パックマンのモンスターの巣の設計

 ツイッターに書いた文章の転載です。

 先日、久しぶりに岩谷徹さんにお会いして、パックマンについて思い出したことがある。細かすぎて伝わらないかもしれないけど、パックマンの「モンスターの巣のデザイン(設計)」はじつに美しい、と。

 何が美しいって、パックマンのモンスターは全部で4匹なのに、中央にある巣は3匹分のスペースしかない(最初のアーケード版)。普通に考えたら4匹分のサイズの巣を作るでしょう。

 パックマンってゲームが進むと巣から1匹ずつモンスターが出てくることで徐々にゲーム難易度が上がるんだけど、スタート時点で最初の1匹(アカベエ)は既に巣の外でスタンバイしている。つまり巣に4匹という状態は存在しない。だから巣は3匹分のサイズで済む。

 ゲームチューニング的な事情でいえば、もしも4匹分のスペースがあって、スタート時に巣から1匹ずつ出てくる仕様だったとしても、とくに問題ないといえばない。同じようなゲームバランスは実現できる。

 でも、理屈としてはフィールドに敵がいないと遊び(追いかけっこ)が成り立たないわけで、その意味でとても設計思想がロジカル。ゲーム開始ジングルが鳴っているとき、既にアカベエが迷路内に立ってにらみを利かせている姿は、何というか、非常に“すわり”が良い。

 まあ、画面レイアウトを切っていったら、ちょうどきれいに収まったのがこの形だったというのが真実かもしれない(スプライト+BG面の当時の基板なので、大して自在なレイアウトはできない)けど、出力結果としてはすごく納得感がある。

 あと、巣の中のモンスターって上下に動きながらスタンバっているんだけど、あれも上下ではなく左右に動いて(互いに交差しながら)スタンバっているという仕様もありえたと思うんだ。でも、交差していない方が数が認識しやすいし、開始時に3匹がきれいに収まって見えるのでこれも美しい。

 敵の巣の考え方っていろいろあって、パックマンの場合は4匹に対して3匹分だけど、クラッシュローラーは2匹に対してちゃんと2匹分ある。レディバグは4匹に対してたった1匹分のスペースしかない。ロックンチェイスになると巣自体が存在しない。同じドットイートものでもゲームごとに考え方が違う。

 だから何? って話かもしれないけど(笑)、つくっている人の思想って意識的でも無意識でも、こういう仕様の一つ一つに出る。これらはレトロゲームだから見えやすいところに出ているけど、現代のゲームでもこれは一緒だよね、当たり前だけど。 了

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