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イタリアで出会ったとあるガイドさんの話

私がまだ日本でガイドの駆け出しだった頃、フランスの国境に近いイタリアのサン・レモを旅行していた時に現地のガイドツアーに参加した時の話です。

ガイドさんは60歳前後であろうメガネをかけた優しい眼差しが印象的な男性でした。首からガイド証をぶら下げていたので、おそらく公認のガイドさん(国中で使えるフランスや日本と違い、イタリアはエリアが限定されています)。お客さんはほとんどが地元の人でした。

よそ者の観光客からするとマニアックな地元ならではの質問も、簡単に答えるガイドさん。おそらく長い経験を持つベテランなのでしょう。印象的だったのは、そこに立っていることが当たり前のようで、街の景色に溶け込んでいたことです。

その様子を見ながら、あと30年くらいガイド続けると彼みたいになるのかなあ、と漠然と思いながらツアーの後帰路につきました。

その時から月日が経って、私自身も色々と経験を積んだ今、その時のことを思い返してみるとなかなかできることではないなあと思ったりします。

自分を主張せず、ガイディングする場所の空気を自分の中に取り入れているかのようにそこにいる。

空や海の色、花の香り、その日の天気、季節の流れ、街の歴史と今。

そういう全てに寄り添って、教会や道を作っている石は話さないから耳を傾けて、聞こえて来たことをただ話す。

まあ、そこまでは彼は考えてなかったかもしれないですが。

ただ「暑いな〜、今日」と思いながら、彼はガイディングしていたのかもしれませんが。

でも、究極的にいえばきっとそういうことなんじゃないかと。街によって空気や雰囲気は違う。そこに違和感なくガイドとして立っていられるか。

つまり、そういう空気感を出せるか、ですね。

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