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2.事業承継とは具体的に何をすれば良いのか?

こんにちは。ITジャーナリストの久原です。

前回から「事業承継」についてお話ししていますが、改めまして、事業承継とは何なのかについてご説明しましょう。

もし後継者の候補として有力な自分の息子が同じ会社で働いていて、5年や10年一緒に仕事をしているとすれば、お客さんの情報はあまり説明しなくても、自然と引き継がれていくというか、情報は共有されていきます。
しかし、今問題となっているのは、自分の息子は会社を継ぐ気がないとか、継ぐとしても、時期的にギリギリになってしまい、十分な準備期間がないまま継ぐとなった場合、承継できるものとできないものが出てきてしまうことです。

●承継できるものは、数字や決算書などの書類に現れているもの
●承継できないものは、書類上に現れてこない詳細な顧客の情報など

例えば、ある特定の顧客をAさんとします。店主のBさんは、Aさんを頻繁に接客しているため、Aさんの趣味・嗜好を把握しており、Aさんの要望が手に取るようにわかります。
しかし、その情報はあくまでもBさんの頭の中にあるだけで、Bさん以外のスタッフにはわかりません。ですから、いざ事業承継するとなった時に、Bさんは1からAさんの情報を後継者に伝えていかなければいけないのです。

ただ、このような形で、たくさんの顧客についての情報を引き継ぐにはとても時間がかかってしまいます。特に中小企業の経営において、効率化は非常に大事なこと。
そこで、これを効率的におこなうため、”ITの導入”をお勧めします。

では、”ITを導入”するとは具体的にどのようにすれば良いのでしょうか?

IT補助金という制度を聞いたことがあると思います。
以前は、100万円のものを作ると50万円の補助金が出ていました。ですので、100万円で自社のホームページを作るというケースが多かったのですが、100万円で作れるホームページは、自社のサービスを紹介して、せいぜい問い合わせフォームを作る程度で、「チラシを作っておしまい」というレベルのものでした。

その当時は、ホームページを持っている企業自体が少なかったので、それでも売上アップにつながり、意味はあったのですが、今やみんな持っている名刺と同じようなものですので、そこから販路が広がることはほとんどありません。

現在のIT補助金は、補助金が900万円の半分、450万円まで出ます。それなら、カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)、すなわち顧客管理システムを導入し、売上増に繋げることが可能になります。ただ、採択率は不明ですが、2019年の交付決定事業者数は3756者と、2018年の9248者から比べると、審査が厳しくなってきているという現状もあるようです。
申請することに規制は基本的にありませんので、チャレンジしてみることをお勧めします。

では、顧客管理とは、どういうことか、美容室を例に挙げてみます。Cというお客さんが来店して髪を切りました。そして1カ月たちました。Cさんはそろそろ髪が伸びてきたと感じているでしょう。その頃、美容室から「髪のコンディションはいかがですか?」などと連絡をしてみると、Cさんは、「美容室に髪を切りに行こうかな」と思うかもしれません。それによって、来店につながる可能性があります。つまり、お客さんがいつ来店し、現在どういう状況で、どんなニーズを持っているか、情報を整理して適切に使うということが顧客管理なのです。

商売の原則は反復作業。リピーターを増やすことが重要です。旅館を気に入ってくれているお客さんに、何度も繰り返し泊まってもらうことが大事なのです。新規のお客さんを捕まえるほうが圧倒的にコストはかかりますので、すでに持っている顧客を大切にすることを優先しましょう。

昔の旅館の「おもてなし」というのは、女将さんが顧客情報をすべて記憶していました。例えば、お得意様である田中さんは「和室の広い部屋が好み」と把握していたとしたら、田中さんの喜ぶタイミングで「特別割引で和室を30%オフで宿泊できますよ」と案内すると、田中さんは「予約しようかな」と思うかもしれません。しかし、洋室だとしたら、たとえ割引をしたとしても、全く意味がありません。

しかし、この「おもてなし」の手法は、電話で予約・注文していた時代は通用したのですが、今はインターネット上でポチっと終わってしまいます。そうなってしまうと、女将さんの出番がありません。
そこで、女将さんの頭の中の顧客情報を管理するシステムを導入することにより、ITで女将さんの「おもてなし」ができるようになるのです。

このようにITの力を借りて、まず顧客情報を取得することから始めることが大事です。しかし、顧客データがあっても使えないケースも多いので、データを現場に落とし込み、どのように使えばいいか、トライ&エラーを重ねることは必要です。
以前は低迷していた航空会社がV字回復を遂げたのはAIを使ったからという話もあり、混雑する時期と空いている時期を把握し、需要と供給のバランスによって価格を変動させることで、搭乗率を上げているのです。

今回は、事業承継とは具体的に何をすれば良いのか?について、“IT導入”が効果的だというお話させていただきました。
次回は、IT導入によって成功した事例をご紹介させていただきます。


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日本一背の高いITジャーナリストとして、「ITって便利だな!」「ITって面白いな!」と思ってくれる人と増やしたいという思いで、全国各地で講演をしていきたいなと思っています! ぜひとも、サポートを宜しくお願いします!