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株式会社スタンダード終了のお知らせ

スタンダードの鈴木です。UIデザイナーとしてスタートアップやインターネット系事業会社のサービス立ち上げや改善にデザイン面の支援をしつつ、株式会社プレイドという会社で、CXプラットフォーム「KARTE」のUIデザインをしている者です。

noteではこれまでプレイドの中の人として記事を書きがちでしたが、今日はスタンダードの中の人として最初で最後のnoteになります。


株式会社スタンダードを解散します

スタンダードはUIデザインを専門にするデザイン会社として2014年に創業しました。

未来の豊かさにつながる仕組みをデザインする」をミッションとし、スタートアップやネット系事業会社のサービス立ち上げや改善にデザイン面のサポートをしていましたが、この度、2019年末をもって事業活動を終了することになりました。

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なぜ解散するのか

私事で恐縮ですが、ほぼほぼ自分個人の環境的な事情に起因しています。

一昨年に祖母が他界し、去年息子が生まれ、今年、父が他界しました。
誰もが通ることなのかもしれませんが、生きていて数える程しか経験しないことでもあります。

そんなことが1-2年で続けて起こり、命の脆さ、尊さ、儚さのようなものを一度に実感したことがきっかけだったように感じています。

守るべき人ができたり、伴侶に先に逝かれてしまった人がいる中、自分ができること、やるべきことは何なのだろうか。もしかしたらそれは目の前の仕事だけではないのではと思うようになっていました。

正直なところ当時の自分は、言葉を選ばず言うと「働くこと以外のすべては邪魔なもの」とさえ思っていました。量こそ質に転化するものと信じ、使えるだけの時間を仕事につぎ込んできたように思っています。

そんな生き方をしていたが故、両親と会う機会も少なく、会話もろくに出来ない期間が続いていたように感じています。

そうした20代から比較すると、ありえない心境変化ですが、前述の要因により仕事に当てる時間は細切れになり、大切だ、と思える多方に対して時間を費やすことが多くなったように感じています。

もう一つの理由は、スタンダードのギルド型組織運営の難しさと、前述のような状況で二足のわらじを履く、自分の中途半端さでした。

2018年にギルド型組織として、デザイナーがフリーランスとなり活動する組織体へと組織転換をしましたが、転換してまもなく、所属してくれていたメンバーは全員スタンドアローンで活動できる能力がある人ばかりで、そもそも組織的なメリットを提供出来ないのではという事に気づきました。

語学留学ののち海外のデザインファームAll Turtlesに転職した鈴木智大さん。ギルド型組織の先駆けであるTHE GUILDに参画しつつ、直接個人にも声がかかるようになっていった吉竹さん。デザインについて本格的に学ぶべく留学した川地くん。個人開発のサービスの運営を本格的にはじめた古賀さん。と、各々が次のステージを歩んでいて、会社としてのスケールというベクトルではなく、各個人の力によって物事が前に進んでるなと感じたことを覚えています。

そうした状況と、個人的な環境変化を経て思ったのは「自分はこんな中途半端でいいんだろうか」ということでした。


命をどのように配分していくか

家では子育てをきちんとして良い父になりたい。実家のケアもしたい。仕事では今まで経験してこなかったインハウスデザイナーとして活躍したい。ギルド型組織も運営したい。何もかも全部やりたい。やりきりたい。

色々な事に手を広げようとするあまり、掌で掬おうとしているものが指の間からさらさらと溢れ落ちていくような感覚があったように感じています。
自分の時間を何にどのように配分していくかという判断を、毎日迫られているような感覚になっていました。

そこで思い出したのは、智大さんが体現していた「振り切ることでレバレッジする」ということと、川地さんとの会話の中で気付いた「働くということは命を投下しているということ」ということでした。

自分が1日に生活している半分以上の時間は仕事に費やされています。それはつまり、自分の人生の半分以上を仕事に費やしているということ。そんな事を川地くんと話していた後に彼から出てきた言葉は「働くということは、自分の命を費やすということなんですね」というものでした。

自分の命を今何にどのように配分し、どこに振り切っていくのか?と考えた末、解散の思いをメンバーに打ち明けることに至りました。

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全ては自分の至らなさ故の決断でしかありません。にも関わらず、励ましや前を向いた発言をしてくれたメンバーには頭が上がらないと感じています。


これからどうするか

来年は実家を何らかの形でケアしつつ、プレイドにコミットを寄せていき、β版から関わってきたデザイン面の負債返済や、プロダクトの再設計を通じて価値の最大化につなげていきつつ、今後の生き方について内省する期間にしたいと考えています。

B2B SaaSのプロダクトデザインを盛り上げていきたい思いがあるため、個人でも親和性のあるプロジェクトがあればお請けして学びを双方に還元・レバレッジしていきたい気持ちもあります。
が、当面は目の前の大切な事や、今身近にいてくれる大切な人・チームに向き合う時間にしていきたい気持ちです。


デザイン会社としてトライしたことを還元したい

その他、解散というあまり経験することがない出来事を経るのであれば、これまで自社でトライしてきた取り組みを世の中に対して還元していきたいと思っています。

会社のブログはもう間もなく消滅することとなりますが、既存の記事の移植だけでなく、組織の再編にあたり議論してきた内容や、そうした思想になるまでに取り組んできたことを発信することで、似たような課題感を感じていらっしゃる会社の方やデザイナーの方に対し、何らかの気付きをご提供できるのではと感じています。


参画してくださったメンバーのコメント

最後になりますが、ありがたいことにスタンダードに参画してくれたメンバーからコメントをいただけたので掲載させてください。

少数でお互いを刺激しながら成長できるメンバーと、クライアントワークから自分たちの組織まで一緒に考え、デザインし、学ぶことのできた環境がスタンダードでした。

仕事上の関係を超えて、スタンダードでの日々は人生に深く刻まれ、自分の中のStandard(基準)のひとつとして強く存在しています。

会社という形は無くなりますが、「未来の豊かさにつながる仕組みをデザインする」というミッションが各自の中に残っている限り、別々の道に進んだ各自が会社を継続していた場合以上の経験を紡ぎ、10年後の再結成の時にまた交わることを楽しみにしています。

鈴木 智大(@suzukisan__
いつだったか、誰かが「STANDARDに参画した人間が辿り着く理想のゴールは、次にその人が目指すステップを見つけてSTANDARDから離れることである」と定義していた記憶があります。たしか採用計画のときに、ともひろさんと川地さんが話していたような。

4人の近況を見聞きしていると、あの頃には絶対できなかっただろう取り組みにそれぞれが向き合っていて、STANDARDがもたらした最大の価値はこうして5人が次の道を見つけて、それによって多少なりとも(様々な)未来が変化したことなんじゃないかと思えます。

今回、正式に会社としての存在はなくなってしまいますが、5人は変わらずに変わっています。10年後、お互いに生き延びてまた一緒に取り組む時間を共有できるときを、心待ちにしています。

吉竹 遼(@ryo_pan
つくづく、STANDARDという存在、そこでのメンバーとの様々な思索と試作の歴史の上に、今の自分が立っていると感じます。全員の想いから紡いだ「未来の豊かさへつなげる」という存在意義がなければ、豊かさとは何かを問い、自らの実践のあり方を問い直し、フィンランドで学びを重ねる現在に至ることもありませんでした。

STANDARDという組織がかつて目指したそれは、自分の中にしかと息づき、脈々と流れています。まだ道半ばですが、少しずつ歩めていると思います。

拝読されている皆様、ぜひ10年後の再結成を楽しみにしていてください。10年越しの各メンバーの、豊かさへつながる多様な実践が、どう結晶と化すか。ぼくもそれを楽しみに、自分なりに邁進していく次第です。

ー川地 真史(@Mrt0522
メンバーひとりひとりの思想性・志向性、学びと成長を重視し、そのうえでメンバー全員の総体としての組織の在り方を模索し続けてくれる『スタンダード(STANDARD)』という存在は、自分にとって組織のひとつの理想形であったように思います。その存在自体が、まさにミッションである「未来の豊かさにつながる仕組みをデザインする」を実践していたのではないでしょうか。

スタンダードのメンバーとして過ごした時間の中で、自分はエゲツない難易度の「宿題」を数多く受け取りました。これからどれだけ時間をかければそれらに回答できるのかわかりませんが、せめて自分にとっては確からしい・信じるに値する回答を、自分の言葉で綴っていければと思います

株式会社スタンダードは事業活動を終了し、デザイン会社としては解散してしまいますが、正直なところ自分にはそれほど大きな喪失感はありません。自分にとっての『スタンダード』とは、もはや会社という枠を超え、メンバー同士の繋がりや通底する在り方・姿勢として今ココに確かに存在していますし、メンバーの成長と合わせその存在も変化し続けているように感じられるからです。

ですので、実は自分は10年後のスタンダードの再結成についてはそれほどこだわりはありません。(空気読めずにごめんなさい。笑)これからも日々変化し続けるメンバーとスタンダードを楽しみにしたいと思います。

ー古賀彬


最後に

創業以降、お仕事をご一緒させていただいた皆様、期間中に関わってくださったすべての皆様に感謝を申し上げつつ、記事を終わりたいと思います。

当時、デジタルプロダクトにコミットすると謳っていたデザイン会社はソシオメディアさんやグッドパッチさんくらいしかなかったように思います。

そんな状況から今、数多のデザイン会社、デザイナーが増え、世の中をより良くするための体験づくりにコミットしている状況を、1人のデザイナーとしてとても嬉しく、心強く、勝手にですが、誇りに思っています。

自分は経営を離れることになりますが、これからは1人のデザイナーとして、日々学んだことを発信しつつ、より良い体験を目指し設計し続けていく実践者でありたいと考えています。

以上ポエムでした。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。引き続き元スタンダードのメンバー共々、よろしくお願いします🙏🏻


追伸

最後と言ったのにしつこいですが、創業の後押しをしてくださったFICC荻野さん、平野さん、戸塚さん、森さん、UNITBASE上村さん、Goodpatch土屋さん。デジタルプロダクトをデザインする面白さを共に経験することができたFICC福岡さん、三宅さん、上村さん(再掲)。そのプロダクトを通じて出会えたクリエイターの越後さん、奥山さん、鈴木智大さんに感謝の意を伝えさせてください。

そして、創業から5年、一緒に歩んでくれた智大さん(再掲)、吉竹さん、川地さん、古賀さんに改めて感謝の思いを伝えさせてください。みんながいなければスタンダードはこのような形にたどり着いていなかったなと本当に思っています。

何のためにデザインするのか?そのために自分たちはどのような関係性、在り方で有るべきなのか?最終的には会社という境界すら曖昧になり、それならここで話す意味なくないか?なぜ会社以外のことを話しているのか?自問自答や葛藤を綯い交ぜにしながらも話し合えたスタンダードでの時間は自分にとって何事にも代えがたいものになっていて、今も自分の中に確かに生き続けていると実感しています。

その人生の一部、命の欠片とも言える時間を一緒に費やしてくれて本当にありがとうございました。

例えば10年後、共にデザインする機会があるとしたら。そんな日を楽しみにしつつ、お互いを意識しながら、これからの時代を一緒に生きていきたいとそう思っています。

ありがとうございました。

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