースウェスタン大学とテルアビブ大学のEMBA(Executive MBA)プログラムに通学中。10年間コンサルののち、退職、現在甲羅干し中。

”国際系” note まとめ

This magazine curates notes relating to stuffs between globalness and localness.
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