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狂っているのは一体どっちだい? - 「アルティメットセンパイ」

ごきげんよう!今日も元気なインターネット中年・賢二です。

今回も、マイベストピノキオピー10選から1曲ピックアップして書いていきたいと思います(「私が12年聴いてきた中で、もしも10曲選ぶとしたら、どの曲を選ぶかな?」と出来心で選んだ10曲のこと)。趣旨を書いた初回の記事は下記にて。

前回の記事にも書きましたが、これはピノキオピーへのラブレターであり、曲へのラブレターであり、ただの私のお気持ち、はたまた思い出話であって、考察や評論ではありません。

2曲目 アルティメットセンパイ

マイベストピノキオピー10選、2曲目は2019年10月16日投稿「アルティメットセンパイ」です。

みんな知ってるセンパイは、不器用でよくわからないことをしては失敗ばかり。自由に振舞っては勝手に傷ついて、けれど頭の中はお花畑。バカだなあ、センパイ。もっと上手く生きればいいのにさ。信条もないのに革命家のTシャツなんか着ちゃって。道端のよくわからん詩の色紙なんか買っちゃって。ウケる。そんなんだから影で「アルティメットセンパイ(笑)」なんて呼ばれるんだよ。確かに浮世は生きづらいけど、そこをどうにかこうにか生きてるんだよ。センパイみたいに奔放に生きられれば良いって問題じゃないんだよねえ。自由には、痛みが伴うよねえ。

という曲だと思っていました。このアレンジを聴くまでは。

***

2020年12月に、ボーカロイドコレクションというイベントがあり、その際に二部制のライブが行われた。ピノキオピーも第一部のトリとして登場した。久しぶりのピノキオピーの生ライブ(本当は浅草でのライブチケットを買っていたのだが、感染症予防のため配信のみとなった。今でもYouTubeでライブ映像が見れます)だったので、私は喜び勇んで現地へ向かった。当然声出しはNGだったし、着席して観た。ちなみにこれは余談だが、実はスタンディングOKだったことが第二部のMCで明かされた。それだけなら良かったのだが、「みんな死んでたよね〜!バレエの発表会かっつーの(笑)」というMCの言い方が気に入らず、当て付けのために私は第二部もずっと座ったまま観た。

そこで満を持して流れたのが「アルティメットセンパイ」だった。ライブのサポートメンバーとしても参加しているDJのRKさんのアレンジで、これがもう、めちゃくちゃ良かった。拳を高く突き上げたピノキオピーの後ろから、アルティメットセンパイの髪の色、稲光のような黄色い照明がこちらに向かって伸びたと思ったら、突然サビから始まった。そして、私のこの曲に対する姿勢が大きく覆ることになった。

アルティメットセンパイ アルティメットセンパイ
泣かず飛ばずの毎日をもがいているセンパイ
アルティメットセンパイ 不安定な将来
狂っているのは一体どっちだい?

今まで、ライブでMVの真似をしてヘンテコに左右に揺れるダンスをするのが楽しい、盛り上がる曲、という認識止まりだったのが、「あれ?私もしかして、センパイのこと誤解してた?」という気づきから、みるみるセンパイへの想いが募ってしまい、この時点で大体作り上げていた「マイベストピノキオピー10選」に「アルティメットセンパイ」をねじ込む羽目になった。

12個持ってる 中古のG-SHOCKを
真面目に書いてる ブログが怪文書
無意味に着ている ゲバラのTシャツを
無意味に買ってる 路上で売ってる詩を

よく考えたら、中古のG-SHOCKは、別に何個持っていたって良い。文章が下手だってブログを書いていい。チェ・ゲバラのTシャツを意味もなく着るのに、何の断りもいらないし、路上で売ってる詩は、売られている以上、買うことに問題はない。だのに、私たちはなんとなく「同じもの何個持ってんのw」って思ってしまうし「よくみんなに見えるとこに書けるよねw」「なんでゲバラw」「詩買ってる人初めて見たw」って、思考回路になってしまう。誰に言われたわけでもない。いや、どこかで言われたことがあるのかもしれない。「普通ありえないでしょw」の「普通」を、アルティメットセンパイは飛び越えていく。好きだから集める。書きたいから書く。かっこいいから着る。良いと思ったから買う。ただそれだけだ。計画性はない。食欲、性欲、睡眠欲、その他もろもろの欲望に、センパイは忠実である。

また味方を蹴っちゃった 敵を庇っちゃった
自分を撃っちゃった 今日も大失敗
アルティメットセンパイ でも やってやんよ絶対

私はこのフレーズを聞くと、胸が苦しくなる。なぜだろうと思っていた。センパイが気の毒だから?そうではない。心当たりがあるのだ。何をしても、なんだか上手くいかなくて、自分は正しいと思ってやってることが的外れで、1人で空回りしてオウンゴールしてるようなこと。私は、センパイを他人とは思えない。どこかで、センパイと自分を重ね合わせているところがある。私はセンパイではないけれど、センパイは、“在ったかもしれない私”なのだ。

センパイは「孤独に世界と戦っている」。今、この世界にはセンパイしかいないのだ。自分の直感に従い、欲望を満たし、人から「恥ずかしい」と思われるような、でも自分は恥ずかしくないことを、やりたいと思った些細なことを、やりぬく人。みんなが心のどこかで、やってみたいな、と思っていること、その気持ちを要らぬ理性で抑えているようなことを、やってしまえる人。おかげでセンパイはいつも傷だらけだ。やめたら良いのに、やめない。もっと上手い生き方もあるだろうが、センパイはやめない。そう在れない私たちのために、自分の身で証明し続けている。だからみんなはこう呼んでる。「最高の先輩」。

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私は良い大人だが、小さいころから絵を描くことが好きで、今でもやめられない。下手の横好きだ。生涯の仕事にするわけでもないのに、描き始めたら、何時間も経っている。時々考える。このお金と時間を、もっと「普通のこと」に充てた方が良かったんじゃないか。けれど、もしアルティメットセンパイだったら、きっと絵を描いてる。だって描きたいから。それが自分の幸せだと知っているから。引き換えに傷を負ったとしても構わないと、覚悟を決めているから。

私は狂っているのだろうか。

賢二

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