尺骨神経

『神経が圧迫されているから痛い』は正確な所見ではない場合が多い。

体に痛みがある方で、『どこそこの神経が圧迫されているから痛い』と言われた方は多いと思います。

しかし結論から言うと、損傷があったり、神経性の病気などを持っていない普通の状態においては、実は神経は単純に圧迫しただけでは痛くありません。

あまりに神経圧迫が痛みの元だといろいろな人が言ってしまうため、考え方が定着してしまっているので「そんなわけないだろう」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

という事で論より証拠。実際に神経を圧迫してみましょう。

まず、どちらの腕でもいいので、親指を上にして前にピンと伸ばした状態にします。
次に、反対の手の人差し指の親指側の横面を、ヒジの下側の骨の出っ張っている部分の少し後ろ、二の腕の部分に当てます。(上の図の赤矢印の部分)
そして、すこし圧迫しながら、肘の骨とその部分を何度も往復するようにシャカシャカとスライドしてみてください。

どうでしょうか。脂肪の分厚い方などはもしかしたら感じられないかもしれませんが、ほとんどの方は肘から指先にかけて痺れを感じたと思います。

しかし、痛いという感覚はないと思います。
※1、もし痛みを感じるという場合は、押している部分が痛いなら強く押し過ぎか、その部分の筋肉など神経以外の組織に問題があります。
※2、肘から指先にかけて全て痛みを感じるという場合は神経性のなにかしらの病気や損傷があるかもしれませんので病院で診てもらいましょう。

この痺れは何かというと、頸椎から指先までを走行している『腕神経叢』という網目状に分岐している神経の束のうちの、『尺骨神経』を圧迫したために起こる一時的な軽い神経障害という事になります。

上の図を見てもらうと分かると思いますが、指先は小指と薬指のみに痺れを感じたと思います。
これは、尺骨神経がその2本の指のみに分岐しているためです。(稀に、中指にも分岐している方もいらっしゃいます)

これにより、神経は単純な圧迫では痛くないという事がお分かりになられたかと思います。
という事はつまり、~神経痛というものが本当に神経圧迫によるものなのか疑わしくなってきますよね。

例えば『肋間神経痛』や『坐骨神経痛』。
こう言われて「神経が悪いから重症なんだ」というようなイメージをもたれてしまった方が私の整体院にも多くいらっしゃいます。

しかし、そのほとんどは神経とは関係なく、筋肉や筋膜の問題であったりします。
ですので、筋肉や筋膜にアプローチする事で改善していきます。

特徴として、「痺れはないが痛い」、「痺れも痛みもあるが部分的」という訴えについては、まず神経の問題でない可能性が高いと考えられます。

先ほどの神経圧迫の実践を考えてみると分かると思いますが、神経に問題がある場合は、痺れが表れ、その部分から分岐する下位の神経支配領域全体に障害が発生します。

あくまで神経性の病気や外傷などによる損傷を別としての話ですが、単純に痛いという方で神経圧迫が原因と言われた方は、言葉の重さをそのままとらえて重症だと思い込まない方が、QOL(クオリティーオブライフ=人生の質)を保てると思います。

神経に問題がないのであれば、一定以上のレベルの手技療法家ならば早期改善は難しくないですし、姿勢改善や生活改善を行えば根本改善も期待できますので、お近くにそういう場所がある方は考慮されてみるのもいいでしょう。

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