見出し画像

資金調達の2つの基本。Debt(デット)とEquity(エクイティ)

資金調達には2つの手法があります。

それは、デット・ファイナンス(略称:デット調達)と呼ばれる借入調達、そしてエクイティ・ファイナンス(略称:エクイティ調達)呼ばれる新株発行による調達です。

「デット」と「エクイティ」、この2つの違いを理解することで、スタートアップ企業の財務を有利に進めることが出来ます。

デット調達
借入調達と言われる調達手法です。主な資金の出し手は「銀行」です。
銀行は、お金を貸して「利息」を徴収することでビジネスを行っている会社です。貸したお金が返済されない場合に、かなりのダメージを受けるのです。そのため、銀行にとっては「貸したお金が返ってくるのかどうか」が最大の関心事になってきます。

ソフトバンクは創業時もデット調達の達人だった
ソフトバンクが携帯会社に生まれ変わろうとした2006年、英ボーダフォンを1兆7500億円で買収したときに、総額1兆2,800億円のデット・調達を行ったことが大きな話題になりました。そんなソフトバンクは創業時にもデット調達を行っていました。

82年、日本ソフトバンク(当時)を起業してまだ間もない頃、ソフトの卸を業務にしていた孫は、運転資金に行き詰まり、第一勧業銀行(現みずほ銀行)麹町支店に1億円を無担保で貸してくれるように頼んだのである。
「そこの支店長は、孫さんに惚れ込んだようだが、1億円という巨額の融資を一支店長の裁量では決められません。何か担保はないのかと聞く支店長に、孫さんは苦しまぎれに僕の名前を出したらしい。銀行側は驚いて本部の役員を介して照会を求めてきたのですが、僕は『孫をたのみます』と答えたのです」
(引用)https://president.jp/articles/-/16742

デット調達は「信用」が基礎
銀行にとっては「貸したお金が返ってくるのかどうか」が重要なポイントです。創業時に売上がない状態はなんの実績もなく、「貸したお金が返ってくるか」どうかに対しての「信用」がありません。

融資の判断は銀行側にとっても困難です。そこで、「担保」か「保証」といったものを求められてきます。

「担保」とは、お金が返済されなかった場合に、代わりに返済原資とする資産を約束することで、信用を補完する方法です。

「保証」とは、お金が返済されなかった場合に、本人に変わって返済責任を負う人を、予め約束することです。

この「担保」や「保証」というルールによって、デット調達のきっかけを掴んでいくのが、基本的な考え方です。これに「国などのデット支援」を戦略に加えていくことで、スタートアップ企業のデット戦略を構築していくことになります。

デット調達の基本はキチンと返すこと
借りたお金はキチンと返す、これがデット調達のポイントです。
例えば、5年の分割返済で500万円を借入調達した場合、月々8万5千円程度を返済し続けることになります。

毎月、返済日に遅れることなく返済できるように、銀行残高をキチンと管理する必要があります。キチンと返し続ける事で、銀行と会社の間に信用が生まれてきて、更に大きなデット調達が可能となってきます。

デット調達の戦略は借り続けること
先に述べたとおり、借りたお金をキチンと返すことがデット調達の基本ですが、もう一つの重要なポイントとして「経営を続ける限り、借入をし続ける」という、基本的な財務戦略があります。

個人の住宅ローンとは異なり、一回借りたら終わりではありません。
借りたお金で事業を作り、利益でキチンと返済をする。そしてまた新たな借入をします。これは「会社は事業を継続して続ける」という基本原則があるためです。

順調に成長していけば、新たな借入時には、最初の借入時より事業が大きくなるため、当初より大きなデット調達が可能となってきます。このサイクルを戦略的に回し続けることで、より多額の資金調達が可能となってきます。

エクイティ調達
新株発行による資金調達のことを、エクイティエクイティ調達と言います。
スタートアップの聖地シリコンバレーでは、このエクイティ調達の手法が発展しているといわれます。

エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから資金調達する場合が、エクイティ調達による資金調達となります。

エクイティ調達は、会社のオーナー権を販売しているということ
新株発行するということは、会社のオーナー権(所有権)を販売している事になります。エクイティ調達は、会社のオーナー権を販売することで、会社の資金を得ていく調達手法です。エクイティ調達は、会社のオーナー権を販売することで、会社の資金を得ていく調達手法です。

例えば、Aさんが一念発起して自分の貯金を出資してA株式会社を設立した場合、AさんはA株式会社のオーナー権を100%持っていることになります。

エクイティ調達は会社のオーナー権を販売していくことになるので、エクイティ調達を進めることでオーナー権が徐々に下がっていくことになります。

会社の最終意思決定は、オーナーにより構成される「株主総会」での多数決により決まります。

例えば、エクイティ調達でA株式会社のAさんのオーナー権が40%に下がってしまって、Bさんが残りの60%のオーナー権を持っていた場合、A株式会社の「株主総会」での過半数はBさんが保有することになります。つまり、Bさんは、実質的にA株式会社の最終意思決定者になってしまうのです。

この様な事態は、A株式会社の経営の重大にインパクトを与えることになります。資本的に安定したオーナーがいない会社は「経営の安定性」という点で疑義が生じます。

そのため、エクイティ調達を行う際には、オーナー権の比率に注意しながら計画的に進めることが重要です。

エクイティ調達したお金は、返済しなくて良い。
デット調達の場合には、必ず返済をしなければなりません。
しかし、エクイティ調達は返済しなくても良いのです。
これが、エクイティ調達の最大のメリットです。

エクイティ調達のポイント
メリットは、返済しなくても良い資金調達ということ。
デメリットは、創業者のオーナー権の割合が下がっていくこと。

このメリットとデメリットを計画的に組合せていくことが、エクイティ調達の基本戦略となります。

エクイティ調達の戦略を練るには、オーナー権の取扱いについてのルールである「会社法」、そしてお金の知識である「企業財務(会計・税務・金融)」がベースになってきます。

専門性が高く、なかなかに手強い領域ですので、色々な人に相談しながら組み立てて行くのが良いと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?