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『Who Knows Where the Time Goes 』★★★☆☆(3.0)-音楽購入履歴#13

Title:  Who Knows Where the Time Goes(1968)
Artist: Judy Collins
Day: 2024/4/8
Shop: disk union Osaka
Rating: ★★★☆☆(3.0)

ジュディ・コリンズの役割

『Who Knows Where the Time Goes((1968)』

ジュディコリンズはアメリカで、特にアメリカンフォークにおいて間違いなく重要な役割を担った歌手でしょう。

まずボブディランより早い61年にデビューし、トラディショナルフォークを歌ったこと(まぁジョーンバエズが60年で一年早いんだけど)。
イギリスではシャーリー・コリンズがトラッド歌手の女王として君臨しているが、アメリカでも計らずして同じファミリーネームを持つジュディ・コリンズがアメリカンフォーク界を牽引する存在となるのは面白い。

ボブディランが登場するとジョーンバエズと同じくディランの楽曲を世に紹介する役割も果たした。

66年5th『In My Life』からはビートルズ含めてポップ/ロックの楽曲も歌い出すわけだけど、ここからジュディコリンズはまだ陽の目を浴びてない名曲とソングライターを世に紹介する役割を果たすことになる。

これはすでに存在しているディランやウディガスリー、トラディショナルソングのカバー歌手からもう一つ進んだ歌手になろうという動きだとは思うんだけど、とにかくエレクトラレコードの名曲収集能力には驚かされる。

代表的なのが66年『In My Life』で取り上げたレナードコーエンの〝スザンヌ〟
カナダの詩人であったレナードコーエンの楽曲をアメリカに紹介し、これを機にレナードコーエンは翌67年に『レナードコーエンの唄』で華々しくデビューすることになる。

さらにジュディコリンズの代表作として扱われる67年6th『Wildflowers』ではジョニミッチェルの〝Both Sides Now(青春の光と影)〟を取り上げた。
これもジョニミッチェルデビュー前。

そして今回僕が買った68年7th『Who Knows Where the Time Goes 』ではサンディデニーの〝Who Knows Where the Time Goes ?(時の流れを誰が知る)〟を歌っている。
サンディデニーがフェアポートコンベンションに加入して3枚のアルバムを残すのは69年なので、また本人が世に出るよりも早く歌ったことになる。

他にもゴードンライトフットやら色々歌ったが、とにかくレナードコーエン、ジョニミッチェル、サンディデニーをある意味発掘する役割を果たしたことは偉業だ。

むしろその役割を果たした存在としてでしかジュディコリンズを捉えていないところがあって。

それら有名曲を「これがジュディコリンズバージョンかー」とYouTubeやサブスクで聴いた程度で、しっかりアルバムを聴いたことがなかってので、このたび68年『Who Knows Where the Time Goes』を買ってみた次第。

なにやらジュディコリンズ唯一のフォークロックアルバムであるとのことで、結構楽しみだったんです。

青い目のジュディ

裏ジャケ

僕がジュディコリンズを思う時、もう一つどうしても浮かぶのがスティーブン・スティルスで。

バッファロースプリングフィールドを解散させてクロスビー,スティルス&ナッシュを結成する68年ごろ、ジュディコリンズとスティルスは恋人関係だった、という昔話があって。

CS&Nの69年1stの一曲目をかざるスティルス作の〝組曲: 青い眼のジュディ〟がジュディとの別れの苦しみを綴った組曲であることはあまりにも有名で。
遅くても69年には2人は破綻していたということだけど、まだ仲睦まじかったころの68年のこの『Who Knows Where the Time Goes』ではスティルスががっつりギターで参加している。

僕はこの68年『Who Knows Where the Time Goes』を今までちゃんと聴いたことがなかったけど、2017年に「スティルス&コリンズ」名義でリリースされたアルバム『Everybody Knows』は個人的にリアルタイムびっくりニュースで印象深く、サブスクで結構聴いた思い出。
長年の確執とまではいかないが、気まずさみたいなものを乗り越えてコラボレートしたアルバムだとかで、なんか2人の人生含めて面白いなーいいアルバムだなーと感じた。

この『Everybody Knows』ではお決まりのレナードコーエンやディラン(北国の少女、このデュエットがいい)を筆頭にトラベリングウィルベリーズなんかもカバーしてて。
60年代末当時にスティルスが書いた〝Judy〟という曲もあって、それを恥ずかしげもなくデュエットしてるのもエモい。
その中に〝Who Knows Where the Time Goes〟の再録音も収録されてて、あー年老いた声だなーと思いつつも「時の流れを誰が知る」という歌を年老いた元恋人同士のスティルスとジュディが演ってるのが感動的で。



まぁそんなことも含めてその原点ともいえる68年『Who Knows Where the Time Goes』、楽しみだったんですけど、まーーーーあんまりよくなかったんですよね。笑

アルバム概要

まずスティルスがギターで全面参加、ジムゴードンがドラム、いくつかの曲でヴァンダイクパークスがピアノ、めっちゃわくわくするやん。

だけど誰も全然効果的じゃない、そんな感じ。

それで歌もそんなに良くないと思ってしまうのは僕だけかもしれないけど、いやいいんですけどね。

何やらWikiによるとスタジオライブ録音だとかで、まぁ歌も込みで1発録りでとられたということですか。
これですね、絶対原因は。

長く連れ添ったバンドならまだしも、即席で集められたメンバーで1発どりしてもなかなか奇跡は起きんか…
ヴァンダイクパークスが絡んでるならしっかりアレンジしたスタジオ作品をやってほしかったですねー。

なんか聴いててバシッとハマらんのよなー。


それでもこのアルバム含めて彼女にレナードコーエンやジョニやサンディデニーをアメリカに紹介する影響力があったのは、やっぱり「可愛さ」によるところも大きいのでしょうか。
今までそんなに感じたことなかったけど、良いところを探そうとしたら「あ、この人めっちゃ美人なんや」と。


タイトル曲サンディデニー作の〝Who Knows Where the Time Goes〟も2017年の『Everybody Knows』バージョンの方がいいし、もちろん本家のフェアポートコンベンションバージョンを超えてはくれない。当たり前なんだけど。

69年本家フェアポートも一応

それでもやっぱりサンディデニー、いやブリティッシュフォークロックの代表曲となるこの曲をいち早く歌ってアメリカに届けた功績はやっぱり大きい。


あと、結構驚いてテンションあがったのはインクレディブルストリングバンドの〝First Girl I Loved〟を〝First Boy I Loved〟というタイトルでカバーしてること。

こっちも67年本家を。最高です。

この曲はインクレディブルストリングバンド67年2nd『The 5000 Spirits or the Layers of the Onion』に収録された曲なので正真正銘カバーだけど、それでもやっぱり当時アメリカでは全く知名度がないバンドなので、やはりジュディは名曲を世に広める役割を果たしたことになる。

ちなみにこの日本盤ライナーノーツには「サンディデニーという人の作」とか書かれているし、インクレディブルストリングバンドについては言及すらもされていない。
当時それくらいの知名度だったというわけだ。
無名でも良い曲は歌う。ジュディのその姿勢は本当に素晴らしい。


さて、これ完全にジョー・ボイドが噛んどりますな。

ジョー・ボイドってピンクフロイドを発掘してUFOクラブを開いたりロンドンサイケに深く関わった一方で、インクレディブルストリングバンドやフェアポートコンベンションを発掘してブリティッシュフォークロックの礎を築いたプロデューサーでもあって、まぁ偉大な男なんだけど。

ジョーボイドってアメリカ人で、元々エレクトラの社員で、エレクトラのイギリス支部長になれってことでイギリスに渡ったのよね。

そこで様々な才能を発掘していくわけだけど、その中で見つけたサンディデニーやインクレディブルストリングバンドの曲を米エレクトラに「イギリスでこんなん見つけましたですぜ」って渡してたってことなんだろうな。

イギリスの無名曲をジュディコリンズが歌ってることにめっちゃ納得行きましたですね。


〝Who Knows Where the Time Goes〟は元々サンディデニーが短期間ストローブスに参加していた67年に録音されてて、その時の音源は結局73年に『All Our Own Work』としてリリースされるまでお蔵入りしてたんだけど、ジョーボイドはそれを入手してエレクトラに勧めたんだろうな。

サンディデニーはジョーボイドに引き抜かれる形でストローブスを抜けてフェアポートコンベンションに加入するわけだから、ストローブスからすると結構たまったもんじゃないよな。笑

そしてそうなると疑問に思うのはジョーボイドはヴァシュティバニヤンニックドレイクの曲をエレクトラに渡さなかったんだろうか。
もしそうしてれば2人の運命も変わったかもしれないよな。ジュディコリンズ効果でもう少し売れたかもしれないわけで。
Dr. Strangely Strangeとかも。


まぁそんなことでまさかのインクレディブルストリングバンドの曲!!!ってのが1番の収穫でございました。

アルバム自体はまぁそんなに良くはない、でも歴史的に大事な1枚だなぁ、そんな感じです!
期待してた反動も込みで★★★☆☆(3.0)。

あぁあと、ジュディコリンズって自作しない歌手のイメージだったけどこのアルバムくらいから自作曲も書いてるのね。
またゆっくり長いキャリアを追っていけたらと思います!
けど最初に手にしたのがあんまりだったからなぁ…しかも世間的には名盤扱いされてるのに。んーーー

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