『適応』という映画について(『未知との交流』のうちの一話)





12月3日(土)公開の『宇賀那健一監督短編集 未知との交流』の1本目は『適応』という作品です。
『適応』という映画は『異物-完全版』という今年初頭に公開した僕の長編映画の第2部として誕生しました。


第1部の『異物』を撮影したのは2019年の10月。
『不条理コメディ』を撮りたいといって短編映画『異物』を撮影していたのですが、パンデミックの襲来により世の中の方が不条理に満ち溢れてしまい、「映画が現実に負けるわけにいかない」と急遽『異物』の続編として『適応』を撮影し、その一部は始発待ちアンダーグラウンドの『ハレルヤ』という曲のMVとしても使用されています。

こういったシュールなコメディだからこそ、変に笑いに走らずとにかく真面目に演じて下さる俳優部の方とご一緒したいと思い、最初に浮かんだのは僕の過去作品『サラバ静寂』で主演して下さった吉村界人さんでした。
過酷だった『サラバ静寂』の現場でも誰よりもひたむきに芝居に向き合ってくれていて、(本人は気づいていないけど)ちょっと天然でもある。コウダイは間違いなく吉村界人以外にいなかった。

次に頭に浮かんだのは、『魔法少年☆ワイルドバージン』でご一緒した田中真琴さんだった。『魔法少年☆ワイルドバージン』の終盤で田中さんはマントヒヒに変身してしまう。そして、脚本には台詞が「キーキー」しか書かれていない中、田中さんは全ての「キー」についての読解について、めちゃくちゃ真面目に質問しにきてくれた。こんな素敵な役者が他にいるだろうか。ミナもまた田中真琴さん以外にあり得なかった。

そういった馴染みのキャストに石田桃香さん、樹智子さんというフレッシュな俳優部を交えて『適応』の撮影は始まった。緊急事態宣言明け一発目の撮影の方も多く、スタートこそ感染症対策等でもたついたものの、撮影がスタートすると笑いの絶えない素敵な現場であっという間に現場は終わってしまった。撮影時間は数時間だったと思う。

モントリオール・ヌーヴォー・シネマ映画祭、トリノ映画祭、エトランジェ映画祭…etc、数々の国際映画祭で上映された本作であるが、ジム・ジャームッシュ監督の『コーヒー&シガレッツ』ならぬ『コーヒー&シガレッツ&異物』を目指そうとした本作は『異物-完全版-』の中でも一番笑いの起こる作品となった。

なぜ本作を今回の短編集に入れたかというと、違う並びで観ると全く違うテイストの作品になるから入れさせていただいた。
『異物』がない状態で観る『適応』はもっと不条理でシュールで下らない作品になっていると個人的には思っている。オリジナルアルバムに収録されている曲をベストアルバムで聴くような感覚で新鮮に本作を浴びてもらえたら嬉しく思う。

12月3日(土)の『宇賀那健一短編集 未知との交流』初日舞台挨拶には『適応』の吉村界人さん、田中真琴さんも登壇します。
池袋シネマ・ロサにて感想を聞かせてもらえたらとても嬉しいです。


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